2024/12/26 更新

写真a

マツオカ シュンジ
松岡 俊二
所属
国際学術院 大学院アジア太平洋研究科
職名
教授
学位
博士(学術) ( 広島大学 )
ホームページ
プロフィール
早稲田大学国際学術院(大学院アジア太平洋研究科)教授.早稲田大学レジリエンス研究所(WRRI)・所長. 早稲田大学ふくしま広野未来創造リサーチセンター長. 1988年京都大学大学院経済学研究科博士課程・学修認定退学. 広島大学博士(学術).広島大学総合科学部講師,広島大学大学院国際協力研究科教授を経て,2007年4月より現職.専門分野は環境経済・政策学, 災害復興研究, 国際開発援助研究.主著(編著/共著含む)に『国際開発研究』(東洋経済新報社,2004年),『環境と開発』(日本評論社,2004年),Effective Environmental Management in Developing Countries: Assessing Social Capacity Development(Palgrave-Macmillan, 2007年),『アジア地域統合の展開』(勁草書房, 2011年), 『フクシマ原発の失敗:事故対応過程の検証とこれからの安全規制』(早稲田大学出版部, 2012年),『アジアの環境ガバナンス』(勁草書房, 2013年),『原子力規制委員会の社会的評価:3つの基準と3つの要件』(早稲田大学出版部, 2013年), 『フクシマから日本の未来を創る;復興のための新しい発想』(早稲田大学出版部, 2013年12月), 『社会イノベーションと地域の持続性:場の形成と社会的受容性の醸成』(有斐閣, 2018年12月刊行予定)など.

経歴

  • 2007年
    -
    2008年

    国際東アジア研究センター客員研究員。

  • 2007年
    -
    2008年

    鳥取大学乾燥地研究センター客員教授。

  • 2007年04月
    -
     

    早稲田大学教授(アジア太平洋研究科)。

  • 2002年
    -
     

    同教授。

  • 2000年
    -
     

    アメリカン大学客員研究員。

  • 1996年
    -
     

    マラヤ大学客員教授。

  • 1994年
    -
     

    広島大学大学院国際協力研究科助教授。

  • 1991年
    -
     

    同助教授。

  • 1988年
    -
     

    広島大学総合科学部講師。

  • 1988年
    -
     

    京都大学大学院経済学研究科・単位認定退学。

  •  
     
     

    Dr. Matsuoka became Professor at Waseda University in April 2007 after serving as Assistant Professor and Professor at Hiroshima University. He was invited to Malaya University as Visiting Professor in 1996 and American University as Visiting Rese

  •  
     
     

    (客員教授など)

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学歴

  •  
    -
    1988年

    京都大学   経済学研究科   経済政策学  

所属学協会

  •  
     
     

    日本原子力学会

  •  
     
     

    環境経済・政策学会

  •  
     
     

    国際開発学会

研究分野

  • 環境影響評価

研究キーワード

  • 環境経済・政策学、開発研究、持続可能な開発、グローバル・サステイナビリティ、国際開発協力

受賞

  • アジア経済研究合同学会・優秀論文賞

    2000年08月  

 

論文

  • 社会イノベーションのつくりかた:『場』の形成と社会的受容性の醸成

    松岡 俊二

    アジア太平洋討究   ( 34 ) 1 - 15  2018年10月

  • 持続可能な地域のつくりかた:地方創生と社会イノベーションを考える

    松岡 俊二

    アジア太平洋討究   ( 33 ) 1 - 18  2018年04月  [査読有り]

  • 原子力政策におけるバックエンド問題と科学的有望地

    松岡 俊二

    アジア太平洋討究   ( 28 ) 25 - 44  2017年10月  [査読有り]

  • 日本のNPO活動水準を規定する組織要因と地域要因の分析

    松岡 俊二

    ノンプロフィット・レビュー   17 ( 1 ) 39 - 48  2017年10月  [査読有り]

     概要を見る

    <p>本研究は地域活性化につながるNPOの活動水準を,資金力,人材力,連携力と定義した.先行研究で考慮されていなかったNPOの活動水準を規定する地域要因も取り入れ,地域要因と組織要因とを統合して分析するため,内閣府が行ったNPO法人に対するアンケート調査結果(1,079団体)を用い,市町村レベルにおけるNPO活動水準の規定要因に関する実証的分析を行った.分析の結果,組織要因については,活動年数と情報発信の手段数がNPO活動水準に正の効果があり,また,活動の分野数と地理的範囲はNPOの他団体との連携に正の効果があった.活動開始の動機については,事業活動の幅の開拓のような設立者自身の意思で活動を開始したNPOより,行政からの勧奨で活動を開始したNPOの方が規模が大きい.地域要因については,経済基盤要因と政治参加の度合いがNPO活動水準に影響を与えていることが示され,NPO団体の新設立に対して地域条件も考慮する必要があると提示した.</p>

    DOI CiNii

  • Institutional Mechanisms and the Consequences of International Environmental Agreements

    松岡 俊二

    Global Environmental Politics,   17 ( 1 ) 77 - 98  2017年05月  [査読有り]

  • Complementary approaches to discursive contestation on the effects of the IPR regime on technology transfer in the face of climate change

    Chaewoon Oh, Shunji Matsuoka

    JOURNAL OF CLEANER PRODUCTION   128   168 - 177  2016年08月  [査読有り]  [招待有り]

     概要を見る

    The effects of intellectual property rights (IPR) on the transfer of environmentally sound technologies (ESTs) has resulted in discursive contestation. On the one hand, the IPR regime is regarded as a catalyst to ESTs transfer. On the other hand, the IPR regime itself is argued to work as a barrier to the transfer of ESTs to developing countries. This contestation moved to another layer of discussion concerning what to do about the current IPR regime and the climate change regime that overlap on the subject matter of technology transfer. The IPR-as-a-catalyst approach prefers the IPR regime to remain as the status quo and that the climate change regime construct an enabling environment by lowering the transaction costs of technology transfer and enhancing the regulatory capacity of developing countries. On the contrary, skeptics of the role of the IPR regime in ESTs transfer prefer an active utilization of the flexible mechanisms of the IPR regime and more interventionist actions by the climate change regime for effective IPR-sharing. Regarding this bi-polar contestation, this paper analyzes why and where this discursive contestation occurs based on the economic theories of market failure. The benefits and difficulties of remedial institutional approaches to tackle market failures are explored; then, complementary institutional designs in compatibility with the IPR regime and in response to market failures are explored with exemplary cases under the climate change regime. (C) 2015 Elsevier Ltd. All rights reserved.

    DOI

    Scopus

    12
    被引用数
    (Scopus)
  • 途上国の都市における『ごみの流れ』の構造分析:スリランカ・キャンディ市を事例に

    松岡 俊二

    国際開発研究   24 ( 1 ) 15 - 32  2015年12月  [査読有り]

  • 『フクシマの教訓』と原子力リスク・ガバナンス

    松岡 俊二

    環境経済政策研究   8 ( 2 ) 31 - 35  2015年11月  [査読有り]

  • The Position of Low Carbon Growth Partnership (LCGP): at the end of Japan’s Navigation between the Kyoto Protocol and APP

    松岡 俊二

    Politics, Law and Economics,   15 ( 2 ) 125 - 140  2015年10月  [査読有り]

  • 『フクシマの教訓』と原子力リスク・ガバナンス

    松岡 俊二

    アジア太平洋討究   ( 25 ) 1 - 13  2015年10月  [査読有り]

  • Japan’s Asian Strategy: Japan’s Asian Environmental Strategy and Soft Power of the 21st Century

    松岡 俊二

    Public Policy Review   10 ( 1 ) 189 - 226  2014年10月  [査読有り]

  • ミャンマーテルタ地帯における安全な飲料水の供給に向けた便益評価

    松岡 俊二

    人間と環境   38 ( 1 ) 7 - 12  2012年11月  [査読有り]

  • 国際環境レジームの有効性に関する定量分析:長距離越境型大気汚染条約(LRTAP)を事例として

    松岡 俊二

    環境情報科学学術研究論文集   26 ( 26 ) 189 - 194  2012年11月  [査読有り]

     概要を見る

    本研究では国際環境レジームの有効性を分析するために,長距離越境大気汚染条約(LRTAP)の 4 議定書(ヘルシンキ,ソフィア,オスロ,ジュネーブ議定書)を事例とした定量的な評価をおこなった。 分析では1979 年のジュネーブ条約に参加した50 ヵ国を対象とし,手法にはdifference-in-differences (DID)モデルに傾向スコアマッチングを組み合わせた最新のインパクト評価モデルを用いた。分析の結果,ソフィア議定書では批准による環境質の改善が有意に認められたが,その他の3 議定書については有効性が確認されなかった。これらから,レジームの有効性を評価するには各国の異質性や汚染物質の特性,汚染物質の削減以外への効果などについて考察することが必要であると考えられる。

    DOI CiNii

  • 福島第一原子力発電所事故と今後の原子力安全規制のあり方

    松岡 俊二

    アジア太平洋討究   ( 18 ) 121 - 142  2012年05月

  • 気候変動と国際開発協力

    松岡 俊二

    国際開発研究   18 ( 2 ) 7 - 18  2009年10月  [査読有り]  [招待有り]

