2024/12/21 更新

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ワカバヤシ マサヒロ
若林 正丈
所属
政治経済学術院
職名
名誉教授
学位
社会学博士 ( 東京大学 )

経歴

  • 2013年04月
    -
    継続中

    早稲田大学台湾研究所所長

  • 2010年04月
    -
    継続中

    早稲田大学政治経済学術院教授

  • 1996年04月
    -
    2010年03月

    東京大学大学院総合文化研究科教授

  • 1986年04月
    -
    1996年03月

    東京大学教養学部助教授

学歴

  • 1985年09月
    -
     

    東京大学大学院社会学研究科社会学博士  

  • 1974年03月
    -
     

    東京大学大学院社会学研究科国際関係論専修課程修士  

  • 1972年03月
    -
     

    東京大学教養学部卒  

委員歴

  • 1998年
    -
    2002年

    日本台湾学会  理事長

所属学協会

  •  
     
     

    アジア政経学会

  •  
     
     

    日本台湾学会

研究分野

  • 地域研究   台湾研究

研究キーワード

  • 台湾近現代政治史

  • 台湾研究

受賞

  • 樫山純三賞

    2009年   樫山奨学財団  

    受賞者: 若林 正丈

  • アジア・太平洋賞大賞

    2008年   アジア調査会  

    受賞者: 若林 正丈

  • サントリー学芸賞(政治・経済)

    1997年   サントリー文化財団  

    受賞者: 若林 正丈

  • 環太平洋学術研究助成

    1994年   大平正芳記念財団  

    受賞者: 若林 正丈

 

論文

  • 在諸帝國周緣活下去—臺灣史中的「邊境動力」與地域主體性

    若林 正丈

    師大台湾史學報   ( 9 ) 3 - 52  2016年  [査読有り]

     概要を見る

    「諸帝国の周縁を生き抜く 台湾史における辺境ダイナミズムと地域主体性」(川喜田敦子・西芳美編『歴史としてのレジリエンス————戦争・独立・災害』)の許佩賢教授による中文訳

  • 台湾の『渦巻選挙』と非承認国家民主体制の苦悩

    若林 正丈

    『ワセダアジアレビュー』   ( 19 ) 16 - 19  2016年  [査読有り]

  • 『辺境東アジア』政治のアカウンタビリティー問題 2014年の台湾、香港、沖縄

    若林 正丈

    『国際問題』(日本国際問題研究所)   ( 643 ) 1 - 6  2015年07月  [査読有り]

  • 葉榮鐘的「述史」之志

    若林 正丈

    『台湾史研究』(中央研究院台湾史研究所)   17 ( 4 ) 81 - 112  2011年  [査読有り]

  • 「矢内原忠雄と植民地台湾人————植民地自治運動とその戦後」

    若林 正丈

    『ODYSSEUS(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究科紀要)』   4   7 - 33  2010年03月

  • 「台湾ナショナリズムと『忘れ得ぬ他者』」

    若林 正丈

    思想(岩波書店)   ( 957 ) 108 - 125  2004年01月

  • “The Imperial Visit of the Crown Prince to Taiwan in 1923: How the Japanese Colonial Authority Managed the Tou

    若林 正丈

    Journal of the Japan-Netherlands Institute   2   235 - 245  1990年

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書籍等出版物

  • 「馬英九政権8年の位置————中華民国台湾化における国家再編・国民再編の跛行性」

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    晃洋書房  2018年

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    松田康博・清水麗編『現代台湾の政治経済と中台関係』所収。

  • 「諸帝国の周縁を生き抜く 台湾史における辺境ダイナミズムと地域主体性」

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    京都大学出版会  2016年

     概要を見る

    川喜田敦子・西芳美編『歴史としてのレジリエンス————戦争・独立・災害』所収

  • 『現代台湾政治を読み解く』

    若林 正丈( 担当: 編集)

