Updated on 2024/04/18

写真a

 
TACHIBANA, Takahiro
 
Affiliation
Affiliated organization, Waseda University Senior High School
Job title
Teacher (Affiliated Senior High School)
 

Overseas Activities

  • 原子質量公式およびベータ崩壊の理論的研究とr過程元素合成への応用

    2008.04
    -
    2009.03

    ベルギー   ブリュッセル自由大学

Research Institute

  • 2022
    -
    2024

    Waseda Research Institute for Science and Engineering   Concurrent Researcher

  • 1989
    -
     

    Institute for Advanced Studies in Education   Concurrent Researcher

Internal Special Research Projects

  • コンピューテショナル・シンキングを考慮したカリキュラムと評価方法

    2019  

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    高等学校では、2022年度から新学習指導要領が施行される中で、生徒たちの学びの形態の変革が問われている。大学生に対しても同様で、大学のLMSなどを活用して様々な遠隔授業が展開できる現在、内容の充実がますます求められている。本研究では、本年度の取り組みとして、まず、学習環境の分析をテーマとして設定した。初めに、2019年3月末に、本研究代表者を含むコンピュータ利用教育学会(CIEC)の数名のメンバーで米国Duke大学を訪問しICT環境と教育現場の具体的な取り組みを視察したが、その成果を分析した。重要な点として、ICT環境を、運営や活用を担う管理部門と、教育活動を担う教育部門に分けること、つまり、教員や学生に対するデバイス管理や技術指導などと、授業補助や利用講習会担当などを分離した方が効率的である事が挙げられる。また、学生の自主的な学習活動を保障するためにラーニングコモンズの充実も必要である。さらに、大学のLMSにおいて、多くのオンデマンド講座を有することも必須であると分析した。 次に、2019年8月には、CIEC主催の2019PC-Conferenceがあり、シンポジュウム(テーマは「学生の質の高い学びを支援する教育の近未来」)が開かれたが、Duke大学視察の成果を生かして、コーディネーターおよび司会などを務めた。このシンポジュウムでは、Duke大学からの報告者以外に、早稲田大学、甲南大学などからの報告もあった。そこでは、ラーニングコモンズやLMS活用事例が紹介され、活発な意見交換がなされた。高等学校の授業向けコンテンツの作成にも取り掛かり、情報科や物理科で利用できる反転授業用のオンデマンド学習教材作成を始めた。これにより、物理の授業の実験で、事前に実験器具や手順などをオンデマンドで予習させておき、実際の対面授業では反転授業として、それらの部分を効率的に省くことを目指している。

  • コンピューテショナル・シンキングを考慮したプログラミング教育とその評価方法

    2018  

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     本特定課題研究では、まず、韓国高麗大学で情報教育を担当されている金准教授が行ったプログラミング教育に関するアンケートと同内容で、金准教授と協力して、高等学院2年生に対してアンケート調査を行い分析した。また、同様な他のアンケートもあり、それらの結果との比較分析も行った。さらに、2019年3月には、米国Duke大学を訪問し、ICT教育環境の視察を行った。そこでは、LMSの活用状況を教員から聴取し、ラーニングコモンズの施設を見学した。これらの取組から得られた知見と情報を生かして、2019年度に行うプログラミング教育の教材の作成に入っている。特に、物理科でのオンデマンド教材に重点を置いている。

  • 高等学校情報科および理科での反転授業のためのオンデマンド教材開発

    2015  

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     本研究では、以前行った高等学校情報科のオンデマンド電子教材作成の経験を生かして、高等学校物理科の学習教材をいくつかオンデマンド化した。まず、物理科の学習内容を分析し、オンデマンド教材化できる分野を検討した。そして、その分野の実験をオンデマンド電子教材にした。それぞれの実験の手順を10分程度の映像で作成し、実験実施の前からオンラインで視聴させた。またそれとは別な取り組みとして、高等学校新入生の入学前課題のオンデマンド教材も作成した。入学試験には理科科目がないため、これまで、高等学校入学後の生徒の物理の知識はバラバラであった。そこで、入学前に取り組ませる物理オンライン教材を作成した。新入生はそれを事前学習し、物理の知識を一定のレベルに引き上げることができた。 

