2025/04/10 更新

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ヤギ ソウタ
八木 創太
所属
人間科学学術院 人間科学部
職名
講師(任期付)
 

現在担当している科目

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特定課題制度(学内資金)

  • 原始ペプチドからタンパク質への進化

    2024年  

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    前年度までに得られている結果、「遺伝子発現系に関与する4つの古代タンパク質構造の進化ネットワークの実験的再現」に関する論文を2024年7月18日に国際誌Nature communicationにて発表した。また、本成果は早稲田大学および理化学研究所の共同でプレスリリースもなされた(今は失われたタンパク質構造が解き明かす「RNAポリメラーゼ」と「リボソームタンパク質」の進化的繋がり)。上記の4つの古代タンパク質構造からなる進化ネットワークの更なる拡張を目指して、前年度までにSH3タンパク質とルブレドキシンの進化的関係性、さらにルブレドキシンが13残基の短いペプチドから再構成できることを発見した。2024年度では、13残基の短いペプチドと亜鉛イオンとの複合体形成のメカニズムの検証を進めた。円二色性(CD)分散計を用いて、ペプチドに亜鉛イオンを滴定していく過程でのCDスペクトルの変化を測定した。亜鉛イオンを含まない条件では、特定の構造を作らないランダムコイル特有のスペクトルが認められたが、亜鉛イオンを加えていくとCDスペクトルの変化が見られ二次構造形成が確認できた。また、ペプチドの濃度に対して亜鉛イオンの濃度がおよそ半分の時にこの構造変化が完了した。つまり、ランダムコイルのペプチドに亜鉛が結合すると特定の構造形成が行われ、ペプチドと亜鉛がおよそ2:1で複合体形成していることがわかった。また、溶液核磁気共鳴(NMR)でも同様のペプチドに対する亜鉛イオンの滴定実験を行ったところ、同様のペプチド:亜鉛=2:1の複合体形成が確認でき、複合体はしっかりとした3次構造を形成していることも確認できた。これらの結果は、前年度に決定したX線結晶構造解析の結果と一致する結果である。つまり、13残基の短いペプチドでも亜鉛イオンと結合することで、二両たいを形成し、3次構造を形成できることを見出した。

  • 生命の起源に関わる古代タンパク質の復元と機能解析

    2023年  

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    これまで、セントラルドグマに関わる古代βバレルタンパク質四種(DPBB、RIFT、OB、SH3)が共通の祖先タンパク質から進化してきた姉妹タンパク質であることを実験的に証明してきた。2023年度は、これらのβバレルタンパク質に機能があるかを検証した。DPBBはDNA結合能を持つことをこれまでに明らかにしていたため、他3種の再構成したタンパク質のDNAとの相互作用を解析した。その結果、RIFT構造を持つタンパク質では非常に強いDNA結合能力を確認することができた。また、OB構造を持つ一部の変異体も弱いDNA結合能力が認められた。つまり、これらの古代βバレル構造は核酸ポリマーとの結合能力を保持しながら、分岐進化してきた可能性がある。さらに、本研究では上記4種とは異なるβバレル構造との進化的関係性を検証し、古代タンパク質進化ネットワークの更なる解明にも取り組んだ。これまでに作成したSH3構造タンパク質は、代謝系酵素に保存される金属結合タンパク質ルブレドキシンとの類似性が確認できた。そこで、SH3―ルブレドキシン間の進化的関係性の検証を試みた。ルブレドキシンは2箇所の類似した金属結合配列モチーフにより、亜鉛などの金属イオンと結合する。この金属結合配列モチーフをSH3タンパク質に移植し、複数の変異体を作成したところ、一部の変異体は赤色を呈し、鉄原子との結合が示唆された。また、他の変異体のX線結晶構造解析の結果、ルブレドキシンと同様に亜鉛原子と結合したβバレル構造を持つことがわかった。つまり、SH3とルブレドキシンも少ない遺伝子変異で変換可能な姉妹タンパク質群であることが分かった。加えて、ルブレドキシンの金属結合配列モチーフを含む13残基のペプチドを合成し、X線結晶構造解析を行ったところ、ペプチドが二量体となってルブレドキシン様の構造を持つことが分かった。この結果は、13残基の短いペプチドが遺伝子重複と融合の結果ルブレドキシンに進化したことを強く示唆する。