    研文出版  2014年

     概要を見る

    早稲田大学台湾研究所連続ワークショップの講演と討論をまとめたもの。

  • 「中華民国台湾化の展開 台湾における七二年体制下の政治構造変動」

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    岩波書店  2011年

     概要を見る

    『岩波講座 東アジア近現代史 第9巻』所収。

  • 『台湾の政治 中華民国台湾化の戦後史』

    若林 正丈( 担当: 単著)

    東京大学出版会  2008年

     概要を見る

    台湾にて中文訳:洪郁如・陳培豊等譯『戦後台湾政治史 中華民国台湾化的歴程』(台北:台大出版中心、2014年)。本書に、2008年度アジア・太平洋賞大賞および2009年度樫山純三賞授与さる。

  • A perspective on studies of Taiwanese political history: Reconsidering the postwar Japanese historiography of Japenese colonial rule in Taiwan

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    New York:Columbia University Press  2006年

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    a chapter in Liao Ping-hui and David Der-wei Wang eds., Taiwan under Japanese cololial rule, 1895-1945: history, culture, memory,translated by Tan.Uiti

  • Taiwanese Nationalism and the ‘Unforgettable Other

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    New York: M.E. Sharp.  2006年

     概要を見る

    A chapter in Edward Friedman ed., China’s Rise, Taiwan’s Dilemmas and International Peace

  • 「台湾の近現代と二つの『国語』」

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    東京大学出版会  2005年

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    村田雄二郎・C.ラマール編『漢字圏の近代 ことばと国家』所収。

  • 中台関係五十年史

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    岩波書店  2001年

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    岡部達味編『中国をめぐる国際環境』所収

  • 「台湾海峡の変容----『アメリカの平和』のディレンマ----」

    若林 正丈( 担当: 分担執筆)

    岩波書店  2000年

     概要を見る

    『岩波講座 世界歴史 27』所収

  • 『台湾 分裂国家と民主化』

    若林 正丈( 担当: 単著)

    東京大学出版会  1992年

     概要を見る

    台湾での中文訳:許佩賢・洪金珠譯『台湾 分裂国家與民主化』(台北;播種者出版、1994年、2009年再版)。本書にて、1994年度大平正芳記念財団環太平洋学術研究助成、および1997年度サントリー学芸賞(政治・経済分野)受賞

  • 『台湾抗日運動史研究 増訂版』

    若林 正丈( 担当: 単著)

    研文出版 

     概要を見る

    1983年刊のものにその後の台湾近現代史関係論文を増補したもの。2007年台湾で中文訳刊行:台湾史日文史料典籍研読会譯『台湾抗日運動史研究』(台北;播種者出版)。

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共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 繁栄と自立のディレンマ - ポスト民主化台湾の国際政治経済学

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2010年
    -
    2012年
     

    松田 康博, 若林 正丈, 田中 明彦, 高原 明生, 小笠原 欣幸, 松本 充豊, 佐藤 幸人

     概要を見る

    本研究は馬英九総統(台湾)と胡錦濤主席(中国)時期の中台関係の主要な政治・経済トレンドを明らかにした。馬総統が中国大陸との関係を安定化させたことにより、中台の経済関係は急速に緊密化し、台湾の対中国経済依存度は急上昇した。他方で、台湾における台湾人アイデンティティは、中台の接触が増大したことでかえって強化された。尖閣諸島問題に関しても、馬英九政権は中国ではなく、日本との協力関係樹立を選択した。これらことは、分裂国家における経済的な相互依存が、必ずしも政治的な統合をもたらさない可能性を示唆している。

  • 魂の脱植民地化~日本とその周辺諸国のポストコロニアル状況を解消するための歴史学~

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2007年
    -
    2008年
     

    安冨 歩, 長崎 暢子, 福井 康太, 若林 正丈, 金 早雪, 鄭 雅英, 三谷 博, 北田 暁大, 深尾 葉子, 久末 亮一, 本條 晴一郎, 與那覇 潤, 千葉 泉, 若林 正丈, 金 早雪, 松重 充浩, 深尾 葉子, 長崎 暢子

