2024/12/08 更新

写真a

ハシモト カズミチ
橋本 一径
所属
文学学術院 文化構想学部
職名
教授
学位
博士(学術) ( 東京大学 )
DEA ( ナント大学 )
メールアドレス
メールアドレス

経歴

  • 2017年04月
    -
    継続中

    早稲田大学   文学学術院   教授

  • 2021年10月
    -
    2022年06月

    ナント高等研究所   フェロー

  • 2012年04月
    -
    2017年03月

    早稲田大学   文学学術院   准教授

  • 2010年04月
    -
    2012年03月

    愛知工科大学   工学部   講師

  • 2006年04月
    -
    2008年03月

    日本学術振興会   特別研究員

学歴

  •  
    -
    2010年

    東京大学   総合文化研究科   超域文化科学専攻  

  • 1998年
    -
    2007年

    東京大学   総合文化研究科   超域文化科学専攻  

  • 2002年
    -
    2006年

    ナント大学   理工学部   科学技術史  

  • 1993年
    -
    1998年

    東京大学   文学部   思想文化学科 宗教学・宗教史学専修課程  

委員歴

  • 2022年10月
    -
    継続中

    ナント高等研究所  学術顧問

  • 2022年09月
    -
    継続中

    早稲田大学  教務部副部長

  • 2022年07月
    -
    2024年07月

    表象文化論学会  編集委員長

所属学協会

  •  
     
     

    日本映像学会

  •  
     
     

    19世紀学学会

  •  
     
     

    日本記号学会

  •  
     
     

    表象文化論学会

研究分野

  • 思想史

研究キーワード

  • 表象文化論

受賞

  • 表象文化論学会 奨励賞

    2011年07月  

 

論文

  • 最初で最後の写真論?——ロドルフ・テプフェールの「ダゲール板について」(一八四一)をめぐって

    橋本一径

    美術フォーラム21   ( 47 ) 38 - 43  2023年06月  [招待有り]  [国内誌]

  • 「産業的ドグマ空間」における神話的イメージとしての写真

    橋本一径

    思想   ( 1129 ) 117 - 128  2023年06月  [招待有り]

  • 社会的動物/家畜的人間 ミツバチの利他性について

    橋本一径

    現代思想   49 ( 12 ) 69 - 77  2021年09月  [招待有り]  [国内誌]

  • 目で触れる――戸田ツトムと書籍カバーについて

    橋本一径

    ユリイカ   52 ( 16 ) 394 - 402  2020年12月  [招待有り]

  • An unfaithful trace: a history of "life-size" photography

    Kazumichi Hashimoto

    Bilder als Denkformen: Bildwissenschaftliche Dialoge zwischen Japan und Deutschland     91 - 100  2020年08月

  • Un double fétichisme dans la photographie

    Kazumichi Hashimoto

    Rilas Journal   6   485 - 489  2018年10月

  • Les empreintes digitales d’un fantôme

    Kazumichi HASHIMOTO

    Hippocampe   15   85 - 86  2018年10月  [招待有り]

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第10回]痛みと生命

    橋本一径

    Cancer Board Square   4 ( 3 ) 185 - 188  2018年10月  [招待有り]

  • イメージと聖なるもの

    橋本一径

    nyx ニュクス   ( 5 ) 136 - 141  2018年09月  [招待有り]

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第9回]未生の生

    橋本一径

    Cancer Board Square   4 ( 2 ) 188 - 191  2018年07月

  • 人は生まれながらにして文書となれるか――生体認証の争点

    橋本一径

    現代思想   46 ( 10 ) 118 - 123  2018年06月

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第8回]「身体――「資源」と「食物」の間で」

    橋本一径

    Cancer Board Square   4 ( 1 ) 164 - 167  2018年02月  [招待有り]

  • 『美女と野獣』における「母殺し」

    橋本一径

    『現代思想』3月臨時増刊号「現代を生きるための映像ガイド」   46 ( 4 ) 92 - 95  2018年02月  [招待有り]

  • « Debunking », ou le nouvel enjeu de la retouche photographique à l’ère numérique

    橋本一径

    Rilas Journal   ( 5 ) 416 - 421  2017年10月

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第7回]「動物には痛みがない」

    橋本一径

    Cancer Board Square   3 ( 3 ) 152 - 156  2017年10月

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第6回] 「痛み」と「病気」の乖離

    橋本一径

    Cancer Board Square   3 ( 2 ) 190 - 194  2017年07月

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第5回] 「痛み」は誰のものか?

    橋本一径

    Cancer Board Square   3 ( 1 ) 162 - 166  2017年02月

  • ロンドンの足跡、東京の指紋――南方熊楠とヘンリー・フォールズ

    橋本一径

    熊楠WORKS   ( 48 ) 40 - 46  2016年10月  [招待有り]

    CiNii

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第4回] 慢性疾患は医学の敗北か?

