2024/04/19 更新

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イノウエ タダシ
井上 正
所属
社会科学総合学術院
職名
名誉教授
学位
経営学修士 ( 神戸大学 )
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学歴

  •  
    -
    1981年

    神戸大学   経営学研究科   経営数学  

  •  
    -
    1976年

    横浜国立大学   経営学部   経営学  

所属学協会

  •  
     
     

    日本組織学会

  •  
     
     

    OR・経営科学学会

  •  
     
     

    日本経済学会

  •  
     
     

    日本経営数学会

  •  
     
     

    日本経営学会

研究分野

  • 経営学

研究キーワード

  • 経営学

 

論文

  • 多方向契約と契約コミットメント問題

    広島大学経済論叢(広島大学経済学会)   34 ( 2 ) 49 - 69  2010年11月

  • 課業配分および資産アクセス権の階層構造の設計

    広島大学経済論叢(広島大学経済学会)   33 ( 2 )  2009年11月

  • プリンシパル・エージェント契約とグループ・ダイナミクス

    広島大学経済論叢(広島大学経済学会)   32 ( 2 )  2008年11月

  • Social Norms,Culture and Economic Incentives in Firms

    ed. Gregory.T. Papanikos

    Applied Economic Research     161 - 176  2008年

  • 多階層組織とソーシャル・ノルム・マネジメント

    広島大学経済論叢(広島大学経済学会)   第31巻 ( 第2号 ) 57 - 81  2007年11月

  • チーム生産と効率的組織構造

    広島大学経済論叢(広島大学経済学会)   第29巻 ( 第3号 ) 11 - 26  2006年03月

  • 文系学部における組織論の教育方法

    井上 正

    『日本経営数学会誌』(日本経営数学会)   Vol.25 ( No.1 ) 70 - 76  2003年

    CiNii

  • 医療用医薬品の流通に関する実証研究

    「医療経済研究」(医療経済研究機構)   vol.11  2002年

  • 企業特殊的人的資本とアウトプットの最大化

    「成城大学経済研究所研究報告」   No.29  2001年

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書籍等出版物

  • 『組織行動論』(共著)

    中央経済社  2006年04月

  • 『組織と情報ー新しい企業理論の展開ー』(翻訳)(マーク・カッソン著)

    アグネ承風社  2002年

  • 『制度経営学入門』(共編著)

    中央経済社  1999年

  • 『企業組織の経営学』(共著)

    早稲田大学出版部  1999年

  • 『組織と情報の経営学』(共著)

    中央経済社  1989年

講演・口頭発表等

  • 企業における社会規範および文化と経済的インセンティブ

    2nd International Symposium on Economic Theory,Policy and Applications  

    発表年月: 2007年08月

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 外在的報酬による動機付けの締め出し効果に関する理論的・実証的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2014年04月
    -
    2017年03月
     

    鵜野 好文, 井上 正, 高橋 与志

     概要を見る

    Titmuss(1970)、Deci et al.(1971,72)の実証研究は、外的介入は内発的動機付けをクラウディング・アウト(MCO: Motivation Crowding Out)するという、経済学の「選好の公理」を否定する実証結果を提示した。本プロジェクトは、「実証研究の証左」を「選好の公理」に組込む統合理論を構築し、実証により確証している。<BR>本プロジェクトは、理論的には、(1)外的介入と内発的動機付けの加法的・二分法的静学モデルを、脱二分法モデルにまで進めている。(2)社会規範をモデルに加えることで、動学モデルへ拡張している。実証的には、(3)MCOモデルを実証により確証している

  • 集団規範による管理と多階層組織に関する理論的・実証的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2008年
    -
    2010年
     

    井上 正, 鵜野 好文

     概要を見る

    一般に、チーム生産においては、「ただ乗り」の発生により効率的生産水準を達成できないことはよく知られている。そこで、効率的生産水準を達成するため、プリンシパル・エージェント関係を形成する必要がある。しかし、その場合プリンシパルとエージェント間に結託が生じる可能性がある。本研究では、チーム生産に集団規範や集団凝集性といった一種の集団圧力を導入することで、効率的生産水準を達成できる場合があることを明らかにした

