2024/05/01 更新

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スズキ タカネ
鈴木 貴宇
所属
文学学術院 文学部
職名
教授
 

現在担当している科目

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特定課題制度(学内資金)

  • 文学的言説に現れたサラリーマン表象から見る近代日本の社会および文化状況

    2007年  

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     本研究の遂行にあたり、今年度は以下の2点に重点を置いて調査を行った。①戦前の日本における植民地都市・大連に残る住宅建築および街区の調査 ②雑誌「サラリーマン」(1928-1937)に掲載された記事の分析。以下、その概略と成果を記す。 ① 戦前の植民地都市を代表する大連は、日本の政治力が結集した国策会社・南満洲鉄道会社があったことから、社員に提供する住宅を多く建設した。またその生活様式は「モダン・ライフ」の典型とされ、恵まれたサラリーマン層の住まいとされる。その実状を調査するべく、今年度は大連出身者にして現在にも残る「アカシアの大連」というイメージを作り上げた詩人、清岡卓行の作品と、大連市内に残る旧満鉄社員住宅街との対応を試みた。その実践として、9月には4泊5日の調査にでかけ、多くの建築を写真データとして収集した。現在、大連には未曾有の建設ブームが訪れているため、かろうじて残存している戦前の建築も多くが近いうちに消滅することが予想される。国内において戦争の記憶の風化が言われて久しい昨今、植民地を有していた日本の近代化を多角的に調査することが望まれるだろう。 ②雑誌「サラリーマン」は、1920年代の日本資本主義成長期にあって、顕在化しつつあった都市勤労者を「サラリーマン」として可視化した特筆すべき雑誌である。雑誌記事の通読を経た結果、この雑誌の編集方針(経済記事、文化・風俗記事、ライトリーディングスとしての小説)は戦後の週刊誌ブームを牽引した「週刊新潮」(1956年創刊)との影響関係を指摘しうるのではないか、と考えている。このことを証明することにより、戦前のサラリーマンと戦後のサラリーマンにおける変容と連続を鮮明化することが可能となる。