まず、2001年12月1日に行われた著作権法学会のシンポジュームで「サービス・プロバイダーの法的地位と責任ー国際私法上の課題 」を報告し、討論に参加した。このシンポジュームは、その開催の直前に成立した「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」をめぐる法律問題を著作権法の立場から総合的に検討するものであり、立法を担当した総務庁担当者、法律実務を担当する弁護士のほか、3名の著作権法学会に所属する研究者が報告者となり、丸1日を費やして報告・討論たものである。わたくしは、国際私法の一般原則から、サービス・プロバイダーの営業所が日本国内にある場合にのみ本法が適用される、という国会における担当者の説明を批判的に分析するとともに、本法の内容は、サービス・プロバイダーと顧客間のように契約的性質を有する法律関係と権利を侵害される第三者とサービス・プロバイダー間のように不法行為的性質を有する法律関係が含まれることを指摘し、それぞれ契約準拠法に関する法例7条、不法行為準拠法に関する法例11条がどのように解釈、適用されるべきかを論じた。とりわけ、不法行為地の決定に関する従来の多数説が支持する二分説的類型論に代えて、三分説的類型論がこの法律の不法行為的な法律関係の準拠法決定につき最も妥当な結果を生み出すであろうことを主張した。この報告原稿は、近く著作権法学会の機関誌である著作権研究28号に掲載されることになっている。 つぎに、日本学術会議が編集している学術の動向2002年3月号に「データベースの法的保護に関する若干の問題」を掲載した(70から74頁)。第17期の情報学研究連絡委員会が中心となって提案され、「データベースに関して提案されている独自の権利(sui generis right)についての見解」という声明として学術会議総会で採択された内容について、まず、独自の権利がEUなどでなぜ問題とされるようになったのかを明らかにしたうえで、国際知的財産法の観点から声明の持っている問題点を論じたものである。