  • チーム生産とモラル・ハザード行動および社会規範の理論的・実証的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2004年
    -
    2006年
     

    鵜野 好文, 井上 正

     概要を見る

    本プロジェクトは企業組織ないし企業行動をどのように捉えれば現実の企業組織ないし企業行動に近いものになるかを考察することである。このとき、明確に存在する三つの視点を意識している。ひとつは企業組織をひとつの全体としての経済主体として捉える視点である。もうひとつは企業組織を個人という行為主体の集計された存在として捉える視点である。最後にこれら二つが交錯し統合しあう制度としての存在である。企業組織は制約された認知能力を持つ個人間の意図せざる相互作用の結果であり、それが、ひとつの制度的空間を持つとき企業組織となる。そして、この制度的空間は個人という行為主体の手を離れひとり擬態としてあたかも実体があるかのように振る舞う。機能主義と行為主義のこの二つの局面は制度という枠組みの中でしか説明がつかないものである。さらに、制度というとき、それは、文化、慣習、嗜好までも含む広義の意味を持つ。しかし、実際には、契約関係という明確な関係の中でしか捉えにくいものである。したがって、契約関係に分析の目が向きこの関係を説明するパラダイムの発展が促されている。しかし、実際には、制度を社会に供給する誘発を促した行為主体のことが背後にあることは忘れ去られている。制度は誘発され、継続され、変化させられるものであることを説明する枠組みが求められてしかるべきである。所与としての制度は、その枠組みの中で企業組織が行動を起こすことを前提とするのみで、企業組織を分析するパラダイムとしては一部を説明するのに好都合に設定されすぎている。そこで、本プロジェクトは次の三つの視点を持つパラダイムの提示をめざした。1.企業組織の行動、ないし、組織構成員の行動を契約関係のみならず、慣習、文化、嗜好等までも含む広義の意味での制度的視点からも考察できる分析枠組みを提示しようとした。2.企業組織は制約された認知能力を持つ行為主体の意図せざる相互作用の結果であり、それが、ひとつの制度的空間を持つと考え、相互作用する個人のレベルで制度を考察できる分析枠組みを提示しようとした。3.確立された制度としての企業組織ないし企業行動に対し、それが誘発され、持続し、そして、変動していく動的過程を考察できる分析的枠組みを提示しようとした

  • 企業組織における職務配置と従業員の能力

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2001年
    -
    2002年
     

    井上 正

     概要を見る

    ある企業が、他企業に勤務する労働者を新たに雇おうとする場合、雇い入れ企業は労働者の(生産)能力レベルに関しての情報について不利な立場にある。この不利な状況を克服するため、労働者の能力に関し不正確ではあるが、一つのシグナルとして労働者の現在の「職務配置」を使うことができると考えられる。職務配置を観察することで、現在労働者が勤務する企業と、これからこの労働者を雇い入れようとする企業間の労働者の能力レベルに関しての情報の非対称性は、幾分和らげられる。このような状況の下で、本研究では、次の3つの事柄を明らかにした。第1に、賃金は、能力レベルよりも、むしろ職務に関連する傾向があるということ。第2に、従業員の職務配置は、しばしば非効率に行われる傾向があること。第3に、この非効率の程度は、「企業特殊人的資本」のレベルと負の相関の傾向があるということ。これらの課題を分析するため「世代重複モデル」を用いて分析を行った。従来、このような課題に関しては、2つのアプローチが取られてきている。1つは、ある企業によって明らかになった従業員の能力に関する情報は、すべての企業が手に入れることができるというもの。もう1つは、その情報は、現在従業員を雇用している企業のみに明らかになるというものである。本研究では、後者の仮定に依拠しながら、上記の3つの問題点を議論した。昨年度の研究では、賃金は能力レベルよりも、むしろ職務に関連する傾向があるという第一の課題を明らかにし、本年度は、従業員の職務配置は、しばしば非効率的に行われる傾向があること。そして、この非効率性の程度は、「企業特殊人的資本」のレベルと負の相関の傾向があるということを明らかにした