    橋本一径

    Cancer Board Square   2 ( 3 ) 216 - 220  2016年10月

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第3回] 「生まれない」ための医学――エンハンスメントの未来

    橋本一径

    Cancer Board Square   2 ( 2 ) 190 - 194  2016年07月  [招待有り]

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第2回] 誰のものでもない体

    橋本一径

    Cancer Board Square   2 ( 1 ) 198 - 202  2016年02月  [招待有り]

  • 指紋は何の証拠?――犯罪人類学から科学捜査へ

    橋本一径

    月刊みんぱく   39 ( 11 ) 5 - 6  2015年11月  [招待有り]

  • 三脚写真論

    橋本一径

    photographers' gallery press   ( 13 ) 58 - 68  2015年11月

  • シュポジトワール

    橋本一径

    文學界   69 ( 10 ) 226 - 227  2015年10月

  • 人間はいつから病気になったのか――こころとからだの思想史[第1回] 動物は病気にならない

    橋本一径

    Cancer Board Square   1 ( 1 ) 154 - 159  2015年10月

  • 火災写真論 1886-1897

    橋本一径

    photographers' gallery press   ( 12 ) 160 - 170  2014年11月

  • 「先駆者」ホームズ、そして科学捜査というフィクション

    橋本一径

    ユリイカ   46 ( 9 ) 221 - 227  2014年07月

  • 「書くこと」と「縫うこと」の間で——19世紀フランスにおけるミシン産業の発達と文学

    橋本一径

    南山大学地域研究センター共同研究2013年度中間報告     151 - 158  2014年03月

  • フィクションから科学へ——探偵小説と科学捜査

    橋本一径

    表象・メディア研究   ( 3 ) 1 - 12  2013年03月

    CiNii

  • イメージの権利——19世紀フランスにおける写真の著作権・肖像権

    橋本一径

    美学芸術学論集   ( 9 ) 27 - 37  2013年03月

    DOI CiNii

  • 動物と犯罪——アレクサンドル・ラカサーニュ(1843-1924)の「動物犯罪学」とその挫折

    橋本一径

    南山大学地域研究センター共同研究2012年度中間報告     15 - 28  2013年03月

  • 稲妻写真論

    橋本一径

    photographers' gallery press   ( 11 ) 223 - 232  2012年11月

  • 名・身体・同一性——19世紀フランスにおける新生児の出生確認

    橋本一径

    19世紀学研究   ( 4 ) 93 - 105  2010年03月

    CiNii

  • Former des adultes: la formation des policiers en France à la fin du XIXe siècle

    Kazumichi Hashimoto

    Philosophie et Education II (UTCP Booklet 10)     11 - 19  2009年

  • モルグから指紋へ——19世紀末フランスにおける科学捜査法の誕生

    橋本一径

    レゾナンス   ( 4 ) 18 - 24  2006年

  • 人相書きの科学——アルフォンス・ベルティヨンの〈口述ポートレート〉

    橋本一径

    レゾナンス   ( 3 ) 16 - 23  2005年

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書籍等出版物

  • アニメ的人間 : インデックスからアニメーションへ

    日本記号学会, 橋本, 一径( 担当: 編集)

    新曜社  2022年05月 ISBN: 9784788517745

  • 「クリティカル・ワード 」メディア論 : 理論と歴史から「いま」が学べる

    門林, 岳史, 増田, 展大( 担当: 分担執筆,  担当範囲: 司法メディア)

    フィルムアート社  2021年02月 ISBN: 9784845920068

  • フィラデルフィアの精神

    アラン・シュピオ, 橋本一径( 担当: 単訳)

    勁草書房  2019年06月 ISBN: 9784326451166

  • イメージ学の現在 ヴァールブルクから神経系イメージ学へ

    坂本泰宏, 田中純, 竹峰義和, 橋本一径ほか( 担当: 分担執筆)

    東京大学出版会  2019年04月 ISBN: 9784130101400

  • 〈他者〉としてのカニバリズム

    橋本一径, 都留ドゥヴォー恵美里, 志村真幸, フォルカー・デース, 倉数茂, 木村朗子( 担当: 編集)

    水声社  2019年03月 ISBN: 9784801004184

  • 近代人文学はいかに形成されたか

    甚野尚志, 河野貴美子, 陣野秀則, 橋本一径ほか( 担当: 分担執筆)

    勉誠出版  2019年02月

     概要を見る

    「帝王切開と人肉食――日本の科学黎明期から見た人文学と「人間」」を担当

  • 法的人間 ホモ・ジュリディクス 法の人類学的機能

    橋本一径( 担当: 共訳)

    勁草書房  2018年03月 ISBN: 9784326451128

  • 映画を撮った35の言葉たち

    ( 担当: 分担執筆)