  • 新学習指導要領における情報科でのEラーニング用電子教材の開発と教員養成

    2013  

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    本研究では、2013年度から実施された新しい学習指導要領の「情報科」の学習で使える、Eラーニング電子教材の研究と開発を取り上げた。全国の高等学校に情報科が配当されて10年を経て新しい段階に入り、学習形態でEラーニングを積極的に取り入れて展開すべきと考えて、この研究テーマを設定した。 このEラーニング教材作成の一例としては、情報科の学習内容にある「情報のデジタル化」についての教材を挙げることができる。現在の高度情報通信社会ではデータがデジタル化されて伝達される理由を理解して、アナログデータからデジタルデータに変換する仕組みを、この単元で学ぶ訳である。具体的には、標本化、量子化、符号化の手順や、音声データのデジタル化、カラー画像のデジタル化に必要なビット計算などまで行う。この単元に関するオンライン教材を作成し授業で用いた。パワーポイントで基本的な教材を作成してから、そこに解説の音声を乗せていった。このオンライン教材は授業中に使うのではなく、生徒たちには自宅で視聴させてEラーニング自習用に用いさせた。 また、国外の情報教育の状況を視察するために、台湾の国立政治大学附属高級中学校および国立武陵高級中学校を訪問し、情報教育に関して教員と情報交換し、コンピュータ施設などを見学した。台湾の高級中学校は日本の高等学校に相当する。両校とも、情報科の授業では日本と同様の様子であったが、教科書を見ると日本のものより内容が深く、系統立った記述がなされている。IPアドレスの学習では、クラスA,B,Cの分類にも言及している。また、問題発見と解決の分野でも例題が豊富で、解決するアルゴリズムが比較的高度な部分まで書かれている。 特に国立政治大学附属高級中学校では、昨今の大学教育で注目されている反転授業を模索していた。反転授業用の教室を用意しており、生徒たちはグループでタブレット型PCが使えるように準備されていた。その室内では無線LANが使え、反転授業用の教材もいくつか作成されていた。この反転授業に関しては日本でも、高等学校でどの程度の導入ができるか、教育効果が上がるかなど、早急に研究を進める必要があり今後の我々の研究課題となる。

  • 次期学習指導要領における情報科でのEラーニング用電子教材の開発と教員養成

    2012  

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    2013年度から全国の高等学校で新学習指導要領が施行され、情報科の科目はこれまでの3科目「情報A」、「情報B」、「情報C」から「社会と情報」および「情報の科学」2科目となった。学習内容は、「情報A+情報C」が「社会と情報」へ、「情報A+情報B」が「情報の科学」へと、それぞれ有機的に融合するというイメージで簡単に表現されることが多い。いくつかの事前アンケート調査によると、「社会と情報」の方を生徒に履修させる学校が多いことが分かった。これは、「情報の科学」で扱われるプログラミング言語の習得やモデル化とシミュレーションなど、理系的な学習内容を避ける傾向の現れであるとみられている。また、高度情報通信社会の進展とともに、形態端末ツールが進化し、iPad、iPod、iPhoneなどの移動携帯端末が、デジタルネイティブの間で活用されている。このような状況を踏まえて、本研究では新学習指導要領での情報科を見据えながら、そこで使える電子教材の研究と開発を目標にした。しかしながら本特定課題の申請者が、年度途中に教務スタッフに就任したため、2012年度は開発の段階まで着手できず、調査および研究の段階となった。 まず、情報科の授業で活用できる電子教材およびそれを搭載したE-ラーニングについて研究した。大学ではなく高等学校でのE-ラーニング教材や電子教材を扱うことを考慮しながら、本研究の申請者が所属する高等学院の情報科で、これまで活用しているインターネット上に置いた実技試験用のE-ラーニング教材をいくぶん改良し、早稲田大学CourseN@viシステムと併用しながら活用し効果を調べた。 また、健常者だけでなく、障害を持つ生徒が情報科での学習を進めるときの援助となるような、E-ラーニングも模索した。視覚障害や聴覚障害を持つ生徒や学生がキーボード操作をするときのサポートにおいては、専用の入力機器の開発や人的支援がある程度進んでいる。しかしながら、肢体障害者の場合、障害の部位や程度に個人差が大きく、一般化が難しいために視聴覚障害より進んでいないように見受けられる。本研究では、障害を持つ生徒が入力しやすいキーボードの研究と、それを使ったE-ラーニングについても一定の研究を行った。

