2024/03/29 更新

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ナカノ シゲル
中野 茂
所属
附属機関・学校 高等学院
職名
教諭
 

現在担当している科目

 

他学部・他研究科等兼任情報

  • 文学学術院   文学部

特定課題制度(学内資金)

  • 百科全書派がフロベールの作品に与えた影響

    2022年  

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     本研究では、近代小説を完成させたと言われているフロベール(1821-1880)の代表作『ボヴァリー夫人』(1857)における百科全書派の影響の射程の解明を行った。  18世紀中頃の啓蒙主義知識人の多くが参加した『百科全書』(1751-1772)は、ボヴァリー夫人の死という小説の重要な場面でこの作品が言及されているのみならず、百科全書派の思想の影響は小説の薬剤師オメーのディスクールを通して小説の隅々にまで及んでいる。  それゆえ本研究では、19世紀半ばの社会を描いた小説における百科全書派の思想と当時の宗教権力の闘いの有り様を、その闘いの象徴と言われる18世紀の3件の冤罪事件(〈カラス事件〉、〈ラ・バール事件〉、〈シルヴァン事件〉)に焦点を当て、小説の決定稿のみならず草稿を比較検討することで解明した。

  • ルソーのギュスターヴ・フロベール対する影響-ルソーの自伝的作品を中心に-

    2021年  

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    本研究では、ルソーの自伝的作品の『ボヴァリー夫人』に対する影響の解明を行った。ルソーの自伝的作品の特徴を成している感情の吐露からの脱却と、作家個人の感情や考えを作品中で表明せず、ただ描写するという、新しい文学観の構築こそが『ボヴァリー夫人』執筆の過程で試みられていたことであった。一方で小説中、ルソーの自伝的作品はイデオロギー的に対立する勢力の双方から援用されている。ルソー自身が『告白』の中で弁明している自己矛盾を、『ボヴァリー夫人』の物語の中に取り入れることで、当時のアンビバレントなルソー理解を小説中に反映させるのみならず、ボヴァリー夫妻の物語の不協和音を構成している。

  • 新型コロナ下における中等教育のフランス語オンライン授業の検証と展望

    2020年   菅沼浩子

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     2020年度1学期は日本のほとんどの高等学校が、一部もしくは全部の授業をオンラインで展開せざるを得ないという状況に追い込まれた。このような厳しい状況において、各校のフランス語の教員がいかにオンライン授業に対応し、またオンラインというツールを活用していったかを検証した。とりわけ、カリタス女子高等学校、早稲田大学高等学院、伊奈学園総合高等学校、アサンプション国際高等学校におけるオンライン授業の概要ならびに課題と展望を示した。 研究の成果は、第3回フランス語教授法研究会において発表され、会場からも様々な質問や意見が出て、活発な議論が行われた。概要は日本フランス語教育学会(SJDF)のHPに掲載されている。

  • ルソーのギュスターヴ・フロベール対する影響―ルソーの教育論を中心に―

    2020年  

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     本研究では、近代小説を完成させたフロベールの代表作『ボヴァリー夫人』(1857)におけるルソーの教育論『エミール』(1762)の影響の射程の解明を行った。 フロベールが『ボヴァリー夫人』執筆中に『エミール』を精読していたこともあり、子どもは乳母に預けることなく母親が育てるべきだという『エミール』の中で展開されるルソーの教育思想は、『ボヴァリー夫人』の決定稿や下書き原稿中で幾度も言及されている。その意味で、ボヴァリー夫妻の子どもの乳母への預け入れの場面は、フロベールの小説とルソーの教育思想が交差する場面と言っても過言ではない。それゆえ、本研究では『エミール』の影響を色濃く受けた乳母のシーンの分析を試みた。

  • 中等教育におけるフランス語教育の課題と展望ーフランスからの留学生受け入れプログラムの検証と考察ー

    2019年   菅沼浩子

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     本研究では、フランスからの高校生の短期受け入れの現状およびその課題を浮き彫りにし、課題解決に向けてのさまざまな取り組みを示しつつ今後の海外からの高校生受け入れの質的向上に向けての展望を示した。 本研究では、29校におよぶ日仏高等学校ネットワーク・コリブリ加盟校を研究対象にしつつ、とりわけ今回は早稲田大学高等学院およびアサンプション国際高等学校に焦点を当てた。 研究の成果は日本フランス語教育学会(SJDF)と在日フランス大使館−アンスティチュ・フランセ日本の共催で2019年12月に開催された第2回フランス語教授法研究会において発表し、会場からも様々な質問や意見が出て、活発な議論が行われた。概要はSJDFのHPに掲載予定である。

