2022/06/28 更新

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マツムラ カズノリ
松村 和徳
所属
法学学術院 大学院法務研究科
職名
教授

兼担

  • 法学学術院   法学部

  • 法学学術院   法学部

  • 法学学術院   大学院法学研究科

学位

  • 博士

 

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 民事訴訟審理における裁判官の積極性と当事者行為の規律の関係に関する研究

    研究期間:

    2018年04月
    -
    2021年03月
     

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    本研究は「真実に合致した裁判と迅速な裁判の実現」という観点から、この裁判官の積極性と当事者行為の規律の関係を明らかにすることを目的とする。昨年までの研究から、わが国では、裁判官の積極性が手続集中の鍵となることについての理解の齟齬が見受けられ、それがわが国における「適正・迅速かつ公正な裁判」実現の障害となっていることを明らかにした。そして、裁判官の積極性の観点からは、発問・指摘義務、当事者への出席命令、職権による文書提出命令などとの関連で当事者の真実義務を考慮する必要があること、そして、この真実義務は当事者の証拠調べ協力義務との関係が重要であり、当事者行為の失権を導き出す前提になるのではないかとの問題意識を持つに至った。その関係で、以下の三点を考察対象とした。一つは、訴訟における情報収集の局面での当事者の行為規律であり、とくに、この点では、情報提供がより可能であるが、証明責任を負わない当事者に対する二次的主張責任との関係から当事者の行為規律を考察する点である。この考察対象についてはドイツ法系での議論について主に研究対象とした。第二は、信義則による当事者の行為規律である。とくに、この点については、我が国における判例の展開を中心に考察・分析し、比較法的な考察を展開した。第三は、これら2つについての議論を真実義務の観点から分析・検討し、当事者の行為規律のあり方についての考察を深めることである。この観点では、真実義務自体についての再検討も比較法的考察に基づいて実施したきた。その結果、信義則についての判例の分析などはある程度進展し、一部研究成果を公表したが、二次的主張責任や真実義務については諸外国の実情を把握することが必要と感じ、2020年3月にドイツ法系諸国への海外視察を予定したが、コロナウイルスの影響で渡欧ができなくなった。実態調査に基づく分析、考察が今後の課題となっている。平成30年度の研究は、民事訴訟法制において真実義務導入や当事者行為の失権強化の先達となったオーストリア民訴法、母法国ドイツ民訴法及び最新のスイス 民訴法を中心に、この当事者規律をめぐる評価等に関する情報収集と整理を中心的に実施していくことを内容とした。令和元年度の研究は、この研究をベースに、①二次的主張責任、②信義則による当事者の行為規律及び③真実義務の観点からの①②の分析を研究課題として実施してきた。①については、とくに訴訟における情報収集の局面での当事者の行為規律について、情報提供がより可能であるが、証明責任を負わない当事者に対する二次的主張責任との関係から考察することを、ドイツ法での議論を中心に実施した。ドイツ法では、弁論主義の支配する「当事者の自己責任に基づく民事訴訟モデル」は当事者に情報収集手段がなく、訴訟上重要な事実を具体的に述べることができない場合には機能しないという前提の下、当事者間の協力義務が議論され、ドイツ民訴法138条1、2項、同277条1項、同282条1項及びドイツ民法242条に関する学説・判例が二次的主張責任の根拠付けで検討されていることがわかった。②については、信義則による当事者の行為規律をわが国における判例の展開を中心に考察・分析した。我が国では、信義則による当事者行為の規律が中心となっているが、その基準が必ずしも明確でないことを明らかにした。③において、これら2つについての議論を真実義務の観点から比較法的にドイツ法系諸国の研究者等との意見交換を通じて分析・検討し、当事者の行為規律のあり方についての考察を深めることを真目指したが、コロナウイルスの影響で渡欧ができなくなったため、課題として残っている今後の研究は、前年度の歴史的・比較法的研究の整理、分析に基づき、わが国民事訴訟法における当事者の行為規律のあり方を明らかにすることを目的とする。前年度及び前々年度においては、民事訴訟法制において真実義務導入や当事者行為の失権強化の先達となったオーストリア民訴法、母法国ドイツ民訴法及び最新のスイス 民訴法を中心に、この当事者規律をめぐる評価等に関する情報収集と整理を中心的に実施してきた。そして、具体的には、真実義務、二次的主張責任、そして信義則及び手続による当事者行為の失権という当事者行為規律に関する沿革的な議論と現在の状況に関する比較法的検討結果の整理、分析研究を引き続き実施し、わが国民事訴訟における当事者の行為規律のあり方について一定の取りまとめを行いたい。比較法的研究では、真実義務と二次的主張責任との関係、及びスイス法が採用した同時提出主義たるAktenschlussと真実義務についての研究を継続していく。今年度は、昨年度中コロナウイルスの影響で実行できなかったドイツ法系諸国の実態に関する調査を実施し、民事訴訟実務などを視察し、実務と理論の知見を得て、 前年度行った検討結果の検証と分析を行う。加えて、環境が整えば、英米法諸国の民事訴訟法制 における当事者規律に関する研究も上記と同様に行う予定である。また、このような比較法的研究・調査の整理・分析に基づき、わが国民事訴訟の実務改革、改正の変遷に関して、理論的検討と検証を実施していくが、その中でもその理論的側面についての考察を中心的に行っていきたい。とくに、現在ではほとんど議論されていない真実義務が、当事者の行為規律にどのようにかかわってくるのか、そして、「真実に合致した裁判と迅速な裁判の実現」のために は、これらの関係をいかに規律すべきかを実務的観点から分析し、理論的側面の検討・検証していく予定である

