Updated on 2024/05/01

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NAKAKADO, Ryota
 
Affiliation
Faculty of Letters, Arts and Sciences, School of Humanities and Social Sciences
Job title
Associate Professor
 

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Internal Special Research Projects

  • パプアニューギニアにおけるトーテムと社会組織の研究

    2011  

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     報告者が在籍する會津八一記念博物館には、2010年度に埼玉県鶴ヶ島市から「オセアニア民族造形美術品」約1000点が寄贈された。中でも、セピック川流域の精霊像・神像・仮面類が多くを占めている。これらの資料には、鳥やヘビ、ワニ、魚などの表象が描かれているものもあれば、像自体が特別な精霊となっている場合もある。鶴ヶ島市で所有されていた当時は、美術工芸品としての扱いが主で、描かれる表象や精霊の意味・役割についてはあまり研究されてこなかった。そのため、2011年度特定課題研究では、セピック川流域におけるトーテム表象と社会組織の関係を探る為、現地において調査を行った。 2011年8月10日~24日の日程で、セピック川中流域のパリンベイ村、パグウィ村、セピック川上流域のアンブンティ村、スワガップ村を拠点に、各地に残る精霊堂(ハウス・タンバラン)を見学し、適宜聞き取り調査を行った。 セピック川中流域における精霊堂の柱や梁には、現代においても彫刻・彩色された鳥やヘビ、ワニ、魚、哺乳類などの表象を確認することができた。また、精霊堂内には、精霊像や仮面が所狭しと並んでいた。これらの描かれた表象は、すべてがトーテムとは限らない。セピック川中流域における社会組織として、①親族組織(クラン)、②通過儀礼に関わる半族(イニシエーショングループ)、③エイジグループの3種類が存在する。鳥やワニなどのトーテムは、精霊堂の柱に彫刻されるものが多く、柱はその精霊堂を利用する複数のクランによって所有が分かれている。一族の出自は、特定のトーテムからたどることができるとする神話が確認でき、トーテムは部族の象徴としての役割も強いとみられる。一方、像自体に彫刻・描出される精霊は、イニシエーショングループと密接な関係にあり、その造形を真似したり盗んだりすることは厳しく禁じられている。精霊は、成人の通過儀礼に関わる役割が多く、守護神としての位置づけが一般的である。 セピック川上流域では、精霊堂は収穫儀礼を行う場であり、中流域とは用途も形態も異なる。精霊堂の屋根裏に樹皮絵画を敷き詰める特徴があり、そこには精霊が描かれている。クラン毎にトーテムを有してはいるが、精霊堂の柱や梁に描かれる表象は、各クランが所有する精霊である場合が多く、トーテムが描かれることは少ない。精霊は、農耕儀礼と密接な関係を持っている。 精霊については両地域で儀礼と密接にかかわる点が確認できたが、トーテムについてはいまだ不明な部分が多い。両地域とも、1つのクランが10近い多くのトーテムを所有している。本地域における信仰を一口に「トーテミズム」として括ることはできず、今後も継続して調査をしていく必要がある。