2024/04/25 更新

写真a

コダマ リュウイチ
児玉 竜一
所属
文学学術院 文学部
職名
教授
学位
修士
 

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 金春禅竹作品の分析を基盤とした、能台本の構造解析――その積層性と多様性に注目して

    研究期間:

    2018年11月
    -
    2021年03月
     

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    特別受入研究員であるマガリ・ビューニュ氏の研究実績について記す。第二次世界大戦後のパリでは、数多くの新しい芸術団体が誕生したが、その中の一つであるペルシーという一座が日本人と協力して能の『羽衣』を上演することにした。このような驚くべき計画を立てたのは、二人のフランス人、エレーヌ・ジューグラリスとマルセル・ジューグラリスであった。現在、私が研究した限りではそれに関する資料は、静岡市立清水中央図書館、フランス国立図書館、大学間共同利用言語・文化図書館(別名BULAC)、ギメ東洋美術館の資料館そしてアルザス・欧州日本学研究所(別名CEEJA)に保存されている。フランス国立図書館と大学間共同利用言語・文化図書館とギメ東洋美術館の資料館に通って研究調査を行い、これらの調査結果を早稲田大学の大学院ゼミで予行発表を行うなどした。さらに能の源流をさぐるために民俗芸能調査を行った。奈良豆比古神社では「翁舞」を調査、無形文化遺産であるこの野外での「翁舞」の主な場面を撮影した。また、京都の日文研の博報日本研究フェロー鋳物美佳氏との研究打合せを行った。鋳物氏は哲学的な観点から能の稽古を研究しており、来年の6月に香港で開催されるASS大会でパネル発表を行うための、打ち合わせを行った(香港の政情不安のため、延期も検討)。早稲田大学への受入以降、能楽研究を中心に据えつつ、歌舞伎等を視野に収めた日本演劇全般への興味関心を拡大することに積極的で、結果としては受入研究者の領分とも齟齬のない形で研究領域を拡げることができたものと評価することができると思われる。親族の病勢によって一時的に帰国を余儀なくされたところから、受入期間を繰り上げて研究期間を終了という形になったが、日本の伝統演劇の諸ジャンルを知悉したマガリ氏のような人材は、今後も様々な活躍先があるものと期待される。令和元年度が最終年度であるため、記入しない。令和元年度が最終年度であるため、記入しない

  • 国際的な比較調査を踏まえた日本演劇雑誌の総合的研究

    研究期間:

    2018年04月
    -
    2021年03月
     

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    演劇雑誌の書誌的調査と目録化をめざした作業をすすめ、なお新たな雑誌の発掘成果を得ることもできた。本年度は、昨年度1月の北京に続いて、上海を訪れることができ、中国の研究機関との連携等を模索する上で、中国の演劇雑誌や演劇写真の事情について触れる機会を得た。写真資料等については、欧米以上に資料としての残存状況を見極めにくいようだが。演劇の映像資料に関しては、1960年代以前のものがDVDとして市販されているなど、日本や欧米以上の浸透を見ることができた。日本国内の演劇雑誌から得られた新たな知見については、大英博物館でのマンガ展に出品された「新富座妖怪引幕」に関わる、いくつかの海外での研究発表の機会に、応用することができた。雑誌および新聞からの情報を総合すると、同引幕の遍歴については、ベルギーでの展観状況を調査する必要が生まれ、ベルギー自由大学との研究協力に発展させる予定である。また、国内の成果発表では、歌舞伎学会において、地方劇場を調査研究する上での演劇雑誌の重要性について初めて言及する機会を得た。演劇雑誌の国際的な比較研究については、新型コロナウイルス感染症の蔓延により、海外への渡航調査が困難とみられるため、演劇博物館所蔵の海外雑誌との比較研究に専心する予定である。蔓延以前に訪れることができたロサンゼルス日系人博物館では、移民社会の中の演劇写真、演劇の記録映像についての新見を得ることができた。演劇雑誌の調査研究が、次々と新たな研究領域の開拓につながっており、本研究課題のみならず、演劇とメディアを包括的に考える上では、大きな収穫につながっている。本課題に特化していえば、なお新たに知られていなかった雑誌や、所蔵の知られていなかった雑誌を発掘しており、目次のデータベース化についても優秀な協力者を得て、進展しつつある。表題に掲げた国際的な視点からの比較という点については、コロナウイルス感染症の蔓延によって、実際に海外へ渡航して調査することが当分難しくなったため、この面からは研究計画の修正が迫られることとなろう。しかし、演劇博物館収蔵の海外雑誌との比較によって基礎的研究を位置づけ、今後の展開のための準備とするなど、いくつかの方途をすでに勘案している。最終年度にあたる本年は、目次のデータベース化と、誌面のデジタル化を推し進めることを中心とする。その上で、なお新たな資料発掘を心がける予定である。ロサンゼルス日系人博物館からは、映像提供を受ける予定であるので、この点については再度確認を行う