  • 民事訴訟における「手続集中」理念とその諸方策に関する研究

    研究期間:

    2015年10月
    -
    2018年03月
     

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    本研究は、民事訴訟における「適正・迅速かつ公正な裁判」の実現はなぜ「手続集中」に委ねられたのか、その根源(一八九五年のオーストリア民訴法)に遡り、現在に至る変遷を明らかにし、わが国におけるこの実現に関する将来の展望を試みたものである。そして、本研究では、「手続集中」理念がわが国大正民訴法改正に大きな影響を与え、現行民訴法に受け継がれていることを明らかにし、手続集中のための方策の重点は上訴まで含めた審理システムの構築と訴訟主体(裁判官・当事者)の行為規律との組み合わせにあり、とりわけ、裁判官の積極性が手続集中の鍵となる旨主張し、「弁論主義」の存在意義に関する批判的検討を展開した。この研究では理論と実務の架橋をめざし、根源、沿革、複眼という三つの観点から考察した。つまり、研究対象(手続集中理念)について、その生成及び本来の意味は何であったかといった根源を探求した。そして、その沿革を探り、その対象の変遷とその理由・背景とを追求した。そのうえで、その研究対象の現在的意義を、類似物や諸外国のそれと比較しつつ、地域性、社会性、経済性など多面的・複眼的視点から探求した。これらの考察に基づき、現在の民事訴訟実務における研究対象の現実的検証を試みたものである。こうした研究は法律学と法律実務間の連動・関係性を考察するモデルを提供し、かつ裁判実務及び立法にも寄与するものと考える

  • 倒産手続における担保権の処遇に関する比較法的研究

    科学研究費助成事業(明治学院大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(C))

    研究期間:

    2007年
    -
    2008年
     

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    倒産手続における担保権の処遇につき、(1)担保権消滅請求制度、(2)商事留置権の処遇、(3)担保権実行の中止命令、(4)リース契約の処遇、(5)流動集合動産譲渡担保権の処遇という5つのテーマを取り上げ、比較法的検討、あるいは、手続横断的検討という観点に配慮しつつ、旧法下および新法下の判例・学説、さらには、立法段階における議論等を参照し、6名の研究者による議論を通じた検討を行い、一定の解釈論的見解を示すに至った。

  • 統計による民事司法制度の国際比較-データに基づく司法政策研究のための基礎作業として

    科学研究費助成事業(岡山大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(C))

    研究期間:

    2002年
    -
    2003年
     

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    本研究は、各国の司法統計、とくに事件件数、新受、既済事件数、判決、和解数・割合、平均審理期間、事件類型別の事件件数等、上訴率、法曹育成制度、ADRなどについて、各国を比較し、そのデータを分析して、とりわけ、わが国との対比から、わが国司法改革にどのような示唆を与えうるかなどを検討することを目的とした。
    各国の司法統計は、そのデータの保存に対する意識の差異からか、データ収集方法、項目についてかなりの違いがあり、一般的にわが国の司法統計と比較することは難しいが、特定の項目においては比較検討が有効である。例えば、控訴審における統計では、とくにドイツなどは近年の改正(2001年改正)の原因(手続の遅延、破棄・変更率の高さ)を統計データから読み取ることが可能であり、わが国の控訴審改革にとって一定の指針を与えるものと思われる。イギリスの統計データも司法改革との関連で分析すると興味深い。
    人口比率などからみてわが国の裁判事件数が他の諸国と比較して極端に少ないことが読み取れる。その原因が国民性なのか、それとも他の原因があるのか、今回の分析データからは明らかにできなかったが、これからの課題でもある。また、新受件数と既済件数との関連など、単独のデータからではなく、裁判所の人的・物的設備からの総合的分析などが必要なことがわかり、この課題についても同様の分析の必要性がある。さらには、司法統計データは、その国々の社会・経済情勢との相関関係をぬきにしては語れず、そのデータの推移の背景を知ることが重要であり、それらの分析もわが国司法改革にとって不可欠のものであることが明らかになった。

  • 第三者異議の訴えの異議事由拡張過程に関する研究

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    今年度の研究は、第三者異議事由の拡張過程とそこでの一般的基準の解明を目的とした研究に従事した。この研究で特に注目したのは、所有権を中心とした物権的請求権を異議事由としてきた第三者異議の訴えが、債権的請求権をその異議事由とするに至った異議事由の拡張過程であった。これまでの研究で明らかとなったのは、次のことである。まずこの過程では、近世初頭の経済的取引の飛躍的発展に伴う商品所有権の地域的に広範な流動という背景が存在した。そこでは、所有権と債権的返還請求権とは分離されることが頻繁に生じ、その結果、所有権についての証明軽減または所有権移転の中間に属する者に執行救済を得させるために、実務上、債権的請求権を有するにすぎない者にも第三者異議の訴えの原告適格が認められるに至り、それは今日的意味における訴訟担当の形により行われた。そして、債権的請求権は物権的請求権と競合しうる取戻請求権(Herausgabeanspruch)と交付をもとめるにすぎない交付請求権(Verschaffungsanspruch)とに分けられ、前者についてのみ第三者異議の訴えが許容された。しかし、その後、後者についても第三者異議の訴えは拡張された。ドイツでは、破産否認権に基づく返還請求権-Verschaffungsanspruch-が異議事由として認められた。この背後には、否認状況における執行排除の必要性という具体的妥当生重視の思考が存在した(もっとも、1990年のBGHの判例はこれまでの判例を変更し、否定説をとり、非難されている)。また、わが国では、こうした権利から出発する思考だけでは第三者異議事由の範囲としては狭いと考え、戦後以降、第三者と債権者との関係における実体的違法性による思考傾向が強まり、平成5年3月4日静岡地裁浜松支部判決はこの思考から債権的請求権一般につき第三者異議の訴えを認める。この結果は、現在執筆中であり、これまでの研究もあわせ論文集にまとめる予定である

