It is not rare that philosophical thought owes its development to a controversy between different schools or sects within a school. Since the controversy is carried out by means of words, it is essential that the proponent conveys the meaning of words in such a way that the opponent can understand what the former intends to prove. There are, however, some cases in which the proponent, making use of an ambiguity in the meaning of the words, insists by force that his thesis(paksa) has been proved. In order to negate this kind of fallacious proof one needs to examine the thesis, namely what conditions a proposition must fulfilll in order to be a thesis that can be proved. In Buddhist logic, Dignaga(ca. 480-540 A.D.) discusses this point and Dharmakirti(ca. 600-660 A.D.) explains it in detail in his description of the definition of the thesis. In this paper I have handled a condition of the thesis-a thesis is that which is intended by the proponent himself. In those days the Samkhyas, Carvakas and so on formulated theses in an ambiguous way so that they could prove any thesis which they wanted to prove. Although one could understand intuitively that these proofs were fallacious, one could not prove their fallacy because of the complicated contents of the proofs. Therefore they were regarded as one of the difficult problems to be solved. On account of the above-mentioned condition for the thesis Dharmakirti explains the faults of the theses in the case in which they, taking full advantage of an ambiguous statement, assume that a logical derivation of the consequence is formally possible. In this study, on the basis of the decipherment of the relevant passages in a recently found Sanskrit manuscript of Dharmakirti's Pramanaviniscaya I have analyzed Dharmakirti's explanation and made clear how the Buddhist logicians constructed a basis for a sound discussion. Further, as an application of the Buddhist logical way of thinking to the analysis of Buddhist tenets I have analyzed Dharmakirti's theory of the possibility for the practice of compassion.

特定領域研究及び国際共同研究「新しい論理学の展開」に向けた企画・調査を行った。本企画・調査研究班は、論理哲学者達だけでなく、これに認知言語学者、論理学史学者、情報科学者等も含めて形成されている。特に本年度は国際共同研究の基礎となるネットワーク作りを発展させた。
(1)企画にあたっては英米系論理哲学の分野だけでなく、認知科学・情報科学・AIなどとの学際的分野や、西洋・東洋論理哲学史や現象学的論理学をはじめ広い意味での論理の哲学的解明に関わる分野も視野に入れて進めた。又、我々哲学系論理学グループが中心となり、これに情報科学系AI及び認知科学系、数学基礎論系研究者達を交えてオントロジー工学、現象学的論理学、線形論理学等の分野を中心に学際的企画研究を進めた。
(2)哲学系論理学グループを中心に欧州及び北米の研究グループとの協議を進め、欧州グループおよび北米グループとも協力して特定領域研究を立ち上げるための調査を進めた。なお、欧米の企画グループGirard及びJoinet及びAbrusciとは欧州の論理哲学界との研究協力の企画を行った。Benoistらとは各々のグループと現象学的論理学の共同研究企画を行った。又北米の論理学者達との間でも調査を進め、特にScedrov.Mitchell等の北米の重要な論理学グループが来日して協議を行った。

仏教論理学派の学匠である法称(ca.600-660A.D.)は、主著『知識論決択』において、陳那(ca.480-540A.D)の論理学をより合理的な視点から解釈し、新たな見解をも提示している。今年度の研究では、法称の論理学について次の二点を明らかにした。陳那の九句因説では、推論における論証因の妥当性は喩例に基づいて決められた、しかし、喩例は、一つの事例であるから、他の場合にも成り立つことを確定するわけではない。そこで、法称は、この喩例に依る考え方を改めた。即ち、論証因と所証との間に、最低限度必要な関係が成り立てば、論証因の妥当性を確定できる、そしてその関係とは、論証因と所証との同一性または因果関係からなる「本質的結合関係」である、という独自な原理を導入した。本研究では、法称が、この本質的結合関係の視点からどのようにして、九句因説をより明快に再解釈したのかを、文献的に解明した。これは、法称の論理学の基礎的研究である。次に、法称の論理学の応用研究として、インド思想での基本的な思考方法の一つである帰謬法についての、法称の見解を解析した。法称以前の仏教の諸学匠は、帰謬法を用いたが、帰謬法の妥当性については、それを暗黙のうちに前提した。法称はその妥当性を立証し、更に、帰謬法を換質換位して構成する帰謬還元法の可能であることを是認した。この法称の帰謬法説の特色を『知識論決択』およびその註釈に基づいて解明した。