    フィルムアート社  2017年12月 ISBN: 9784845917136

  • ドーピングの哲学

    ジャン=ノエル・ミサ, パスカル・ヌーヴェル編, 橋本一径訳( 担当: 単訳)

    新曜社  2017年10月 ISBN: 9784788515468

  • エドワード・ヤン 再考/再見

    フィルムアート社編, 橋本一径他著( 担当: 分担執筆)

    フィルムアート社  2017年08月 ISBN: 9784845916412

  • 声と文学

    塚本昌則, 鈴木雅雄( 担当: 分担執筆)

    平凡社  2017年03月 ISBN: 4582333273

  • 近代科学と芸術創造

    真野倫平, 橋本一径他

    行路社  2015年03月 ISBN: 9784875344483

  • 爆心地の写真 : 1945-1952

    加治屋, 健司, 権, 鉉基, 倉石, 信乃, 小原, 真史, 椹木, 野衣, 白山, 眞理, 高雄, きくえ, 高橋, しげみ, 西本, 雅実, 橋本, 一径, 東, 琢磨, 松田, 正隆

    Photographers' gallery  2014年11月 ISBN: 9784907865030

  • 同一性の謎

    ピエール・ルジャンドル著, 橋本一径訳

    以文社  2012年05月 ISBN: 9784753103010

  • 指紋論——心霊主義から生体認証まで

    橋本一径

    青土社  2010年10月 ISBN: 479176496X

  • Artist. photograph : Kenzo Tamoto

    田本, 研造, 大下, 智一, 手島, 由有子, 倉石, 信乃, 土屋, 誠一, 谷口, 雅春, 田中, 里実, 三井, 圭司, 港, 千尋, Phillips, Christopher (Christopher Joel), 甲斐, 義明, 橋本, 一径, 疋田, 豊治

    photographers' gallery  2009年04月 ISBN: 9784862191069

  • イメージ、それでもなお

    ジョルジュ・ディディ=ユベルマン著, 橋本一径訳

    平凡社  2006年08月

  • ドグマ人類学総説 : 西洋のドグマ的諸問題

    Legendre, Pierre, 嘉戸, 一将, 西谷, 修, 佐々木, 中, 橋本, 一径, 森元, 庸介

    平凡社  2003年10月 ISBN: 4582702465

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講演・口頭発表等

  • Who is the author of the series? The ‘pilgrimage’ of filming locations and a scriptwriter theory

    Kazumichi Hashimoto  [招待有り]

    International Workshop “Television Series: Global Circulation and Cross-cultural Differences”  

    発表年月: 2024年02月

  • 鏡・写真・数値ーー「私」を制定するイメージと人文学

    橋本一径  [招待有り]

    中部大学中部高等研究所共同研究「人文学の再構築」第15回  

    発表年月: 2023年10月

  • L’animal social/l’homme bestial : l’altruisme des abeilles et l’évolution moderne de l’image de la société

    Kazumichi Hashimoto  [招待有り]

    Séminaire de l'IEA   (Nantes)  Institut d'Etudes Avancées de Nantes  

    発表年月: 2022年01月

    開催年月:
    2022年01月
     
     
  • 私たちはミツバチであるのか? 社会のイメージと身体

    橋本一径  [招待有り]

    連続シンポジウム「文学としての人文知」  

    発表年月: 2021年05月

  • La photographie entre le fétichisme et l'animisme : Miyako Ishiuchi et une animation photographique des morts

    橋本一径  [招待有り]

    LE BANQUET FANTÔME   (パリ)  ポンピドゥー・センター  

    発表年月: 2018年09月

  • Un double fétichisme dans la photographie

    橋本一径

    国際シンポジウム「写真とフェティシズム」   (早稲田大学) 

    発表年月: 2017年12月

  • 写真と「真実」──犯罪捜査の歴史を手がかりに

    橋本一径

    表象文化論学会  

    発表年月: 2017年07月

  • ロンドンの足跡、東京の指紋――南方熊楠とヘンリー・フォールズ

    橋本一径  [招待有り]

    特別企画展講演会「ロンドン時代の南方熊楠」   南方熊楠顕彰館  

    発表年月: 2016年05月

  • An Unfaithful Trace: A History of "Life-size" Photography

    橋本一径  [招待有り]

    フンボルトコレーク東京, 2016   (東京大学駒場キャンパス)  アレクサンダー・フォン・フンボルト財団  

    発表年月: 2016年04月

  • 三脚、自撮り棒、ドローン――カメラの支持体の歴史

    橋本一径  [招待有り]

    国際シンポジウム「〈日常〉とは何か 西欧の場合、日本の場合」   (青山学院大学) 

    発表年月: 2015年12月

  • ミシンと文学――シュルレアリスムの手前で

    橋本一径

    日本フランス語フランス文学会秋季大会   (京都大学) 