  • β崩壊大局的理論および原子核質量公式を用いた核データの整備

    2011  

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    我々早稲田大学の理論原子核研究グループが長年培ってきた、ベータ崩壊の大局的理論を用いて、ベータ崩壊に関連した諸性質の数値データを理論的に推定することができるが、本研究ではこのモデルを用いていくつかの計算をすすめた。 そのひとつは、ベータ崩壊の大局的理論に含まれているパラメータ値を見直すための、第一禁止遷移が果たしている役割の分析である。ベータ崩壊のオペレータは許容遷移、第一禁止遷移、第二禁遷移、、、、に分類でき、この順にベータ崩壊への影響が大きい。このモデルには、主要である許容遷移と第一禁止遷移が、無理なく含まれており、これがこのモデルの特徴にもなっている。 今回は、第一禁止遷移のベータ崩壊強度関数だけを分離して計算し、その特徴をみた。特に、天体におけるr-過程元素合成で重要な核種領域、つまり安定核から遠く離れた中性子過剰核領域で計算をし、データの分析をおこなっている。分析には、実験データとして、Evaluated Nuclear Structure Data File (ENSDF) にまとめられたものも用いるが、それらの中から理論を補強できる有用なデータを絞り出す作業が必要となる。特に、ベータ崩壊の娘核の各レベルに、ベータ崩壊の強度がどのように分布しているか注意深く解析することが大切である。実験が不十分な場合は、娘核の高励起状態への強度が測定されていないことが多く、そのような核種の半減期を取り除かねばならない。このように整備されたデータで、理論のモデルに含まれているパラメータ値を再調整していく。 また別な計算もおこなった。これまで、未知核種のベータ崩壊のQ値を求めるために、主として我々早稲田グループが開発したKTUY原子核質量公式を用いてきた。本研究では、ベルギー自由大学で開発されたHartree-Fock-Bogoliubov(HFB)モデルで求めた原子核質量値から求めたベータ崩壊Q値を使って、r-過程元素合成の分析に応用した。

  • 情報科のE-ラーニング教材作成と教員養成

    2010  

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    本研究では、情報科の教育内容を研究対象としてきたが、次のような着眼点を持って研究を進めた。 *情報教育に関するさまざまなアンケート結果を考察すると、現在の高等学校「情報科」の学習内容が情報機器の操作や活用が  中心になっていると思われ、「情報科=技能中心の教科」という構図ができつつあるのではないかという危惧を持つ。 *それにも拘わらず、CIEC(コンピュータ利用教育学会)などのアンケートでは、高校時代に情報活用など技能中心の内容  を学んでいても、大学生たちは大学の授業でもさらに技能的な内容の学習を希望する傾向がある。 *初等教育、中等教育課程で、情報モラルや情報倫理の学習が重要である。 *全国の大学で情報科教員の養成が行われているが、教員養成講座としての学習内容がまちまちで、レベルの幅も広い。 *次期学習指導要領が2013年度から施行されるが、そこで展開される情報科の内容を考慮していく。 *高等学院では、高大一貫の情報教育に繋がるような独自テキストを作成しているが、次期学習指導要領も考察しながら  それを進める。さらに高等学院の中学部も含めた、中高大一貫教育をも考慮しながら研究を進める。CIEC(コンピュータ利用教育学会)の2010年度春季研究会(2011年3月)において、Web教材について研究発表した。概略は以下の通りである。高等学院では、1年生の1、2学期にWordの実技試験、2年生の2、3学期にExcelの実技試験をおこなっている。その実技試験用のEラーニング教材を作成して、生徒の活用状況をアンケートで分析した。早稲田大学のホームページにリンクさせて、生徒が自由な時間に利用できるようにした。動画での教材しかないので、音声も使って教材を作ってほしいという生徒の声もあるが、この教材を使用した生徒の方が平均して実技試験の得点が高い傾向にあるという結果得られた。これについては、2011年度入学の生徒にも使用させて、さらに改良した取り組みをおこない、2011年8月のPCカンファレンスでの発表を予定している。また、独自に作成している情報科1、2年生のテキストにも、本研究内容を反映させて一部改訂をおこなった。