  • Capacity Development and Institutional Change in International Development Cooperation

    Shunji MATSUOKA

    アジア太平洋討究   12   43 - 73  2009年06月

  • 国際開発協力におけるキャパシティ・ディベロップメントと制度変化アプローチ

    松岡俊二

    アジア太平洋討究   11   223 - 237  2008年06月

  • Capacity Development and Social Capacity Assessment (SCA)

    Shunji Matsuoka

    Journal of Evaluation Studies   8(2)   65 - 81  2008年

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書籍等出版物

  • 社会イノベーションと地域の持続性:場の形成と社会的受容性の醸成

    松岡 俊二( 担当: 編集,  担当範囲: 序章、第9章)

    有斐閣  2018年12月

  • 震災後に考える:東日本大震災と向きあう92の分析と提言

    松岡 俊二( 担当: 共編者(共編著者),  担当範囲: フクシマとレジリエンスとサステナビリティ)

    早稲田大学出版  2015年03月

  • 原子力規制委員会の社会的評価:3つの基準と3つの要件

    松岡 俊二( 担当: 共編者(共編著者),  担当範囲: 第1章。第2章)

    早稲田大学出版  2013年12月

  • フクシマ早稲田大学から日本の未来を創る:復興のための新しい発想

    松岡 俊二( 担当: 編集,  担当範囲: 第1章、第2章)

    早稲田大学出版  2013年12月

  • アジア地域統合学:総説と資料

    松岡 俊二( 担当: 共編者(共編著者),  担当範囲: 第5章)

    勁草書房  2013年10月

  • アジアの環境ガバナンス

    松岡 俊二( 担当: 共編者(共編著者),  担当範囲: 第1章)

    勁草書房  2013年10月

  • Regional Integration in East Asia: Theoretical and Historical Perspective,

    松岡 俊二( 担当: 共編者(共編著者),  担当範囲: Chap. 3)

    United Nations University Press  2013年08月

  • フクシマ原発の失敗-事故対応過程の検証とこれから-

    松岡 俊二( 担当: 単著)

    早稲田大学出版  2012年10月

  • Climate Change and Global Sustainability: A Holistic Approach

    松岡 俊二( 担当: 分担執筆,  担当範囲: Climate Policy and International Development Cooperation)

    United Nations University Press  2011年11月

  • アジア地域統合の展開

    松岡 俊二( 担当: 共編者(共編著者),  担当範囲: 第1章)

    勁草書房  2011年10月

  • Effective Environmental Management in Developing Countries: Assessing Social Capacity Development

    Matsuoka, S. e

    Palgrave-Macmillan  2007年10月

  • 環境経済・政策学の基礎知識

    松岡俊二

    有斐閣  2006年

  • 環境経済・政策学会年報 第10号:環境再生

    上嶋英機, 坂川勉, 武内和彦, 宮田洋子, 戸田常一, 松岡俊二

    東洋経済新報社  2005年

  • 現代世界経済叢書4 アジア経済論

    松岡俊二

    ミネルヴァ書房  2004年

  • シリーズ国際開発 第2巻 環境と開発

    井村秀文, 松岡俊二, 下村恭民

    日本評論社  2004年

  • 国際開発研究:自立的発展へ向けた新たな挑戦

    松岡俊二

    東洋経済新報社  2004年

  • IDE Spot Survey: Social Capacity Development for Environmental Management in Asia: Japan’s Environmental Cooperation after Johannesburg Summit 2002

    Matsuoka, S, A. Kuchiki eds

    Institute of Development Economies  2003年

  • アジ研トピックレポートNo.50:アジアにおける社会的環境管理能力の形成:ヨハネスブルク・サミット後の日本の環境ODA政策

    松岡俊二, 朽木昭文

    アジア経済研究所  2003年

  • 岩波講座 環境経済・政策学 第6巻 地球環境問題とグローバル・コミュニティ

    松岡俊二

    岩波書店  2002年

  • 東南アジア:サステナブル世界への挑戦

    松岡俊二

    有斐閣  1998年

  • 環境経済・政策学会年報 第3号:アジアの環境問題

    松岡俊二, 松本礼史

    東洋経済新報社  1998年

  • 大型プロジェクトの評価と課題

    松岡俊二

    晃洋書房  1997年

  • 景観のグランドデザイン

    松岡俊二

    共立出版  1995年

  • 地球環境キーワード

    松岡俊二

    有斐閣  1994年

  • 都市再生の政治経済学

    松岡俊二

    東洋経済新報社  1993年

  • 国際産業論:グローバル・インダストリ論序説

    松岡俊二

    ミネルヴァ書房  1993年

  • 沿岸都市とオープンスペース

    松岡俊二

    都市文化社  1991年

  • 都市とウォーターフロント

    松岡俊二

    都市文化社  1988年

  • 地方財政の国際比較

    松岡俊二

    勁草書房  1986年

  • 現代資本主義と地域

    松岡俊二

    法律文化社  1982年

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講演・口頭発表等

  • バックエンド問題における社会的受容性と可逆性:国際的議論から

    松岡 俊二

    環境経済・政策学会2018年大会  

    発表年月: 2018年09月

  • 福島原発事故・福島復興研究の7年、『フクシマの教訓』とは何かを考える

    松岡 俊二  [招待有り]

    福島復興学ワークショップ  

    発表年月: 2018年03月

  • レジリエンスとサステナビリティをめぐって:早稲田大学レジリエンス研究所の7年の経験から

    松岡 俊二  [招待有り]

    東京大学工学系研究科レジリエンス工学研究センター「レジリエンス工学シンポジウム」  

    発表年月: 2018年03月

  • 持続可能な地域のつくりかた:地方創生と社会イノベーションを考える

    松岡 俊二  [招待有り]

    第32回ニッセイ財団環境問題助成研究ワークショップ  

    発表年月: 2018年02月

  • 社会的受容性モデルによる核燃料サイクル関連施設の立地プロセス分析

    松岡 俊二

    環境経済・政策学会2017年大会  

    発表年月: 2017年09月

  • 持続可能な地域を創る社会イノベーション:社会的受容性と協働ガバナンス

    松岡 俊二

    環境経済・政策学会2017年大会  

    発表年月: 2017年09月

  • 東日本大震災・福島原発事故から6年、改めて『フクシマの教訓』とは何かを考える

    松岡 俊二

    第6回原子力安全規制・福島復興シンポジウム  

    発表年月: 2017年03月

  • 都市環境イノベーションと社会的受容性:持続可能な地方都市とは何か?

    松岡 俊二

    環境経済・政策学会2016年大会  

    発表年月: 2016年09月

  • Climate Change and International Development Cooperation:Framework of Adaptation for Climate Change in Govi Region, Mongolia

    International Conference on Climate Change and Adaptive Capacity Development: Combating Desertification and Sustainable Grassland Management in Govi Region, Mongolia  

    発表年月: 2009年10月

  • 共通論題報告・グローバル・サステイナビリティ実現のための国際開発協力学構築の可能性を考える

    国際開発学会第10回春季大会  

    発表年月: 2009年06月

  • 共通論題報告・これからの開発援助を考える:今、日本の開発援助研究がすべきことは何か?

    国際開発学会第19回全国大会  

    発表年月: 2008年11月

  • 東アジアにおける地域統合と「環境共同体」:東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)と長距離越境大気汚染条約(LRTAP)との比較

    環境経済・政策学会2008年大会  

    発表年月: 2008年09月

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共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 高レベル放射性廃棄物(HLW)処理・処分施設の社会的受容性に関する研究

    JSPS  科学研究費基盤研究B

    研究期間:

    2016年04月
    -
    2019年03月
     

    松岡 俊二

  • 環境イノベーションの社会的受容性と持続可能な都市の形成

    日本生命財団  環境研究助成

    研究期間:

    2015年10月
    -
    2017年09月
     

    松岡 俊二

  • 制度論アプローチによる地球持続性学の構想

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(挑戦的萌芽研究)

    研究期間:

    2011年
    -
    2013年
     

    松岡 俊二

     概要を見る

    本研究は、社会的能力の形成と制度変化という観点から、アジア地域の環境ガバナンスなどの制度論的分析を行い、『アジアの環境ガバナンス』を出版した。アジア地域の環境ガバナンスの分析結果から、アジア地域においては、現状では、基軸となる環境制度が存在せず、持続可能なアジア社会の制度的基盤が脆弱であることを明らかにした。また、2011.3.11の東日本大震災・福島原発事故に対する震災復興や原子力リスク・ガバナンスについても検討し、『原子力規制委員会の社会的評価』と『フクシマから日本の未来を創る』を出版し、自然災害や技術災害に対する防災や復興における社会的能力形成と制度変化の関係性について考察した。

  • アジア・太平洋海域における有用海洋生物資源調査

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2009年
    -
    2011年
     

    中尾 洋一, 堀 寛治, 酒井 隆一, 伏谷 伸宏, 松岡 俊二, 福沢 世傑, 脇本 敏幸, 藤田 雅紀, 高田 健太郎

     概要を見る

    ミクロネシア、ヴェトナム、およびインドネシアの3か国で海洋生物の採集を行い、合計515検体のサンプル採集が達成できた。これらのサンプルをもとに、可能な範囲で混合抽出物、共生微生物、遺伝子を取り出し、それぞれのライブラリーとして保存した。現在、本ライブラリーをもとに有用生物活性および活性本体のデータベース化を行っている。また、調査活動を通じて現地の研究機関との強固な共同研究体制も築くことができた。