    発表年月: 2015年11月

  • 魂は声を持つか−−心霊主義における音声メディアと幽霊のアイデンティティ

    シンポジウム「声と文学」  

    発表年月: 2014年12月

  • 所有物としての胎児−−20世紀初頭フランスの妊娠中絶をめぐる議論と身体概念の変容

    南山大学地域研究センター共同研究  

    発表年月: 2014年10月

  • オーラの痕跡――イポリット・バラデュックの科学的心霊写真

    橋本一径

    ワークショップ:心霊写真の文化史――メディアテクノロジーの発展と亡霊表象の変遷   (早稲田大学) 

    発表年月: 2014年02月

  • 「書くこと」と「縫うこと」の間で――19世紀フランスにおけるミシン産業の発達と文学

    橋本一径

    シンポジウム「科学知の詩学――19-20世紀のフランス・ドイツにおける科学と文学・芸術」   (東京大学) 

    発表年月: 2013年12月

  • シンポジウム「現代スポーツの苦悩を探る」

     [招待有り]

    スポーツ史学会第26回大会   (甲南女子大学) 

    発表年月: 2012年12月

  • 肖像権と同一性

    橋本一径

    第7回神戸大学芸術学研究会「身体と同一性」   (神戸大学) 

    発表年月: 2012年11月

  • 19世紀フランスにおける写真の著作権:同一と類似

    表象文化論学会第7回研究発表集会ミニシンポジウム「イメージの権利」  

    発表年月: 2012年11月

  • 動物と犯罪——怪物的犯罪者から警察犬まで

    南山大学地域研究センター共同研究「19〜20世紀のヨーロッパにおける科学と文学の関係」第1回シンポジウム  

    発表年月: 2012年10月

  • 文学を犯罪科学に応用することは可能か?——20世紀初頭フランスの法医学者たちによる「文学」研究をめぐって

    日本フランス語フランス文学会春季大会 ワークショップ「文学とその〈外部〉」  

    発表年月: 2012年06月

  • 種を区別する:20世紀初頭の日本における人種言説と指紋

    橋本一径

    日仏シンポジウム「移民と国境」   (日仏会館) 

    発表年月: 2011年04月

  • Objective Subjectivity: the Fingerprinting and the Image of Identity

    堀場国際会議「ユビキタス・メディア:アジアからのパラダイム創成」  

    発表年月: 2007年07月

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共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 近代におけるフィクションの社会的機能についての領域横断的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2021年04月
    -
    2025年03月
     

    久保 昭博, 日高 佳紀, 武田 将明, 齋藤 渉, 高橋 幸平, 橋本 一径, 森元 庸介, 岩松 正洋, 辻川 慶子

  • 蜜蜂から家畜へーー西洋における社会的動物の思想史

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2020年04月
    -
    2023年03月
     

    橋本 一径

     概要を見る

    人間社会を動物の集団に喩える例は多くの文化に見出すことができるものである。西洋においては「蜜蜂」がそのような例として重要な役割を担ってきた。自己犠牲的な行動が中世において社会の模範として語られてきた蜜蜂は、やがて私利私欲のままに行為する存在とみなされ、個人主義の時代になると、人間社会を動物に重ね合わせる議論自体が下火となる。ところが19世紀末になると、集団遺伝学などの議論において、動物たちの集団が人間社会の起源をなすものとして再び引き合いに出されるようになる。本研究はこの動物の「復活」を、社会を構成する単位の「個人」から「家畜」への変化と捉え、そのような社会にとっての正義のあり方を模索する

  • フェティシズムの思想史――19世紀西洋における「所有する主体」の誕生と身体

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2017年04月
    -
    2020年03月
     

    橋本 一径

     概要を見る

    研究最終年度となる2019年度の研究実績は、主として以下の2点に整理することができる。①フランスの法思想家であるコレージュ・ド・フランスのアラン・シュピオ教授の著作『フィラデルフィアの精神』を翻訳刊行し、本研究からの助成を得て、シュピオ教授およびパリ第1大学の法学者ミュリエル・ファーブル=マニャン教授の日本における講演とワークショップを組織した。フェティシズム概念の誕生と、「所有者」としての法的主体の成立の関係に焦点を合わせた本研究にとって、法学的な知見はきわめて重要であり、シュピオ教授の著書の翻訳と解説の執筆、そして両教授との議論を通じて、研究を深化させることができた。日仏会館で行われたシュピオ教授の講演は、研究代表者によって翻訳され、『日仏文化』第89号に収録されている。②写真とフェティシズムの本質的な関係を解明し、西洋における写真の歴史を思想史の中に位置づけ直すことは、本研究の主軸のひとつである。2019年度は、写真雑誌『photographers' gallery press』の4年ぶりの刊行に尽力し、同誌に翻訳1本と論考2本を掲載した。翻訳として掲載したのは、パルカル・ブランシャールらの著による「野蛮の発明」であり、万国博覧会や写真メディアがいかにして帝国主義的な「野蛮」の表象を形成してきたのかを、批判的にたどった考察である。論考「フェティシズムとアニミズムの間にある写真」は、とりわけ本研究と関わりの深い考察であり、ポンピドゥー・センターで行った講演を収録したものである。もう一つの論考「「何もしない男」の系譜としての写真史」は、かつては「何もしていない」として芸術家から区別されてきた写真家が、やがて「何もしない」からこそ芸術家扱いされるようになる系譜をたどり直した