  • 地域的リーガルネットワーク構築に関する総合的研究

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    地域における法的サービスのネットワーク化の今日的特徴として、そのネットワーク化の部分性、非公式性、任意性を挙げることができる。しかし、法的サービスの質的高度化を図るためには、総合的な法的サービスのネットワーク化を通じてはじめて、各法律専門職はその自らの役割を十全に果たすことができるという視角が必要である。法的サービスのあり方を考察するため、法的サービスの提供者・利用者の相互連携のための包括的リーガル・ネットワークのモデルを構想した。このようなリーガル・ネットワークの中で、各種法律専門職間の相互連携が果たしうる機能は、相互理解と情報交流を活発化させ、市民や企業からの複合的な法的サービスへの期待に対する応答力を高めることである。法律家のネットワーク化を通じた法的サービスの高度化を図るためには、市民ないし企業により期待される法的サービスに法律専門職がどのように連携して応えるかという視点のみならず、むしろ法律家連携を通じて従来の法律家分業の中では受け止めることのできなかった市民ないし企業の潜在的期待を如何にして掘り起こし、顕在化させ、またこれを当事者の利益に結びつけていくかという、一層積極的な複合的サービスへの視点が必要とされる。リーガル・ネットワークの中での大学の役割は、各種の法律専門職や行政・市民団体等から提供される情報を様々な角度から分析し、その問題性に対して幅広い、長期的視点からの提言を行うなど、二次的に加工された情報を提供する機関として意義づけられる

  • 控訴審改革に関する比較法的研究-控訴制限、弁論更新権を中心に-

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    本研究は、ドイツ法、オーストリア法、フランス法、アメリカ法における控訴審改革の詳細を、統計資料や裁判実務の実態などを調査して、分析・検討し、その上で、わが国の控訴審の実態を調査し、理論的考察を行うこと目的とした。昨年度実施した控訴審実務についての聞き取り調査に基づき、比較法的観点から分析を行った。その結果について、実際に審理を行っている控訴審裁判官と議論し、控訴審改革の方向性とその点に関する比較法的研究を重点的に実施した。本研究において抽出した控訴審改革について具体的かつ重要ポイントとは、以下の三つである。まず、(1)控訴審における控訴受理(理由)のあり方である。(2)控訴審における審理のあり方である。ここでは(1)第1回結審の実質、問題点、(2)争点整理の方法、とくに、控訴審における新たな主張の取扱い、時期に遅れた攻撃防御方法の処理などについて随時提出主義から適時提出主義への転換を考慮して、検討した。(3)控訴審における釈明のあり方、とくに現実には事後審的運用がなされている控訴審での釈明のあり方について分析・検討を加え、(4)人証調べについて必要性の吟味も含め、分析、検討した。第三に、(3)(1)、(2)を前提としたうえでの続審制の再検討である。共同研究の結論としては、続審制を維持したうえでの事前手続の導入などを考慮した柔軟な審理が望ましいが、控訴審改革は、既判力基準時との関係、裁判所の釈明義務との関係、再審制度との関係、上告審との関係などを考慮したうえで実行すべきことになる。わが国の近時の改正が、第1審集中化という方向性をもってなされたこと自体は問題ないが、それが、他制度との連関性の中で実施されたと思われない点が問題である。控訴審改革を通して、第1審から上告、再審までの制度設計を考える。こうした検討結果については、岡山大学法科大学院紀要「臨床法務研究」第4号に掲載予定である

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特定課題研究

  • 民事執行における執行文付与制度の総合的研究

    2019年   西川佳代, 吉田純平

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    本研究は、民事執行の実務や近時の議論では債権回収の実効性が重視される傾向にあり、そこでは、必ずしも民事執行手続の理論的側面は必ずしも十分に検討されていないのではないかという疑義を出発点として、「執行文付与制度」に焦点を絞って、その実務を明確にし、その理論的検証を目的としたものである。この研究では、①執行文付与段階での審査状況、②執行文付与制度をとらない担保権実行手続における承継執行の実態、③令和元年の民事執行法改正中、子の引渡しの強制執行における執行文付与段階での対応を、中心的検討対象として、各地域での実務の実情、その差異の有無等を実体調査を行うことで実態を把握し、その理論的解明をめざした。

  • 民事訴訟における当事者の行為規律としての真実義務

    2018年  

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     2018年度の研究課題に対する真実義務及び手続による失権という当事者行為規律の研究対象項目に関する沿革的な議論と現在の状況に関する比較法的検討結果の整理、分析研究を実施した。とくに、オーストリア民訴法における手続集中理念から導き出される真実義務・完全陳述義務について考察し、わが国民訴法の争点整理手続終了時において争点に関する裁判所・当事者間の確認及び討論義務の提唱が可能かを検討した。その間、当事者の行為規律に関するドイツ民訴法の議論の中で、特に、主張責任を負わない当事者の第二次主張責任に関する議論と真実義務との関係、及びスイス民訴法における裁判所の発問義務と同時提出主義の議論を中心に検討した。

