2024/05/23 更新

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ハマスナ タカヒロ
浜砂 孝弘
所属
社会科学総合学術院 先端社会科学研究所
職名
助教
 

特定課題制度(学内資金)

  • 岸信介と戦後政治

    2023年  

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     本研究では、特に岸の戦前戦後を貫く政党政治観を検討することで、彼の保守合同及び安保改定に対する論理構造を析出することに努めた。当該研究費は主に、①研究上必要な機器の購入、②書籍購入・史料複写、③研究出張に活用した。この一環として、山口県田布施町郷土館所蔵の岸信介史料及び遺品や、山口県の地方紙『防長新聞』掲載記事等を渉猟した。本研究で得られた知見は、岸が戦前戦後を通底して、強力な政治指導態勢を構築すべく、「国民政治力結集」のための社会動員的な組織政党論を掲げていたということである。岸は戦前、革新官僚の旗手として戦時統制経済を所掌し、総力戦体制の一翼を担った。総力戦の遂行に「国民政治力結集」が不可欠とみなす岸は、自らも翼賛選挙に立候補するほか、戦争末期に護国同志会を結成するなど、政党を社会動員のための組織体として重視した。戦後の岸は、総力戦遂行から、反共防波堤の構築及び「独立の完成」へと目的は変わったが、そのための手段は戦前と同様だった。彼は、「国民政治力結集」のためには自主憲法制定が不可欠と考えた。そして、強力な政治指導態勢を構築すべく、草の根国民運動の組織として日本再建連盟を発足した。これが挫折すると、岸は保守合同に邁進するが、そこでも岸は、従来の幹部政党型ではなく、組織政党型の新党(自由民主党)結成を重視した。さらに、岸は戦後の強力な政治指導態勢として、自民党の組織政党化に加えて求心型二党制の構築をも重視した。その一環として、岸は安保改定によって、戦後政治の基軸をなす日米安保体制への国民の不満を解消して社会動員を図るとともに、自民党及び社会党右派の政治的正統性を固めて求心型二党制を維持しようとしたのである。本研究期間では、以上の知見を各種学会・研究会報告で公表した。あわせて、『安保改定と政党政治―岸信介と「独立の完成」―』(吉川弘文館、2024年11月出版予定)を執筆した。