  • フェティシズムの思想史――19世紀西洋における「所有する主体」の誕生と身体

    科学研究費助成事業(早稲田大学) 

    研究期間:

    2017年04月
    -
    2020年03月
     

     概要を見る

    フェティシズム概念の思想史的な解明を目指す本研究の、当該年度における研究実績の概要は、主として以下の二点に要約することができる。①近代西洋において人とモノとの関係は所有に還元され、所有関係を超えた過度のモノへの執着は、「フェティシズム」と呼ばれて忌避されることになった。このような所有関係に還元することのできない、例外的なモノのひとつが、身体である。このような近代における身体のステータスを考察する手がかりとして、カニバリズムの問題を見出したことは、本研究の進捗にとっての大きな力となった。前年度より着手し始めたこの問題について、本年度は計画通り編著書を刊行することができたほか、分担執筆した書物においてもこの問題について検討した。②写真とフェティシズムの関係の検討も、本研究の重要な目的のひとつである。写真にフェティシズムというと、被写体(身体である場合が多い)をフェティッシュとした過度の愛着についてばかりが語られてきたが、本研究においてはむしろ、写真が集合的なアニミズムを媒介する社会的なフェティッシュであることを証明することを目指している。当該年度においては、従来のフェティシズムと、本研究が問題とするフェティシズムを切り分けることを目指した仏語論文を執筆し、仏語での口頭発表を行ったほか、近代的主体の法的ステータスと写真の発明とが深く関わっていることを示した論文を発表した。所有の問題の考察においては法制史的な観点からの検討も不可欠である。この点に関して本研究は、コレージュ・ド・フランス教授である法学者アラン・シュピオ氏の研究に大きな示唆を得ている。当該年度は同教授と、2019年度に日本で開かれる国際会議についての研究打合せを行ったほか、著書の翻訳も終わらせ、2019年度に刊行の予定である。カニバリズムの問題は、構想段階では本研究にとってこれほどまでに本質的な意味を持つものとなることは想定していなかったが、本研究の着手後、この概念が近代における身体のステータスを考察するうえで重要な意味を持つことに気づくに至った。このように新たに発見した問題系について、当該年度には編著書および分担執筆の2冊の書物を刊行できたことからすれば、本研究が当初の計画以上に進展していると見なしても、過大な評価には決してあたらないだろう。当初より計画していた写真に関する研究についても、論文を2本(フランス語および日本語)執筆したほか、フランスのポンピドゥー・センターで開かれたシンポジウムで発表を行うなど、国際的な展開を見せるに至っている。国際的な研究協力については、前年度翻訳書(『法的人間』、嵩さやか氏との共訳、勁草書房)を刊行したアラン・シュピオ教授とは本年度も良好な関係を一段と深めており、2019年度には同教授を招いての国際会議を日本で開催できる見込みである。同教授の新たな著作『フィラデルフィアの精神』も、すでに翻訳を終え、来日に合わせて刊行の予定である。本研究の最終年度となる2019年度については、主として写真に関する研究の成果を世に問うつもりである。勁草書房より刊行予定の単著については、同年度中に、写真における瞬間性の問題を考察した一章を執筆することで、すべての原稿が出揃うことになる。その他にも、ルドルフ・テプフェールの写真史上における重要な著作を監訳し、解説を付して刊行の予定である。長期休暇期間中には、フランス国立図書館において主として上記の執筆に関する資料調査を行うほか、写真史家であるパリ第1大学のミシェル・ポワヴェール教授と研究打合せを行い、同教授の著作の翻訳刊行に関して計画を進めるほか、2020年度以降に計画している在外研究についてのアドバイスをもらう。身体の問題についてはカニバリズムに関する研究書を編著および分担執筆としてすでに刊行し、写真の問題については単著を刊行することで、本研究は完成を見ることになる。これらの研究を発展させた2020年度以降の新たな研究についても、本年度より準備段階に入る予定である。写真における瞬間性の問題という、本研究において今年度取り組む問題を手がかりに、イメージにおける瞬間表象の問題を、西洋美術史と思想史の両者の観点から横断的に考察することが、今後の研究課題となる予定である