  • 民事裁判における裁判官の積極性と手続による失権

    2017年  

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    施行二〇年の現行民事訴訟法は、「適正で迅速な裁判の実現」を目的とし、この実現のため、当事者主導型の争点中心型の審理手続を整備したとされる。しかし、今日、争点整理期間、平均審理期間の長期化傾向などが指摘されている。審理の迅速とその充足(適正さ)の調和をどのように図るかについて諸外国が試みたのは裁判官の積極性と失権をともなった当事者の行為規律であった。本年度の研究では、最新立法であるスイス民訴法を主な研究対象した。スイス法では発問義務の明文化などで裁判所の積極性が追求され、簡易手続における社会的職権探知主義の導入など手続原則の変革が行われた。さらに、同時提出主義が採用され、失権が強化されている。これらの規定による裁判実務の評価が今後の課題である。

  • 民事訴訟における手続集中と上訴・再審制度

    2015年  

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     民事訴訟において中心的理念となる「手続集中」理念が上訴手続においてどのように発現され、それがどのような機能・成果をもたしているかを明らかにし、わが国民事訴訟法における控訴手続のあり方を考察するのが本研究の目的であった。わが国に「手続集中」理念をもたらしたオーストリア民訴法の規律とその影響を受けたと思われるドイツ民訴法の近時の上訴改正を中心に研究した。とくに、オーストリア法における「手続集中」理念を具現化した上訴手続における厳格な更新禁止(Neuerungsverbot)原則を研究対象とし、この原則の歴史的発展、機能、評価、そして、「手続集中」理念の実現措置としての位置づけについて研究した。

  • 民事訴訟における「手続集中」理念の系譜的研究

    2014年  

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    オーストリア民訴法の最大の特色とされる「手続集中」理念は、旧民訴法(大正民訴法)の成立に多大な影響を与えた。手続集中理念は、裁判の「遅延防止」と真実に基づく「適正な裁判」の実現を目的として、「審理構造」の局面と「訴訟主体の行為規律」の局面で具体化した。本研究では、とくに「訴訟準備手続構造」と「控訴審構造」についてのオーストリア法とドイツ法を中心に法改正の変遷を辿りつつ考察した。前者では、2002年オーストリア民訴法改正における準備期日の創設、また後者では、その根源を19世紀に遡れるオーストリア法の最大の特色である「更新禁止」原則が2001年ドイツ民訴法改正において、実質的に考慮された点が注目される。