  • 新派映画と「新派的なるもの」の系譜学

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2018年06月
    -
    2020年03月
     

    上田 学, シェアマン スザンネ, 児玉 竜一, 木下 千花, 谷口 紀枝, 小川 佐和子, 土田 牧子

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    2019年度は、前年度に実施した研究会等での議論と関連資料の調査を踏まえ、以下の研究活動を進めた。まず国立映画アーカイブにおいて、研究代表・分担者の上田学、スザンネ・シェアマン、児玉竜一、木下千花、谷口紀枝、小川佐和子、土田牧子による第三回研究会を開催した(2019年6月15日)。戦前期の8作品の新派映画を特別映写観覧により調査した後、オブザーバーの斉藤綾子(明治学院大学)を交え、新派映画の定義と形式、インターメディアリティに関する議論をおこなった。続いて、神戸映画資料館で開催された神戸発掘映画祭2019のプログラム「明治大正期の新派映画」を共催し(2019年10月27日)、児玉が「新派」の定義と演劇史・映像史的な変形について、上田が新派映画の東アジアにおける連環について解説をおこなった後、調査成果にもとづき早稲田大学演劇博物館所蔵『朝顔日記』『生さぬ仲』から作成した新プリントほか1作品の新派映画を上映し、研究成果を社会的に発信した。さらに、早稲田大学において第四回研究会を開催し(2020年2月3日)、谷口、小川、シェアマンによる研究発表、および河野真理江(立教大学)による招聘講演と、上田、土田、斉藤ほかを交えた、新派映画とメロドラマ、比較文化に関する広汎な議論がおこなわれた。これらの研究成果については、上田、シェアマン、小川、谷口が学術論文にまとめ、『映画学』(34号、2021年発行予定)の特集として、その成果を発信予定である

  • 能楽及び能楽研究の国際的定位と新たな参照標準確立のための基盤研究

    研究期間:

    2016年04月
    -
    2020年03月
     

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    最終年度のため、当初からの計画通り英語版の能楽全書刊行(出版社と相談済み)に向けて英語原稿の執筆・編集に力を入れるとともに、その根幹をなす研究成果については逐次口頭発表や論文化をおこなった。作者研究、能楽論、レトリック、能面や楽器等のマテリアル研究など、原稿化が遅れていた部分の本文執筆を終え、演出、現代の能楽システム、作者研究等、すでに原稿化を終えている部分と相互参照しつつ、統合する作業に注力した。術語の統一に向けても複数回の研究会議をおこなった。能楽全般の歴史、能を取り巻く中世の宗教的環境、近・現代の思想や他分野の舞台芸術への影響、脚本構造の比較文学的分析、能の文学的背景や素材処理等については、本年度も新たな成果が積み上げられ、論文、小論、口頭発表等での発表が成されたが、そのことで逆にこれらの領域の一部では、「英語版能楽全書」としての原稿完成がやや遅れてしまった。基盤Bの研究期間は終了したが引き続き、成果の刊行に向けて同じメンバーで執筆と編集活動を進め、2020年度内の刊行をめざしている。研究成果のうち、書籍以上にウェブサイトでの発信が有効と思われる一部(装束・面研究や演出に関わるものなど)は、書籍刊行に先駆けて、https://jparc.online/nogaku/ での解説にも利用している。また、能作品の仏教関係語句に焦点を当てたデータベース作成をめざす研究グループとも連携し、能の作品ごとに、梗概や作者・素材、引用される仏教関係語句、室町期上演情報、演出情報などをまとめて表示するサイトを構想。web公開のためのデータ整備をおこなった。2020年度早い段階からの順次公開をめざす。令和元年度が最終年度であるため、記入しない。令和元年度が最終年度であるため、記入しない

