特定課題制度(学内資金)
特定課題制度(学内資金)
-
ミオシンXIによる細胞骨格を介した葉の表皮細胞の形態形成機構の解明
2024年
概要を見る
ミオシンXI-アクチン系は植物特有のダイナミックな細胞内輸送機構である原形質流動に関与することが知られている一方で、直接あるいは間接的に植物の姿勢制御や形態形成などさまざまな生理現象に関与することもわかってきている。ミオシン3重KO(xi-1 xi-2 xi-k)株ではオルガネラ運動の低下や植物体サイズの低下に加えて、表皮細胞の形状の複雑性が失われることがわかっている。また申請者らは表皮細胞の微小管配向の乱れを見出した。先行研究では表皮細胞の正常な形態形成には微小管配向が重要であることがわかっている。したがって3重KOの表現形から、ミオシンXIがアクチンフィラメントの動体に影響を及ぼすことで、微小管配向と表皮細胞の形態形成を制御している可能性がある。本申請では、ミオシン単独KO株、2重KO株の表皮細胞の形状を観察することで、3種類のミオシンXI遺伝子がそれぞれ表皮細胞の形態形成にどのような形で関与するのかを調べた。観察の結果、単独及び2重KO株の表皮細胞は野生型と比較して複雑性の変化は見られなかった。したがって3種類のミオシンXIは冗長的に表皮細胞の形態形成に関与すると考えられる。また、これまでミオシンXI3重KO株にミオシンXI遺伝子を導入した相補株を用いた、表現形の回復実験は行われてこなかった。本申請では微小管マーカーの導入されたミオシンXI3重KO株をバックグラウンドとして、ミオシンRFP:XI-K遺伝子を導入した株の作成を試みた。バックグラウンドの株に遺伝子導入を試みたところ、微小管マーカー遺伝子のサイレンシングが確認されたため、現在再度バックグラウンド株の作成を行っている。また作成した相補株にアクチンマーカーを導入して、両者の動体観察を行う予定であったが、継代を最小限にするためにアクチンマーカーは一過的に発現させることで観察を行う計画である。
-
ミオシンXI-F, XI-Kによる植物の姿勢維持機構(ストレートニング)の解明
2023年
概要を見る
モータータンパク質ミオシンXI-F, XI-Kがシロイヌナズナの姿勢制御機構に関与すると考えられているが、そのメカニズムの大部分は不明である。本申請ではミオシンXI-F, XI-Kに着目し、それらのタンパク質の細胞内機能と、それらの遺伝子に関するトランスジェニック植物の表現形に関する解析を行った。GFP: XI-FとRFP: XI-Kを同時に発現するシロイヌナズナを用いて、生きた細胞内におけるミオシンXI-F, XI-Kの局在・運動の観察を試みた。両者が同時に発現する中心柱の細胞は奥まった位置にあり、個々の細胞が細く断面積が少ないため、細胞内における具体的な構造を観察することができなかった。生きた細胞中でミオシンXI-F, XI-Kの観察を行うためのアプローチとして、次に培養細胞における一過的発現系を用いた。シロイヌナズナ培養細胞(Alex)において観察を行ったところ、具体的な細胞内構造に局在していると考えられるGFP: XI-F, GFP: XI-Kのシグナルを検出することができた。一方で長い距離を運動するミオシンのシグナルを捉えることは困難であった。そこでタバコの葉の表皮細胞における一過的発現系を用いて観察を行ったところ、GFP: XI-F, GFP: XI-Kのシグナルが運動する様子を捉えることに成功した。また広い面積での観察が可能になり両者の局在する細胞内構造の一部が明らかとなった。ミオシンXI-F, XI-Kが同時に発現する根の中心柱の細胞は姿勢制御機構において不可欠な機能を担っていると考えられる。具体的には中心柱のどの種類の細胞が重要であるか明らかにするために、細胞種特異的発現プロモーターによるミオシンXI-F/xi-f xi-k シロイヌナズナの作製と表現型解析を試みた。データベースを参照しプロモーターの選定が完了し、現在作製に着手している。