  • 都市環境創造における政策過程・政策成果と社会的能力に関する研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2004年
    -
    2007年
     

    松岡 俊二, 中越 信和, 藤原 章正, 柳下 正治, 松本 礼史, 吉田 謙太郎

     概要を見る

    本研究は、環境問題の特性、政策過程および社会的環境管理能力を政策成果の決定要因ととらえ、これらの関係を統一的に分析・評価する概念モデルの構築を目指したものである。人間活動の濃密に集約された空間構成体である「都市」を対象として、「持続可能な都市」論の再検討を行い、持続可能な都市の形成プロセスとその実現に向けた社会的アクターの能力形成を検討した。
    平成19年度は、政策成果と政策過程および社会的能力との関係を政策サイクルの観点から研究し、概念モデルの開発を試みた。これまで研究代表者・松岡らが想定してきた政策過程要因である政府・企業・市民という社会的アクターの関係性と社会的能力の3要因(政策・対策、人材・組織、知識・技術)との関係を理論的に検討し、政策成果への影響を明らかにした。
    具体的には、EUの都市政策よりコンパクト・シティ、アメリカの都市政策よりスマート・グロースに着目し、それぞれ10都市の事例分析を行った。各都市政策の実効性/実行性を担うしくみを明らかにするため、(1)実行・実効の現実と課題、(2)モニタリング・評価の実際と課題、(3)社会的能力との関連性に分けて整理・分析した。また、都市政策および街づくり活動の発展過程に着目し、組織構成・制度・問題への対処方法などを明らかにし、社会的能力がどのように変化してきたのかを分析した。そして、持続可能な都市づくりという政策成果は、市民やコミュニティ・レベルでの取り組みなどの社会的能力の形成に依存する部分が大きいことを明らかにした。

  • 環境政策の便益評価に関する東アジア地域比較研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(B))

    研究期間:

    2001年
    -
    2003年
     

    松岡 俊二, 竹内 憲司, 松本 礼史

     概要を見る

    本研究は、経済成長段階の異なる東アジア諸国の環境政策の経済評価を行うことにより、環境政策の重要性を明らかにしようとしたものである。特に、政策の社会的便益を健康便益に焦点を当て評価することにより、途上国における環境政策の効果を定量的に測定した。その際、欧米で開発されてきた便益評価手法のうち、仮想評価法(Contingent Valuation Method : CVM)による調査を東アジアで実施し、またコンジョイント分析手法(選択型実験)による調査を東広島市で実施した。東広島市においてコンジョイント分析を実施した理由は、CVMと違う調査方法を行うことにより調査手法の影響を考慮する必要があったためであり、これによって日本におけるリスク削減便益の信頼性と頑健性を検討した。また、対象リスクは大気汚染と交通事故による死亡リスクとした。
    環境政策における便益の評価手法の一つとして確率的生命の価値(Value of Statistical Life : VSL)がある。VSLとは死亡リスク削減に対する支払意思額(Willingness to Pay : WTP)を死亡リスク削減幅で除して、便宜的に「生命の価値」を表したものである。本研究においてはCVMや選択型実験の調査結果をもとにVSLを推定した。
    結果として、VSLと人口特性の関係に関しては、大気汚染リスク削減における人口特性の影響の度合いはあまり見られなかったが、交通事故リスク削減においては有意な結果が出た。VSLとリスク特性の関係に関しては今後さらに検討する必要がある。1人当たりGDPに対するVSLの値についても、地域や調査手法によりばらつきがあるため、今後、その原因をメタ分析などを利用して検討する必要がある。

  • 持続的環境利用システムとしての市場・政府・コモンズに関する比較研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(C))

    研究期間:

    1998年
    -
    2000年
     

    松岡 俊二, 松本 礼史

     概要を見る

    環境資源の持続的利用における市場システム、政府システム、コモンズ・システムという3つのシステムの比較研究を行い、それぞれの役割・機能と最適な組み合わせについて検討した。
    日本の森林資源を対象とした研究では、産業としての林業に依拠した日本の森林管理組織は、私的所有であれ国有であれ、またコモンズであっても、持続的森林管理主体としては不十分であることが分かった。その結果、従来の木材生産という市場財の収穫のみを森林管理の目的とするのではなく、森林の公益的機能保持を目的とするために、木材市場の動向に左右されない森林の新しい価値付けを行っているボランティアの充実が必要であるという結論に達した。
    次に、環境規制と経済主体の自発的な環境管理行動との関係について研究を行った。排出基準に基づく直接規制は、分権的に使用され一律でない排出基準が適用されるとき、静学的にも動学的にも効率的になる可能性を有しているが、こうした一律でない排出基準は、規制の公平性を損なう可能性が大きいという問題点もある。一方、市場的手法の1つである排出課徴金制度は静学的効率性を達成できるが、環境目標を達成するのは難しく、動学的効率性という点でも必ずしも優れているとは言えない。また、今日では、情報公開や環境会計の導入などによる企業行動への自主的・ボランティア的手段も用いられている。こうした手段は効率性という点で優れているといえる。
    市場システム、政府システム、コモンズ・システムという3つのシステムのうち、効率性という点ではコモンズ・システムが優れているが、公平性は政府システムが優れている。このようにこれらのシステムは単独ではうまく機能しないため、3つを組み合わせた複合型規制が有効である。ただ、これらの中で、従来は政府システムの割合が大きかったので、今後は市場システムやコモンズ・システムの活用が重要となってくる。

  • 環境保全型経済成長に向けての技術・経済システムに関する日中共同研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(国際学術研究)

    研究期間:

    1998年
    -
    2000年
     

    松岡 俊二, 小松 登志子, 浜渦 哲雄, 山下 彰一, 金子 由芳, 中越 信和

     概要を見る

    本研究は、中国における環境保全型技術システムおよび経済システムのあり方を、ミクロ(企業の投資行動等)とマクロ(環境政策等)の両面から明らかにすることを目的に、広島大学と中国・復旦大学との共同研究プロジェクトとして行ったものである。最終的な研究組織は広島大学側7名、復旦大学側3名の計10名で、双方の研究者の招聘・派遣にあわせ、研究報告会を企画・開催をしてきた。
    平成10年度は、9月(広島)、12月(復旦)に合同研究会を開催し、広島大学メンバーをはじめ、復旦関係部局からの参加もあり、活発な討論が行われた。9月には復旦メンバーとともに北九州市を視察し、12月の中国では、市内の製鉄所等を見学、さらに、北京の日中友好環境保全中心を訪問し、調査や施設見学を行った。
    平成11年度は、10月(広島)、および12月(復旦大学、北京・日中友好環境保全中心)に合同研究会を開催した。12月の中国では、上海市環境保護局を訪問し環境政策の現状について、ヒアリング調査を行った。さらに、北京の日中友好環境保全中心訪問においてヒアリング調査を行った。
    最終年である平成12年度は、12月に復旦大学を訪問し、今後の双方の学術交流の方向性を確認しあった。また、上海市環境保護局や北京・日中友好環境保全中心を訪問しヒアリング調査を行なった。1月には復旦大学代表が来日し、中国環境問題について報告がなされ、これをもって、プロジェクトの総括とした。
    以上3年間の活動を通じて、日中両国の環境政策への経済的手段の現状と課題、マクロ分析とともに地方政府や企業単位でのミクロの歴史分析・現状分析や、「環境保全型経済成長」のための技術システム・経済システムについて、クリーン開発メカニズム(CDM)等の経済的手法を用いた環境管理システムを導入するための条件に焦点をあてた、多くのケーススタディ、ミクロ分析を積み上げることができた。

  • 環境資源の持続的利用におけるコモンズ的手法に関する研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(C))

    研究期間:

    1996年
    -
    1997年
     

    松岡 俊二

     概要を見る

    1.環境資源の持続的利用という観点から、コモンズ型資源配分システムの作動環境の分析とその成果の評価を行った。事例研究として、日本でのコモンズ型資源管理システムである入会林野を対象として、森林資源管理主体の現状を明らかにした。
    2.コモンズ型森林資源管理では市場システムや計画システムと比較し、持続的資源利用には各システムでの管理主体間で、役割分担が不可欠であることを明らかにした。近年の制度分析のアプローチとして、取引費用論による制度の効率性比較の研究が進められている。これにもとづき森林資源管理において、各資源管理システムでの取引費用を明らかにした。
    3.環境資源のコモンズ型管理に関する代表的な研究者としてOstromがあげられる。0strom(1990)のGoverning the Commonsではコモンズ型資源管理が機能しない場合として、社会経済状況の急速な変化、環境の急速な変化、集団構成員間の格差の存在という条件をあげている。
    4.農業集落カードの農業集落を対象に定量分析を行い、入会集落の判別分析・主成分分析を行った。これにより、広島県における入会集落では、入会林野近代化への整備、林業の衰退から、現代においては、コモンズ的資源管理の主体を担っていないことが明らかになった。また、入会林野の近代化整備後の資源管理主体の一つと考えられる生産森林組合も林業の衰退から資源の維持管理が困難になっていることを明らかになった。
    5.広島県における入会集落の分析から、上記の0stromがあげているコモンズ型資源配分システムの機能しない条件が当てはまることを明らかにした。広島県の事例研究の結果として、自然集落による資源管理はもはやなされておらず、現代的なコモンズ型資源管理をとらえるアプローチの必要性が明らかになった。