特定領域研究及び国際共同研究「新しい論理学の展開」に向けた企画・調査を行った。本企画・調査研究班は、論理哲学者達だけでなく、これに認知言語学者、論理学史学者、情報科学者含めて形成されている。各々の分担者が各自の専門分野を担当する形で、特定領域研究の企画を進めた。
1.企画にあたっては英米系論理哲学の分野だけでなく、認知科学・情報科学・AIなどとの学際的分野や、西洋・東洋論理哲学史や現象学的論理学をはじめ広い意味での論埋の哲学的解明に関わる分野も視野に入れて進めた。本チームメンバー(および研究協力者グループ)との研究会を重ねて各分野から出された共同研究の企画を検討した。又、我々哲学系論理学グループが中心となり、これに情報科学系AI及び認知科学系、数学基礎論系研究者達を交えて「哲学と工学におけるオントロジー」ワークショップ、「ヒルベルト」国際ワークショップ、「ウィトゲンシュタインの数学の哲学」ワークショップ等多数の研究会を行い、学際的企画研究を進めた。
2.哲学系論理学グループを中心に欧州及び北米の研究グループとの協議を進め、欧州グループおよび北米グループのそれぞれの地域での研究費申請と連動して、日本側も特定領域研究を立ち上げるための準備を進めた。なお、欧米の企画グループvan Dalen及びJoinet及びAbrusciとは欧州の論理哲学界との研究協力の企画を行った。Benoistとは各々のグループと現象学的論理学の共同研究企画を行った。Girard及びBarendregtとは欧州の惰報論理学界との共同研究企画を行った。Mancosu及びZach及びDrummondとは北米論理哲学界との共同研究の企画を行った。Vandervekenとは北米の言語行為論者達および「AIの論理」研究者達との研究協力の企画を行った。

特定領域研究「新しい論理学の展開」及びそれと並行して行う国際共同研究に向けて,その準備のための企画・調査を行った.現在進みつつある新しい論理学の展開を把握し,論理学の進むべき方向を明らかにしていくには,哲学系論理学者達が中心となり,これに西洋・東洋の論理学史の学者達および認知科学,言語学,人工知能論,情報科学基礎論,数学基礎論を含めて特定領域研究チームを形成する必要がある.このため,本企画・調査研究においても,論理哲学者だけでなく,これに認知言語学者,論理学史者,情報科学者に加わってもらった.
昨年度に引続き,岡田は論理哲学(数学基礎論やフッサール後期の論理学も含む)を,飯田は言語分析哲学を,野矢は日常言語と論理との関係を,土屋は認知科学的立場からの論理を,岩田はおもに印度論理を中心に企画調査を行った.また,これらのメンバーの各々は,哲学以外の他の分野との交流も盛んに行ってきた.例えば,土屋は言語学界および認知科学界においても哲学的立場から多くの成果をあげており,また 岡田及び佐藤は人工知能論や情報科学や数学との境界領域の研究者達との打ち合わせも進めてきた.また,これまでも哲学系の研究代表者岡田と分担者土屋は情報科学系の分担者佐藤と分野を超えて本企画調査のための学術交流を重ねてきた.
これと並行して,岡田が海外における代表的な哲学系論理学の共同研究プロジェクトの視察・調査を行った.特に4月にソルボンヌ大(パリ大学第1校)哲学科において欧州側共同研究者達と共同研究企画のための会合を行ったのに続いて,7月末のヨーロッパ論理学会の折には米国側の共同研究者達も含めて上記課題の国際共同研究の企画会議を行った.