  • 日本企業における企業金融と株式所有構造に関する研究

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    日本企業の取締役会は、実質的には生え抜き経営者の集まりであり、これに銀行などの少数の部外者が含まれているにすぎず、社長は通常は前任者が指名する。それゆえ、株主総会が経営陣の選出,管理,監督などに対してもっている実質的権限は非常に限られている。その結果、日本企業での株主の立場は、一見したところ非常に弱いように見える。また、テイク・オーバーなどの試みは、株式持ち合いなどの防護策のために、実行されることは稀である。さらに、株主の弱い立場を立証する例として、株式の平均配当が株価に比べると低いということもあげられる。このような事実から、日本企業は、実質的にはその従業員に支配され、彼らの利益のために運営されているという見方がある。しかしながら、日本企業に対するこうした見方に対しては、次のような反論がある。日本企業が本当に従業員のものであるなら、会社が苦境に陥った場合には従業員の集団は、より鮮明なコントロール権を主張する力があるはずであり、昨今のように従業員が自らの犠牲のもとに解雇されるのはなぜか。年配の従業員は、長年勤務してきたのだから企業の所有権に関しては一番強い立場にいるはずにもかかわらず、一番解雇されやすいのはなぜか。本研究から、明らかになったことは日本企業の株式保有の構造と企業金融に関する事実から、株主の地位は過去に比べ低落してきたように見えるが、日本企業は依然株主に対して、少なくともアメリカ企業に匹敵するぐらいの収益率を生み出してきている。その結果、株主は企業の支配的位置にいるわけではないにしても、日本企業は従業員集団に支配されて、株主は何の権限もないというわけでもないといことがわかった。すなわち、株主は日本企業の安定した構成要素の一つであるということが明らかになった。なお、研究成果は論文の形で近々公表する予定である

  • 企業従業員に対する報酬とそのインセンティブ効果の基礎研究

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    日本企業は、高い成長経済の下でシェア拡大に注力し、スケールメリットを活かした規格化と大量生産方式によって、強い国際競争力を持つに至った。しかし、バブル崩壊とその後に続く昨今の日本経済の低迷は、日本企業の雇用制度の根本的見直しを要請している。日本的雇用システムは、企業特殊的な人的資源の確保、企業内でのノウハウ・技術の移転、集団としての生産性、企業と従業員の間のリスク分担、従業員の勤労意欲・忠誠心へのインセンティブなどの点で合理性をもつといわれている一方、その最大の欠点は、労務費の固定費化という点にある。そこで、本研究ではそのための代替的な報酬制度の分析を行った。まず、年俸制の導入や能力給制度の導入などであるが、これらは結果重視で年俸を査定する以上、企業内の個人に責任と権限を与えた上での「目標管理評価制度」でないとうまく機能しないであろう。すなわち、日本企業における集団主義は温存したまま、個人の実力主義を評価する年俸制を名目的に導入したのでは、結局は日本的雇用システムがもっていた良さまで失うことになると考えられる。そこで、従業員の企業に対する忠誠心および企業業績に対する関心といった、日本企業の強みを失うことなく報酬制度改革を行うには、短期指向の年俸制や能力給と同時に長期指向のストック・オプション制度の導入が吟味されるべきである。ストック・オプションは企業に負担なく、しかも業績とリンクした報酬を与えることができるので、日本企業の抱える上記の問題点を解決するための一つの手段と考えられる。しかしながら勿論、企業が継続的発展を行うためには、単なるストック・オプションの導入ではなく、十分長期にわたり、しかも従業員に対して継続的なモティベーションを与えられるような報酬制度となるような工夫をおこなうことも重要である。なお、研究成果は論文の形で近々公表する予定である

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特定課題制度(学内資金)