  • 歌舞伎・新派・新国劇等の記録とメディア環境をめぐる研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2015年04月
    -
    2018年03月
     

    児玉 竜一

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    ニューヨーク公立図書館に所蔵される七代目松本幸四郎の映像を発掘、年代考証の誤りを訂正する成果を得た。年代考証にあたっては雑誌記事が最有力であることを改めて確認した。『伝統芸能放送85年史』のデータ化を進め、放送映像資料の考証方法を確定するとともに、映像の現存状況の概要をつかんだ。<歌舞伎映像大全集>を開催して、歌舞伎映像研究をおおよそ集成することができた。解説・監修をつとめたSPレコードからの復刻選集「古典は消えてゆく、されど」で芸術祭大賞を受賞、武智鉄二旧蔵SPレコードコレクションの普及に貢献した。以上のような成果の根底にある、演劇雑誌記事の整理・調査の集大成を次の段階の目標としたい

  • 歌舞伎を中心とした演劇雑誌の研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2012年04月
    -
    2015年03月
     

    児玉 竜一

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    主要な歌舞伎雑誌の総目次の統合と総覧をめざすための、演劇雑誌全般に関する基礎的調査を行うという点では、所期の成果を収めることができた。創刊から終刊までの大半を押さえる雑誌タイトルは、研究着手時点の3倍に近い約110誌を数えるに至った。そのなかには、公的機関への収蔵がまったく知られていないタイトルも含んでいる。雑誌メディアを通して歌舞伎という文化が近代に占めていた位置の大きさを再確認するという点においても、より大きな発表機会のための基礎調査を行い得た

  • 初期日本映画における歌舞伎の影響をめぐる基礎的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2008年
    -
    2010年
     

    児玉 竜一

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    映画領域の研究者を主とする国際研究集会において、歌舞伎大道具と映画美術の関わりを発表した。また、映画研究の叢書から、歌舞伎を中心とする古典芸能に特化した書籍を刊行するなど、映画研究において歌舞伎を視野におさめることの重要性を訴えるという点で、一定の成果を収めた。蓄積した基礎的なデータは、劇場から映画館への変遷研究や、歌舞伎由来の映画作品研究に関して、こののち論文化に活用してゆく予定である

  • 蝋管等の録音資料からの音声復元と内容情報の分析に関する横断的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2006年
    -
    2008年
     

    清水 康行, 岩井 俊昭, 魚住 純, 村上 隆, 伊福部 達, 鈴木 一義, 吉良 芳恵, 篠崎 晃一, 兼築 清恵, 児玉 竜一, 長崎 靖子, 伊福部 達, 鈴木 一義

     概要を見る

    本研究は、日本の言語史・文化史上、極めて貴重で高い資料的価値を有しながら、十分に活用されてこなかった蝋管等の初期録音資料群について、音響工学・光学解析・保存科学・科学史学・博物館学・日本語学・日本史学・芸能史学の観点から、その再生・保存・内容分析に関する総合的・横断的な研究を展開し、音声復元方法の開発、保存方法の開発、資料所蔵状況の調査、言語内容情報の言語的分析に関する新たな知見を得て、本資料群に関わる諸領域での研究の基盤を構築した