  • 東南アジアの環境問題と国際協力のあり方に関する研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(国際学術研究)

    研究期間:

    1995年
    -
    1997年
     

    松岡 俊二, 成田 健一, 中越 信和, 山口 登志子, 浜渦 哲雄, 山下 彰一, 岡野内 正

     概要を見る

    本研究プロジェクトは、社会経済グループと技術グループとの協力・共同により、東南アジアの環境問題と日本の国際協力のあり方に関する調査研究を行った。
    山下は1997年9月にタイ、ベトナムにおける経済成長と環境ニーズに関する調査を行い、浜渦は1997年9月にフィリピンにおいて石炭火力発電所の大気汚染対策の調査を行った。中越は1997年9月にマレーシアにおける森林管理の現状について調査を行った。松本は、研究代表者の松岡とともに、1997年8月にタイ、ベトナムにおける環境ニーズと環境ODAに関する調査を行った。また、山口、成田は、日本国内において、日本の公害対策の歴史と背景についての調査研究を行った。
    以上の調査研究をふまえて、最終報告書では最初に、経済成長と環境問題に関する仮説である環境クズネッツ曲線の成否について、検証を行った。検証の結果、経済成長と環境問題との関連には多様なタイプがあり、環境問題の推移には経済成長だけでなく、制度面や技術面などの様々な要因が関係することを明らかにした。続いて、東南アジア各国の経済成長とエネルギー消費の関係の変化のパターン分析を行い、それぞれの経済成長を特徴づけた。また、大気汚染対策や水質汚濁対策、森林資源管理などの環境協力プロジェクトの現状と日本における公害対策の歴史について考察を行った。
    最後に、本プロジェクトのまとめとして、環境協力に係わる制度間比較を行い、今後の環境協カのあり方について検討した。環境問題の発生メカニズムは多様であり、問題解決に向けた国際協力は、従来の中央政府間協力に加えて、地方自治体や民間企業、大学、NGOsなどの様々な主体がそれぞれの特質をいかして、協力を行っていくことが必要であるとの結論を得た。

  • 環境資源の経済的評価に基づく持続性基準に関する研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(一般研究(C))

    研究期間:

    1994年
    -
    1995年
     

    松岡 俊二

     概要を見る

    1.環境資源の持続的利用の経済学的基準について研究を行った。その主な研究成果は、“Sustainable Use of Environmental Resources"として発表した。
    2.持続的利用に関する経済学的なアプローチとしては、MSY(最大持続収穫量)法、MEY(最大持続経済収穫量)法、動態MEY(動学的最大持続収穫量)法、減価償却法、使用者費用法が存在する。
    3. MSY、MEY、動態MEYの概要は以下である。人間社会が利用対象としている環境資源が再生可能な最低限のストック量以上存在するという前提で、資源ストックの増加量の最大値と収穫量を等しくするとき、最大持続収穫量が確保されるという方法がMSYである。MEYはMSYの考え方に、経済的要素を、動態MEYはMEYに時間概念を導入したものである。減価償却法は、環境資源の収穫量と増加量を比較し、前者が後者より大きいとき、その差額に市場価格を乗じた額を減価償却費用として計上し、資源の再生投資に充てるという方法である。使用者費用法は、有限な資源利用から得られる所得は「真の所得」と「使用者費用」から構成されるという考え方で、「真の所得」を影響に確保するために「使用者費用」分を再投資に充てるという方法である。
    4.以上の5つの方法論を、環境資源の利用における持続性基準の観点から社会的評価を行い、それぞれの意義と限界に関して、研究を行った。MSY、MEY、動学MEYは、その前提として環境資源が正確にモニタリングされ、再生可能量以上の存在の確認が必要である。さらに、単に当該資源利用だけでなく、生態系において当該資源利用が他の種に対してどのような影響を与えるのかという評価も必要とされる。減価償却法では、短期的市場価格で評価した額で長期的な環境資源の再生費用が評価でかるかどうかという問題を抱えている。使用者費用法は所得レベルの持続性であって、生態系・環境レベルの持続性を示すものではない。

  • 持続可能な発展のためのグローバルパートナーシップと地域システム-東南アジア都市の発展に与えた外国投資の影響-

    科学研究費助成事業(大阪市立大学)  科学研究費助成事業(国際学術研究)

    研究期間:

    1993年
    -
    1995年
     

    加茂 利男, 宗田 好史, 岡本 祥浩, 松岡 俊二, 遠州 敦子, 樫原 正澄, 遠州 尋美, 塩崎 賢明, 西沢 信義, 重森 暁, 木下 滋

     概要を見る

    平成5、6年度に引き続き、7年度は第3次現地調査を実施するとともに、3年間の研究のまとめを行った。現在の時点で得られた研究成果は以下のとおりである。
    1)東南アジアの経済成長と持続可能性に関する理論的知見
    1)-1 輸出指向工業化にもとづく東南アジア諸国の経済成長はめざましく、地域全体に広がっているが、成長パターンは多様化しつつある。シンガポール、マレーシアなどでは、高成長のもとで低インフレ、経常黒字が維持されているが、タイ、フィリピン、インドネシアなどでは、成長がインフレまたは国際収支の悪化(ないしその双方)を伴いつつある。成長過程におけるマクロ経済管理の成功・不成功、いいかえれば政府機能の違いが、こうした成長パターンの多様化を生じ始めているものと思われる。
    1)-2 この成長パターンの多様性は、成長・開発と環境保全や都市農村格差是正、社会開発政策などの関連パターンの多様性にもつながっている。
    GDPに占める政府支出の比率が高いシンガポール、マレーシャでは、人口当たりのエネルギー消費が比較的低く、教育などへの投資が大きいが、フィリピン、インドネシアでは政府支出の規模が小さく、環境保全につながる技術開発・社会開発投資は低位であり、タイは両者の中間といえる。
    1)-3 半面タイやフィリピンではNGOセクターの活動が盛んで、環境保全・社会開発の領域で、政府の機能を代位し始めている。これに伴いこれらのは地方分権やローカル・イニシャティブ形成の改革も試みられており、シンガポールやマレーシャとは異なるガバナンス・システムが形成されつつある。
    1)-4 豊かな農業基盤と貴重な自然資源を有し、エネルギー少消費型の生活様式が根付いてきた東南アジアも、経済成長も都市化とともに資源浪費・環境破壊型の社会に変貌しつつあるが、これに対する政策対応も始まっており、それが上述のようなガバナンス・システムの多様化を生み出している。こうした多様性を組み込んだ持続可能な発展へのグローバル・パートナーショップの形成が求められているといってよい。
    2)主な個別研究の成果
    2)-1 東南アジアにおける政府-NGO関係
    シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピンの4カ国で、環境保全における政府とNGOの関係を調査した結果、シンガポール・マレーシアは政府主導でNGO規制の強い「権威主義=パタ-ナリズム」であり、フィリピンは、国・地方の両レベルでNGO参加を制度化した「リベラル、コ-ポラティズム」ライは、NGOが参加権を制度化されていないが活動量が大きい「遮蔽型多元主義」といえることがわかった。
    2)-2 タイのコミュニティ・ベースド・ディベロップメント活動
    UCDO (Uraban Community Development Office)の助成によるバンコクのスラム地域における雇用創出・コミュニティー形成事業について現地研究者との共同で実態調査を行い、a)政府の資金援助と貯蓄・組合形成などを促す適切な事業スキームb)政府-企業-NGOセクターの緊密なパートナーシップなどの結果、急激な経済成長から取り残された貧困層の相当部分に自立と協同のアクションを呼び起こしていることを検証しえた。
    2)-3 東南アジア環境問題の特質と国際協力
    フィリピン、タイを中心に、東南アジアの環境問題の特質・環境対策と日本からの技術援助など実態を調査した結果、a)東南アジアの環境問題は、経済成長・先進社会化に伴って起こっており、先進国の経験を踏まれた国際協力は有効性をもつ b)従来の通説とは異なり、自然環境保全技術には技術移転の条件が高いが、公害防止技術の転移に困難が大きいなどの知見を得た。

  • 環境・災害の経済構造とその変動に関する研究

    科学研究費助成事業(京都大学)  科学研究費助成事業(一般研究(A))

    研究期間:

    1990年
    -
    1992年
     

    塚谷 恒雄, 松岡 俊二, 石田 紀郎, 水間 滿郎, 高橋 正立, 池淵 周一, 鈴木 和志

     概要を見る

    本研究は、価値観が長期的に変動する場合の環境汚染・災害防止の経済理論を、国内公共投資と国際公共投資の面から理論的に開発し、長期的な環境汚染・災害防止の国際的経済政策を提示しようとするものである。本年度は、70年間にわたって秘密のベールに包まれていたソ連社会主義の環境汚染と災害の実態を、旧ソ連邦・カザフスタン共和国の環境災害問題を例にとって分析し、学際的国際協力のありかたを探った。
    1950年代から開始された綿花栽培を中心とする中央アジアの潅漑農業は、早くも1960年代後半から砂漠化をすすめ、ユーラシア大陸最大の環境破壊を産み出した。その結果天山山脈とパミール高原からの水資源は乾燥地帯で蒸発し、アラル海を縮小し、地下水を汚染した。この事態に鑑み本研究では、(1)環境破壊と災害を生ぜしめた政治経済的構造を現地カザフスタン共和国の資料をもとに分析し、(2)その結果生じた健康影響について現地の資料をまとめ、アラル海と核実験場周辺を調査し、(3)乾燥化の発生メカニズムを分析するため、カザフスタン共和国農業科学アカデミーと共同して実験農場を確保し、長期的かつ国際的な調査体制を構築した。
    これらの研究成果は、日本カザフ研究会(京大農学部)の調査報告書(裏面参照)などすでに各所で公表したが、現在出版を前提とした総合報告書を取りまとめ中である。
    本研究は国際的にも注目を集めるところとなっており、とくにカザフスタン共和国科学アカデミー、同農業科学アカデミーは、京大農学部との共同研究体制を整えつつある。また平成5年度からは国際学術研究「中央アジア・カザフスタンの環境と経済の再生計画」として、カザフスタン、オーストラリア、アメリカ、ドイツなどの研究者と共に本研究を発展させる予定である。

  • 合衆国の産業構造転換過程における都市問題ー伝統的工業都市の衰退と再生をめぐってー

    科学研究費助成事業(大阪経済大学)  科学研究費助成事業(国際学術研究)

    研究期間:

    1989年
    -
    1991年
     

    重森 暁, HILL Richard, BANGS Ralph, TABB William, 岡本 祥浩, 松岡 俊二, 植田 和弘, 樫原 正澄, 遠州 尋美, 塩崎 賢明, 木下 滋, 加茂 利男, 横田 茂

     概要を見る

    従来の研究は、先進資本主義国間の激しい国際競争の中で合衆国産業の競争力を再び回復するために、とりわけ戦略的重要性を持つ産業分野に投資を集中し、より効率的で高い製品開発力を持つ生産システムを築くこと、そしてその文脈の中で地域のrestructuringを進める強力な地方のリ-ダ-シップを確立しようとするものである。しかし、当然のようにも思えるこの志向性は、グロ-バルな視点で見た80年代の特徴が、南北格差の一層の拡大と地球的規模での環境問題の深刻化として特徴づけられていることを考えれば、問題解決の方向性を誤らせる危険性を持つといえる。すなわち、資本主義経済が、地球的問題を解決して発展して行くことが可能かという、より基本的問題に答えようとする方向性を持たないためである。もちろん、合衆国にあってもSustainable Developmentの視点を持った環境経済学の展開はあるが、それは構造転換と地域再生にかかわる研究と、ほとんど接点を持っていない。合衆国大企業の多国籍化と脱工業化を最も辛辣に批判してきたレギラシオン学派の場合でも、その指摘は当てはまる。すなわちレギラシオン学派の規定によれば、20世紀資本主義経済を支配してきたFordismの核心は、単に大量生産を実現した自動化とTaylorismにあるだけはでなく、production workersの賃金レベルを劇的に引き上げることによって大量生産に照応する大量消費市場を築いたこと、すなわち内需主導型の蓄積方式そのものにある。ところが、彼らが正しく分析するように、ヨ-ロッパ、日本から低価格の商品が北米市場に流入し始めたことによってその維持が困難になったとき、硬直化した生産システムを改善し、労働者の労働意欲を高め、優れた品質の製品生産による対抗によって、内需主導型の蓄積構造を再建するのではなく、合衆国の大企業は、国内の不採算部門を切り捨て、賃金水準が低く、税負担や環境規制などのコスト要因の小さい発展途上国に生産過程を移すことによって収益性の回復をはかった。すなわち、Fordismの蓄積方式を自ら破壊しつつrestructiringを進めたのであって、多国籍化して以降の合衆国大企業はすでにFordist companiesですらないと言わなければならない。その結果、国内市場を破壊しただけでなく、低開発国の搾取によって世界市場の拡大をも制限し、今日の地球規模での問題をつくり出す原因となった。ところで、柔軟な大量生産方式と高い労働意欲により高品質の工業製品を生産して、強力な競争力を発揮している日本的生産システムなら、問題を解決できるかと言えば、それほど事態は単純ではない。確かに、資本主義市場での競争力において優位にあるものの、低開発諸国の搾取という点では、日本の多国籍企業と合衆国の多国籍企業とに本質的な相違はない。環境と調和しながら低開発諸国の生活水準とinfrastructureを向上させ、急速に世界市場の有効需要を拡大するという今日的課題に応える能力を有していないのである。
    結局、80年代に新たな展開を見せた合衆国の都市問題と地域再生問題は、実践的レベルにおいても理論的レベルにおいても、確かな解決の方向を見いだしていない。しかし、この間の努力がまったく無駄であったかといえば、もちろんそうではない。その解決の方向がいまだ明確にはされていないが、今日の問題をつくり出していた構造が明確となったことはとりわけ重要である。また、まだ実験的レベルであったり、必ずしも普遍性を持たないとしても、local initiativeが発揮され、州や自治体レベルで経験が積み重ねられたことも重要である。なかでもDowntown linkageやGrowth controlなどの開発利益再分配手法は、地域再生においてsocial equityを達成する上で欠くことが出来ない。さらに、パ-トナ-シップの限界を埋めて行く上で、neighborhood organizationの多様な活動は貴重である。なかでも、単なるvoluntarismや福祉事業にとどまらない活動は将来のモデルとして重要である。我々は、これら実践的理論的到達点を踏まえ、地球的規模での問題解決と個別の地域再生とを統一することを明確な目標にすえて、研究を発展させて行かなければならない。

  • 沿岸域環境の都市的理用と保全に関する研究

    科学研究費助成事業(神戸大学)  科学研究費助成事業(総合研究(A))

    研究期間:

    1989年
    -
    1990年
     

    塩崎 賢明, 吉田 薫, 杉原 五郎, 松岡 俊二, 樫原 正澄, 重森 暁, 植田 和弘, 遠州 尋美

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    平成元年度においては東京湾岸における海上公園に隣接する住宅団地(八潮パークタウン)の調査に行なった。この調査は、都市の沿岸域空間のひとつの主要な利用形態である都市的利用(住宅・学校・購買・医療・地域サービス等)について、その今日的形態が如何なる意味をもつものか評価しようとしたものである。具体的には、平成元年7月、東京都品川区の八潮パークタウン(入居戸数5253戸)の住民に対してアンケート調査を行なった(配布数897、回収数835、回収率93%)調査の結果、八潮パークタウンにおいても、交通、買物、医療施設等の生活施設に関して多くの問題点が存在することが明らかとなった。平成2年度においては沿岸域の市民的利用形態の典型であるオープンスペースをとりあげ、東京都海上公先、西宮市甲子園浜、堺市臨海部、福岡市海ノ中道公園等を対象に調査研究を行なった。東京都の海上公園については、関係行政機関等への聞取り調査、資料収集のほか、大井埠頭中央海浜公園、お台場海浜公園、葛西海浜公園を対象地として、各公園の利用者にアンケート票を配布し郵送で回収を行なった (回収票1005票)。このなかで、海上公園が大都市臨海部で長年にわたって続けられてきたオープンスペース確保の施策であり、当該地域の空地の確保に大きく寄与していると同時に、利用者に歓迎されていること等があきらかとなった。また、海ノ中道公園については関係行政機関への聞取り調査、甲子園浜や堺市臨海部については、開発経過の資料収集の他、関係タ体への聞取り調査などを行なった。このほか、20数回の研究会を開催しながら、環境管理計画のあり方、沿岸域の計画・管理システム論、沿岸域の開発主体論、沿岸域開発と地方自治論、市民参加論などに関する検討を行なった。

  • 自然環境の経済的評価に関する研究

    科学研究費助成事業(広島大学)  科学研究費助成事業(奨励研究(A))

  • 原子力災害被災地におけるコミュニティ・レジリエンスの創造

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(挑戦的萌芽研究)

  • 21世紀COEプログラム・社会的環境管理能力の形成と国際協力拠点

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現在担当している科目

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特別研究期間制度(学内資金)

  • 持続可能な地球社会及びアジア社会に関する研究

    2014年09月
    -
    2015年09月

    イタリア   欧州大学院

    フランス   パリ政治学院

他学部・他研究科等兼任情報

  • 社会科学総合学術院   大学院社会科学研究科

  • 政治経済学術院   大学院経済学研究科

  • 附属機関・学校   グローバルエデュケーションセンター

  • 理工学術院   大学院先進理工学研究科

学内研究所・附属機関兼任歴

  • 2022年
    -
    2024年

    カーボンニュートラル社会研究教育センター   兼任センター員

特定課題制度(学内資金)

