Updated on 2024/04/29

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TAKEDA, Toshikatsu
 
Affiliation
Faculty of Letters, Arts and Sciences, School of Humanities and Social Sciences
Job title
Professor
 

Syllabus

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Internal Special Research Projects

  • ドイツ・ロマン派に於る「自然」概念の諸相、Fr.シュレーゲルを中心として

    2003  

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    「芸術は自然が自らを形成するように自分自身を有機化しなくてはならない」という、A.ヴィルヘルム・シュレーゲルの「ベルリン講義」での主張は、ドイツ・ロマン派の「芸術-自然論」において一つのパラディグマを成しているように思われる。事実、本研究が対象としたフリードリヒ・シュレーゲルとシェリングの芸術論においても、芸術作品それ自体がもつ有機的形成衝動にこそ、芸術と自然との連関が見出されているのである。それが古典的な自然模倣説とは意図的に一線を画しているという点で、両者の芸術論に親縁性があることは言うまでもないが、同じ「芸術-自然」をめぐる問題圏のなかで、ほぼ同時期(1802-05)にこの二人が提出した「象徴的絵画」の概念に決定的な差異があることは、これまで指摘されていない。例えば、規範的な「象徴的絵画」として両者はラファエロの『聖チェツィーリア』という同じ作品をあげているが、シェリングは描かれた聖女それ自体の形態にこそ自然の象徴を見出す。対してシュレーゲルの場合、この絵画の象徴性は聖女を取り巻く人物・事物の配置関係から捉えられており、聖女の身体はその関係性を構築するための記号にすぎない。つまりシェリングは、描かれた身体にこそ自然の有機的形成衝動を認めるのに対し、シュレーゲルの絵画論では自然の有機的形成は、諸記号の運動的連関によって象徴されるのである。この相違は、後代のロマン派芸術家たちによって積極的に芸術史の表舞台に登場することになる風景絵画について考察するとき、きわめて重要な観点を提供してくれるように思われる。