  • 民事訴訟における「手続」集中理念の系譜

    2013年  

     概要を見る

    本研究では、民事訴訟法学と実務がめざしてきた「真実に合致した裁判と迅速な裁判」の実現のために、比較立法史、実務史的にどのような試みがなされてきたか、その系譜をたどり、その成功と失敗を検証しながら、今日の民事訴訟のあるべき姿を探ることを目的とする。そして、今年度の研究対象の中心にしたのがオーストリア民事訴訟法である。オーストリア民訴法は、わが国民事訴訟法が母国法としてのドイツ法から固有の民事訴訟法の構築をめざした大正民事訴訟法改正に多大な影響を与え、それは平成8年の民訴法改正(現行民訴法)にも引き継がれている。その影響の中心となったのが、「適正かつ迅速な裁判」実現のための手段となったオーストリア民訴法における「手続集中」理念であった。大正民事訴訟法改正では、この「手続集中」理念の影響を受け、「準備手続」の創設がなされたのである。その経緯等については、「わが国におけるオーストリア民事手続法の受容―「手続集中」理念と大正民事訴訟法改正―」(早稲田大学比較法研究所編『日本法の中の外国法』早稲田大学比較法研究所業書41号(2014)213頁以下)という論文で明らかにした。この課題研究では、本研究は、上記事前研究で対象とした「弁論の準備」のための手続形成に研究対象を絞り、大正民事訴訟法改正以降の展開を対象とすることにしたい。とくに、オーストリア法の発展に焦点をあて、研究を実施した。1.わが国における準備手続の変遷なお、上記で考察したわが国準備手続は、以下の変遷を辿っており、その研究成果は以下の通りである。適正かつ迅速な裁判実現の方策として位置づけられ、大正改正の中核を形成したのは、弁論準備システムの中心として導入された準備手続(大正民訴242条、249~256条:義務的準備手続)である。大正改正におけるこの(義務的)準備手続は、昭和4年から施行され、その後2,3年の実施状況は良好である旨が述べられていた(例えば、長島毅「改正民事訴訟法法の実施の成績及び之に関する希望」法曹会雑誌8巻12号70頁など参照)。しかし、その後立法当初の意図とはかけはれ、ほとんど利用されなくなってしまった(村松俊夫「準備手続と訴訟の遅延」『民事裁判の研究』(有信堂・1955) 96頁以下に、その経緯等についての報告がある。もっとも、施行後数年で、わが国は戦時下となり、大正改正の目指したものが実現されなかったとの断定的評価は難しい)。そして、昭和23年の改正で、準備手続は例外的な運用となった(準備手続の利用がほとんどなく、裁判所法によって地方裁判所では単独体が原則となり、準備手続は例外的なもの(合議体において審理する場合で相当と認められるときに限られた)となった。奥野健一=三宅正雄『改正民事訴訟法の解説』(海口書店・1948)(日本立法資料全集別巻164・信山社・2000)2頁、20頁、48頁参照)。ところが、その後すぐに、昭和25年にまた、継続審理、集中審理による訴訟の促進と裁判の適正への改革の一環として準備手続の改革がなされ、再度、準備手続に付すことが原則的となる(この改正については、関根小郷「継続審理を中心とする民事訴訟法の改正と最高裁判所規則の制定」曹時3巻1号(昭和26年=1951)46頁以下、最高裁事務総局民事局『民事訴訟促進関係法規の解説』(民事裁判資料23号・1951)など参照。この改正条文が旧民訴法249条であり、平成8年改正まで続く。ただ、大正改正法とは異なり、義務的準備手続ではなく、あくまでも原則的に準備手続に付すことを念頭においている)。この改正も予期したほどの成果もなく、昭和31年の民訴規則改正で、準備手続の原則利用は後退し(民訴規則16条、17条)、準備的口頭弁論による弁論の準備がなされる試み(民訴規則26条)がなされた。これもうまくいかなかった(例えば、古関敏正「新件部の設置―理論と実情」曹時11巻9号(1959)1頁、最高裁事務総局民事局『民事訴訟規則の解説』(民事裁判資料55号・1956)など参照。また、これらの経緯は、司法研究所編『準備手続の実務上の諸問題』(法曹会・1989)9頁以下参照のこと)。なお、準備手続の利用に関する条文の変遷は、以下のとおりである。 明治民訴法第268条 「計算ノ当否、財産ノ分別又ハ此ニ類スル関係ヲ目的トスル訴訟ニ於テ、計算書又ハ財産目録ニ対シ許多ノ争アル請求ノ生ジ又ハ許多ノ争アル異議ノ生ジタルトキハ、受訴裁判所ハ、受命判事ノ面前ニ於ケル準備手続ヲ命ズルコトヲ得。」大正民訴法第249条 「訴訟ニ付テハ弁論ノ準備ノ為、受命判事ニ依ル準備手続ヲ為スコトヲ要ス。但シ、裁判所ハ、相当ト認ムルトキハ直ニ弁論ヲ命ジ又は訴訟ノ一部若クハ或争点ノミニ付キ受準備手続ヲ命ズルコトヲ得。」昭和24年改正民訴法第249条「裁判所ハ、訴訟ニ付合議体ニ於テ審理ヲ為ス場合ニ於テ相当ト認ムルトキハ、受命裁判官ニ依リ、訴訟ノ全部若ハ一部又ハ争点ノミニ付、口頭弁論ノ準備手続ヲ為スコトヲ命ズルコトヲ得。」昭和25年改正民訴法第249条「裁判所ハ、口頭弁論ノ準備手続ヲ為スコトヲ得。」昭和31年民訴規則第16条(口頭弁論を経て準備手続に付する場合) 「裁判所は、最初にすべき口頭弁論の期日に弁論を終結しない場合において事件が繁雑であると認めるときは、これを準備手続に付することができる。」第17条(口頭弁論を経ないで準備手続に付する場合) 「裁判所は、事件が繁雑であると認めるときは、口頭弁論を経ないで、直ちに事件を準備手続に付することができる。」第26条(争点及び証拠の整理の完了の記載)  「準備手続を経ないで口頭弁論において争点及び証拠の整理が完了したときは、その旨を調書に記載しなければならない。」このように、わが国における準備手続による適正かつ迅速な裁判の実現の試みは、失敗の繰り返しであった。その後、わが国民事訴訟実務は、弁論兼和解という審理方法を生み出し、その隆盛を迎え、平成8年の民事訴訟法大改正となる(その間の経緯等につき、さしあたり、今井功「争点・証拠の整理と審理の構造」竹下守夫編集代表・講座新民事訴訟法Ⅰ(弘文堂・1998)201頁以下、拙著・前掲書106頁以下など参照。また、昭和60年代からの実務改善の試みに関しては、岩佐善己ほか『民事訴訟のプラクティスに関する研究』司法研究報告書40輯1号(法曹会・1986)などがある)。そこで議論された問題意識や新法(現行法)での方策は、大正期における改正議論と共通性を有しており、そして、大正期にわが国民事訴訟法の根幹に織り込まれた「手続集中」理念は、平成8年の民事訴訟法改正の指導理念としても機能していたと評することもできよう。しかし、現行民訴法も、立法当初は、期待どおりの成果が得られたが、最近では漫然と緊張感のない状態に至っているとの指摘もなされている(「民事訴訟の迅速化に関するシンポジウム」判タ1366号4頁以下(2012)など参照)。「真実に合致した裁判と迅速な裁判の実現」は、またも砂上の楼閣となりそうであり、その点でも本研究の意義は大きいと考えている。2.オーストリア民事訴訟法における「弁論準備」システムの変遷 オーストリア民訴法では、「手続集中」をめざすツールは、手続形成による手続集中と裁判官の積極的訴訟指揮による手続集中に分けられる。後者については、裁判官の実質的訴訟指揮権に委ねられており、①弁論の集中(オ民訴180条3項)、②時機に遅れた攻撃防御方法の却下(同179条1項)、③遅延目的の証拠調べの却下(同275条2項)、④一部判決、中間判決による特定問題の弁論限定(同391条、393条)、⑤裁判官の釈明義務、釈明処分など(同182条以下)などがある。