  • 権限委譲と組織内の行動規範

    2007年  

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    本研究では、パートナーシップ企業のような単階層組織の管理形態と、プリンシパル、スーパーバイザー、エージェントからなるプリンシパル・エージェント企業のような多階層組織の管理形態の比較を行う。一般に、パートナーシップ企業は全エージェントにアウトプットの均衡配分を行い、エージェントが相互に自己規制し合うことで組織管理を行おうとする。これに対し、プリンシパル・エージェント企業は、モニタリングとインセンティブという管理機能をその組織内に組み込み、エージェントの行動を強制的に規制しようとする組織管理である。本研究では、プリンシパル・エージェント企業でもパートナーシップ企業の自己規制による組織管理(エージェント間の相互圧力による集団規範の遵守を通しての組織管理)が補完的に機能することを明らかにする。ところで、プリンシパル・エージェント企業は、上述のようにプリンシパルに残余請求権を与えることで、強制的な規制を行う管理制度である。したがって、インセンティブ制度は、エージェント間の結託の誘発を阻止するために導入された管理制度といえる。ところが、多階層組織を考えたとき、エージェント間の結託阻止のために組織に導入されたインセンティブ制度は、スーパーバイザーとエージェント間に結託を誘発する可能性がある。このとき、プリンシパルはスーパーバイザーに対するモニタリング制度を通じてそのような結託の誘発を阻止しようとする。このことは、なぜ、組織がある場合にはパートナーシップ企業の形態をとり、ある場合には、プリンシパル・エージェント企業の形態をとるのか。また、どのような場合に、モニタリング制度とインセンティブ制度を持つプリンシパル・エージェント企業が自己規制的な管理形態をもつパートナーシップ企業より優れているのかを明らかにできることになる。特に、本研究では、パートナーシップ企業の自己規制による組織管理(エージェント間の集団圧力の相互作用による集団規範の遵守)と同様に、プリンシパル・エージェント企業においてもエージェント間およびスーパーバイザー間でも集団圧力による集団規範の遵守が、モニタリングおよびインセンティブ管理を補完する管理機能となることを示す。

  • 企業組織内における集団規範および集団凝集性の役割

    2004年  

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    本研究では、チーム生産に伴うフリーライダー問題を解決する方法として、グループ内における「規範」というような社会的に共通の信念ないし慣行が、フリーライダー問題を解決するためには有用であるということを理論的なモデルに基づき議論した。Marsden[1986]は、様々な労働市場でみられる社会規範および社会慣習の重要性を強調している。また、Jones[1984]は規範順応的行動の経済モデルを展開しており、そこでは、個人の職務努力は部分的には伝統および他の従業員の行動によって決定されるとしている。これらの研究の中心課題は、個人行動は、ある程度、他の個人の行動によって影響されるとしている点である。こうした主張はチーム生産におけるフリーライダー問題を回避できる可能性を提示するものであり、個人間の掛かわり合いこそがフリーライダー問題の解を提示するとするSen[1977]の議論と一致するものである。よりフォーマルな形での社会的規範あるいは慣習のモデルはAkerlof[1980]によって提唱されている。Akerlofは「個人が社会慣習に不服従であることが評判を落とすのであれば、個人にとって不利となる社会慣習でも、それは風化することなしに残る」と主張している。Booth[1985]は同様なモデルを展開しており、そのモデルでは、従業員は組合に参加することから生じる評判から効用を獲得するとされている。この効用は組合のメンバーシップであることの費用と相殺されるので、フリーライダー問題は回避される。そして、このモデルは強制力に頼ることなく労働組合のメンバーシップの存在を説明することを可能にするとしている。このように、社会的規範あるいは慣習の存在は、一人以上の個人が協力的に行動し、囚人のジレンマを回避できる可能性をもたらす。各個人は、各人の利害によってのみ動機付けられるとしても、社会的関心を持つ個人はフリーライダーとなることに抵抗する可能性があるので、社会的規範あるいは慣習といったモラルによってフリーライダー問題の解決を実現することは可能であると結論づけることができる。

