2024/04/23 更新

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カサマツ マナブ
笠松 学
所属
政治経済学術院
職名
名誉教授
学位
修士

研究キーワード

  • 経済理論

 

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 金融政策の制度設計についての研究

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    「金融動学の理論」研究班(渡辺(和)、浅田、黒木)は、企業、家計、市中銀行、中央銀行を含む金融動学モデル、インフレ率と為替レートを内生変数として含む金融動学モデルを構築し、比較動学分析やカリブレーションの手法を用いて政策的効果を分析した。「金融制度の歴史的実証分析」研究班(野下、石倉、渡辺(良))は、2007年に起きた米国の金融不安が世界的に拡大した因果関連を歴史的実証分析の方法により考察し、さらに国際通貨制度の再構築について研究した。「金融政策と所得分配の理論」研究班(八木、山田、笠松)は、スラッファモデルにおける賃金と利潤の関係を検討することにより、スラッファモデルの深化を試み、またSNA体系における銀行の付加価値生産の処理のされ方、銀行が投入・産出という観点でどのように採用されてきたかを整理し検討した。以上の研究成果は平成23年度科学研究費学術図書助成を受けて『金融政策と所得分配』(渡辺和則編、日本経済評論社、2011年)として刊行される

 

特定課題制度(学内資金)

  • 経済学における因果性(因果連関)の役割

    1999年  

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     本研究は、因果性(因果連関)が経済学の中で果たす役割を検討しようとするものである。因果性の役割について現在正統的な考え方は、これを被覆法則の中で捉えるものであるが、この限界は夙に指摘されてきた。(Bungeなど) そこで本研究は、これと異なる視点に立って因果性に接近する試みとして、超越論的実在論に着目し、そこにおける因果性の取扱いを検討することとした。超越論的実在論は、批判的実在論とも呼ばれ、注目を集めている考え方であるが、その出発点は、D.Humeに代表されるような、恒常的連接と因果性を同一視する考え方の批判であった。しかしこの批判は、恒常的連接が因果性にとって必要ではないとしても、十分ではあるという形でなされた批判をも克服し、十分ですらないと考えるところに新しさがある。つまり決定関係の一つとして因果関係を考えるという、因果性のいわば「相対化」をもその批判の射程に入れた議論になっている。因果性の相対化が可能なのは、これを出来事の領域で把握しているからである。 これに対して、超越論的実在論にあっては、これを実在的領域(Lawsonによれば、deepな領域)で把握するし、法則言明も通常の反事実的なものではなく、超事実的なものになる。前者は、事実と異なる事を仮定した場合に何が生ずるかを述べるものであるのに対し、後者は、現実的な帰結にかかわらず何が生ずるかを述べるものである。つまり因果法則とはこうした傾向であって、出来事として生ずるものでも、われわれが知覚するような経験的なものでもない、という結論になる。 このような意味で因果性がいわば絶対化されるところに、この議論の特徴が認められ、説明一般が、何らかの意味で因果的説明であるかぎり、きわめて魅力的な結論といえる。けれども反面で、因果性を実在的領域で把握する方法についての論証が十分と言えない点があり、この面で一層の検討が必要であるし、経済学固有の問題においてどのようにこの特徴を活かして行けるかについても、さらに進んだ考察が必要と思われる。