これについては、次の研究計画により研究する予定である。本研究では、前者の手続形成による手続集中、とりわけ「弁論準備」システムに焦点を当て、研究した(オーストリア法のこの観点からの特徴は、控訴審における更新禁止原則であるが、これも次の研究計画により研究する予定である)。とくに注目したのは、オーストリア事訴法の大改正となった1983年改正法(BGBl1983/135)(この点に関しては、Ballon,Das neue österreichsche Zivilprozeßrecht,dRZ 1984,S.301ff.,Fasching ,Die Zivilverfahrensnovelle 1981 , JBl 1982 S.68.S.120.,König, Bemerkungen zur Regierungsvorlage einer ZivilverfahrensNovelle.,JBl 1982.S.406ff.,Petrag,Überblick über die Zivilverfahrensnovelle 1983,RZ 1983.,S.105ff., Rechberger ,Pro futuro?,NZ 1981.,S.145ff., Strigl, Die ZPO- und neue `Rechtzeitgkeiten`AnwBl 1983.,S.906.,Wrabetz, Was bringt die ZPO-Reform Neu? AnwBl 1983 .S.111ff.など参照)と2002年改正法(BGBlⅠ2002/76)(この点に関しては、Beran,Klaus, Lienhart,Nigl,Pühringer,Rassi,Roch,Steinhauer,(Frany)Klein,aber fein.,RZ 2002.S.258ff.,Frauenberger,Die ZVN 2002-Neuerunger im Zivilprozessrecht.,ÖJZ 2002.S.873.,Fucik,Möglichkeiten und Grenzen der Verfahrensbeschleunigung in Zivilrechtssachen,RZ 1993.S.218ff., Kodek, Yur Zweitigkeit des Rekursverfahrens,ÖJZ 2004,S.534ff.,S.589ff.,など参照)である。制度的には、第一回期日審理方式がポイントとなる。オーストリア民事訴訟法の審理構造は、その創設時においては、訴え提起⇒第一回期日⇒答弁書提出命令⇒(準備手続⇒)争訟的口頭弁論⇒判決の段階をとる。オーストリア民訴法が手続集中を目的として固有の制度として創設したのが、「第一回期日(Erste Tagsatzung)」である(オ民訴239条)。第一回期日は、本質的に二つの役割を有する。一つは、争いある事件を争いのない事件(口頭弁論の必要のない事件)から分離すことである。ここで、請求の認諾・放棄、当事者の欠席(欠席判決)又は和解による事件の処理がなされる。他の役割は、防訴抗弁の提出を可能し、本案の弁論前に確定することである。これにより、裁判所は、本案の弁論は特定の訴訟要件の欠缺を理由にして可能か否か及び本案の弁論前にどのような訴訟要件が明らかにされねばならないかのかを調査する権限が付与されるのである。第一回期日は、通常事件において原則義務化され、公開で実施される(ドイツ法では1926年改正草案で、第一回期日を取り入れたが、立法化されず、単独判事による審理を選択する。そして、1977年のいわゆる「簡素化法」により、早期第一回期日としてドイツ法に導入されることになった)。事件が第一回期日で終了せず、口頭弁論が開かれることになると、裁判官は、被告に答弁書提出命令を発することになる(オ民訴248条)。(1)1983年改正法 本研究との関係で重要なのは、以下の点である。わが国が弁論集中の手段として選んだ①準備手続の廃止である。オーストリアでは、準備手続はほんど利用なく、合議体で意味があったが、合議体事件でも準備手続は審理の促進という点で必ずしも良い結果をもたらしていないとの評価に基づくものである。②簡易裁判所手続での訴訟促進のために書面による準備手続が改正、強化された(オ民訴448条以下)。③第一回期日の適用範囲が限定された。つまり、通常判決手続において義務的であった第一回期日が、訴訟を争うことが認められる場合には、第一回期日を開かず、被告に答弁書提出を命じることになる(オ民訴243条4項)。しかし、第一回期日において提出しないと失権するものは、答弁書において提出していないと失権することになった。これにより、単独判事の裁量による手続の促進が図られる形となっている。紛争解決のために瑕疵あるとして却下されることになっていた④提出期間の定めがある準備書面の改善の可能性が拡大した(オ民訴84条3項)。⑤他の手続における証拠調べ調書の朗読による証拠調べの実施(オ民訴281条のa)などである。1983年改正法の目標は「手続の簡素化と緊張」であり、手続集中理念と関連し、その現在状況に対応させようとした試みであった。(2)2002年改正法 2002年改正法では、「手続の迅速化」と「手続の簡素化」が目標された。そして、本研究との関係では、第一回期日の廃止と「準備期日」の創設である(オ民訴258条)。その他、応訴手続の改革(義務的応訴の規定、除斥期間の統一化)、欠席判決手続の改革、督促手続の改革、訴訟促進義務、教示義務の拡張、不意打ち判決の禁止、証拠手続の改革などがある。本稿の関係でとくに大正としたのが、「準備期日」の創設である。準備期日は、第一回期日の一部(和解勧試、訴訟要件の裁判)を引き継ぎ、同時に、事案についての討論、場合によっては当事者尋問や新たな証拠調べの実行ができるようになった。そして、準備手続の機能を実現するために、立法者はいくつかの措置を規定した。弁論は呼出状の送達から口頭弁論の間3週間の最短準備期日で期日指定され、そのために当事者に準備書面の交換を義務づけること、準備期日への当事者の出席の義務化などが規定される。準備期日では、当事者の出席の下で、討論後、訴訟計画が作成されることになる。ここに改正のポイントがある。なお、わが国の民事訴訟法でも計画審理が平成15年の改正で導入されたが、専門訴訟のみに審理計画は義務付けられ、一般事件は義務付けられておらず、この点の検討も含め、オーストリア法の「準備期日」による「弁論準備」システムは検討すべき重要性を有すると考えられる。3.小括以上、本年度の研究では、オーストリア民事訴訟法の1983年、2002年の改正において、オーストリア法は「手続集中」の理念はその基本としつつも、よりその実現をめざして、「手続集中」の手段を変容させてきていること、そして、その手段は単独のそれではなく、複数の手段によりその理念の実現が図れている点にその特色があり、この点もわが国の立法論及び実務に示唆的であるといえよう。なお、この研究成果の一部は、本間ほか編『民事手続法の比較歴史的研究』(慈学社・2014)で公表の予定である。また、手続集中の重要なツールである裁判官の権限拡張、控訴審手続については、次の研究計画により研究する予定であり、改めてその成果を公表するつもりである。

