特定課題制度(学内資金)
特定課題制度(学内資金)
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2025年
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細菌や菌類を含む土壌中の微生物は、土壌の質の改良や植物の生育促進などにおいて重要な役割を果たしており、その多くは、物質表面に付着してバイオフィルムと呼ばれる集合体を形成することにより、植物の生育促進等において効果的に機能を発揮することがわかっている。農業分野において土壌微生物の機能を効率よく利用するためにも、バイオフィルム形成が促進される環境を提供することが重要であるといえる。我々はこれまでの研究において、鉄(Ⅲ)イオンにより架橋させたアルギン酸ゲル(Fe-alginate)が土壌微生物の付着およびバイオフィルム形成に適した表面を呈することを明らかにした。そこで本研究は、微生物の付着基質となるFe-alginateを土壌中に添加することにより、植物の生育にどのような影響が及ぶかについて調べることを目的として行なった。本研究では農業分野への応用を見据え、ダイコン(Raphanus sativus)およびトマト(Solanum lycopersicum)をモデル植物に用いて室内栽培実験を行った。市販の培養土にビーズ状のFe-alginateを混合してからポリエチレン製のポットに入れ、ダイコンとトマトの種を播き、3週間栽培したのちの植物体の草丈や、乾燥重量(地上部・地下部)を測定した。また、土壌中の微生物バイオマスも解析した。その結果、土壌に Fe-alginate を施用した場合は、施用しない場合と比較して植物の生育が促進されることが示され、土壌中の微生物バイオマスも増加した。この傾向はトマトにおいてより顕著であった。ナス科のトマトはアブラナ科のダイコンよりも根圏微生物の感受性が強いことが知られているため、Fe-alginateが付着の足場となることで土壌微生物の機能が高まり、植物体の生育が促進されたことが示唆される。以上、本研究の結果から、Fe-alginateの農業分野での応用利用の可能性が示された。
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2024年
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地球温暖化対策の一つとして、生物資源を低酸素下で熱処理することで炭化させたバイオチャーを作出し、炭素を隔離する技術が注目されている。バイオチャーはそれ自身が分解されにくいことに加え、土壌に散布することで植物の成長を促進させる効果をもつなど、さまざまな側面からの炭素隔離効果が期待されている。我々は、海岸の漂着海藻や森林の落枝といった自然環境下で生じる有機物残渣からバイオチャーを作出し、それらを陸上生態系に投入した際の土壌圏への影響に着目して研究を進めている。バイオチャーには土壌微生物が定着・生息することが知られているが、その量についての評価は十分な検証がなされていない。そこで本研究は、種々のバイオチャーに付着する土壌微生物を、バイオチャーの表面特性の違いに着目しながら定量的に評価することを目的として行なった。本研究ではまず、異なる3種の材料(海藻、木材、もみ殻)から作出したバイオチャーの特性の違いを調べた。海藻バイオチャーは漂着アラメ個体から自作し、他のバイオチャーは市販のものを用いた。元素分析を行なった結果、海藻由来のバイオチャーは他材料に比べて窒素やミネラルを多く含む特徴を持つことが明らかとなった。次に、室内培養実験にて、バイオチャーを森林土壌中に添加した際に表面に付着する微生物についての解析を行なった。電子顕微鏡による観察からは、どのバイオチャーの表面にも土壌微生物が付着している様子が確認された。また、付着した微生物の量を、土壌試料に対して広く用いられているATP(アデノシン三リン酸)法を用いたバイオマスの測定により定量したところ、バイオチャーの炭化の指標であるH/C比が同程度の場合には、材料による差異が少ない傾向がみられた。以上、本研究の結果から、海藻、木材、もみ殻由来のバイオチャーは、いずれも土壌微生物の付着基質として効果的に機能することが定量的に示された。
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