  • ベータ崩壊および原子核質量の理論的研究と核分裂および r 過程元素合成への応用

    2008  

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     天体における元素合成には、α過程、p過程、s過程、r過程などさまざま合成過程が考えられているが、本研究ではその中でr過程元素合成を対象として扱い、特にr過程元素合成において核分裂がどのように影響を与えているかを考察した。このr過程元素合成の研究は、これまで様々な研究者により行われているが、どこでどのように発生している過程かなど、その全様が完全に解明されている訳ではない。 核分裂はr過程がどのように終わるかを規定する現象であり、r過程で合成される元素の種類や生成量に大きな影響を与える。本研究では環境中に存在する中性子吸収による核分裂や自発核分裂ではなく、ベータ崩壊後に発生する遅発核分裂を扱う。また、遅発中性子放出確率の計算も行った。 研究では統計的手法を用いることとし、まず、現象論的な方法で原子核の励起状態密度を求めた。Gillbert と Cameron がまとめた原子核励起状態密度に Ignatyk が導入した原子核殻エネルギーの効果を考慮した。 この励起状態密度の式の中にでてくる、殻エネルギーおよびペアリングエネルギーには、われわれが開発した原子核質量公式であるKTUY公式を用いた。さらに、原子核の変形レベルと振動レベルを考慮するファクターを掛けて公式を精密化した。原子核変形のパラメータもKTUY質量公式で推定されたものを使っている。このようにして求めた励起状態密度を用いて、遅発中性子崩壊のレベル幅と遅発核分裂のレベル幅を計算した。ガンマ崩壊の崩壊幅も必要だが、それに対しては、Malecky 達の現象論的公式を用いた。  ベータ崩壊にはわれわれが長年研究を続けている、大局的理論を使った。この理論で推定した強度関数に崩壊幅の割合を掛けて、遅発中性子放出確率Pnと遅発核分裂確率Pfを計算することができる。この方法で、数百核種のPn と Pf を計算した。これらの値と大局的理論から求めたベータ崩壊半減期で、r過程元素合成のネットワーク計算を行った。今回の計算では遅発核分裂の影響は、期待していたほど大きくはないことが分かったが、KTUY原子核質量公式核で推定された分裂障壁エネルギーの大きさや、Malecky 達の現象論的公式を他の方法に置き換えるなどの研究をさらに続ける。今回の成果の一部は2008年9月にポーランドで開催されたENAM08(The 4th international Conference on Exotic Nuclei and Atomic Masses )と2008年12月に日本原子力開発研究構で開催された核データ研究会で発表した。

  • 高等学校情報科の課題と教員に求められる力

    2007  

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    高等学校の情報科は2003年度から全国の高等学校でスタートした。スタート以降の社会状況や、教育現場を取り巻く環境は大きく変化している。また、2008年度以内に改訂が予定されている学習指導要領の内容に関する議論も、現在さかんに展開されるようになった。 本研究では、現在の情報科の課題と教員養成について、いくつかの調査し考察を行った。その内容をまとめると、(1)情報科が全国に導入された2003年当時と比べて、情報科の教科書がアカデミックな内容に変化している。   つまり、スタート当時はコンピュータの使用方法を説明するような内容の教科書も多かったが、そのようなマニュア   ル的な内容のものは少なくなり、総合的に情報処理扱うようになった。(2)高校卒業生は、いまだにコンピュータ使用方法のようなマニュアル的な知識を持てめていることが判明した。   つまり、大学に入学してどのような情報教育を望むかというアンケートに、マイクロソフト社の各種ソフトウエア   の使用法を学びたいというような回答が多い。(3)情報モラルや情報倫理と呼ばれる分野の研究や実践教育が進んでいる。特にモラルを学習する教材が多く出て、研究会   も盛んにおこなわれている。学校裏サイトの問題なども新しく出てきた。このような情報社会の影の部分に対する教員   や学校からのアプローチや研究が必要である。(4)次期学習指導要領では、「社会と情報」および「情報の科学」が中心になり、情報活用は十点ではなくなる。   これについては、高等学校用の次期学習指導要領が未発表なので、あまり深く調査できなかった。(5)大学によっては、情報科を入学試験に加えている。2003年当時は受験指導をする必要がなかったが、これからは   場合によっては受験指導の能力が求められる。(6)情報科の教員養成に関しても、上記のような新しい状況に対応して、これまでにないアカデミックな情報活用能力が求め   られていることになる。

