Internal Special Research Projects
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2023
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2024年度の特定課題研究では、「他者性」を軸として「地平の融合」概念の再解釈を行なった。『真理と方法』において、理解を始動させる契機となるのは、理解されるべき事柄の他者性であり、この他者性の理解者への関与は、解釈学的条件のひとつとして重要な位置づけがなされている。しかし、理解を始動させるこの他者性がいかなる他者性であるのかについては、『真理と方法』において主題的には論じられていない。本研究では、このようなガダマーの解釈学における「他者性」が哲学一般において考えられるような絶対的な他者性とは異なる性質をもつものとして捉えられていた点を批判的に取り上げながら、 (1)伝承との関係、(2) 言語性の観点から明らかにした。 第一に、ガダマーにとっての他者性は、連続性のうちで際立ちながら「他であること(Anderssein)」として自らを示してくる異他性という性質をもつ。この異他性は、「伝承」として、理解者の先入観を刺激し、その者の先入観を試すようはたらきかける役割を担っている。その一方で、伝承には親近性という、もうひとつの性質が付与されており、この相反する二つの性質のあいだにこそ解釈学の真の場所があるとされる。伝承と理解者は対立関係ではなく、相互関係として捉えられており、それゆえに「際立てる」という仕方で伝承の異他性は現れてくる。したがって、ガダマーの解釈学における他者性は、完全に異なる地平に属する絶対的な他者性ではなく、連続性によって満たされているひとつの地平のうちで際立ってくる異他性であると考えられる。 第二に、ガダマーにとっての他者は「他者」として志向され、考察される対象ではなく、事柄に関する探究のなかで、言語を介して現れてくる共同探究者としての他者である。理解の向かう先はつねに「共通の事柄」であり、われわれはその事柄について語る言語のうちで他者と関係し、言語的なやりとりのなかではじめて、他者の他者性や個性に出会うことができる。これを可能にするのは、言語そのものの関係づけ結びつけるという機能であり、対話者たちを巻き込みながら主観と客観の区別を無効にする言語の動性である。したがって言語性の観点からも、ガダマーにとっての他者性は完全に分離されてはおらず、言語による結びつきの上で現れてくることを認めることができた。