共同研究・競争的資金等の研究課題
共同研究・競争的資金等の研究課題
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近世から近代にかけての日本の書簡文の研究
研究期間:
2017年06月-2020年03月概要を見る
本年度も従前の二年間の研究期間同様、毎月二、三回定期的に近世近代の書簡文を解読するための研究会を行い、大学院生と美術館、博物館学芸員、図書館司書、留学生の参加を見た。参加者の間で、交替で読んだ具体的資料は、東京国立博物館所蔵『尺璧帖』(近世期の著名な文化人の書簡集)、世田谷区立郷土資料館所蔵『一人一簡』(明治期漢学者の書簡集)、福島県立博物館所蔵の安積艮斎等に関連する書簡集などである。『尺璧帖』については、研究期間中に通読し、さらに校正をしながら二度目の通読を終えようとしているが、並行して、書簡の中に登場する、書名、人名を調査して註を加えている。さらに、研究代表者と研究分担者とは近世近代の版行された書簡集の整理や、翻刻につとめた。具体的には代表者池澤は『和漢対照書札』、『和漢対照書札 二編』を写真とともに全体に翻刻と訳注とを添えて、学術雑誌に発表している。分担者岩田秀行は近世近代の刊行された書簡集のリストを作成した。これらの個別の研究、あるいは集団による研究会によって、参加者のくずし字や草書で記された書簡文の解読能力は大きく向上している。さらにこの研究成果を正確な翻刻に解説や語注を添えて、原資料の写真とともに公刊し、くずし字や草書の書簡文を解読することが、日本の人文科学研究のあらゆる研究分野に対して必須のことであるとの認識を普及させようと企図している。しかしながら、研究対象の主軸に据えた『尺璧帖』を所蔵機関が定期的に展示するために、公刊するための写真撮影を進めることが出来ず、研究期間内には公刊を果たせなかった。ただ今度とも公刊のための努力は続けて行くし、他の資料については公刊の見通しも立っているので、研究期間終了後も孜孜として個別の研究と研究会の開催は続けて行く所存である
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科学研究費助成事業(早稲田大学) 科学研究費助成事業(基盤研究(B))
研究期間:
2011年-2013年概要を見る
13世紀、宋(南宋)から元への交代期に、非士大夫層(江湖)詩人の詩作が一世を風靡した。本研究は、彼らを「中国伝統詩歌の近世化」という観点から照射する、全世界初の試みである。この3ヶ年の研究期間においては、まず対象のディテールを少しでも多くクリアーにし、具体的な問題を一つでも多く発掘することを目標とした。そのために、個別テーマを個人研究の形で進めたほか、毎年、国際シンポジウムを開催し、海外から関連の研究者を招聘し、意見交換する場をもった。また、今年度(2014)中に、勉誠出版の『アジア遊学』の特集号において、一般読者に向けて本研究の意義を発信してゆく予定である。
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文学と絵画の関係についての中国・韓国・日本の比較研究
科学研究費助成事業(明治大学) 科学研究費助成事業(基盤研究(C))
研究期間:
1997年-1998年概要を見る
本研究においては日本:中国:韓国における仏教説話の図像化と、日本・中国・韓国における文人画(山水画)とに二分して進行させた。後者文人画の研究にあっては土大夫精神の形象化という側面に着目し、儒教説話の図像化についても研究対象とした。前者仏教説話については中国四川省重慶市大足県に散在する仏教遺跡の調査を行うとともに現地研究者のレビューを受けて、仏教経典・説話、あるいは民間信仰がどのように形象化されているかについて数々の知見を得て、論文の形式で成果をまとめた、殊に宝頂山における五趣生死輪の調査は新発見の報告へとつながった。また日本の民間信仰である「賽の河原」説話の図像化という点では、中国には類似の信仰形態が存在せぬことが確認された。中国のみならず、韓国へ訪問し、「二河白道」説の展開を跡付け、浄土教文化と韓国の死霊祭の巫俗との関連についても知見を得た。また天人五衰の説話について源氏物語への投影を検討することが出来た。後者のうち儒教説話の図像化については日本の二十四孝伝説について、比較文学的手法で綿密な分析を加えさし絵の様態についても、その淵源をたどることが出来た。文人画については近世の文人画の一達成たる「十便十宜」図に題画詩との関連を重視して検討を加え、浦上玉堂の題画詩に関する造詣をさぐった。これらも論文形式でまとめえた。また中国揚州において清代の文人サークル揚州八怪について調査を進め、彼らの作品を実見して、詩と絵画の関係について日本への影響という観点から新知見を得た。
