＜研究目的＞
日本語学習者の漢字学習の方法や意識に関する先行研究を見ると，それぞれの教育現場において，どのように漢字が学習されているか，どのような意識がもたれているかという点について論述されてきた。しかし，現場に合わせた調査票を用いていることから，全体像をつかむに至っていない。本研究では，漢字学習研究の共通ツールとなる調査票，すなわち漢字学習の方法やそこに付随する意識を概観できるような質問紙調査票を開発し，実践者や研究者に提供することを目的とする。
＜研究計画＞
これまで，すでに調査票の不備や修正に必要な内容を検討してきた。令和元年には，カナダ（トロント）において，「日本語教師を対象とした漢字指導」と「日本語学習者を対象とした漢字学習」に関する調査を行い，その成果は，イベント「振り返ろう！漢字教育－教室でこそできる漢字学習に向けて」（2019年8月・トロント大学）で報告している。
その後，令和２年度・令和３年度ともに①海外の調査協力機関の方との打ち合わせ，②調査票開発に詳しい専門家への相談などが予定されていたが，コロナ感染症の影響で実施が難しくなり見送ることとなった。
令和４年度は，調査票開発などに詳しい専門家への相談をし，調査票を完成させ，日本語教育の実践者・研究者に提供できるよう整えていく。

In the present study, we reconsidered the place of Kanji education within Japanese language education, and examined assessment practices capable of linking improvement of Kanji ability to an overall improvement in Japanese language ability. Then, we developed a "Kanji ability diagnostic test," which, in addition to traditional measures of Kanji reading and writing ability, includes a new component that assesses Kanji vocabulary ability using audio materials, and released Kanji ability tests for the elementary, intermediate, and advanced levels in TTBJ (Tsukuba Test-Battery of Japanese), which is managed by the Center for Education of Global Communication at the University of Tsukuba. Furthermore, we investigated the potential of self-evaluation by the learners of their own Kanji ability, and made suggestions for future research in Kanji ability assessment methods.