     概要を見る

    「魂」という学問で取り扱うことを忌避されてきた概念に、正当な地位を与えることができた。それは人間の創発を支える暗黙の次元に属する身体の作動であり、本来的に解明しえぬ(する必要のない) ものである。学問はそれを喜びをもって受け入れ、尊重し、その作動を抑圧するものを解明し、除去する役割を果たせばよい。そのような学問は、抽象的空間で展開する論理や実証ではなく、「私」自身を含む具体的な歴史的時空のなかで展開される合理的思考である。このような生きるための思考を通じた「私」の成長のみが、学問的客観性を保証する。
    この観点に立つことで我々は、日本とその周辺諸国におけるポスト・コロニアル状況の打破のためには、人々の魂の叫び声に耳を傾け、それを苦しませている「悪魔」を如何に打破するか、という方向で考えるべきであることを理解した。謝罪も反論も、魂に響くものでなければ、意味がなく、逆に魂に響くものであれば、戦争と直接の関係がなくても構わない。
    たとえば四川大地震において日本の救助隊が「老百姓」の母子の遺体に捧げた黙祷や、「なでしこジャパン」がブーイングを繰り返す観衆に対して掲げた「ARIGATO 謝謝 CHINA」という横断幕などが、その例である。我々の協力者の大野のり子氏は、山西省の三光作戦の村に三年にわたって住み込み、老人のお葬式用の写真を撮ってあげる代わりに、当時の話の聞き取りをさせてもらうという活動を行い、それをまとめて『記憶にであう--中国黄土高原 紅棗(なつめ) がみのる村から』(未来社) という書物を出版したが、このような研究こそが、真に意味のある歴史学であるということになる。

  • 漢字文化圏の「近代」に関する総合的研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2005年
    -
    2008年
     

    刈間 文俊, 高橋 満, 古田 元夫, 若林 正丈, 黒住 真, 代田 智明, 深川 由紀子, 生越 直樹, クリスティーン ラマール, 高見澤 磨, 楊 凱栄, 谷垣 真理子, 伊藤 徳也, 瀬地山 角, 田原 史起, 有田 伸, 岩月 純一, 若林 正丈, 村田 雄二郎, クリスティーン ラマール, 生越 直樹, 伊藤 徳也, 代田 智明, 瀬地山 角

     概要を見る

    中国では、漢字が、簡略化や教育によって、血肉化され、作家達も、前近代的なものを凝視し続けた.戦前の日中関係では、日本の漢学者と漢字紙が大きな役割を果たした.戦後韓国は、漢字を駆逐する一方、伝統的な同姓不婚制度を再構築させ、台湾は、漢字を簡略化せず、80 年代以降には、多文化主義的な社会統合理念を形成した.それに対して、中国大陸では今や、漢字文化からも消費文化からも疎遠な農村が、自律と国家による制御の間で揺れ動いている.本研究は以上を実証的に解明した.

  • 脱植民地化諸地域における政治と思想日本植民地主義と西欧植民地主義の比較と国際環境

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(A))

    研究期間:

    2003年
    -
    2006年
     

    若林 正丈, 木幡 洋一, 古田 元夫, 黒住 真, 恒川 恵市, 駒込 武, 森山 工

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    本研究の主要な成果は、西欧の事例との比較と国際環境との関連において考察することにより、東アジアの脱植民地化に関して、新たな知見が得られたことである。主なものは次のように要約できる。
    第一に、東アジアの脱植民地化は、日本植民地帝国の敗戦から直接に帰結したことによって、また脱植民地化の初期に東西冷戦が急速にこの地域に波及したことによって、次のような特徴を有した。
    (1)脱帝国化した日本と脱植民地化した旧植民地との新たな国家間関係の樹立は、米国の冷戦戦略上の考慮に強く影響された。
    (2)旧植民地において戦後秩序の最初の担い手となったのは、植民地支配を実際に経験した民衆を代表する勢力ではなく、対日戦争勝利者を代表する占領者であったため、これらの地域における脱植民地化は、多かれ少なかれこれら占領者により「代行された」側面をもった。
    (3)こうした事情のため、旧植民地における植民地的遺制の解決とそれを通じた日本と旧植民地地域住民との和解は、不徹底な部分を残した。
    第二に、冷戦終結後、東アジアでもグローバル化の波及による各国の経済的相互依存が深まる一方で、相互に不寛容な大衆ナショナリズムの高まりの兆しがある。これには、前記の脱植民地化の不徹底が影響しているものと考えられる。このため、東アジア諸民族関係においては、「魂の脱植民地化」とも称すべき心理過程の研究が必要となっており、この点で、ガンディーやファノンといった西欧植民地主義と対峙してきた思想家の業績が再検討される必要がある。

  • 民主主義体制定着の条件に関する比較研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2002年
    -
    2004年
     

    恒川 惠市, 若林 正丈, 中井 和夫, 遠藤 貢, 浅見 靖仁, 大西 裕

     概要を見る

    本研究は、「民主主義体制の長期的持続を可能にする最も基本的な要因は、長期にわたる紛争や抑圧を経験する中で、相争う人々が、民主主義的な手続きを(結果を保障しないという意味で不確実性を含むにも関わらず)遵守することの重要性や不可避性を学習することである」との仮説を提出した。同時に、地域や国による学習の困難さ・容易さを左右する要因として、構造的要因(国内社会構造、国際構造)と制度的要因も考慮に入れることにした。構造的・制度的コンテクストの中で進む紛争・抑圧の過程と、その中で形成される民主主義的規範を、民主主義体制持続の条件として最重要視するという意味で、この理論枠組みは「構造・構成主義アプローチ」と呼びうる。個別地域・国の経験に関してチリとアルゼンティンの事例研究によれば、紛争による社会的規範の変化という側面は確かに見られるが、その基盤として、社会構造の変化による左派の動員能力の低下という構造要因が重要である。民主化が不十分なまま続いているアフリカの事例は、エスニックな対立と統合的行政能力の欠如が相互に強めあう悪循環に陥っていることを示しており、やはり構造・制度の制約が重要である。東南アジア諸国の事例は、紛争経験そのものよりも、紛争経験の記憶や解釈(やその変化)が民主主義体制の維持や崩壊に影響を与えることを示している。ウクライナの場合、2004年の選挙騒動自体が民主化プロセスの一部であり、紛争がいっそうの民主化を促した例と見ることができる。他方韓国の場合は、構造的要因よりも権威主義派エリートによる抑圧と寛容のコスト計算が重視される。構成主義のいう「規範」ではなく、エリートの「合理的選択」を強調する見方である。台湾の事例研究では、移行については韓国と同様エリートの合理的選択があったとされるが、その後活性化したエスニック政治の中で民主主義が規範化されつつある可能性も指摘されている。

  • 漢字文化圏の言語と「近代」に関する総合的研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(C))

    研究期間:

    2000年
    -
    2003年
     

    刈間 文俊, 楊 凱栄, 代田 智明, 若林 正大, ラマール クリスティーン, 村田 雄二郎, 吉川 雅之, 伊藤 徳也, 生越 直樹, 岩月 純一, 瀬地山 角