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新井白石・古賀精里・山梨稲川の作品を中心とする日本近世漢詩文の研究
科学研究費助成事業(明治大学) 科学研究費助成事業(奨励研究(A))
研究期間:
1997年-1998年概要を見る
本年度は課題名にある3名の中、特に新井白石の漢詩作品に研究が集中した。古賀精里については静嘉堂文庫所蔵の『精里全著』に収載された詩文の制作年次考証を行った。また山梨稲川については静岡県立中央図書館葵文庫の蔵する『稲川詩稿』中の詩文について、版本『稲川詩草』との本文の異同に留意しつつ、制作年次と作品内容について研究を進めた。白石に研究が集中した理由は、新資料『陶情詩集』の内容が興味深かったことに因る。『陶情詩集』は長くその書名のみが知られその所在が不明であったが近年石川忠久氏により、名古屋の白石の子孫の方の家に蔵せらるることが明らかにされ、併せてその内容について検討が加えられた。石川氏の御研究は白石における『三体詩』受容の跡を明らかにされ、その中晩唐詩や宋詩の影響を示唆するものであったが、本研究ではその顕著な宋詩受容の跡をさらに具体的にしようとしたものである。宋詩については従来その影響を疑問視された蘇軾の摂取を『陶情詩集』中の作品によって、明確に指摘しえた。従来の研究は白石の詩が古文辞学派に先駆けて排他的に唐詩に学んだことばかりを論じていたわけだが、青年期の白石は唐詩にばかり拘泥せずに宋詩にも学び、ことに蘇軾・五安石・陸游といった大詩人の作中の秀逸な句を換骨奪胎して自作に採り入れていることが明らかになった。このことの理由としては五山以来、林家でも途絶えなかった宋元詩文推重の風が白石においても脈々と継承されていたことがひとつ考えられる。さらに白石が『陶情詩集』中の作を詠じた時期、浪人生活を余儀なくされており、日常身辺の雑事に喜びを見い出す宋詩が意に叶なったことも考えられる
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新井白石・古賀精里・山梨稲川の作品を中心とする日本近世漢詩文の研究
科学研究費助成事業(明治大学) 科学研究費助成事業(奨励研究(A))
研究期間:
1997年-1998年概要を見る
本年度は課題名にある3名の中、特に新井白石の漢詩作品に研究が集中した。古賀精里については静嘉堂文庫所蔵の『精里全著』に収載された詩文の制作年次考証を行った。また山梨稲川については静岡県立中央図書館葵文庫の蔵する『稲川詩稿』中の詩文について、版本『稲川詩草』との本文の異同に留意しつつ、制作年次と作品内容について研究を進めた。白石に研究が集中した理由は、新資料『陶情詩集』の内容が興味深かったことに因る。『陶情詩集』は長くその書名のみが知られその所在が不明であったが近年石川忠久氏により、名古屋の白石の子孫の方の家に蔵せらるることが明らかにされ、併せてその内容について検討が加えられた。石川氏の御研究は白石における『三体詩』受容の跡を明らかにされ、その中晩唐詩や宋詩の影響を示唆するものであったが、本研究ではその顕著な宋詩受容の跡をさらに具体的にしようとしたものである。宋詩については従来その影響を疑問視された蘇軾の摂取を『陶情詩集』中の作品によって、明確に指摘しえた。従来の研究は白石の詩が古文辞学派に先駆けて排他的に唐詩に学んだことばかりを論じていたわけだが、青年期の白石は唐詩にばかり拘泥せずに宋詩にも学び、ことに蘇軾・五安石・陸游といった大詩人の作中の秀逸な句を換骨奪胎して自作に採り入れていることが明らかになった。このことの理由としては五山以来、林家でも途絶えなかった宋元詩文推重の風が白石においても脈々と継承されていたことがひとつ考えられる。さらに白石が『陶情詩集』中の作を詠じた時期、浪人生活を余儀なくされており、日常身辺の雑事に喜びを見い出す宋詩が意に叶なったことも考えられる
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科学研究費助成事業(明治大学) 科学研究費助成事業(基盤研究(C))
研究期間:
1997年-1998年概要を見る