  • 情報教育におけるメディアリテラシー教授法とコンテンツ

    2004  

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    情報教育におけるリテラシー学習には3段階あると考えられる。はじめは、コンピュータ操作を中心とする「コンピュータリテラシー(マシンリテラシー)」、次に、情報の収集・整理・統合・発信する能力の「情報リテラシー」、最後の段階が、インターネットだけでなく新聞・テレビ・電話などすべてのメディアを統合して扱う能力の「メディアリテラシー」である。メディアリテラシーは、高度情報通信社会で通信網がブロードバンド化され放送網がデジタル化される中で、ますます重要になるが、高等学校情報教育の中では授業の方法など、まだ十分な研究が進んでいない。 本研究では、高等学院の3年生選択科目「情報メディア」を実践の場として、いくつかの取り組みを行い、その効果を見た。そこで、得られた教授法を、例として以下に簡単に紹介する。ここでは高等学校3年生の連続2時間の授業を想定している。1学期は、著作権法に関する学習を行う。特に高度情報通信社会で知的財産の概念がなぜ強調されるのか、また、それらを護る法律について知る。その基本的事項を抑えておくことで、メディア作品製作におけるwebや本などからの情報の引用でのトラブルを減らすことができる。その後、生徒をグループ化して、紙媒体の作品を作らせる。実際に、企業のweb上から写真などを使わせ、その企業に断りの連絡をいれさせるなどの実践もさせる。次に、2,3学期は、ビデオ作品を作らせる。初心者でも扱いやすいものとして、ビデオカメラのコマ撮り機能を用いた短いアニメーション作品がよいhttp://www.cgarts.or.jp/contest/scg/2003/winner/index.htmlなどを参考として見せると、イメージしやすい。さらに、音楽を入れさせることで完成度を上げる。以上の内容は、教育学部の教科教育法「情報科教育法」の受講学生にも、教員になったときに使えるプログラムとして、いくつかを紹介している。

  • 原子核質量公式とベータ崩壊の理論的研究とr過程元素合成への応用

    2003  

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    本研究では、ベータ崩壊大局的理論と質量公式による原子核構造の研究、およびそれらの応用として、r過程元素合成の研究が計画された。まず、原子核の高励起状態へのベータ崩壊強度の測定は、ガンマ線スペクトルがバックグラウンドに紛れてしまい、実験からの情報が不足している。そのような原子核に対して、我々は大局的理論でベータ崩壊強度関数を補完して、ベータ線崩壊熱やガンマ線崩壊熱を求めてきた。これにより原子力工学の分野の崩壊熱総和計算で、一定の成果を上げてきた。最近になって、GreenwoodたちはTAGS (Total Gamma-Ray Absorption Spectroscopy) を用いて、核分裂で生成される多くの原子核の高励起状態と、それらの状態へのベータ崩壊分岐比を、まだ完全ではないが、得ることに成功した。このようにしてTAGSで得られた結果を用いて崩壊熱総和計算をやり直してみると、144Laや141Csなどの核種が効く領域で、総和計算が我々の推定値を上回ることが分かった。この原因を探るべくいろいろな分析を加えて研究を進めてきた。これについては、TAGSの結果の評価をも含めて、現在さらに検討を重ねている。 質量公式では、我々のこれまでのKUTY公式における偶奇項に、一部改良すべき点があり,その検討を行った。この偶奇効果は核力のtriplet-even 項によるところが大きいが、奇奇核でのエネルギー表式をも含めて改良をおこなった。新しい質量公式を定式化し、proton drip line およびneutron drip lineで囲まれた全核種領域の原子核質量や各種分離エネルギーなどを表にまとめた。これについては論文として、欧文誌にこれから投稿する予定である。 r過程元素合成に関しては、S.Goriely氏(ブリュセル自由大学)および理化学研究所と共同で研究を進めている。2003年8月にはブリュセル自由大学において研究を展開した。

  • 情報教育におけるメディアリテラシー

    2002  

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    2003年度から始まる高等学校の教科「情報」や「総合的な学習の時間」などにメディアリテラシーがどのように導入できるか、実証的に検証することが本研究の主な目的である。 コンピュータを主体としたインターネットの世界だけではなく、我々の周りには旧来的なメディアである新聞、テレビ、ラジオ、映画を初めとするさまざまなメディアを通して情報が伝達されている。 それらの信憑性、即時性、インタラクテイブ性などの特徴を意識して情報収集する態度を、教育現場で育成する必要がある。 アメリカ、イギリス、カナダなどでの取り組みが先進的な例として取り上げられる中で、日本でのこの分野の教育は文部科学省が十分に押さえておらず、学習指導要領にも対象となっていない。 実際は、いくつかの学校で先進的な教員が自主的に展開している、と言うのが現状である。 一部では、地方のテレビ局などを引き込んで、高校生にテレビ番組を作成させて、その様子を1年間本当のテレビ局が取材して自局の番組で放送する、というところもある。早稲田大学高等学院の3年生の選択授業「情報メディア」では、紙媒体の情報伝達「雑誌」の1ページを作成させることから始め、インターネット媒体、デジタルビデオ媒体なでの情報発信の能力を養った。 また、CM分析や著作権学習なども行った。 さらに、「情報アート」では1年間かけてノンリニア編集を行い、ビデオ作品つくりをじっくり行わせた。 高校の授業中であるので、ビデオ撮影の範囲が学校内という制限が付き、大きなスケールの取り組みが難しかった。 そこでの報告の一部は下記で発表した。 さらに、早稲田大学教育学部の情報科教員養成授業である「情報科教育法 A1,A2」でも、学生にCM分析、紙媒体での作品つくりを通してのメディア分析などを行わせた。 学生の取り組みはいたってまじめで、それぞれのグループが、工夫された作品を提出してきた。