     概要を見る

    中国において、清雍正帝期に、福建省で正〓書院が設立され,官話教育が展開されたが、それは近代的な意味での言語の標準化・規範化ではなかった。19世紀末から20世紀初頭にかけて出てきた国語運動は近代特有のものと言える。近代国家とともに生まれそれを支えたのは、国語national languageだけではなく、古典文明批判によって成立した近代文学も、国民国家形成に参与した。古典的な文学形式からの離脱は、簡明に遂行されたわけではなく、英語語法や欧州近代文学の語りを参照した欧化と、北方方言の口語を参照した口語化を主流としながらも、古語や方言の導入などを伴っていた。国語としての現代中国語も、形成の過程で、北方方言に従来あったとは考えられない語法が、南方方言から導入されたと考えられる。漢字以外の文字が混在しない中国語においても、語の文法化という現象が常に漢字の表意性を無視して働くことも、本研究の文脈では注目に値する。広東語における有声無字の周辺韻母の承認をめぐる混乱あるいは矛盾は、漢字と非漢字、さらには国語と方言との間の矛盾につながっていくものであろう。近年中国に返還された香港では、中学以上は原則母語教育が実施され、外国語としての「中国語標準語」教育がなされるようになった。広東語に対応するような香港の地域主義は「ナショナリズム」と呼べるようなものではないが、台湾においては、国語に対する台湾語の独立性は社会的にゆるぎないものとなっており、それが直接的に台湾ナショナリズムと結びついている。しかし、いかに台湾ナショナリズムが沸騰し、台湾社会が多文化主義的様相を強めても、台湾文化が漢字と決別しようとする気配はみえない。韓国や特にベトナムにおいては、他の東アジア諸国に比べてより強く、国語から漢字が排除されている。漢字文化圏の言語の近代は実に多様である。

  • 中華世界の求心力と遠心力:周辺地域の民族的アイデンティティをめぐる研究

    科学研究費助成事業(横浜市立大学)  科学研究費助成事業(重点領域研究)

    研究期間:

    1996年
    -
    1998年
     

    毛里 和子, 横山 廣子, 中見 立夫, 若林 正丈, 新免 康

     概要を見る

    研究分担者5名、公募研究者2名、研究協力者5名が「中華世界の求心力と遠心力」をめぐってそれぞれの専門領域に応じて研究活動を進めた。合計19回の研究会では、領域研究の他の研究班(政治班・歴史班・アジア太平洋班)と合同研究会を行い、学際的研究を進めた。領域研究の最終研究集会では、「現代中国とエスニック・グループ」セッションを主宰し、中国の国民形成について領域研究全メンバーの認識を深めた。
    3年間の共同研究を通じて次のような共通の認識が得られた。(1)現代中国50年間、中国のマイノリティ政策は文化的・地方的自治のみを与えるものでその面で構造的変化はない。但し昨今のムスリムやチベット人のエスノ・ナショナルな動きはこうした基本構造に変容を迫っている。(2)民族問題そのものは50年代から90年代に質的な変容が見られる。50年代は領域統合と経済統合、60-70年代は政治統合の強行に対する民族的マイノリティの側の抵抗があったが、80年代後半から民族問題は、民主主義、国際問題へとシフトしてきている。(3)あるエスニック・グループのアイデンティティは原初的にあるものではなく、可変的で相対的でまた多層的である。たとえばチベット・アイデンティティはむしろ中央権力の政治統合・経済統合の強行につれて芽生えてきた。(4)だが中国-台湾関係は80年代後半以後、一つの正統性を奪い合うものから、台湾住民の自決および両者の共存の問題へと明らかに構造的変化が生じている。

  • 現代中国の国民統合:周辺地域のエスニック諸集団に関する学術調査

    科学研究費助成事業(横浜市立大学)  科学研究費助成事業(国際学術研究)

    研究期間:

    1996年
     
     
     