  • 実証主義的家族――ベルティヨン家と19世紀末フランスにおける実証主義の具体的展開

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2014年04月
    -
    2017年03月
     

    橋本 一径

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    本研究の主たる目的は、①19世紀末フランスにおける実証主義の展開の思想史的研究、および②ベルティヨン家についての伝記的研究の二点である。これらの二点について、それぞれ以下のような成果をあげた。①すべての自然現象を物理法則によって説明しようとする実証主義にとってのアポリアが「身体」であったことを明らかにし、「病気」や「痛み」という概念に着目することで、このアポリアに新たな視角からアプローチする可能性を示した。②19世紀フランスの実証主義を体現するベルティヨン家の、アルフォンス・ベルティヨンに注目し、彼と関わりの深い写真技術の歴史を考察することで、写真イメージの思想史的研究への足がかりを得た

  • 「インテグリティ」概念の思想史的研究--「器官」から「身体」へ

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2011年04月
    -
    2014年03月
     

    橋本 一径

     概要を見る

    本研究は、生命倫理などの分野で、身体まとまりを示す語として20世紀後半以降頻繁に用いられるようになった「インテグリティ」という概念の来歴を、思想史的にたどり直すものである。主な成果は以下の二点である。①テクノロジーの使用に伴う身体概念の変容の解明。19世紀後半に入って、テクノロジーの発展に伴い、これまでの身体概念がどのように変化したのかを、写真技術やミシンの歴史を通して具体的に描き出した。②「インテグリティ」概念の医学から法学への移行の時点の特定。免疫の理論の中で用いられていた「インテグリティ」が、19世紀末以降、妊娠中絶をめぐる議論の中で、初めて法的な用語として用いられ始めたことを確認した

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Misc

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現在担当している科目

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特別研究期間制度(学内資金)

  • 蜜蜂から家畜へ--西洋における社会的動物の思想史

    2021年09月
    -
    2022年09月

    フランス   コレージュ・ド・フランス

    フランス   ナント高等研究所

他学部・他研究科等兼任情報

  • 法学学術院   法学部

特定課題制度(学内資金)

  • 身体計測の思想史:生政治の時代における断片化する身体と虚構的な身体イメージの行方

    2023年  

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    本研究は、西洋において人間のアイデンティティの基盤がイメージから数値へと移り変わる過程を具体的に跡づけようとするものである。そのために本年度はまず、西洋における自己イメージとして重要な役割を果たしてきた写真の歴史に着目し、2本の学術論文を上梓した。また、夏季および春季の長期休暇を利用して、フランス国立図書館にて、19世紀の服飾史や人類学史関係の資料を渉猟し、人体のサイズの計測方法や意味の変化をたどった。この調査の成果は2024年度中に単著にまとめられる予定である。上記の写真をめぐる研究と、身体計測の歴史の研究を結びつける試みとして、口頭発表「鏡・写真・数値ーー「私」を制定するイメージと人文学」を行った。この口頭発表は冊子として刊行されている。本研究の準備となる身体論的な研究の一環として参加したシンポジウム「ドーピングとは何か」の採録が、『スポートロジイ』第5号に刊行された。同様に、『表象』第17号に翻訳掲載したイラナ・ロウィ「黙殺された身体?」は、フランスの身体論・無知学の最近の展開の一端を紹介したものである。

  • 蜜蜂から家畜へーー西洋における社会的動物の思想史

    2022年  

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    本研究助成は同名の研究課題を持つ科学研究費補助金(基盤C)を補助するものとして受けているものである。3年間の研究期間の最終年度にあたる2022年度は、2021年10月より特別研究期間を利用してフェローとして滞在しているフランス・ナントの高等研究所に引き続き6月まで滞在し、世界各国から集まった多様な分野の研究者との交流の中で、本研究課題についての新たな知見や、次の研究課題等につながるアイデアを得ることができた。とりわけ大きな成果としては「無知学」についての知見であり、日本ではまだあまり知られていない「無知学」を紹介するため、フランス語で書かれた無知学的研究論文を1本翻訳して紹介する予定であり、すでに完成したその翻訳を、解題とともに雑誌『表象』17号に掲載することが決まっている。

  • 蜜蜂から家畜へーー西洋における社会的動物の思想史

    2021年  

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     3年間の研究期間の2年目にあたる本年度は、本研究の最初の成果となる論文を『現代思想』2021年10月号(特集「進化論の現在」)に掲載して世に問うことができた。「社会的動物/家畜的人間」と題された本論文において、西洋思想においてミツバチと人間社会を比較した議論を、思想史的にたどりなおした。 また、本課題の研究者は2021年10月より特別研究期間としてフランスに滞在している。そこで実施した文献調査により、ビュフォンら18世紀の自然学において、ミツバチの集団行動が、人間社会との類似よりも差異を強調されていることを確認した。この成果は、招聘研究員として滞在しているナントの高等研究所におけるセミナーにおいて報告した。