  • 新課程「情報科」の視点と高大一貫情報教育

    2001  

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    本特定課題での研究内容は以下のようにまとめられる。高等学院では4年前から3年生選択科目の情報関連科目として「情報リテラシー」があったが、2001年度から「情報サイエンス」を設置した。 さらに、2002年度から「情報メディア」、「情報アート」の2科目を同選択科目に設置するべく実践的準備を行い、実施している。 これらの科目は、2003年から始まる新教科「情報」の教育を先取りして、具体的な授業の内容モデルとして提示したものである。 これらの授業を実践するために、情報関連機器の購入や他校見学などを行った。 これらは現在早稲田大学のメディアネットワークセンター(MNC)での情報処理教育講座と内容を関連づけている。 特に「情報サイエンス」はMNCのネットワーク技術講座の先取り授業となっている。 つまり、これらの高等学院の授業は、早稲田大学との高大一貫教育の視点から取り組まれた。 また、別な情報教育の側面として、世界で1番大規模なWebページ教材作成コンテストであるThinkQuestに生徒を参加させた。 これには、「高等学院生同士のコラボレーションのチーム」と「他校生とのコラボレーションのチーム」の2チームが参加して、両チームとも上位入賞(金賞=第2位)することができた。 この経験を生かして、生徒間のコラボレーション型情報教育の原型を実践できた。

  • コラボレーションを重視した情報教育

    2000  

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      本特定課題での取り組みは主に以下の2つであった。(1)まず、両高等学院の情報教育で使うテキスト「情報リテラシー 基礎」の作製は、両高等学院の教員グループが執筆者となりMNCや教育学部の教員の協力を得ながら行い、2000年10月に日本文教出版株式会社から出版された。その内容は早稲田大学付属の両高等学院で行う情報教育の基準を示したものと言える。 具体的には①高校生に対する情報倫理、情報モラル、著作権問題などの教育、②高校生に情報格差の問題認識を持たせる教育、③インターネットでの情報収集と情報発信の技術の修得、④コンピュータ言語ソフトの学習、⑤英語による電子メール送受信の学習、⑥ネットワーク技術の基礎学習、などである。 この教科書は、2001年度から両高等学院の生徒全員に対して使用している。(2)次に、「情報教育プロジェクト 我が家の自慢料理」は、いくつかの高等学校の生徒が参加して、情報機器を使用したプレゼンテーションやそれを基にした料理コンテストを行う教育プロジェクトであり、われわれの取り組みは朝日新聞朝刊(2000年12月14日付)でも紹介された。 この取り組みでは、単に情報教育だけでなく家庭科や語学の授業と関連付けて、教科横断的な広がりのある学習ができることが一つの特徴になっている。 慶應義塾湘南藤沢中高等部が中心となり、立命館慶祥中高等学校、および両高等学院の各校で進めてきた情報教育の次のステップとして、学校同士が協力して行う情報教育を模索したものだった。 それは生徒各自が親兄弟さらには祖父母などと相談して、自分の家の「自慢料理」は何かを考え、情報機器を使って他の生徒にプレゼンテーションしレシピを解説するまでの情報教育であった。 最終的にはプレゼンテーションや調理のコンテストという形にし、早慶付属高校での早慶戦となった。 上記の4校で約900名の生徒が参加する大きなプロジェクトになった。