  • ルソーのギュスターヴ・フロベール対する影響-ルソーの小説を中心に-

    2019年  

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     本研究では、ルソーの『新エロイーズ』がフロベールの同時代小説に与えた影響を検証した。書簡集や作品(草稿の段階も含む)中での『新エロイーズ』に関する言及とその影響について検証した後に、フロベールが『新エロイーズ』の精読の際に自ら行った書き込みの精査を通して、この作品が作家の同時代小説に与えた影響の射程を明らかにした。 本研究により、フランス・ロマン主義文学の源流と言われ、プラトニックな愛を謳った『新エロイーズ』の影響を色濃く受けながらも、フロベールが独自の視点で新たな小説観を打ち立てていくプロセスを検証することができた。 この研究成果に関しては、『Etudes françaises』第27号(2020年3月発行)に掲載された。

  • ルソーのギュスターヴ・フロベールに対する影響

    2017年  

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     本特定課題研究においては、フロベールが記した『社会契約論』の読書ノートを詳細に検証することで、ルソーのフロベールに対する影響の射程に迫った。 フロベールの読書ノートは、大部分が『社会契約論』の忠実な要約から構成されているが、時折挟み込まれる批判的コメントから、フロベールがルソーと袂を分かった点が浮かび上がってくる。批判的注釈の多くは、歴史考証の視点から、さらには政治的な視点から行われている。とりわけ、フランス革命前の社会を生きたルソーはその著作の中で、「平等」概念に基づく社会の再構成を提案した一方で、フランス革命から半世紀以上経過した19世紀後半を生きたフロベールは、押し寄せる「低いレベルでの平等」への最後の砦として理想的な小説世界の構築を目指していた。ルソーの思想が平等を標榜する共和国を生み出したという意味で、フロベールはすべての問題の根源をルソーに見て取っていたことが分かる。

  • マルキ・ド・サドのギュスターヴ・フローベルに対する影響 -初期作品を中心に-

    2015年  

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      ギュスターヴ・フロベールは18世紀というパラダイムの中で思考し執筆した作家であったにもかかわらず、従来のフランス文学史の中では19世紀文学の枠の中から(「近代小説を完成させた」)、あるいは20世紀文学への影響(「現代小説の源流をなす」)という観点からもっぱら論じられてきた。そのため報告者は2009年よりフロベールと18世紀文学との関係性についての研究を開始し、ヴォルテールやベルナルダン・ド・サン=ピエールがフロベールに与えた影響、さらにはサドの作品がフロベールの青年期に与えた影響を解明してきた。  今回の特定課題研究において、報告者はサド作品の生涯にわたってのフロベールに対する影響、とりわけ創作姿勢や世界観に対する射程を、先行研究はもちろんのこと、フロベールの書簡集、創作ノート(『カルネ』)などにもとづき解明した。  当時の社会状況を反映して、フロベールの作品ではサド作品の影響はほぼ隠ぺいされているが、友人への手紙の中ではサドの作中人物の名前が頻繁に現れる。それゆえ今回の特定課題研究においては、書簡の中で言及される作中人物群というサドの痕跡をたどり、さらにはサド論が展開されている書簡集や創作ノート(『カルネ』)を紐解くことで、フロベールとサドの思想の接点を探った。  今後はヴォルテール、ベルナルダン・ド・サン=ピエール、サドをのぞけば、フロベールに最も大きな影響を与えた作家・思想家ルソーとの影響関係を解き明かす必要があるであろう。

  • 海外からの留学生受け入れプログラムの検証と考察:日仏高等学校ネットワークの例

    2015年   松田雪絵

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     グローバル人材の養成の必要性が叫ばれている昨今、多くの高校が生徒を海外へ送り出しているのみならず、海外から多くの留学生を受け入れている。しかしながら、留学生の受け入れの数的増加に対して、質的な向上が伴っていないのも事実で、担当教員が自身の経験に基づいて行っていることが多く、教育実践の観点からみるとまだ試行錯誤の段階にとどまっている。 それゆえ今回の特定課題研究において、報告者は長年留学生の受け入れに現場で携わっている高校でのフランス語担当者と日本最大規模の二つのフランス語研究会で共同発表を行い、フランスからの留学生に具体的にどのように授業や教科外の活動に参加してもらうのか、さらには教育活動全般をいかに活性化していくのかという方策や戦略、さらには留学生受け入れ自体の意義も探った。

  • ギュスターヴ・フロベールにおける18世紀の作家の影響-マルキ・ド・サドのケース-

    2014年  

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    従来は19世紀文学の枠の中から、あるいは20世紀文学への影響という観点から論じられることが多かった19世紀フランスの作家ギュスターヴ・フロベールは、さまざまな資料から明らかになりつつあるように、18世紀というパラダイムの中で思考し執筆した作家であった。報告者は、これまでフロベールと18世紀の作家との影響関係を解明してきたが、今回はサド作品が青年期のフロベールに与えた影響を詳らかにした。19世紀において禁書とされていたにもかかわらず多くの作家に影響を及ぼしたサド作品の当時の受容の全貌を明らかにすることで、19世紀のフランス社会が文学に求める〈暗黙の役割〉を浮かびあがらせた。さらに、この〈暗黙の役割〉に対して青年フロベールがいかに対峙し、どのような〈文学的闘い〉を繰り広げていったかに迫った。

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