  • 蜜蜂から家畜へーー西洋における社会的動物の思想史

    2020年  

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    本年度は、新型コロナウィルス流行の影響により、予定していたフランス出張を行うことができず、現地での文献調査ができなかったために、本研究課題に先立つ、写真にかんする研究をまとめることに注力した。報告者はかねてより写真をイメージ人類学的な観点から考察してきており、これは人類にとってのイメージの意味を考察するという点で、本研究課題とも通底するものである。研究成果の1つ目である論文「Un Unfaithful Trace」は、写真における被写体のサイズの問題を考察したものである。足跡などとは異なり、写真において被写体のサイズを保持することは難しい。この点に着目することで、本論文は、しばしば写真を「痕跡」とみなしてきた従来の写真論の見直しを試みた。また、論文「目で触れる」は、装丁家戸田ツトム氏の追悼文という形で、写真における触覚性について考察したものである。さらに分担執筆の形で寄稿した「司法メディア」では、身元確認技術としての写真と指紋の19世紀以来の相克が、今日においてBLM運動へとつながった警察の暴力の背後にも影響をもたらしていることを明らかにした。

  • フェティシズムの思想史-19世紀西洋における「所有する主体」の誕生と身体

    2019年  

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    本研究は、科研費基盤(C)に採択されている研究課題と連動して進められている。本研究は主として以下の2つの観点より推進されてきた。①写真とフェティシズムの関係の解明。②西洋における「所有」の概念の成立と、フェティシズムの関係の解明。 ①の観点については、写真と被写体の関係をめぐる従来の議論に対する批判の形で展開された。具体的には、原寸大写真の歴史に着目しながら、写真と被写体の関係が痕跡性よりもフェティシズムに近いものであることを論じ、日本語および英語の論文として発表した。 ②の観点について、本年度はシュピオ教授の著書『フィラデルフィアの精神』を翻訳出版するとともに、末延財団の支援を受けシュピオ教授を招聘し、早稲田大学においてワークショップを開催した。同時にパリ第一大学教授で民法学者のミュリエル・ファーブル=マニャン教授も招聘し、ワークショップ等での意見交換により、研究の進展につながる重要な示唆を得た。

  • フェティシズムの思想史-19世紀西洋における「所有する主体」の誕生と身体

    2018年  

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    フェティシズムの概念の思想史的な研究である本研究において、本年度は主として以下の2つの点で進展があった。①フェティシズムとは、所有に還元することができない物に対して、西洋文化が与えた名前である。この観点から「所有」の問題に着目する本研究は、所有の主体である法的主体が、いかに「擬制」として成立するのかの解明を目指した。それが「肉」から「紙」への生成変化のプロセスであるとの仮説のもと、戸籍の歴史を、人を紙に変化させる技術の歴史として考察し、論文を執筆した。②肉体を所有することの禁止と、肉体を食べることの禁止の解明を目指して、「カニバリズム」に注目し、分担執筆および編著書として2冊の書物を刊行した。

  • フェティシズムの思想史-19世紀西洋における「所有する主体」の誕生と身体

    2017年  

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    本研究は「フェティシズム」の概念を思想史的に解明することを目指す、三年間に渡る長期研究の一部である。この研究の方法論は主として以下の二点である。①イメージ人類学的観点による写真史の刷新の試み。②近代における「所有する主体」の成立と、それに伴う「身体」のステータスの変容の考察。初年度となる本年度は、上記の二点について、それぞれ以下のような研究実績をあげた。①「写真」を西洋におけるフェティシズムの回帰としてイメージ人類学的な観点から考察し、2017年12月に開かれた国際シンポジウムにおいて発表した。②近代の「身体」のステータスの変容について、「病気」を手がかりに考察し、雑誌論文として公刊した。

  • 実証主義的家族-ベルティヨン家と19世紀末フランスにおける実証主義の具体的展開

    2016年  

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    本研究は、①19世紀末フランスにおける実証主義の展開の思想史的研究、および②ベルティヨン家についての伝記的研究の二点を主たる目的とした、三年間の長期研究の一部である。最終年度となる本年度は、①に関して、身体を思想史的に捉え直す研究を、学術雑誌への連載の形で継続的に発表した。②に関して、アルフォンス・ベルティヨンが深く関わった写真技術についての歴史研究を手がかりに、西洋思想史の中に写真を位置づけ直す研究に着手した。「フェティシズム」概念を思想史的に研究することによって、①と②の研究を有機的に統合することが可能になるという着想を得て、今後の研究への土台を築くことができた。

  • 実証主義的家族―ベルティヨン家と19世紀末フランスにおける実証主義の具体的展開

    2015年  

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    本研究は、①19世紀末フランスにおける実証主義の展開の思想史的研究、および②ベルティヨン家についての伝記的研究の二点を主たる目的とした、三年間の長期研究の一部である。本年度は、①に関して、身体を思想史的に捉え直す研究を着手し、学術雑誌での連載を開始した。②に関して、ベルティヨンと深い関係のある写真技術の歴史について、調査と執筆を進めた。