  • 大惣旧蔵本を中心とする歌舞伎台帳の書誌的研究

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2001年
    -
    2004年
     

    児玉 竜一

     概要を見る

    本研究は、現存する近世期の歌舞伎台帳の性格を大きく二分する、貸本屋系統の台帳と、劇壇内部の上演の台帳との比較をおこなうための基礎的な研究をめざした。前者の代表としては、名古屋の大手貸本屋・大野屋惣八(大惣)に代表される貸本屋の歌舞伎台帳が挙げられ、従来の歌舞伎台帳研究を代表する『歌舞伎台帳集成』にも多く翻刻の底本として取り上げられてきた。しかし、そこでは台帳の性格については、おおむねが「貸本用の筆写」とされることが多く、詳細に言及されることはなかった。本研究では、台帳の筆跡を通して旧蔵者に注目することで、劇壇内部に所蔵された上演用の歌舞伎台帳が、貸本屋へと流れていった可能性を、複数の事例から示すことを得た。さらに歌舞伎台帳の性格を論じる基礎データとして、従来の歌舞伎台帳翻刻叢書の総覧を作成した。なかでも「七五三」と署名のある台帳群については、京都大学所蔵本の詳細な書誌事項と筆跡の追求から、旧蔵者の特定への可能性を示唆しうるが、完全に特定するためには基礎データの収集に留まった。さらに「七五三」署名台帳の旧蔵者を特定する資料をも見いだしており、これらを総合することにより、現存する歌舞伎台帳の性格について、大きな認識の変化をもたらすことができる見通しである。本研究の成果としては、上記の過程で、上演年代に関する記載のない台帳について、同系統と思われる台帳群との比較を通して、その成立年代をおおまかながら類推することができたことを副次的成果と考える。この過程で、歌舞伎・人形浄瑠璃の代表的作品である「仮名手本忠臣蔵」の現存最古と目される台帳を発掘することを得た

  • 近世演劇における役者絵の資料的効用をめぐる基礎的研究

    科学研究費助成事業(早稲田大学)  科学研究費助成事業(基盤研究(C))

    研究期間:

    1999年
    -
    2001年
     

    内山 美樹子, 赤間 亮, 小池 章太郎, 和田 修, 寺田 詩麻, 児玉 竜一, 松沢 正樹

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    (1)研究会の開催と基礎データの蓄積
    本研究では、「役者絵研究会」を組織し、研究分担者以外の研究協力者を募りながら、研究会をかさねてきた。この研究会では、毎回初代豊国作品の年代考証と内容分析を行なってきた。この考証作業の特徴は、演劇博物館所蔵の歌舞伎番付・音曲正本などの演劇資料と突合せたうえに、他機関の豊国作品を博捜して参考図を獲得し、また、歌舞伎史の研究の最高水準のメンバーにより、様々な知識を集めて、決定版となる正確な考証結果を残していっていることである。
    (2)WEB版画像データベースでの成果公開
    これらの作業は、現在、演劇博物館の浮世絵検索システムにより、完全に公開されている。これにより、オンデマンドで様々な研究結果を閲覧できる。
    (3)正確は落款一覧
    その一つは、初代豊国作品の落款の変遷である。落款一覧は、浮世絵の真贋判定、制作時期の特定にとって、重要な情報であり、坪内逍遙以来、何人かが落款一覧を発表しているが、(1)のような正確な情報による落款一覧は、始めてのものである。サンプルとして、落款一覧を掲出したが、これはWEB上でも同様に確認できる。
    (4)行事副印一覧
    初代豊国時代は、改印によって年月が確実に判定できるわけではない。しかし、この時期、行事副印の時代に重なるため、副印による、年代の絞込みが可能となる時期がある。副印一覧を正確に作成した業績はこれまでになく、初めての成果である。

  • 科学技術を応用した近世芸能の基礎的研究

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    本年度は、前年度までの、のぞきからくりの所在確認と現存遺構の確認調査を踏まえて、さらに現存遺構の確認調査と、文献資料の調査をおこなった。三原市郷土資料館に所蔵されるのぞきからくり現存遺構は、同館に常設展示されているものであるが、からくりの機構と、遠近法にもとづく種絵を完備し、さらにのぞき節の音声記録までを併せて保存している希有な例であることを確認した。さらに大阪歴史博物館の協力を得て、同館がのぞきからくりを復元した際の参考資料を検討する機会を得、これを踏まえて、奄美大島に現存する遺構の調査を実施した。また、既存からくり関係展示施設である高山屋台会館および高山祭ミュージアムにおいての調査も実施した。文献資料については、歌舞伎台帳の舞台書等の調査により、遠近法を利用した書割に関する検証をすすめ、透視図法と遠近法を利用した視覚表現との関連性について考察をおこなった。これらについては小考をおもに口頭発表の形で発表した。さらに文献調査として、のぞきからくりの芸態資料を歌舞伎台帳「義臣伝読切講釈」(京都大学附属図書館蔵本)の中に見いだすを得た。この芸能資料は、従来ののぞきからくり研究に活用されたことがなく、今後さらに豊富な材料を提供しうるものと考える。以上のように、視覚表現と芸態の両面にわたる文献調査を行ったが、こうした作業は図らずも風俗資料としての歌舞伎台帳の卓越性をも確認することとなったことをも付言する