  • 「厄介な問題」に挑戦する対話の場と境界知作業者に関する研究

    2024年  

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    本研究「厄介な問題」に挑戦する対話の場と境界知作業者に関する研究」は、気候変動問題と福島復興問題の2つの事例を対象とした。科学と政治と社会が協働した「対話の場」の形成による社会課題の解決のための知識創造が有効に機能する要因や条件を、境界知作業者に注目して考察した。具体的には、福島県浜通りで開催されている1F地域塾(1F廃炉の先を考える地域塾)と福島県中通りで行われている「こおりやま広域圏気候変動対策推進研究会(福島県郡山市とその周辺16市町村の環境政策担当者より構成)」を対象とし、「対話の場」の担い手(専門家、行政担当者、市民)へのインタビュー調査や対話の場の参加者へのアンケート調査から境界知作業者の能力や資質を分析した。社会全体の変革のためには、特定の境界知作業者が活躍するだけではなく、地域づくりに関わる多くの関係者が境界知作業のマインドを持つことが重要であり、そのための環境整備が必要である。本研究は、その1つのアプローチとして対話ツール(デザイン)にも着目し、関連の取り組みをレビューするとともに、具体のツール(デザイン)の分析を試みた。さらに、既存の「対話の場」および、対話を促進するためのツール(ステークホルダー・マッピング、サイエンス・カフェ、気候変動ミステリーなど)のレビューと調査を実施した。また、「対話の場」の担い手(専門家、行政担当者、市民)へのインタビュー調査とアンケート調査を行った。以上の調査研究から、境界知作業者の能力や資質として、従来言われてきたエンパシー能力だけでなく、シンパシー能力も重要であるとの示唆が得られた。今後は、境界知作業者におけるエンパシー能力とシンパシー能力との相互関係について考察を行う。

  • 地震災害を対象とした科学的予測の不確実性とリスク管理政策の社会的納得性

    2023年   黒川 哲志, 松本 礼史, 竹内 真司, 藤原 広行

     概要を見る

    マグニチュード8クラスの巨大地震への備えには長期的な取り組みが必要であるが、科学的予測の不確実性や、現在世代と将来世代の間での費用負担の公平性などの課題を抱えている。このような科学者のみでは回答が難しいトランス・サイエンス的課題では、様々なステークホルダーとの協働が社会に望ましい解決策を導くための鍵である。そこで本研究は、巨大地震予測の不確実性を踏まえた長期的災害対策と世代間公平性をテーマに、100年の発生確率が40%近くに及ぶ首都圏のM8クラスの海溝型巨大地震に焦点を当て、科学者、行政担当者、一般市民を含む『首都圏・巨大地震を考える市民会議』を形成し、長期的視点に基づく災害対策について議論する。この市民会議での対話や学びを通じ、科学的予測の不確実性と世代間公平性の問題に取り組む過程で、参加者の地震に対する科学リテラシーや認識の変容を観察・記録する。それをアンケート調査やインタビュー分析と組み合わせることで定量的・定性的に分析し、不確実性を考慮しつつ将来世代にも配慮した、真に社会にとって望ましい持続的かつ長期的な災害対策を解明・提言することとしたい。

  • 地震動予測の不確実性を包摂した長期的リスク管理政策に関する対話の場と社会的納得性

    2023年   黒川 哲志, 松本 礼史, 竹内 真司, 藤原 広行

     概要を見る

    マグニチュード8クラスの巨大地震への備えには長期的な取り組みが必要であるが、科学的予測の不確実性や、現在世代と将来世代の間での費用負担の公平性などの課題を抱えている。このような科学者のみでは回答が難しいトランス・サイエンス的課題では、様々なステークホルダーとの協働が社会に望ましい解決策を導くための鍵である。そこで本研究は、巨大地震予測の不確実性を踏まえた長期的災害対策と世代間公平性に関して調査研究雨を行うこととして、100年の発生確率が40%近くに及ぶ首都圏のM8クラスの海溝型巨大地震に焦点を当て、科学者、行政担当者、一般市民を含む『首都圏・巨大地震を考える市民会議』を形成し、長期的視点に基づく災害対策について議論することを計画した。この市民会議での対話や学びを通じ、科学的予測の不確実性と世代間公平性の問題に取り組む過程で、参加者の地震に対する科学リテラシーや認識の変容を観察・記録することとしたい。それをアンケート調査やインタビュー分析と組み合わせることで定量的・定性的に分析し、不確実性を考慮しつつ将来世代にも配慮した、真に社会にとって望ましい持続的かつ長期的な災害対策を解明・提言することを予定している。研究の本格実施は、科研・基盤研究Bのスタートに合わせ、2024年4月を予定している。

  • 大規模複合災害の教訓の継承と境界知の役割に関する研究

    2022年  

     概要を見る

      本研究は、地震・津波災害、原子力災害、新型コロナ感染症、気候変動災害など、人間社会の持続性に対する多様な災害を対象として、「未来へ繋ぐ災害対策」のあり方を検討した。特に、災害対策における社会イノベーションを創り出すための科学と政治と社会の協働による「対話の場」=「学びの場」の形成とそうした「場」の形成における境界知の役割を、福島の原子力災害の復興や廃炉を事例に考察した。考察の結果、災害の教訓を継承し、未来へ繋ぐ災害対策を形成するための境界知(境界知作業者)には、「他者の靴を履く」能力としてのエンパシーと被害者に寄り添いつつ、物事を客観視する「2.5人称」の視点が必要なことを明らかにした。

  • 縮小社会における創造的復興のあり方と地域再生モデルに関する研究

    2021年   松本 礼史, 竹内 真司, 黒川 哲志, 島田 剛, 森口 祐一, 高原 耕平

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     本研究は、福島復興や1F廃炉をめぐる問題をトランス・サイエンス的課題と定義し、ALPS処理水の海洋放出に対する社会的納得性の醸成の難しさ、福島イノベーション・コースト構想および国際教育研究拠点に対する社会的受容性の醸成の難しさについて考察した。復興政策や廃炉政策の経路依存性は強固なものがあり、既存の経路へのロックインを解除することは困難である。しかし、トランス・サイエンス的課題としての復興と廃炉に対して、「復興と廃炉の両立」を可能とする政策を形成し、政策への社会的納得性と社会的受容性を醸成するには、専門家と行政と住民による「対話の場」の形成と社会イノベーションの創出が不可欠であるとの結論を導出した。

  • ポスト・トランス・サイエンス時代における科学技術リスクと社会的合意形成

    2020年  

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    本研究は、&nbsp;科学技術リスクと社会をめぐる21世紀の新たな状況を踏まえ、新たな観点から科学者・専門家と市民・住民との関係を考えようとしたものである。 21世紀の社会における専門家や市民は多様であり、専門家(専門知)と市民(地域知)という二項対立的な問題設定そのものを問い直し、専門知と地域知を媒介する境界知と境界知作業者の役割に注目している。さらに、過去の災害や事故などにおけるリスク・マネジメントの成功や失敗という歴史の教訓の継承について、記録の集合的記憶への転化における境界知作業者の重要性を、ノンフィクション作家・柳田邦男が提示した「2.5人称の視点」も含めて考察した。

  • 相互模倣による社会イノベーションの共進化プロセスと地域の持続性

    2019年  

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     本研究は、地域間における社会イノベーションの波及メカニズムを「相互模倣による社会イノベーションの共進化プロセス」と仮定し、瀬戸内国際芸術祭と福島県浜通り地域における地域アートを調査した。調査の結果、福島県浜通り地域においては復興資金をベースとして多くの地域アートイベントが行われてきたが、全体をまとめるコンセプトや仕組みが欠落しおり、瀬戸内国際芸術祭のような相乗効果がなく、模倣プロセスが有効に機能しなかったことが分かった。福島県浜通りはトップダウンによる大規模芸術祭が難しい状況で、どのように有効なネットワーク構造を形成できるのかが問われている。

  • 原子力災害におけるリスク・コミュニケーションと社会的受容性モデルの開発

    2018年  

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     本研究「原子力災害におけるリスク・コミュニケーションと社会的受容性モデルの開発」は、原子力災害の被災地・福島を対象に、原子力災害からの復興過程におけるリスク・コミュニケーションのプロセスを、科学技術社会論における欠如モデルと文脈モデルという視角から分析し、これら2つのモデルの意義と限界を明らかにした。さらに、原発事故により失われた社会的信頼の再建のためには、新たな社会モデルの開発が必要であるとの考えから、Wüstenhagen et al.(2007)や丸山(2014)らが展開してきた社会的受容性論に着目し、社会的相互受容性に基づくリスク・コミュニケーション・モデルの開発に挑戦した。

  • 原子力災害復興におけるリスク・コミュニケーションのあり方に関する研究

    2018年  

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     本研究「原子力災害復興におけるリスク・コミュニケーションのあり方に関する研究」は、原子力災害の被災地・福島を対象に、原子力災害からの復興過程における低線量被曝に関するリスク・コミュニケーションを、科学技術社会論研究における欠如モデル(Deficit Model)と文脈モデル(Context Model)という視角から分析し、これら2つのモデルの意義と限界を明らかにした。さらに、原発事故により失われた社会的信頼の再建のためには、新たな社会モデルの開発が必要であるとの想定から、Wüstenhagenet al.(2007)や丸山(2014)らが展開してきた社会的受容性論に着目し、社会的相互受容性(Social Interactive Acceptance)に基づくリスク・コミュニケーション・モデルの研究開発に挑戦した。