  • 実証主義的家族―ベルティヨン家と19世紀末フランスにおける実証主義の具体的展開

    2014年  

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    本研究は、①19世紀末フランスにおける実証主義の展開の思想史的研究、および②ベルティヨン家についての伝記的研究の二点を主たる目的とした、三年間の長期研究の一部である。本年度は、①に関して、「動物と犯罪」、「所有物としての胎児」、「「書くこと」と「縫うこと」の間で」の三本の論文を完成させ、共著書『近代科学と芸術創造』の形で公刊した。また②に関しては、論文「火災写真論」を執筆し、公刊した。

  • ミシンの文化史―近代的テクノロジーによる衣服と身体の変容

    2013年  

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    Machineに由来するその名が端的に示しているように、ミシンは一般家庭で用いられるようになった機械としては最初期のものでありながら、19世紀フランスのバルテルミー・ティモニエの発明以来のその歴史は、あまり知られていない。本研究はこの歴史について、主に(1)医学と(2)文学との関係という観点から考察を行った。 (1)医学に関しては、ミシンの使用が女性の身体に与える悪影響をめぐる19世紀の医学的な議論の詳細をたどりなおし、この議論の最初期のものが、ガードナーというニューヨークの産婦人科医が、1860年に『アメリカン・メディカル・タイムズ』に投稿した記事であることを確認した。またこの議論がその後フランスにおいてたどった展開を、フランスの医学雑誌においてたどり直すとともに、この議論がやがて医学界を離れて大衆紙などにおいても扱われるようになるのを確認した。 (2)文学に関しては、主に19世紀フランスにおいて女性と文学とがいかなる関係にあったのかという観点から考察を進めた。19世紀において文学は、もっぱら男性によって担われており、女性作家の存在は極めて例外的だった。「書くこと」から遠ざけられていた女性たちに推奨されていたのは、「縫うこと」である。こうした文脈の中で登場したミシンは、非常に両義的な存在であった。すなわちミシンは当初、「お針子」として過酷な労働環境に置かれていた女性たちの立場を向上させるものとして考えられていたが、実際には女性たちを家庭に閉じ込める道具として機能した。こうした中、本研究は、女性たちが衣服をしつらえるために集ったミシン工房が、夢占いなどの実践の場でもあったという事実を手がかりに、それがシュールレアリスム運動を先取りするような、ある種の「文学空間」であった可能性を提示した。 上記(2)の観点を中心に、東京大学において行なわれたシンポジウム「科学知の詩学」において、「「書くこと」と「縫うこと」の間で――19世紀フランスにおけるミシン産業の発達と文学」と題する発表を行い、成果を報告した。

  • 19世紀フランスの医学言説における身体・テクノロジー・女性:ミシンの歴史を通して

    2012年  

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    本課題が明るみに出そうとするのは、19世紀にフランスで発明されたミシンが、経済や産業の領域を超えて、文化や医学など、広範な領域にまで影響を及ぼしていたということである。とりわけ本課題が着目するのは医学的な問題である。19世紀の医学文献においては、足踏みミシンの使用が女性労働者の身体に与える悪影響が取り上げられることがあったが、こうした議論はテクノロジーと身体の関係をめぐる今日的な問題(たとえばパソコンの使用による肩こりや疲れ目など)の嚆矢と言えるものであり、またそこにはジェンダー論や身体論、科学技術社会論などの課題が集約されていることがわかる。しかしながら、この分野についての先行研究は非常に乏しく、特にミシンの歴史そのものについても、日本はもちろん欧米でも決定的と言える研究は不在であるのが実情である。したがって本年度は、ミシンの発祥の地であるフランスの国立図書館において、ミシンの歴史に関する文献の調査を集中的に行った。19世紀に刊行されていたミシンの製造・販売業者向けの業界紙(Journal de la machine a coudre)など、当地でしか閲覧のできない多くの資料を参照することができ、有意義な調査を行うことができた。とりわけ大きな収穫だったのは、1878年に刊行されたブルボン夫人なる人物の手による戯曲『ミシン』を発見したことである。ミシンに夢中になる妻と、それに苦言を呈する夫を主人公とするこの戯曲は、当時のブルジョワ家庭においてミシンが果たしていた役割を垣間見せてくれる点で、非常に興味深いものである。この調査に先立って、「医者と女性とミシン――19世紀フランスの医学言説における機械と身体」と題する発表を行い、問題の射程を素描した(第五回早稲田表象・メディア学会)。調査の結果を含めた全体的な研究成果は、2013年度中に執筆を終え、2014年までに単著として刊行の予定である。

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