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現在担当している科目

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他学部・他研究科等兼任情報

  • 附属機関・学校   グローバルエデュケーションセンター

特定課題制度(学内資金)

  • 演劇の映像音声記録資料の利活用をめぐる基礎的研究

    2022年  

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     演劇の映像音声記録資料の利活用をめぐる基礎的研究として、前年度に出現した初代中村鴈治郎に関わるきわめて貴重な新資料の整理と調査をおこない、これを広く一般に紹介するための機会を多数設けることによって研究の社会還元をおこなった。 具体的には、無声で収録された映像資料について、既存の映像資料との異同点検をおこなった。松竹が所蔵する「初代鴈治郎舞台の面影」に収録されているものとの重複が多く見られたが、松竹版に整理されたものと比較すると、有意義な無駄ともいうべき、不作為の収録部分を含むことが確認された。他に、従来まったく知られていなかった舞台映像、プライベートの映像、初代鴈治郎葬儀の映像など、近代大阪の演劇と文化を考える上で、きわめて重要な資料であることが判明した。 これらの上演年代の特定(従来の年代推定の誤りをいくつか正した)をおこなうとともに、場面を特定した。プライベート映像や、葬儀の映像では、撮影された場所や人物の特定をおこなった。これらの作業は、従来の研究蓄積である録音や舞台中継の録画、演劇雑誌、写真類などを縦横に駆使することによって可能となったものである。 同コレクションに関する具体的な成果発表としては、上映する映像の選定から携わって、国立映画アーカイブにおける「発掘された映画2022」プログラムの一環として、2回にわたって、100分にわたる映画解説をおこなった。さらに、国立映画アーカイブでは取り上げなかった映像を含めた増補版にあたる上映と解説を、全国学会である歌舞伎学会でおこない、さらにこのアーカイブの意義について渡辺保氏と公開対談をおこなった。 同コレクションについては、日本演劇学会2023年度大会において、初の関西公開を予定している。 なお従来から継続している、現存する劇場中継映像のデジタル化については、歌舞伎、新派、新劇、商業演劇等にわたる、戦後日本演劇諸ジャンルの放送映像資料の大半の動向をつかむことが可能となったが、さらにDVD等未発売の日本映画のデジタル化にも範囲を広め、映画の記録性の効用などについて、多くの知見を増やすことが可能となりつつある。この延長上に、「劇場(を記録した)映画」などの新しい領域を望見することが可能となりつつある。 これらの調査研究には、活字資料として演劇雑誌研究の蓄積が大きく貢献していることはいうまでもない。雑誌研究については、従来から進展した部分を含めて、楽劇学会におけるシンポジウム「楽劇関係の雑誌をめぐって」において公表した。また、音声資料をめぐる演劇の「場面」の切り取り方について、「Shakespeare and Kabuki:fragmentation andvisualization」と題した英語発表を、国際シェイクスピア学会「FOUND INTRANSLATION」にておこなった。これまで「日本演劇」の映像音声記録資料の研究を進めてきたのを踏まえて、海外の演劇を含めた、演劇全般の映像音声記録資料の研究を進めるための鍬入れというべきであるが、海外の演劇研究との方法や資料操作上の比較をめぐる意見交換をも予定している。画像、写真、映像、音声といった、多岐にわたる資料調査と研究方法を、海外の演劇(特にシェイクスピア研究を想定している)との比較において、互恵的な関係のもとで紹介しあうことで、従来の調査結果をさらに活かすことができるものと考えている。