  • 企業組織におけるチーム生産とただ乗り問題

    2003年  

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    企業組織内にどのようにチームを構成し、そのメンバーをどのように動機づけるかは、企業にとって重要な課題である。チーム活動においては、普通特定の個人の産出高を観察することは難しいので、チーム内で懸命に働くことへのインセンティブは弱まる。すなわち、「自分の行動に伴う結果すべてに自分が責任を持つわけではないので、自は適切に行動しなくてもよい」という「ただ乗り」問題が発生する。それでは、なぜ企業はチームではなく、個人に報酬を支払わないのだろうか。それは、チームという環境下では、個々人の活動の観察は難しく、一方、報酬の基準を個人的努力の代理変数になるような尺度におくと、非協調的あるいはご都合主義的な行動や言動を招くことがあるからである。すなわち、個人の業績の代理変数に基づいた報酬方式にすると、チームワークが損なわれる可能性があると考えられるからである。結局、もしチームの産出高に基づいて支払われれば、労働者はただ乗りしてあまり努力せず。一方、もし(可能なら)個人の産出高に基づいて支払われれば、たとえ他の人を助けることがチームの利益になる場合でも、自分自身の貢献度にばかり気を取られてチームメイトを無視し、労働者はチームの産出高をあまり気にしないということになる。それでは、企業は、どのような場合にチーム制を導入すべきなのだろうか。本研究では、チーム生産によるメリットとデメリットを比較することにより、チーム制を議論した。チームワークの利益とは、一人の労働者がすることと他の労働者がすることとの間に、大きな補完性がある場合であり、チームを活用する際の主なコストは、上述の「ただ乗り効果」を通じた生産性の減退にある。このように考えると、チームの規模というものが重要な問題であるということがわかる。すなわち、大きなチームではコミュニケーション上の問題が生じるし、小さなチームでは十分な情報移転ができない。意思疎通の点からは、チームは小さい方がよいが、大きいチームには取り出し得る大きな情報群があるので、あまりにも小さいチームでは費用がかかりすぎるともいえる。さらに、小さなグループでは労働者は他の労働者が何をしているかが、大きなチームにおけるよりよくわかる。大きいチームになれば、仲間の監視は小さいチームの場合ほど有効ではなくなる。すなわち、どのメンバーが怠けようと、他のメンバーに与える影響は小さいので、怠けている同僚に罰を加えようというインセンティブは減退する。また、チームが大きければ、怠け者を見つけるのが難しくなる。つまり、ただ乗り効果は大きいチームにおいて、より一般的にみられることになる。個々人が関連性のある活動に従事している場合には、ただ乗り効果は低下するし、一方のパートナーが他方のパートナーの仕事ぶりを評価できる場合も、ただ乗り効果は減退すると考えられるのである。

  • 医療用医薬品の薬価制度と流通システムに関する研究

    2000年  

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     本研究では、医療用医薬品の流通システム改革に関する、井上・手塚(1998)の理論モデルから得られた結果である、1)医療用医薬品メーカーの利潤は、流通改革後は上昇する。2)卸売業者については、改革後にその利潤は増加する。3)医療機関の利潤(薬価差益)は減少する。に関し、財務及びその他の一般に利用可能なデータによる実証分析を行った。その結果、明らかになったことは、1)に関しては、医療用医薬品メーカーの営業利益は改革後,急激に上昇しており、これは販売費・一般管理費の相対的減少によるものであり,流通改革によるものと思われ、さらに販売費・一般管理費の構成費目を分析すると,値引補償額を費用計上すると思われる拡販費が改革後,減少しており,流通改革により不要となった値引補償の一部が営業利益増加の一因となったことが観察できた。そこで、理論モデルの予測 1)は、医薬品メーカーに関する財務データからも支持されることが明らかになった。また、2)、3)については、流通改革は卸業者の利益率上昇をもたらしたが、流通改革による新たな取引のやり方から不利を被る医療機関の対抗的な行動を惹起し,価格決定のバーゲニングが複雑化し,行動の変化をもたらしたため、それは一時的なものであったという結論を得た。しかし、一時的ではあるにせよ、データは理論モデルの分析結果を支持しているということがわかった。さらに、流通改革により医療機関の利潤(薬価差益)が減少したため、卸業者と医療機関との関係は新たな局面を向かえているということも明らかになった。 以上から、医療用医薬品メーカーの利潤に関しては、流通改革後は上昇し、卸売業者の利潤については、改革後に(一時的ではあるにせよ)増加し、医療機関の利潤(薬価差益)を減少させた。その意味では、今回の流通改革は医療機関の薬価差収入を減らし、診療報酬を上げることで、医療機関の薬価差収入を求める動機を減らし、いわゆる「薬漬け医療」を緩和し、健康保険財政を立て直すという点で、一定の評価を与えることができる。