  • 不安定原子核のベータ崩壊の研究とその応用

    1999  

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     不安定原子核のベータ崩壊を研究するために、これまで大局的理論がいろいろな形で応用されてきた。 この理論は各核種のベータ崩壊強度関数を推定できる理論で、 本年度は主として崩壊熱計算にこの理論を用い、研究を進めた。 中性子の瞬時照射後に引き起こされる核分裂で発生する熱量は、原子炉の安全性解析の上で欠かせない情報である。 これは実験と理論の両面で研究が進んでいて、本研究代表者も参加する日本原子力研究所シグマ委員会が作成したJNDCファイルはその代表的な基礎データライブラリーである。 この他にも米国のENSDFファイル、欧州のJEFファイルがある。 実験では核分裂後の総放出熱量を時間の関数として測定するが、理論計算では核分裂で生成される各核分裂生成核種の平均ベータおよびガンマ崩壊熱を遅発中性子、アイソマーなどを考慮しながらひとつひとつの核分裂生成核種について足しあわせたものを時間の関数として表現することになる。 これまでは、中性子瞬時照射後10秒程度以降の時間が主な議論の対象であり、大局的理論で補強したJNDCファイルは良好な総和計算値を提供してきた。 近年Lowell大学での実験で照射後数秒の範囲で測定が行われたので、各核種のベータ崩壊定数、平均ベータ崩壊熱、平均ガンマ崩壊熱を大局的理論だけで推定した値で、総和計算を行った。 理論に含まれる底上げパラメータを適度に調整することで実験との良い一致が得られたが、最適な結果をもたらすためには崩壊定数に対するパラメータ値と、ベータおよびガンマ線平均崩壊熱に対するパラメータ値が違うことが分かった。 これは、崩壊定数用のパラメータ値は全核種領域で決め、平均崩壊熱に対しては核分裂生成核種領域だけで決めているという不合理があるためで、今後理論の改良とともに進められるべき研究課題である。 主な結果は論文として、日本原子力学会欧文誌(2000年6月号)に掲載されることが決定している。

  • ベータ崩壊半大局的理論のr過程元素合成および崩壊熱への応用

    1998  

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     最近の原子核研究で強い関心が持たれている不安定原子核に対しては、未発見または発見されていても各種の実験データ不足の核が数多くある。我々は原子核の基礎的なデータを推定する方法として、ベータ崩壊強度関数を与える理論(大局的理論と半大局的理論)および質量公式を研究してきた。本年度の特定課題研究の成果は、主に以下の2つの国際会議で発表した。 (1)国際会議 ENAM98(ミシガン州, AIP, CP455,p.805):現在、遅発中性子放出の実験値は主に核分裂生成核種が中心であるという片寄った状況ではあるが、半大局的理論での推定値がこれらの実験値を、平均的に過小評価していることが分かった。これを改良するために理論で計算された強度関数を各エネルギーで広げて、全エネルギー領域で積分したものを新しい強度関数として用いた。拡げる時に用いる関数の幅はエネルギーに依存させ、娘核の基底状態ではデルタ関数となるように工夫したので、半減期に対してはこれまでの推定値から大きな変更はない。これで遅発中性子放出確率は改良されたが、その効果はまだ十分ではない。今後これをr過程元素合成のデータとなるように精度を高めていく。 (2)原子核国際会議98(パリ):中性子瞬時照射後の核分裂崩壊熱の研究において、239Pu など多くの核で、照射後約千秒で総和計算値が測定値を系統的に下回る。その原因を調査するために、総和計算に使われる実験値等を考慮しながら、この時間領域で有効な核種を同定し考察した。われわれの大局的理論を援用した結果、104Tc と 105Tc に対してベータ強度関数の実験値が少なく測定されている可能性があるという結論を得た。これは、名古屋大学、日本原子力研究所、武蔵工大、カダラッシュ研究所(フランス)との共同研究となった。 また質量公式に関しては、名古屋大学エネルギー理工学グループとの共同論文で我々の質量公式の検証も行った。

  • 不安定原子核のベータ崩壊および原子核質量の研究とr過程元素合成への応用

    1997  

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    本研究では、陽子数と中性子数を変数として原子核を並べた平面上で安定核領域から遠く離れた、不安定核領域にある原子核を対象として、主にそのベータ崩壊に関する研究を行った。 この領域にあると考えられる原子核については実験値がなく、またあっても不十分なデータしか揃っていないのが実情である。 そこで理論的な研究が特に必要とされる。 これまで我々早稲田グループでは「ベータ崩壊の大局的理論」を用いてベータ崩壊の強度関数を理論的に推定してきた。 このモデルを用いて計算したベータ崩壊半減期や遅発中性子放出確率を使って、r-過程元素の存在量を推定し、太陽系での観測量と比較した。 その時に必要なQ値や中性子分離エネルギーは、我々早稲田グループで開発した原子質量公式TUYYを改良して求めた値を用いた。 この合成過程を時間発展で追い、コンピュータ グラフィクスで視覚化し、さらにビデオに収めた。 これは、理化学研究所との共同プロジェクトであり、このr-過程の部分は一応完成させることができた。 原子力工学の分野では崩壊熱計算の解析も行った。核分裂後に放出される崩壊熱は、理論的推定値と測定値の一致が一般的に良いと言える。しかし、その中で崩壊後1000秒あたりには有意な違いが見られる。 この理由も「大局的理論」等を用いて解析し、現在論文としてまとめつつある。 「大局的理論」を改良した「半大局的理論」も、一応のモデル化に成功した。 しかし、このモデルで遅発中性子放出確率の計算をし、実験値と比べるとその値が小さい傾向にあることが分かった。 これは推定される強度関数の大きさに問題がある。 これは、強度関数を適当なエネルギー領域で平均化することで解決できる見込みである。研究成果の発表(1) H.Nakata, T.Tachibana and M.Yamada, Nuclear Physics, A625 (1997) 521(2)T.Tachibana, H.Nakata and M.Yamada, Proc. Tours Sympo. on Nuclear Physics III, American Institute of Physics, p.495