  • 日本演劇の映像音声記録資料の利活用をめぐる基礎的研究

    2021年  

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     日本演劇の映像音声記録資料について、過去の録音資料等の整理に重点をおく予定であったが、初代中村鴈治郎に関わるきわめて貴重な新資料の出現に鑑み、これを広く一般に紹介するための調査研究に重点を移しながら研究を進めた。 具体的には、録音資料の整理と並行して、映像資料、写真資料の整理に予算を傾注し、多くの資料の整理統合を推進することができた。その結果、戦前の上方歌舞伎を知る上での一級資料である新出の林又一郎コレクションの調査と分析のための用意を入念に調えることが可能となった。 同コレクションに関する具体的な成果発表としては、国立映画アーカイブにおける「発掘された映画2022」プログラムの一環として公表することとなるが、継続して調査分析を進め、演劇専門学会での発表を計画している。

  • 日本伝統音楽の録音資料の基礎的研究

    2020年  

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    コロナ禍によって委託業者の選定などが困難な中で、歌舞伎を中心とする演劇に関する映像資料、音声資料の整理と体系化の見直しを行った。映像資料については、戦前から21世紀に至るまでの約700件、音声については蝋管による初期録音からCD時代までの約30,000件を整理した。これによって、諸ジャンル紹介のための映像資料としては潤沢な素材を得たこととなり、演技の比較のための基礎資料、映像記録・録音記録の歴史そのものを語る基礎資料を得たこととなる。今後は、この件数をさらに増やすことと、その保存体制の確立と、記録内容を検索する方法の探究を進めることとなろう。

  • 日本演劇の写真資料をめぐる基礎研究

    2019年  

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    The study of theatrical photography is a field withlittle accumulation, although it is obvious that it is useful for theatricalhistory. From the history of photography, it is a field that has been neglectedfrom the point of writerism because it is a commercial photograph that may notbe able to identify the photographer. In this research, Ipromoted the digitization of about 900 photos of small kabuki(Koshibai), newschools(Shimpa), theaters, in order to organize the huge number of theaterphotographs that were published as picture postcards. The history of theatricalperformances and theater in rural areas has a lot to do with the history ofcinema, because the theater often turns into a cinema afterwards. At thesymposium "Edo Tokyo in Kabuki: Urban Space and Theater District", I summarizesthe current perspectives on the relationship between Koshibai and early filmsand the new schools, or on research methods and perspectives on local theaterhistory.  演劇写真の研究は、演劇史に有益であることは自明でありながら、蓄積の少ない分野である。写真史の上からは、撮影者を特定できない場合もある商業写真であるために、作家主義的な面からは無視されてきた分野でもある。 本研究では、絵はがきとして発行されていた膨大な演劇写真の整理を進めるために、小芝居、新派、劇場などの写真、およそ900点のデジタル化を推進した。地方における演劇興行史や劇場史は、劇場がのちに映画館に転身した事例が多いことから、映画史とも重なりあうところが大きい。小芝居と初期映画や新派との関係、あるいは地方劇場史の研究方法と見通しについて、シンポジウム「歌舞伎の江戸東京―都市空間と劇場街-」において現時点での総合的見解をまとめた。

  • 日本古典演劇における映像音声記録資料の総合的研究

    2018年  

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    I presented severalpapers looking back the last quarter century of Kabuki history, these areaiming to be examples to use I havesummarized and published some attempts that try to review steps of Kabuki inthe past quarter-century as a part of utilization and application that based onaudio and video records which focused on Kabuki. During Heisei Period, however,almost all stages have been recorded into videos, while the discussion oncollection and systematical management as well as utilization and applicationof these records is still not active. Problem presentations concerned aboutthis point shall be our missions in the future. Application of video materials is especiallyuseful in presentations in overseas. I have utilized results of scientificresearch on video records in presentations and lectures which were held inIsrael and China this school year. In Israel, I gave a keynote speech with atitle of Theatrical Traditions inJapanese Culture, and introduced Kabuki plays such as One Piece which adapted from a Japanese manga series as “Adaptations in ContemporaryKabuki Theatre”. I reconfirmed that the latter isexactly a good example of “Seeing is believing”, and video materials of theatrical plays are very effective asbeginnings to liven up essential discussions. I’ll publish several papers concerning aboutthe research on audio and video records of No and Bunraku.