  • 企業組織の変革と分社化

    1999年  

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     昨今、日本企業はその業績不振を回復しようと、管理システムの改革だけでなく、業務構造自体の変革をも多くの企業が手がけるようになってきている。その場合、情報処理技術の発展とも相まって、多くは本社機能の縮小を考え、業務構造の分権化を目指しているように思われる。しかしながら、この問題は突き詰めれば、集権化か分権化かという昔から議論されてきた問題であり、「分権と集権の妥協点を求めるという(企業)組織編成の基本問題」に他ならないといえる。企業の中心的課題は、既存事業を維持しつつ、新しい事業の創造、すなわち環境変化に対応して、この二つの対立する要求を満たさなければならない基本的ジレンマをどのように解決するかという問題であるとも言えるのである。それゆえ、組織構造の中にこの二つをいかにバランスよく組み込むかが企業の基本問題なのである。 本研究では、特に分権化の一つの形態である分社化と、企業本体の内部に新たに事業部を追加する事業部制のような形態との相違は何処にあるのかといった問題を雇用関係を中心に議論した。すなわち、分社化は人的資源の利用について権限委譲をより促すという点を中心に据え分析を行った。ここで、雇用関係とは、労働者が報酬と引き替えに雇用主の指揮命令の受け入れに同意するものと考え、その結果、たとえ意思決定の権限が幾分か事前に労働者に委譲されていたとしても、雇用主はいつでも委譲した権限を、雇用関係という名の下に労働者から取り戻すことができるという点で、内部組織の拡大による分権化と、分社化の相違は説明することができると言うことが明らかになった。すなわち、雇用関係という点から、分権化の度合いというものを統一的に分析することができる可能性があるということが明らかになった。

  • 企業組織内における配置転換の役割に関する基礎的研究

    1998年  

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     日本企業における、組織従業員は「幅広い専門性」をもつ人材として、組織内で教育訓練されるとしばしば言われる。それは、一つには解雇を伴わない雇用調整に役立つと言われ、また従業員の適正発見、さらに管理職養成という面からも意味があるといわれてきている。しかしながら、一方ではOJTを通じた企業特殊人的技能の育成を犠牲にするという一面を持つと考えられる。 ところで、日本の企業組織には「配置転換」と称する労務管理制度がある。この制度が存在する根拠は、一つには従業員に様々な職場でそれぞれ異なる職場訓練を課すことで、組織を全体としてみる目を養成し、長期的な意味での調整コストを節約することにあると考えられる。さらに、未成熟な外部労働市場に由来する組織構成員の企業内固定化を企業内労働移動で肩代わりすることで、人事の停滞からくる組織構成員のモラールの低下を予防することと説明されている。 本研究では、特に配置転換の持つ「人事の停滞及びモラールの低下」を防止する機能と、配置転換に伴う「企業特殊人的技能の活用機会の喪失」という機能の関係を検証した。その結果、明らかになったことは、配置転換は企業特殊人的技能の活用を犠牲にするにもかかわらず、最適インセンティブになりうるということである。配置転換は、組織従業員が彼らの仕事の生産性を偽るインセンティブを取り除き、それゆえ管理者が組織従業員から効率的な努力水準引き出すための出費を抑えることを可能にするのである。すなわち、配置転換は組織従業員によるラチェット効果を避けることに役立つ場合があることが明らかになった。

  • 日本企業の業務構造の特徴とその変容に関する研究

    1997年  

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    昨今の日本経済の低迷は、日本企業のあり方の根本的見直しを要請している。ところで、日本の企業システムのあり方の最大の欠点は、それが成長経済を前提にしたシステムであるという点にある。日本経済が成熟化し、シェア拡大路線が壁に突き当たっているとすれば、企業自体のあり方も問いただされなければならない。最近では、企業の組織構造そのものも情報化の進展あるいは市場環境の不確実性の増加とともに変化しつつあり、分社化あるいはネットワーク組織というものが注目を集めるようになってきている。本研究では、分社化が行われるいくつかの理由を検討した後、分社化の理由を、結局は事業の分割によって子会社の独立性が高まり、経営責任が明確になり、そしてより大きな自由裁量権や権限が与えられ、その結果特定の事業に特化し、迅速にその事業を確立できるからと結論づける。しかしながら、分社化が行われるのはこのような理由であるとしても、ではなぜ分社化と同様な効果を持つ可能性がある組織内分権化により、これらの目的は達成できないのであろうかという疑問に到達する。この課題に対する回答としては、契約が不完備にしか締結できない状況下では、同一企業組織内での権限委譲では従業員の関係特殊的投資へのインセンティブが弱まり、そのような権限委譲ではおのずから限界があるということが考えられる。それゆえ、分社化を行うことは事業に特化し迅速に事業を確立できる方法として捉えることができるのである。つまり、分社化によって雇用関係そのものが子会社に移されることで、従業員は親会社の事業部門に所属するときより、関係特殊的投資を行う強いインセンティブをもつと考えられるのである。

