文化政策の研究をしています。
ヒルデスハイム大学文化政策研究所(ドイツで唯一の大学付属文化政策研究所)で博士号取得後、日本学術振興会PD、獨協大学専任講師・准教授、コロンビア大学客員研究員(米国)を経て、2022年より早稲田大学教授。
研究領域と社会を繋ぐ活動として、NHKドイツ語講座講師(ラジオ第二放送、2016年)、文化庁「諸外国の文化政策等比較調査事業」事業責任者(2021-2025年度)、内閣官房「政府機関の地方移転評価事業」有識者委員(2021年度から)、芸団協「芸術家の社会保障に関する研究」(2022年度からドイツ、米国調査実施及び座長)等、研究の視野をひろげる活動に携わらせていただいてきました。
研究面では、歴史的系譜や反省事例の確認と、現代の政策・制度設計の両面からアプローチしています。
歴史面では、文化政策の中でも、「芸術を理解する者(国家)の方が、経済活動のみに関心を持つ者(国家)より”高尚”だ」というイデオロギーを国家理念(文化国家論)にまで(無理矢理)高めていった第一次大戦期のドイツをはじめとして、「ヨーロッパ近代」や「国民国家」形成の問題と、そこから発生していく「芸術家」というもの、装置として誕生した(欧州発祥の近代型の)文化施設(ミュージアム、劇場等)の系譜に興味を持っています。
特に近年では、これまで国際的には文化振興・文化政策の思想や理念は、ローカルな文脈が強いという定説があるものの、案外グローバルに共通する要素を持っていることに着目しています。そうした「文化振興思想のグローバル・ヒストリー」というか、移殖や相互影響の過程を、ドイツ・米国・日本を事例として、調べています。
芸術文化を無批判に所与の「価値のあるもの」と見なして文化政策を語るのではなく、「価値」の生成過程も含めて批判的に捉え直し、その上で、文化政策はどうあることができるのかを日本の中世時代以降の思想も参照することで、探りたいと思っています。
「良かれ」と思った意欲的な政策が、ことごとく裏目に出たのが、ドイツ近代の文化政策だったように思います。この時期の思想的影響は、日本も近代化の過程で極めて大きく受けており、ドイツの文化政策史の野望・理想とその顛末・克服は、現代において、文化政策の「落とし穴」を避けたギリギリのラインで文化政策のバランスをとるためにも、慎重に、何が問題だったのかを見極め、各国が参照する意義のある事例です。
現代の政策・制度では、補助金・助成金の配分方法とその効果、欧州ミュージアムで先行する文化観光を通じた基金の形成手法(深夜のナイトミュージアムなどの「メガ・イベント」はまわりまわって地元の児童の地道な教育・普及活動の資金を形成しています)、予算投入とその効果をミュージアムや劇場単位ではなく、フットプリント型(周辺への経済波及)で評価する手法を研究しています(2019年単著『文化国家と文化的生存配慮』(日本ドイツ学会奨励賞受賞、日本学術振興会出版助成のための査読有)および令和7年度文化庁「諸外国の文化政策等調査」報告書に、事例と仕組みを掲載)。
現在力を入れて取り組んでいる分野:
①実演家の権利保護・社会保障など就労環境の整備・そのための公的資金分配手法の分析、②米独の文化政策形成交流史(ヴァイマル・NYC)、③独米のミュージアムの「脱植民地主義」の動向(ベニン・ブロンズ)とデジタル・アーカイブの形成・公開・利活用による議論・アクセス機会の保障、④身体性(舞踊/スポーツ等)と共鳴・響振に着目した文化政策。
教育面では:
「複合文化学科」という「文化」を幅広く学際/地域横断的に分析する文理融合の学科なので
プロンプト・エンジニアリングによる卒論伴走GPTを育てる実験(自分のゼミ生のみ利用可能。ゼミの執筆ルールや思考の段階化プロセスを入れて試行)をしています。
答えや解説、そのまま使える文章を出力することを禁止ルールに設定してあるために、思考を深めるプロセスに頻繁に戻され、他の生成AIで調べた内容を貼っても、欠けている視点についてどう考えるかさらに問いかけが戻ってくるので、学生が即座に知りたいことを知ることができないスローな(楽をしたいと思ったらむしろ不便な?!)相談相手になっています・笑(その上で、自分で「これだ!」と最終的に判断して卒論に仕上げていくツールです)。外国語(ドイツ語)教育における学修効果の向上にも、もう少し生成AI等を使えないかというPoCに取り組んでいます。
趣味:
(図像・表象分析)
・各国観光名所(お城、役所、神社)の付近にいるぶさかわ度(?)が結構高いのにすまして鎮座している真面目で由緒正しそうな動物像(ライオン・獅子)の写真撮影が、好きです。そのコミュニティで古くから大事に、誇りに思われてきたのかなと、勝手にほほえましい歴史を想像してしまいます。(そして研究者の好奇心を発揮し、その街の史料館の人に尋ねると、「もともとは王の霊廟の飾りの予定が、資金がなくなり、ライオンだけ余りまして・・・・・・」とか、「数十体、同じものが世界にあります」など、意外な由来が返ってくるので飽きません(NHKのドイツ語講座で紹介しました)。霊廟制作中に権力者が資金難、あるいは、計画を変えてしまうって問題は、ミケランジェロとユリウス2世以外にも、当時はよくあった話なのでしょうかね、、、)。
(語源探索)
・舞踊やスポーツを理解・実践するための用語(解剖学、筋肉や筋線維、栄養素の英単語)のラテン語やギリシャ語語源を調べて、歴史・政治の用語との系譜の意外な共通点を見つけることを楽しんでいます。