  • 不安定原子核のベータ崩壊とその応用

    1996  

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     近年の原子核物理学は、各種実験装置の進歩やテクニックの向上により、ベータ安定線から遠く離れた原子核を対象として、研究が盛んに進められている。つまり原子核の研究は、安定核と比較して陽子数または中性子数を過剰に持つ不安定原子核の領域にまで広がっている。 このような不安定核種領域では、実験の情報が「質、量」ともにまだ不十分で、原子核に関する実験サイドからの寄与は極端に少ないのが現状である。したがって、その多くの部分は何らかのモデルを用いて、理論で推定しなければならない。 本研究では、このような安定核領域から遠く離れた所でのベータ崩壊を研究対象の中心に置き、これまで、われわれが研究、開発してきた「ベータ崩壊の大局的理論」の改良を行った。 まず、「大局的理論」で本質的に重要な一粒子強度関数に含まれるパラメータ値を確定した。このパラメータ値を用いて、ベータ崩壊の半減期を全核種領域で計算した。これらの推定半減期は日本原子力研究所の「1996年度版核図表」として出版される予定である。 次に、「大局的理論」の改良版として「半大局的理論」を提案した。そこでの一粒子強度関数は「大局的理論」で確定された関数型やパラメータ値を参考にしている。この「半大局的理論」ではベータ崩壊の親核に関してのみシェル効果やペアリング効果を微視的手法で入れている。 また、ベータ崩壊する核子のスピンパリティも考慮している。これらの改良により、半減期等の理論値が原子核のマジックナンバー近くでも改善された。 今後の予定としては、「半大局的理論」による遅値発中性子放出の計算などを行い、天体における元素合成の研究に応用していく。

  • 不安定原子核のベータ崩壊および質量公式の研究とその応用

    1995  

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    不安定原子核の研究は古くから行われているが,最近の日本およびヨーロッパの実験的原子核研究の進展と技術の向上により対象とする不安定原子核の数は非常に多くなってきた。本研究では,不安定原子核の持つ諸性質のうち,ベータ崩壊および基底状態の質量を対象として,これまで本特定課題申請者が所属するグループが開発してきたモデルの改良等を行った。 ベータ崩壊に関しては,大局的理論を用いて研究してきた。これは,ベータ崩壊する一粒子あたりの強度関数とそれら一粒子のエネルギー密度を掛けてパウリ原理を考慮しながら積分したものとしてベータ崩壊強度関数を表現するモデルである。我々は最近,奇奇核に対してこのモデルを改良したが,その過程でこれまでの一粒子強度関数が実験値を過小評価していることがわかり,hyperbolic sec型の関数からmodified Lorentz型の関数に変えた。これにより遅発中性子放出確率の計算値が改善され,γ線との競合係数が考慮されやすくなった。また,このモデルでベータ線スペクトルの計算も行い,実験値との良好な結果を得ることができた。 原子核質量に関する研究では,Audi達により1995年に発表された評価済み質量値をシステマティクスの方法を用いてチェックした。これにより,かなり多くの原子核に対して問題があることがわかり,我々はそれらについて合理的な誤差値を評価した。一方,我々は質量公式の開発も行っている。それは,球形の一粒子ポテンシャルから決めた波動関数を用いて,原子核の殻エネルギーを求めるものである。この殻エネルギーの重ね合せで変形のエネルギーや対エネルギーも表現できるとするモデルである。この質量公式に含まれるパラメータ値を決める時の入力データとして,先ほどの再評価された質量値と誤差を用いることを予定している。 今後は,以上のモデルを天体核物理学や原子核工学の分野で応用する事を予定している。

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