研究者詳細
2026/03/16 更新
基本情報
社会貢献活動・その他
他学部・他研究科等兼任情報
学内研究所・附属機関兼任歴
特定課題制度(学内資金)
理工学術院 大学院創造理工学研究科
理工学術院総合研究所 兼任研究員
酷暑環境下の適応技術の人体熱応答に基づく有効性評価
2025年
概要を見る
ファン付き衣服が人体の熱ストレス軽減に及ぼす生理的・心理学的効果を被験者実験により検討した。気温33℃の条件では、ファン付き衣服が汗の蒸発を促進することで体温上昇を効果的に抑制することが示された。相対湿度が上昇するにつれて、ファン付き衣服内の気流による冷却効果が明確に観察され、冷却ベストを併用することで、この効果はさらに顕著になった。気温38℃の条件では、ファン付き衣服と冷却ベストを組み合わせることで、冷却効果が著しく向上した。さらに、ファン付き衣服は、特に高湿度環境下において、温熱的快適性を高めた。これらの結果は、ファン付き衣服が内部の換気と蒸発を促進することで、熱負荷を軽減することを裏付けた。高温多湿環境下における水分摂取が体温調節反応に及ぼす影響を被験者実験により検討した。対象としたメカニズムは、冷水摂取による体内冷却と低張液摂取による血漿量維持の2つである。安静時および運動時の体幹温度、皮膚血流量、心拍数、発汗反応を測定した。大量の冷水摂取は運動開始時の体幹温度を低下させ、体温調節反応を遅延させた。効率係数を用いた簡略化された熱収支式を導入し、冷却効果を定量化し、既存の体温調節モデルへの組込を検討した。一方、低張液は脱水症状につながる可能性のある長時間運動中の体幹温度の上昇を抑制した。日々の暑熱曝露と季節順応との関係を調査した。周囲の気温を継続的にモニタリングし、35℃、50%RHの条件下で複数期間にわたり繰り返し運動熱負荷試験を実施した。体幹温度上昇には一貫した季節変動は見られなかったが、発汗量は順応期に増加し、減衰期以降は減少した。定期的な運動を行っていた被験者は、季節による差異が明確でなく、年間を通して耐暑性が維持されていることが示唆された。これらの結果は、季節順応を評価する際には、曝露レベルと個人特性の両方を考慮する必要があることを示唆している。
暑熱ストレスに適応した生活空間の構築
2024年
地球温暖化も相まって都市空間の暑熱化が進行しており,熱中症の発生が頻繁に報告されている.その適応策として,冷却材による局所冷却が考えられる.効果的な冷却部位として手足が注目されている.掌や足裏にはAVA(動静脈吻合)血管と呼ばれる放熱を促す特殊な血管がある.AVA血管のある部位を冷却することで冷えた血液を効率的に体内に循環させ,深部温度を下げる効果が期待される.本研究では,相転移温度が12℃の蓄冷材料と約-10℃の極低温保冷剤による低温冷却を用いて足裏への冷却を歩行運動後に行い,生理応答を被験者実験により明らかにした.暑熱環境下の運動後,AVA血管を介した足裏への局所冷却(PCM冷却,低温冷却)によって,深部温度の低下が認められた.発汗量の抑制も低温冷却では明確に確認できた.冷却により血管収縮が起こり,皮膚血流量の低下,心拍数の抑制が観測された.これらの冷却効果は冷却温度が低い低温冷却の方がPCM冷却より大きいことが明らかになった.暑さに対する人体の適応として暑熱順化に注目した.夏季の暑熱順化に必要な暑熱曝露条件を推定し,暑熱順化による生理機能の変化を検証した.暑熱順化は日常生活における暑熱曝露により達成されると考えられるため,被験者の日常生活における生活温を春から冬にかけて常時計測することにより,被験者の暑熱曝露履歴を推定した.被験者に対して定期的に運動ストレス実験を実施し,暑熱ストレスに対する生理反応を計測し,暑熱耐性の季節変化を評価した.運動習慣のない被験者では,安静時深部体温の上昇や運動時の発汗量の減少など,季節順応傾向が確認されたが,運動習慣のある被験者では,運動時の発汗量が増加するなど,短期的な暑熱順応傾向が見られた.生活温度28℃以上の環境に4時間以上滞在した日数は,季節順応を達成するための暑熱曝露条件の有効な指標となる可能性があることが示された.
暑熱ストレスに適応した都市空間の熱設計
2023年
本研究では,暑熱環境下の被験者実験で得られる知見を,人体の体温調節に関する生理応答に加えて,人体と外部環境間および体内での熱・物質輸送に関する物理応答の視点を融合して暑熱ストレスの機構を明確にすることを目的とした.暑熱適応策として,局所冷却が挙げられ, 冷却部位としてAVA(動静脈吻合)血管の冷却が可能な手足が注目されている.健康な男子学生を対象として人工気候室で被験者実験を実施した.PCM(相転移型蓄冷材料)による手足冷却を行う場合と行わない場合で2回実施した.トレッドミルで速度4.0 km/hの歩行運動を30分間, その後冷却を30分間, 最後に回復時間として30分間の座位安静とした.暑熱の基本条件として気温30℃, 相対湿度50%,高負荷条件として気温35℃, 相対湿度60%の2条件で実施した.冷却剤としては12℃(相変化温度)のPCMを両手足に4個使用した.生理要素として深部温度(直腸温), 皮膚血流量(上腕), 発汗量(体重変化量)などを測定した.高負荷条件ではPCMによる手足冷却によって深部温度上昇が抑制された.皮膚血流に関して,基本条件では冷刺激により血管が収縮し, 高負荷条件では環境による熱負荷が大きいため血管収縮しない結果が得られた.発汗量に関して, 高負荷条件では熱負荷が手足冷却によって軽減され,発汗量が減少した.人体と冷却剤において理想的な条件を設定し, その冷却量によって人体の温度変化を試算した.その結果は被験者実験で得られた深部温度低下量と概ね一致した.PCMによる手足冷却について, 人体熱モデル(JOS-3)を用いた検討を行った.被験者実験と同様の条件で計算を行った.高負荷条件は基本条件よりもAVA血管が十分に開口される状態である計算結果が得られた.着衣量が大きい場合や日射を受ける屋外の暑熱環境においては更なる冷却効果が期待される.