2024/05/02 更新

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マツヤマ アユコ
松山 鮎子
所属
教育・総合科学学術院 教育学部
職名
講師(テニュアトラック)
 

現在担当している科目

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特定課題制度(学内資金)

  • 戦後の「子供」像の変遷とその普及について-1950~1960年代の絵本の分析より-

    2011年  

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     本研究は、課題として1950年から1960年代に発行された幼児と母親向けの総合絵雑誌にあらわれる子ども像の分析を行った。以下、成果の概要について、(1)研究方法(2)資料収集(3)具体的な成果に分けて説明する。(1)研究方法 まず、実際の資料収集を開始する前に、当該分野とその周辺に関する先行研究の検討を行った。先行研究としては、主に家庭教育史と子ども像をテーマにした歴史社会学の研究成果を参照し、研究の具体的な枠組みづくりを行った。なお、戦後の家庭教育に関する歴史研究はその蓄積がごくわずかであったため、戦前の子ども像、家庭像を扱った論考を多く参考にした。また、児童文学研究の領域における絵本や玩具などの歴史研究を、具体的な分析対象の選定に役立てた。さらに、戦後教育史、戦後社会史、家族社会学などの研究成果も適宜参照しながら考察を進めた。 次に、分析対象について、計画時には、当時の「絵本」100冊を選定し課題の考察を行う予定であった。しかし、先行研究を検討する中で、この時期は現在のような1つの冊子に1作品の「絵本」よりも、物語や歌など様々なジャンルで誌面を構成した「絵雑誌」の方が、発行部数からみても多勢であったことが明らかとなった。また、そのような総合絵雑誌も当時は「絵本」として一般的に認知されていたことも指摘されている。加えて、一部の絵雑誌は幼稚園・保育園で原則として各家庭に購入を求めていた(直売方式)こともあり、いわゆる「絵本」以上に、より多くの児童が目にしていた可能性が高いと予想された。そのため、研究対象を絵雑誌に絞り、課題の分析を行った。 具体的な研究対象として、①『チャイルドブック』(1949年~現在・チャイルド本社)②『ひかりのくに』(1946年~現在・昭和出版)の2雑誌を取り上げ、合計冊数200冊の資料を収集した。分析には、中でも、誌面を構成する物語や歌などのジャンルのうち最も多かった「絵と文(詩)」からなる記事とその解説の記事(総数442)をデータとして用いた。本誌は月刊誌であったという特性上、「絵本」100冊を選定する初期の研究計画以上に、実際は多くのデータを収集することが可能となり、分析結果の正確さやデータの精度をより高くすることができた。(2)資料収集 データ収集は主に国立国会図書館、国際子ども図書館、東京子ども図書館、早稲田大学中央図書館などの所蔵資料を閲覧したことに加え、欠号巻は全国の古書店から購入した。それでも見つけられなかった巻(創刊号など)については、直接出版社に問い合わせて現物を閲覧した。特に、出版社では本社以外の絵雑誌の当時の出版状況を整理した同業者向けの資料集と、社史をお借りすることもでき、当時の絵雑誌の発行部数や読者層など文献では知りえなかった貴重なデータを得ることができた。(3)具体的な成果 今年度は、研究成果として以下の学会発表と論文の執筆を行った。①学会発表 松山鮎子「1950年代の絵雑誌にみる戦後の子ども観に関する一考察」日本教育学会第70回研究大会、2011年8月26日、於千葉大学②学会発表 松山鮎子「戦後の家庭における子ども像に関する一考察―1950~1960年代の絵雑誌分析より」日本社会教育学会第58回研究大会、2011年9月18日、於日本女子大学③論文 松山鮎子「1950年代の絵雑誌にみる戦後の子ども観に関する一考察」『日本教育学会第70回研究大会 発表要旨集』300~301ページ、2011年8月②について、2013年度日本社会教育学会紀要に研究成果を投稿するため、現在、論文執筆中である。