  • 歌舞伎の映像・音声記録資料の総合的研究

    2017年  

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    申請者のこれまでの歌舞伎映像研究の成果を踏まえて、2017年12月に歌舞伎学会創立30周年記念大会において、<歌舞伎映像大全集>として総合的な研究成果を発表する企画を立案・遂行した。 世界最古の日本演劇映像に始まり、日本人撮影の最古資料「紅葉狩」など、すでに網羅している各種映像を、多数上映することによって、歌舞伎を撮影した映像を大系化して整理を試みた。加えて、これまでに旧所蔵者との信頼関係の積み重ねによって、申請者がデジタル化を依頼され、公開・使用について一任を受けている映像に改めて調査・考証を施し、精選集をあわせて上映した。これらによって、幕内の個人撮影による映像が集大成されたことになる。

  • 歌舞伎舞台映像の基礎研究

    2016年  

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    歌舞伎舞台映像の基礎研究として、①記録映画、②映画作品中の映像、③舞台中継テレビ映像の各種を網羅的に調査した。この内、概要が知られている①、偶発的な遭遇に待つほかない②に先んじて、③の調査整理を重点的に進めた。同時並行で行った能狂言の放送データを約1,600件整理したが、歌舞伎については、検索による事例確定など、映像資料整理のツールとしての有効性にまで辿りついたところを、次の段階では先に進めて、データ化によって様々な検証が可能であるとのメドをつけることができた。次年度にはこれらを踏まえて、<歌舞伎の映像音声記録資料の総合的研究>と発展させた研究調査を行い、①②③を集約した発表を行うことになっている。

  • 新国劇の地方巡演をめぐる研究

    2015年  

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      新国劇の地方活動を調査することを通して、中央の近代劇団の、地方都市における演劇活動への影響を調査・研究するための方法を開拓するという所期の目的は、おおよそ達成することができた。福岡、広島、神戸など、地方大都市での資料の残存状況は、予想以上に悪い。戦災による資料の焼失、演劇分野に造詣のある司書の減少など、長年にわたる要因が積み重なっている。その一方で、国立国会図書館にも所蔵していない、地方新聞を有するところもあり、<資料は中央で、新聞は地方で>という方針で調査・収集を行うのが最も効率的であるという一応の結論に達した。

  • 地方都市の劇場をめぐる基礎的研究

    2013年  

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     「地方都市の劇場をめぐる基礎的研究」として、来たるべき総合的調査のための方法、あるいは集中的に調査すべき対象を絞り込みという、所期の目標はおおむね達したといえる。 まず、地方都市劇場をめぐる一次資料の残存状況をめぐる調査について記す。 近畿、東海、九州地方の県立図書館への調査を重ね、演劇関係資料の扱いには、当然のことながら、各県別、それぞれの図書館別に、大きな差異が存することをあらためて確認した。とりわけ、戦災被害の大きかった図書館では、戦前の一次資料について全く所在を把握していない機関もある。かたや、浜松市立図書館のように、演劇関係にきわめて強い非常勤の司書が貴重な資料を開陳してくれる場合もある。その差は、演劇というジャンルの今後の不沈を象徴するのではないかと思われるほどであるが、概ね結論としては、個別に県立図書館等に頼るのは、一次資料よりもむしろ二次資料に絞るべきであるという手応えを得た。これに代わって一次資料を集積している国立機関を徹底的に調査すべきであるというのが、次の段階のために明快にわかったことで、今回はその一つである東京文化財研究所(独立行政法人)が所蔵する番付のデジタル化を終えた。同所の飯島満の協力を得て撮影・整理を終えた同所所蔵の番付は、現在知られているところでは、最も多くの割合の地方の番付を含むコレクションである。ただし、これは近世期のものがほとんどで、近代期以降を射程に収める本研究からは付随的成果というべきものである。近代期の番付の本丸は国立劇場で、近代歌舞伎年表編纂のために収集した番付写真が死蔵されている。これを次の総合的調査にあたっては、専ら対象とすべきと見定めることができた。 地方独自の資料としては、番付などの一次資料よりも、地方誌においてまとめられた、地方独自の文化史叙述を収集すべきであることも確認した。従来の全国劇場の網羅的調査では、『全国主要都市劇場略史表』(国立劇場・私家版)があったが、これが刊行された昭和53年以降、昭和と平成の境目あたりに地方誌刊行の隆盛がもう一度訪れており、それらの成果を収集することができた。これも担当者の裁量によるところが大きいため、劇場や映画館に割かれている紙数は一定ではないが、より詳細な劇場史を、概略としてつかむためには、さらに網羅的に地方誌をさぐればよいことは明確に判明した。東北から北陸、東海にかけての地方誌を中心に、昭和53年以降の成果を収集するにあたり、新たに判明したのは、劇場に的をしぼった記述が薄い場合でも、映画館に関する記述によって劇場の消長が知られる場合の多いことである。これにより、映画館の所在の動向を把握することで、劇場から映画館への変遷の過程がたどれる見通しも立った。そこで日本全国に映画館数が最も多かったとされる時期を選び、『全国映画館名簿』のデータベース化に着手した。これは意外に入力件数が多く、本研究期間内に完遂することができず、データベース化の途上にあるが、これを完成させ劇場の所在分布と比較することで、演劇から映画へ、劇場から映画館へという流れを、データでおさえることができるものと思われる。 以上、より広範囲の調査研究を可能ならしめるための外部資金獲得のための、基礎調査をひとまず終えて、次の段階へ進む準備態勢をおおむね整えたものと考えている。