  • 「手続集中」理念からみた非訟事件手続法改正についての理論的検証

    2013年  

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    本研究は、平成23年5月に成立したわが国非訟事件手続法改正法について、オーストリア非訟事件手続法を中心にした比較法的検証を試みることを目的としたものである。とくに研究対象としたのは、オーストリア民訴法の基本理念であり、大正民訴法改正の基盤となり、現行法にも引き継がれている「適正かつ迅速な裁判の実現」のための「手続集中」理念からみた場合の手続規律の理論的検証である。なお、研究時期の制約もあり、今年度の研究は、オーストリア法の構造・特色の解明を中心とした。その成果は、以下のようにまとめることができよう。 オーストリア非訟事件手続法では、その手続形成の基礎として、当事者の利益と同様に「一般的利益において」もできる限り、「迅速かつ費用のかからない訴訟の終結」を目指さなければならず、また、二当事者間の個々の訴訟の解決というものではなく、それは共同で生活していかなければならない人々の間に存在する「継続的な法律関係の形成」であることを出発点にすべきとする。民事訴訟における厳格な二当事者対立の概念とは合致してこないである。つまり、非訟事件の領域の多くは、手続の構造からして民事訴訟に委ねるものではなく、登記手続から非訟事件的賃貸・居住所有権をめぐる多数当事者訴訟手続におけるまでの多様さに富むものである。しかし、原則的には、非訟事件手続の主たる特徴を形成しているのは、将来を指し示す裁判官の適切なかつ自由な監護的な要素である。こうした特色から、オーストリア非訟事件手続法は、その手続形成において以下の点に留意している。 第一に、一般の利益または特別の保護を必要とする当事者の保護が中心となるがゆえに、可能な限り「職権探知主義」ができるだけ広く支配されなければならないとする。しかし、公正な手続というものは、いつまでも可能な証拠結果を集めるという点にあるのではなく、手続の終結を適切な時期において可能ならしめるものでなければならない。このことは、当事者の真実義務と完全陳述義務を明確に規定化することによって、迅速かつ基本的な事実関係の収集に関する当事者の責任というものもまた強調されるのである。ここに手続集中の要素が浮かび上がってくるのである。換言すれば、両当事者の目的を持った行動、また裁判所の目的を持った行動のみが、人間的認識及び経済的に主張しうるコストについての一般的限界というものはあるが、実体的真実の究明を保障している。 第二に、「手続の形式の自由」が保障されている。非訟事件の多くは、できる限り「弾力的な手続形成」というものを要求している。そこで、原則的に、判決を下す裁判官などは、手続形成について可能な限り自由となるべきとする。例えば、直接主義の厳格な導入は回避されるべきであるとされている。非訟事件手続においては、第1審において直接取得した証拠結果を新たな直接的な証拠調べなしに再評価することは禁止しなければならないという原則以上のものを提供することはできず、可能な限り事実に近く事実に正確な手続形成のための指針として要求されうるのである。 第三に、手続の迅速性確保は、公的監護が問題となる事案(未成年者の扶養請求事件など)重要な意味を有する。他方、いずれの場合においても「実効的な法的審問請求権」を与えることは不可決である。つまり、一方で、効果的な法的審問請求権の保護なしには誰に対しても不利な決定を下してはならないとの要請と、他方で手続遅延なしに適切な期間で終結させるという要請を満たそうとしている。 第四に、口頭主義も民事訴訟においては手続集中に寄与するものであるとされていたが、非訟事件手続法では後退してくる。民事訴訟法上の規定は、口頭弁論なき終局判決というものはほとんど考えることができないものであるのに対し、非訟事件手続の領域においては、必要的口頭弁論は例外となる。非訟事件手続の多くの領域は、自らの些細でかつ秘密保持の利益の考慮を特に必要とする法領域であることから考慮されている。したがって、書面審理が原則となり、この書面による手続集中が目指されている。この点も手続集中の観点からみたとき、特徴的である。 以上のように、オーストリア非訟事件手続法では、民事訴訟法とは異なり、手続集中の理念は、手続形成(審理システム)と裁判官の実質的訴訟指揮という大きく二つの局面から実現するのではなく、前者では、その自由・融通性を認め、手続集中手段としては、裁判所の訴訟指揮と当事者の訴訟促進義務等に大きなウェートを置いていると評することができよう。また、真実発見による適正な裁判が意識されている反面で、監護手続として当事者の審問請求権保障・公正手続請求権保障が強く意識されている点が注目に値する。このバランスをどう取るかが今後の実務の課題となろう。そして、この点は、わが国非訟事件手続法の立法論的検証の指針となると思われる。このわが国非訟事件手続法の立法論的検証は、次の研究計画で実施する予定である。