  • 多様性アプローチによる環境イノベーションと社会イノベーションに関する研究

    2014年   松本礼史, 田中勝也, 鈴木政史

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     本研究は当初計画では3年の研究期間を想定し、地域イノベーションと環境イノベーションを統合させた地域環境イノベーション・メカニズムの解明を目的としたものであった。その準備として、本特定課題では研究フレームの検討を行った。研究の結果、キーワードとして社会的受容性論に注目することとし、社会的受容性とは、新たな環境技術や環境政策が社会に受け入れられる条件や程度を示すものと定義した。こうした社会的受容性は、技術的影響評価である技術的受容性、社会政治的適応性である制度的受容性、経済性をみる市場的受容性、地域的適応性をみる地域的受容性、という4つの要素(独立変数)から構成されるとの研究フレームを設定した。

  • 原子力発電の安全規制と社会的能力に関する研究

    2014年  

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     福島事故を契機に原子力に対する社会的規制のあり方が大きな学術的・社会的課題となっている。本研究は、社会科学における制度論アプローチにより、原子力発電の安全規制と社会的能力との関係を明らかにすることを目的とした。研究の結果、日本の原子力規制制度は、2012年の原子力規制委員会(NRA)の設置により、従来の原子力安全・保安院と原子力安全委員会という「ダブルチェック体制」の問題点が克服され、規制機関の独立性や透明性が確保されたと評価した。しかし、NRAの組織形態や、NRAが環境省の外局として位置づけられた点は、今後の検討課題であると評価した。また、リスク・コミュニケーションも今後の大きな課題であると評価した。

  • 原子力発電の安全規制と社会的能力に関する研究

    2013年  

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     2012年9月に発足した原子力規制委員会(NRA)の社会的評価を、主に独立性(政治的、行政的、人事・財政)と透明性(情報公開)という2つの基準から分析を行った。その結果、既存の原子力推進機構・行政からの独立性(行政的独立)は一応達成されたものの、環境省の外局としての位置づけには一定の懸念が残ると評価した。また、政治的独立性は確保されているが、人事的・財政的独立性には疑問が残ると評価した。透明性と言う点では、意思決定過程の情報開示、国会への報告義務、推進組織、事業者、政治家などとの交渉記録の作成と公開、委員の国会同意人事という4つの項目で評価し、全て基準を満たしていると評価した。 このように、現時点では、原子力安全規制については、原子力規制委員会(NRA)がやるべきことは、NRAとしてかなりの部分は良くやっていると評価出来る。もちろん、現在の日本的な段階的分節的な安全規制を、より総合的な包括的なリスク管理型安全規制に移行し、自発的環境イノベーションの誘因を組み込んだ制度デザインを構築するといった大変大きな課題や人材育成の問題は残っているので、しっかりとみていく必要がある。 しかし、NRA以外の国(政府、国会、司法)、地方自治体、企業・産業、大学・学会、マスコミ、市民社会が、広い意味での原子力リスク・ガバナンスのなかで果たすべき責任や役割は、現状では極めて不十分にしか果たされていないと考えられる。特に、原発立地地域の避難計画などの地域対策・オフサイト対策、市民や国際社会とのリスク・コミュニケーションのあり方、原子力をめぐる安全文化の構築などをめぐる垂直的・水平的なステークホルダー(社会的アクター)との関係性の整理・調整と恊働関係の構築といった課題は、課題としてもまだ十分に成熟した形で設定できていないし、当然ながら、こうした課題解決へ向けた社会的営為は今後の大きな宿題である。 もう一方の研究テーマである福島復興の状況については、ある意味で、原子力安全規制の問題よりも深刻な状況にある。地に足の着いた形で、なおかつ普遍的な価値をもった福島(「フクシマ」)復興モデルを、Resilience, Sustainability, Diversity, Innovationといった4本柱を中心に具体化することを検討してきた。その際、天災と人災の複合災害である福島原発事故を21世紀型災害の普遍的なケースとして把握し、こうした21世型災害を予防し、災害に抵抗力があり、持続可能な地域社会を「多様性を生かした地域イノベーション」によって構築し、そうした「フクシマ復興モデル」を点から面へと広げる制度改革・制度構築(社会イノベーション)のあり方を、その担い手(プレイヤー、アクター)のあり方も含めて構想している。

  • 社会的能力とガバナンスからみた震災復興計画の評価研究

    2012年  

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     本研究「社会的能力とガバナンスからみた震災復興計画の評価研究」は、福島原発事故にともなう災害復興に焦点を当て、社会的能力とリスク・ガバナンスいう観点から復興過程と今後の原子力安全規制のあり方を研究することを目的としている。その際、単に原子力災害復興だけでなく、今回の福島事故を引き起こした原子力安全規制の問題点や地域住民の原子力行政に関する認識や信頼が事故の前後でどのように変化しているかも含めた総合的な研究とするように計画した。  原子力リスク・ガバナンスについては、2011.3.11の福島原発事故以前の原子力関係者(政官財マスコミ)による原子力村構造から根本的に脱却し、今後はより開かれた透明性の確保されたアクターの関係性の中でガバナンスを形成する必要がある。そのためには、原子力規制委員会は社会的責任をはたし、国民の信頼を得ることが第一義的に重要である。この点では、活断層評価は開かれた議論を展開しており、一定の信頼回復に貢献したと評価しうる。第2のポイントは、被規制産業である電力産業の改革である。自ら高い安全基準の達成を目指して環境イノベーションを起こすような市場構造や産業組織にすることが重要である。福島事故の社会経済的要因の一つは、垂直型の地域独占制度による競争の欠如であった。先頃、政府は2015年頃をめどに発送電分離を含む電力改革と大幅な自由化を目指すとした方針を明らかにしたが、スピード感が欠如しており、このままでは旧態依然とした電力産業が存続する。有効な社会的規制と規制の社会的能力という観点からは、深刻な問題と評価される。第3のポイントは規制機関と市民社会・地域社会との関係である。この点はすでに述べたように、厳格で科学的な安全規制基準設定とその実施により、原子力規制への社会的信頼を回復することが重要である。また、SA(過酷事故)時の周辺地域避難計画の策定と防災・減災社会の形成も重要である。こうした市民社会・地域社会と規制機関との開かれた透明性のある関係形成にはまだまだ時間を要するものと考えられる。 リスク評価については、規制機関の能力と意図に基づく伝統的な信頼モデルと近年の主要価値類似性(SVS)理論に基づく方法を踏まえ、2013年1月13日に福島県いわき市において8名の被災者を対象とした予備インタビュー調査を実施し、震災前における伝統的モデルの適用可能性と震災後におけるSVSモデルの妥当性を検討した。現在、この予備調査を踏まえ、本調査を2013年度に実施する準備を進めている。

  • 社会的能力形成と制度変化アプローチによる地球持続性学の構築

    2010年  

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     本研究計画は、経済史研究のD. North、コモンズ研究のE. Ostromや政治学のR. Putnam、O. Youngらの社会科学者における近年の制度研究の台頭に着目し、開発援助研究における能力構築論と社会科学における制度研究を突き合あせ、融合・進化させることにより、国際開発協力研究という観点から新たな地球持続性(グローバル・サステイナビリティ)学を構築することを目的としたものであった。 具体的には、能力構築の議論を制度研究と融合・進化させ、「社会的能力形成と制度変化」という視角から途上国の社会的能力や制度の現状と問題点を評価する方法を、社会的能力アセスメント手法(Social Capacity Assessment; SCA)として開発し、こうした社会的能力アセスメント手法によって途上国の社会的能力と制度変化を分析し、「社会的能力形成と制度変化」アプローチを国際開発協力政策へ具体化することにより、地球持続性学の構築を試みることとした。「社会的能力形成と制度変化」アプローチに基づく国際開発協力をめぐる研究成果は、国際開発協力からみた地球持続性学の展開といった学術的成果だけではなく、グローバル・サステイナビリティ社会の形成支援をめざす世界の国際開発協力政策に対しても大きく寄与するものと考えられる。 当初の研究実施期間の予定が3年であったところ、1年間の準備研究期間となったため、社会的能力の形成と制度変化の応用・適用対象として、東アジアにおける地域環境管理制度の構築を設定し、2010年9月の環境経済政策学会や2010年12月の国際開発学会の全国大会において、「環境管理能力の形成と制度変化」に関する企画セッションなどを開催し、研究成果を報告するとともに関連論文を発表した。 以上の取り組みから以下のような知見を得た。(1)個別社会や主権国家内の社会的能力アセスメントについては、筆者らの開発してきた3×3のアクター・ファクター・マトリックス分析表などの手法が有効である。(2)東アジアにおける地域環境制度などの複数の国家にまたがる社会的能力形成や制度構築については、Putnamの2レベル・ゲームの応用などが可能である。(3)グローバル化の進展の中で、国際機関・多国籍企業・国際NGOなどの国際的なアクターの動きが重要になってきており、こうした国際的アクターの活動基盤となる地域ネットワークの形成や社会的価値や規範の共有などが、地域における能力形成や協力変化にとって重要である。