法称(七世紀中葉)は、独自な論理系を導入して、陳那(六世紀前半)の論理学を説明しつつ、自らの論理系と、陳那のそれとの無矛盾性を多くの箇所で示している。本研究では、法称の論理系が陳那の独創である九句因説と矛盾しないことを論じた『知識論決択』の箇所を分析した。その結果、陳那には見られない法称の視点が浮き彫りになった。それは、推論の成立の主要な条件である論証因と所証との論理的関係を、陳那が「確定される」ものと見なしたのに対して、法称は確定できない場合も有るとし、「疑い」の視点を導入して論理的関係を再分類したという点である。「疑い」の概念の導入により、他者が日常的に認識できない不確定な事柄を証明する場合(例えば常住不変なる実我などの存在を証明しようとする場合に)これを批判することが可能になった。
印度の論理学は実例に依存する為に帰納的であると言われている。実例に基づく為に生じる諸矛盾を回避する方法を検討することは、印度論理学の限界を示すという意味で重要である。本研究では、陳那の論理学での喩例の役割を分析した。更に、法称の『知識論決択』での疑似論証因の論述を調べ、実例に依らずに、論証因の成否を検討するという見方の萌芽が法称説に存することを指摘した。
上記の推論説の文献学的研究は、仏教論理学の基礎論の研究である。以下の研究は、その応用部分に相当する。ものごとの認識を成立させる根拠を定め、その根拠に基づいて、何が妥当なものとして残るかをラディカルに追求した法称は、世尊自身についても、何ゆえに人々にとって信頼される拠り所(公準、量)になるのかを問題にし、これの証明を試みた。本研究では、この証明に関するプラジュニャーカラグプタ(八世紀後半)の解釈を分析し、世尊の量性の証明が、世俗的上での証明と、勝義上での証明に分類されることなどの特徴を指摘した。

特定領域研究「新しい論理学の展開」に向けて、その準備のための企画・調査を行った。現在進みつつある新しい論理学の展開を把握し、論理学の進むべき方向を明らかにしていくには、哲学系論理学者達が中心となり、これに西洋・東洋の論理学史の学者達および認知科学、言語学、人工知能論、情報科学基礎論、数学基礎論を含めて特定領域研究チームを形成する必要がある。このため、本企画・調査研究においても、論理哲学者達だけでなく、これに認知言語学者、論理学史学者、情報科学者に加わってもらった。
岡田は論理哲学(数学基礎論やフッサール後期の論理学も含む)を、飯田は言語分析哲学を、野矢は日常言語と論理との関係を、土屋は認知科学的立場からの論理を、岩田はおもに印度論理を中心に企画調査を行った。また、これらのメンバーの各々は、哲学以外の他の分野との交流も盛んに行ってきた。例えば、土屋は言語学界および認知科学界においても哲学的立場から多くの成果をあげており、また岡田は人工知能論や情報科学や数学との境界領域の研究者たちとの打ち合わせも進めてきた。また、これまでも哲学系の研究代表者岡田と分担者土屋は情報科学系の分担者佐藤と分野を超えて本企画調査のための学術交流を重ねてきた。
これと並行して、岡田が海外における代表的な哲学系論理学の共同研究プロジェクトの視察・調査を行った。また、ソルボンヌ大学哲学科Joinet博士、パリ・エコールノルマールシュープリュールのLongo博士ら欧州の論理学者およびホンコン大学哲学科及び米国テキサス大哲学科Thomason博士らアジア、米国の何人かの分析哲学者や言語行為論の論理研究者らを招いて、本研究企画のためのディスカッションを行い、助言を仰いだ。

Through the Japanese translation of the section "difinition of the inference for others" in the third chapter of Dharmakirti's Pramanaviniscaya (=PVin III) it is found that his prasanga which is used in the inference has a positive function to be an establishing factor for the formulation of contrapositive form (prasangaviparyaya). Because of his simple description of the prasanga-argument, his followers, Dharmottara and Prajnakaragupta, advocate different interpretations. The main point of differnece is whether the proponent can formulate an autonomous prasangaviparyaya from prasanga or not with respect to the subject which can not be existent for the proponent. According to the study of their commentaries, it is made clear that Prajnakaragupta, advocating that no prasangaviparyaya can be formulated with respect to the nonexistent subject, criticizes Dharmottara's view.
Dharmakirti's prasanga-theory exerts a great influence on the Tibetan Buddhist logic. On the basis of Dharmakirit's theory gTsan nag pa (12th c.), one of the earliest Tibetan commentators of the PVin, expounds his own prasanga-theory. I have showed that gTan nag pa's theory on the subject of prasanga-viparyaya bears a close parallel to Prajnakaragupta's view. Bu ston (1290-1364) also alludes to the difference of interpretation on the prasanga-argument between Dharmottara and Prajnakaragupta. From the philological study of their commentaries it follows that Bu ston's allusion can in reality be traced back to their theories. These studies contribute to the elucidation of the development of the Tibetan Buddhist logic from the Indian Buddhist logic from the viewpoint of the interpretation of prasanga.