  • 非訟事件手続法改正についての比較法的考察に基づく検証

    2012年  

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    本研究は、平成23年5月に成立した「非訟事件手続法」を比較法的考察に基づきその立法を検証することを目的とする。とくに、職権探知主義、公開主義、口頭主義、直接主義などいわゆる訴訟原則と呼ばれる手続原則の規律により、審問請求権の保障、公正手続の保障、迅速裁判の保障といった民事裁判手続の中核をなす理念が改正法で十分に実現されるものとなっているかという点を中心に検証作業を実施する予定である。そして、検証作業における比較法的考察の中心が2005年に施行されたオーストリア非訟事件手続法の改正である。当該年度における本研究では、このオーストリア法の立法改正状況を明らかにすることに専念した。そして、その成果として、次のことが言える。 1854年制定のオーストリア非訟事件手続法は、かなり以前からその改正の必要性が唱えられてきた。1902年には、非訟事件の手続に関する法律の担当者草案が仕上げられたが、当時の社会情勢からその立法化は実現されなかった。そして、非訟事件手続法は、現在の基準によれば法治国家の手続規定の要請にもはや合致していないとの批判が強まり、この改正の機運が再び高まってくるのが、1970年代から80年代にかけてであった。1985年の司法省草案及び1988年における予防法及び公証制度に関するルートヴィッヒ・ボルツマン研究所の代替的草案に、改正作業の端緒を見ることができた。そして、1995年に「その改正の時期が来た」というテーマで裁判官週間が開かれ、1997年の裁判官週間では「新しい非訟事件手続 その内容と構造」をテーマで討論がなされ、その後、弁護士、公証人らも含めての集中的な議論がなされ、2003年に政府草案が議会に提出され、長きに及ぶ改正が結実することになった。   本研究の具体的考察対象との関係でいえば、オーストリア法の特色として次の点が指摘できる。まず、非訟事件手続は、原則として当事者の利益と同様に一般的利益においてもできる限り可能な限り迅速かつ費用のかからない二当事者間の個々の訴訟の解決というものではなく、それは共同で生活していかなければならない人々の間に存在する継続的な特徴を持つ法律関係の形成を出発点とすべきとした点にある。また、オーストリア非訟事件手続の主たる特徴を形成しているのは、将来を指し示す適切な自由な裁判官のまさに監護者的な要素である。この手続では、一般の利益または特別の保護を必要とする当事者の保護が中心となることから、可能な限り職権探知主義ができるだけ広く支配されなければならないとする。さらに、可能な限り原則的で手続に関する裁判官と当事者の協働責任(真実義務と完全陳述義務の明文化)が強調された。また、手続原則も、より大きな融通性があり、形式的な厳格性を後退させて(直接主義の厳格な導入の回避)、保護志向性を有することが必要であり、実効的な法的審問請求権の保障も十分に考慮されている。これらの点をわが国の非訟事件手続法がどの程度考慮し、実効的なものとしているかを検証することが、本研究のこれからの課題である。 なお、本研究の詳細な成果は、『比較法学』 第47巻第2号以下に「オーストリア非訟事件手続法」として発表していく予定である。

  • 会社関係訴訟法の理論的構築

    2011年  

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    平成17年の会社法においては、これまで十分に整備されてきなかった会社に関する訴訟手続に関する事項の新たな規律・整備が試みられた。本研究は、それらの規律につき民事訴訟法の観点から評価、検討することを目的としたものである。検討項目は多数あるが、当該年度の本研究において主たる研究対象としたのは、(1)株式共有における場合における会社関係訴訟の問題、(2)株主総会決議の瑕疵に関する訴訟、(3)株主代表訴訟である。 (1)においては、とくに、企業承継で見受けられる株式共有の場合における原告適格の問題を取り上げた。会社法106条の解釈論にも関わるが、判例(最判平成2年12月4日民集44巻9号1165頁、最判平成3年2月19日判タ761号160頁、最判平成9年1月28日判時1599号139頁、大阪高判平成20年11月28日判時2037号37頁など)や会社法学の通説による原告適格要件の加重化を、会社関係訴訟における原告適格論、通常の民事訴訟における当事者適格論、共有関係訴訟における当事者適格論から分析、検討し、判例・通説の考え方は民事訴訟法理論の観点から必ずしも正当化できるものではないことを明らかにした。 (2)においては、株主総会決議取消しの訴えを題材に、訴えの利益、原告適格の消滅の問題、また取消事由の追加主張の問題(最判昭和54年11月16日判決民集33巻7号709頁、最判昭和51年12月24日判決民集30巻11号1076頁、最判平成5年12月16日民集47巻10号5423頁などを取り上げて)を検討した。とくに、後者においては、判例の立場に疑問を提示し、民事訴訟法理論からはその正当化の点で疑念が生じることを明らかにした。 また、(3)については、複数の問題があるが、とくに、和解、訴訟参加、強制執行を取り上げて検討した。和解では、会社法上の規定の正当性、和解に対する対抗方法等を検討した。訴訟参加ではとくに会社の取締役(被告)側への補助参加を認めた立法の正当性を検討した。いずれの問題においても、立法的解決方法の理論的根拠で問題があることを明らかにした。また、強制執行については、原告株主の強制執行申立ての理論的根拠づけを検討した。

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