  • 持続可能な地球社会形成のためのガバナンスとジャーナリズムに関する研究

    2010年  

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     本研究・「持続可能な地球社会形成のためのガバナンスとジャーナリズムに関する研究」は、地球持続性研究の課題群から、ガバナンスとジャーナリズムという2つの課題に着目し、持続可能な地球社会形成の動態過程を考察することを目的とした。その際、本研究は、地球環境ガバナンスの形成のためには、重層的・多面的環境ガバナンスの研究と重層的・多面的アクター間の情報共有を促進するジャーナリズム研究を結びつけることが不可欠であるとの仮説に基づいた。そのため、本研究は、重層的多面的環境ガバナンスの理論的・実証的分析を主に環境経済学や環境政治学に基づいて行い、こうしたガバナンス形成にかかわるジャーナリズムのあり方を主として社会学をベースとしたジャーナリズム(マスコミ)研究として組織し、全体として学際的共同研究を行うことを目的としたものであった。 本研究計画は当初、5年間の研究期間を予定していたが、1年間の準備期間となったため、主に重層的・多面的ガバナンスの形成と発展に焦点を当てた、研究活動を行うこととした。また、共同研究者として、日本大学生物資源科学部・松本礼史准教授、滋賀大学環境総合研究センター・田中勝也准教授などが参加した。 2010年度の研究では、重層的・多面的ガバナンスの具体的な分析対象として東アジアにおける地域環境制度をとりあげ、こうした地域環境制度の形成と発展のメカニズムに焦点をあてた研究活動を行い、環境経済政策学会、ヨーロッパ環境政治学会、国際開発学会などにおいて研究報告を行うとともに、論文などを作成した。 以上の研究活動を通じて、以下のような知見を得た。(1)重層的・多面的環境ガバナンスとしての地域環境制度の分析を、制度論的アプローチにより行うことによって、東アジアの地域協力制度の経路依存性が1990年代前半の政治社会経済状況に大きく規定されていることがわかった。(2)東アジアの地域環境制度は、従来、弱い制度あるいは効果的ではない制度として把握されてきたが、こうした弱い制度が持続しているメカニズムの解明が重要である。(3)地域環境協力制度は、経済協力制度や政治的・安全保障協力制度などと相互関連性・相互規定性が強くあり、こうしたセクター間・機能間の制度間関係を分析することが今後の制度変化や制度発展を考える上で重要である。

  • グローバル・サステイナビリティ実現のための国際開発協力学の構築

    2009年   丹呉 圭一, 朽木 昭文, 松本 礼史, 田中 勝也, 小松 悟

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     本研究「グローバル・サステイナビリティ実現のための国際開発協力学の構築」は、先進国と途上国との協働に基づく途上国のキャパシティ・ディベロップメント(社会的能力の形成)過程の解明が国際開発協力学の中心的課題であるとの仮説に立脚し、グローバル・サステイナビリティと社会的能力形成という観点から「国際開発協力学」という新たな学問研究領域を構築することを目的とした。その際、国際開発協力学の分析フレームワークとして「途上国における社会的能力形成と制度変化との動態的相互作用過程」モデルを設定し、この理論モデルの具体化を目的とした社会的能力アセスメント手法の開発を、アジア・アフリカにおける国際開発協力事例の理論的・実証的研究を通じて行った。 こうした研究目的を遂行するため、2009年度には合計8回の研究会を早稲田大学で開催するとともに、研究会での議論を踏まえて、以下のような学会における企画セッションや国際学会における研究発表、海外調査などを行った。 1.環境経済政策学会(千葉大学)、2009年9月26日、企画セション「国際環境協力研究の到達点と今後の展望」(企画責任者・松岡) 2.アムステルダム会議(オランダ)、2009年12月1日-4日、2009 Amsterdam Conference on the Human Dimensions of Global Environmental Change,”Earth System Governance: People, Places and the Planet”(研究報告) 3.ライプチヒ会議(ドイツ)、2010年1月19日-22日、Conference on Governance of Natural Resources in a Multi-Level Context - Leipzig 2010、(研究報告) 4. アメリカ調査、2010年2月23日-3月1日、オレゴン大学・Mitchell教授やUCサンタバーバラ・Young教授などとの面談・研究打合せ 以上の研究活動を通じて、国際開発協力学における「社会的環境管理能力の開発と制度形成」アプローチを、さらに国際環境条約や地球環境ガバナンスなどの方向へ発展させる必要性を明らかにし、新たな科学研究費プロジェクトの申請などを行った。 なお、本研究は特定課題B「社会的環境管理能力の開発と制度形成からみた日本の国際環境協力の評価」(課題番号:2009B-326)との緊密な連携の下に実施した。

  • 社会的環境管理能力の開発と制度形成からみた日本の国際環境協力の評価

    2009年   丹呉 圭一, 朽木 昭文, 松本 礼史, 田中 勝也, 小松 悟

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     本研究「社会的環境管理能力の開発と制度形成からみた日本の国際環境協力の評価」は、日本の国際環境協力の評価を、途上国の社会的環境管理能力の開発と制度形成という観点から行い、途上国の持続可能な発展を支援する効果的な国際環境協力のあり方を明らかにすることを目的としたものである。その際、本研究は、国際開発協力分野で議論されてきたキャパシティ・ディベロップメント(以下、CDと記す)と社会科学分野における制度研究を突き合わせることにより、両者の融合・進化を試み、国際環境協力における「社会的環境管理能力の開発と制度形成」アプローチを構築し、このアプローチを具体化する方法論として社会的能力アセスメント手法の研究開発を行った。 こうした研究目的を遂行するため、2009年度には合計8回の研究会を早稲田大学で開催するとともに、研究会での議論を踏まえて、以下のような学会における企画セッションや国際学会における研究発表、海外調査などを行った。 1.環境経済政策学会(千葉大学)、2009年9月26日、企画セション「国際環境協力研究の到達点と今後の展望」(企画責任者・松岡) 2.アムステルダム会議(オランダ)、2009年12月1日-4日、2009 Amsterdam Conference on the Human Dimensions of Global Environmental Change,”Earth System Governance: People, Places and the Planet”(研究報告) 3.ライプチヒ会議(ドイツ)、2010年1月19日-22日、Conference on Governance of Natural Resources in a Multi-Level Context - Leipzig 2010、(研究報告) 4. アメリカ調査、2010年2月23日-3月1日、オレゴン大学・Mitchell教授やUCサンタバーバラ・Young教授などとの面談・研究打合せ 以上の研究活動を通じて、国際環境協力における「社会的環境管理能力の開発と制度形成」アプローチを、さらに国際環境条約や地球環境ガバナンスなどの方向へ発展させる必要性を明らかにし、新たな科学研究費プロジェクトの申請などを行った。 なお、本研究は特定課題B「グローバル・サステイナビリティ実現のための国際開発協力学の構築」(課題番号:2009B-373)との緊密な連携の下に実施した。

  • 社会的能力アプローチによるサステイナビリティ学の構想

    2008年  

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    1. 研究の目的 本研究「社会的能力アプローチによるサステイナビリティ学の構想」は、人間活動の濃密に集約された空間構成体である「都市」を対象として、「持続可能な都市」の再検討を行うことにより、「サステイナビリティ(Sustainability、持続可能性)」とは何かを考察する。2. 研究の方法 サステイナビリティを単なる「到達目標(結果)」あるいは「均衡」として定義するのではなく、持続可能な都市を創出しようとする「過程(プロセス)」そのものから、サステイナビリティを明らかにすることを試みた。こうしたプロセスを解明するため、松岡らが研究開発してき社会的能力アセスメント(SCA)手法を都市研究に応用した。3. 研究の対象と実施 研究対象はコンパクト・シティ(持続可能都市、環境首都なども含む)を標榜する国内外の都市とし、海外都市などを対象とした文献調査と北九州市や広島市などへの現地調査を組み合わせて研究を実施した。4. 研究の成果 国内外のコンパクト・シティが果たして持続可能なものなのかどうかを、先行研究に依拠しつつ、人口密度と都市の自動車利用やエネルギー利用などとの相関関係から分析した。こうした研究から、従来のコンパクト・シティをめぐる研究には、大きく言って2つの欠点があり、その解決方法を考察した。 第1は、コンパクト・シティは、一般には人口密度と複合的土地利用で語られることが多いが、明確な定義がなく、国際比較研究が困難にしている。また、都市政策としてコンパクト・シティの形成を考えた時、各都市はそれぞれの都市の成り立ちに大きく依存しており(強い経路依存性)、都市の持続性にとってはこうした歴史性やどのようなプロセスで今後の都市形成をおこなうのか、が重要である。 第2は、コンパクト・シティとサステイナビリティとの関係は、国際的には負の相関性、弱い関係性、限定的な相関性しか観察されず、コンパクト・シティの持続性に関する証拠が乏しく、曖昧である点である。日本の都市は公共交通の発達により、例外的に人口密度の高さと自動車利用の低さが確認されたものの、こうした結果の一般化には慎重であるべきであろう。

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