本研究においては日本:中国:韓国における仏教説話の図像化と、日本・中国・韓国における文人画(山水画)とに二分して進行させた。後者文人画の研究にあっては土大夫精神の形象化という側面に着目し、儒教説話の図像化についても研究対象とした。前者仏教説話については中国四川省重慶市大足県に散在する仏教遺跡の調査を行うとともに現地研究者のレビューを受けて、仏教経典・説話、あるいは民間信仰がどのように形象化されているかについて数々の知見を得て、論文の形式で成果をまとめた、殊に宝頂山における五趣生死輪の調査は新発見の報告へとつながった。また日本の民間信仰である「賽の河原」説話の図像化という点では、中国には類似の信仰形態が存在せぬことが確認された。中国のみならず、韓国へ訪問し、「二河白道」説の展開を跡付け、浄土教文化と韓国の死霊祭の巫俗との関連についても知見を得た。また天人五衰の説話について源氏物語への投影を検討することが出来た。後者のうち儒教説話の図像化については日本の二十四孝伝説について、比較文学的手法で綿密な分析を加えさし絵の様態についても、その淵源をたどることが出来た。文人画については近世の文人画の一達成たる「十便十宜」図に題画詩との関連を重視して検討を加え、浦上玉堂の題画詩に関する造詣をさぐった。これらも論文形式でまとめえた。また中国揚州において清代の文人サークル揚州八怪について調査を進め、彼らの作品を実見して、詩と絵画の関係について日本への影響という観点から新知見を得た。
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日本近世後期儒学者の漢詩の研究
科学研究費助成事業(明治大学) 科学研究費助成事業(奨励研究(A))
研究期間:
1996年概要を見る
課題名にある「日本近世後期儒学者」として、今年度研究対象に採り上げたのは研究計画にも挙げた山梨稲川・古賀精里のほか、彼らとも時代的、人脈的に連関のある大田南畝・浦上玉堂である。
山梨稲川については、補助金によって、三度に亘って静岡県立中央図書館と稲川の末褒に当たる山梨治保家にうかがい、資料調査を行った。その結果、稲川漢詩の自筆稿本『稲川詩稿』は、版本『稲川詩草』に収録される以前の作品の形態を知らしめるのみならず、版本によっては知りえなかった各作品の制作年次が明らかにしうることが分かった。
古賀精里については、東京都世田谷区静嘉堂文庫所蔵の『精里全書』と版本『精里初集抄』『同二集抄』『同三集抄』とを比較対照した。結果として精里の漢詩の推敲過程が明らかになるばかりか、版本では未詳であった漢詩文の制作年次の大半が、『全書』冒頭の目録に付記されている干支によって明らかになった。
大田南畝については、早稲田大学図書館蔵する写本『玉〓遺集抄』を調査し、全集未収録の漢詩文や既知の作品と差異のあるテキストを発見、そのことによって南畝と古賀精里尾藤二州ら、昌平黌儒官との交流のさまが一層明らかになった。また当該写本と東京大学史料編纂所蔵する『北遺言』とを比べることによって、筆録者を精里門下の千坂廉斎であると特定することができた。
浦上玉堂については設備備品費似よって購入した中国美術史関係図書を使い、その芸術を中国文人趣味の流れの中に位置付けた。
また前半生の儒学的教養が晩年の絵画制作にどう生かされているか、明らかにすべく、その題画詩を調査、従来の評価を少しく変改した。 -
科学研究費助成事業(明治大学) 科学研究費助成事業(奨励研究(A))
研究期間:
1996年概要を見る
課題名にある「日本近世後期儒学者」として、今年度研究対象に採り上げたのは研究計画にも挙げた山梨稲川・古賀精里のほか、彼らとも時代的、人脈的に連関のある大田南畝・浦上玉堂である。
山梨稲川については、補助金によって、三度に亘って静岡県立中央図書館と稲川の末褒に当たる山梨治保家にうかがい、資料調査を行った。その結果、稲川漢詩の自筆稿本『稲川詩稿』は、版本『稲川詩草』に収録される以前の作品の形態を知らしめるのみならず、版本によっては知りえなかった各作品の制作年次が明らかにしうることが分かった。
古賀精里については、東京都世田谷区静嘉堂文庫所蔵の『精里全書』と版本『精里初集抄』『同二集抄』『同三集抄』とを比較対照した。結果として精里の漢詩の推敲過程が明らかになるばかりか、版本では未詳であった漢詩文の制作年次の大半が、『全書』冒頭の目録に付記されている干支によって明らかになった。
大田南畝については、早稲田大学図書館蔵する写本『玉〓遺集抄』を調査し、全集未収録の漢詩文や既知の作品と差異のあるテキストを発見、そのことによって南畝と古賀精里尾藤二州ら、昌平黌儒官との交流のさまが一層明らかになった。また当該写本と東京大学史料編纂所蔵する『北遺言』とを比べることによって、筆録者を精里門下の千坂廉斎であると特定することができた。
浦上玉堂については設備備品費似よって購入した中国美術史関係図書を使い、その芸術を中国文人趣味の流れの中に位置付けた。
また前半生の儒学的教養が晩年の絵画制作にどう生かされているか、明らかにすべく、その題画詩を調査、従来の評価を少しく変改した。