    毛里 和子, 新免 康, 横山 廣子, 中見 立夫, 若林 正丈, 西村 成雄

     概要を見る

    1.広大な周縁地域に55の少数民族を抱え、台湾・香港など異質な政治共同体を統合しようとしている中国は、90年代からとみに遠心力が強くなっている。国民統合という観点からすれば一種のアイデンティティの危機である。今回の学術調査は、その周縁地域、とくに西の新疆地区および西南の雲南地区の民族状況、および隣接し、同胞民族を共有しているモンゴルとカザフスタンで民族状況や中国との関係を調べることにあった。
    2.学術調査は3班に分かれて行われた。第一班5名は、8-9月にかけて、モンゴルのウランバートル、新疆ウルムチ市、カシュガル地区、カザフスタンのアルマトィで研究者や政府機関の人員との意見交換と懇談、現地の調査(言語教育、宗教活動、家計調査、市場調査など)を行った。第二班1名は1月にモンゴルのウランバートルで中国-モンゴル間の文化と人の交流の調査、モンゴル-中国関係の文献収集を行い、第三班1名は中国西南部雲南省で白族など少数民族の生活・宗教・経済・観光事業などの実態を調査した。
    3.3つの地域・国家で「三様のナショナリズム」が観察できたことは意味深い。民主化、「第三の隣人」とモンゴル国のルーツ探しが新生モンゴルの国民的課題であり、落ち着いたナショナリズムと自信が見て取れた。カザフスタンでは、経済の停滞、テクノクラート不足、権威主義的政治などのため、独立したばかりにしてはナショナリズムは活気づいていない。他方、中国のウイグル人地区=カシュガルでは、激しい社会変動と市場経済化の中で、ナショナルなもの、固有の文化を主張したくてもできないウイグル人の鬱屈したナショナリズムが感じられた。中央政府の民族地区に対す強いコントロールもその背景にある。

  • 中国の政治経済改革に関する総合研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(総合研究(A))

    研究期間:

    1992年
    -
    1994年
     

    石井 明, 木間 正道, 田中 恭子, 高木 誠一郎, 若林 正丈, 平野 健一郎, 中川 昌郎, 田中 明彦

     概要を見る

    我々は中国のポスト毛沢東期における政治改革と開放政策について研究を進めた。改革はもともとは農業の分野で始まり、人民公社の解体、生産責任制システムの導入が行われた。その後、改革は都市の経済活動の分野に広げられた。その結果、中国人の生活水準は向上した。しかし、経済改革と開放政策の成功により、別の課題、すなわち政治改革と民主化の問題が浮上してきた。
    中国人の中には政治改革と民主化を「第5の近代化」と呼ぶものがいる。中国の学生と知識人は「第5の近代化」という考え方を支持した。政治改革の課題は必ずしも中国共産党の指導者によって無視されたわけではなかったが、彼らによって支持された活動は、「行政改革」の分野、すなわち過度の権力集中、党と政府の機能の分離、機構の合理化、人事任用制度の改革に制限されていた。これらは経済改革を推進するための手段と見なされていた。中国の指導者の中には、民主化を共産党の統治に対する潜在的な脅威とみなすものもいる。しかし、1989年6月におこった天安門事件の後も中国の指導者は、改革と開放政策は継続されるべきだと主張している。
    もはや中国は改革と開放政策の時計を後戻りさせる立場にはない。それは、これらの政策が中国の民衆によって強く支持されているからである。そして、開放政策の結果として中国は国際的なコミュニティのネットワークに入った。もはや中国は「自力更正」政策に固執する国ではなくなっている。中国経済はグローバルな経済とのつながりなくしてテイクオフすることは出来ない。この見解は中国の指導者によっても共有されている。我々はこのような点について知見を深めることができた。

  • アジアの宗教・文化圏における国民統合の比較史的研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(一般研究(B))

    研究期間:

    1989年
    -
    1990年
     

    長崎 暢子, 並木 頼寿, 若林 正丈, 古田 元夫, 山内 昌之, 丸山 松幸

     概要を見る

    本研究の成果として、第一に、学術的に相互交流が活発化している現状を利用して、日本に訪問中のアジア諸地域の研究者を招き、連続して公開研究会を開催して、情報の収集と研究視角の再検討を行った。アジア諸地域の研究者の問題意識に広く触れることができたことにより、大きな成果が得られた。
    第二に、研究対象地域における現実のさまざまな民族対立、宗教的粉争、地域的な分離主義の動きなどに刺激されつつ、それぞれの宗教・文化圏における問題の在り方を比較、対照することができた。各地域に即していえば、東アジア(儒教文化圏)では、中国について、国民統合と歴史的な統一帝国の観念の関係、中央政府と地方の独自性の関係などについて検討し、台湾について、新たなアイデンティティの形成過程を検討した。中央アジア・中東(イスラム文化圏)では、社会主義的中央政府と民族宗教地域の関係、宗教的小数派に由来する政治的社会的問題などについて検討した。南アジア(ヒンドゥ-文化圏)については、ヒンドゥ-、イスラムの二大宗教の対立と融和の実態を、域内諸国の分離独立過程に即して検討した。
    第三に、上述の各地域に共通して取り上げられるべき問題として、近代的な国民国家の体制が、民族的な集団や宗教的集団との間に生じている予盾や軋轢について検討した。また同一のエスニシティに属することが国家の側からは強調されるような地域における政治的特殊性や経済的格差の拡大によるアイデンティティの分裂の問題を明らかにした。この問題は、ナショナリズムとエスニシティの相互連関をどのようにとらえるかという問題と関連して、今後の研究の進展に展望を与えるものである。
    課題の大きさに比べると、本研究の二年間の成果は必ずしも充分なものではないが、今後の研究への一定の寄与を期して「研究成果報告書」を作成した。

  • 東アジアの発展モデルII:政治と国際関係

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(重点領域研究)

  • 東アジアの発展モデルII:政治と国際関係

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(重点領域研究)

  • 東アジアの発展モデルII:政治と国際関係

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(重点領域研究)

  • 近現代アジアにおける地域形成と言語文化に関する比較史的研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

  • 地域研究における『地域』の可塑性と重層性に関する比較研究

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

  • 戦後日本における中国研究と中国認識

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

  • 台湾政治における反対党の誕生:国際体制・孤立国家・市民社会とナショナリズム

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

  • 和解なき安定―民主成熟期台湾の国際政治経済学―

    科学研究費助成事業(東京大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

  • 台湾政治体制移行期の民主進歩党:「改革型」民主化とナショナリズムの相克

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

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特別研究期間制度(学内資金)

  • および台湾の対中関係と社会的アカウンタビリティーの研究

    2016年03月
    -
    2018年02月

    台湾   台湾大学

特定課題制度(学内資金)

  • 台湾政治におけるオポジションの形成に関する基礎的研究

    2010年  

     概要を見る

     次のような作業を行った。(1)中国民主党結成と挫折の過程(1950年代末~60年代初め)、「美麗島」集団の「党名の無い党」の結成と挫折(1979年)、民進党結成過程(1983-86年)に関する先行研究の収集と初歩的吟味を行った。これにより、台湾のオポジション形成研究にとっていわゆる「党外雑誌」と「党外書籍」が、オポジション自身の政治的発信の手段として重要であることが判明したので、(2)台北の台湾大学図書館で電子化されている前者の入手を開始し、『大学雑誌』、『台湾政論』、『這一代』、『美麗島』、『深耕』を入手した。(3)後者については、台湾の協力者を通じて一部入手を開始するとともに、すでに手元に収集しているものについての書誌情報の電子化を行った。(4)初歩的吟味を行った先行研究の参考文献リストを利用して、(3)の書誌情報を加えて、「台湾政治におけるオポジション形成研究文献目録(初稿)」を作成した。 これらの成果は、同様のテーマで第29回財団法人桜田会「政治研究助成」(2010年2月から1年)を獲得したので、来年度も引き続き研究を進め、次項のような初歩的研究成果の発表を目指す。