  • 企業従業員に対する報酬システムとそのインセンティブ効果の研究

    1996年  

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     日本企業は、高い成長経済の下で、シェアの拡大に注力し、スケールメリットを活かした規格化と大量生産方式によって、強い国際競争力を持つに至った。しかし、バブル崩壊とその後に続く昨今の日本経済の低迷は、日本企業の雇用制度の根本的見直しを要請している。日本的雇用システムは企業特殊的な人的資源の確保、企業内でのノウハウ・技術の移転、集団としての生産性、企業と従業員の間のリスクの分担、従業員の勤労意欲・忠誠心へのインセンティブなどの点で合理性をもつといわれている。一方、その最大の欠点は、労務費の固定費化という点にある。 そこで、本研究ではそのための代替的な報酬制度の分析を行った。まず、年俸制の導入や能力給制度の導入などであるが、これらは結果重視で年俸を査定する以上、企業内の個人に責任と権限を与えた上での「目標管理評価制度」でないとうまく機能しないであろう。すなわち、日本企業における集団主義は温存したまま、個人の実力主義を評価する年俸制を名目的に導入したのでは、結局は日本的雇用システムがもっていた良さまで失うことになると考えられる。そこで、従業員の企業に対する忠誠心および企業業績に対する関心といった日本企業の強みを失うことなく報酬制度改革を行うには、短期指向の年俸制や能力給と同時に長期指向のストック・オプション制度の導入が吟味されるべきである。ストック・オプションは企業に負担なく、しかも業績とリンクした報酬を与えることができるので、日本企業の抱える上記の問題点を解決するための一つの手段と考えられる。しかしながら、勿論企業が継続的発展を行うためには、単なるストック・オプションの導入ではなく、十分長期にわたり、しかも従業員に対して継続的なモティベーションを与えられるような報酬制度となるような工夫をおこなうことも重要であるということが明らかになった。

  • 日本企業における企業金融と株式所有構造の研究

    1995年  

     概要を見る

    日本企業の取締役会は,実質的には生え抜き経営者の集まりであり,これに銀行などの少数の部外者が含まれているにすぎず,社長は通常は前任者が指名する。それゆえ,株主総会が経営陣の選出,管理,監督などに対してもっている実質的権限は非常に限られている。その結果,日本企業での株主の立場は,一見したところ非常に弱いように見える。また,テイク・オーバーなどの試みは,株式持ち合いなどの防護策のために,実行されることは稀である。さらに,株主の弱い立場を立証する例として,株式の平均配当が株価に比べると低いということもあげられる。このような事実から,日本企業は,実質的にはその従業員に支配され,彼らの利益のために運営されているという見方がある。しかしながら,日本企業に対するこうした見方に対して,次のような反論がある。日本企業が本当に従業員のものであるならば,会社が苦境に陥った場合には従業員の集団は,より鮮明なコントロール権を主張する力があるはずであり,昨今のように従業員が自らの犠牲のもとに解雇されるのはなぜか。年配の従業員は,長年勤務してきたのだから企業の所有権に関しては一番強い立場にいるはずにもかかわらず,一番解雇されやすいのはなぜか。 本研究から,明らかになったことは日本企業の株式保有の構造と企業金融に関する事実から,株主の地位は過去に比べ低落してきたように見えるが,日本企業は依然株主に対して,少なくともアメリカ企業に匹敵するぐらいの収益率を生み出してきている。その結果,株主は企業の支配的位置にいるわけではないにしても,日本企業は従業員集団に支配されて,株主は何の権限もないというわけでもないということがわかった。すなわち,株主は日本企業の安定した構成要素の一つであるということが明らかになった。

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