  • 歌舞伎義太夫(竹本)床本の基礎的研究

    2010年  

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     本研究では、従来ほとんど未着手である歌舞伎義太夫(竹本)研究のための基礎的作業を行った。 まず伊藤寿和日本女子大学教授から寄託をうけた竹本床本の、書誌調査をおこない、55冊の床本、2冊の版本、1冊の寄せ本を確認した。 このうち、『歌舞妓浄瑠理書抜』と題する寄せ本は、11作品の竹本詞章を書き抜いたもので、従来こうした資料の存在は知られていなかった。表紙に「第拾壱号」とあるので、旧蔵者・浅野喜市が最低十数冊このような書き抜きを所持していたと考えられる、歌舞伎役者が旅興行などに用いる携行用の書き抜きを所持している例は確認していたが、竹本演奏者も同様の書き抜きを用意していたことが、初めて明らかとなった。 コレクションの中核を占める床本は、55冊中、44冊までが竹本栄太夫旧蔵のもので、大正7年から昭和26年までに渡る期間の上方歌舞伎の竹本床本であることが明らかとなった。これは現存する竹本床本のなかでは、古い年代に属する。 他に本研究でおこなった竹本床本の所在調査により、松竹大谷図書館に竹本扇太夫、豊竹寿太夫、豊竹和佐太夫、竹本雛太夫らの旧蔵本を確認、他に未整理品として他に未整理品として、竹本米太夫・竹本鏡太夫・豊沢瑩緑旧蔵本などがあることも知り得た。意外に膨大なコレクションが所蔵され、のべ作品数で555件を数えることができる。1人で同作品を数冊所持している場合もあり、数千冊に及ぶ冊数が見込まれることを確認した。 これらの成果を口頭発表をおこない、竹本研究という分野の存在に対する認識を促した。さらに、竹本実演者の協力を得て、さらに残されている資料の調査、曲節の読解による演出研究の方法の模索などを、継続してゆく予定である。

  • 大惣旧蔵本を中心とする歌舞伎台帳の書誌的研究

    1996年  

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     歌舞伎台帳の研究は、刊行中の『歌舞伎台帳集成』および、その刊行準備段階で編纂された『歌舞伎台帳所在目録と書誌調査』が、現段階での研究水準を示しており、貸本屋系統のものと、劇壇の内部資料であったと思われるものとの、二つに大別されて考えられている。従来『歌舞伎台帳集成』解題などでは、貸本屋の手に残って現在まで伝わった台帳は、おしなべて貸本用に筆写されたものと記述されてきたが、筆者は、貸本屋が入手する以前の台帳の素性に注目した。即ち、劇壇内部にあったものが流出して貸本屋の手に入った可能性があるのではないか、という仮説である。阪急学園池田文庫が発行する「館報池田文庫10号」に執筆した「歌舞伎台帳の素性管見」では、この例証として、 1 従来貸本用に筆写された台帳と考えられてきた、名古屋の貸本屋大惣が所蔵していた「七五三」と署名のある台帳群(現在は、東京大学文学部国語研究室および京都大学付属図書館に所蔵) 2 1とは別の芝居根本所の手を経たことが明らかな「七五三」署名台帳(阪急学園池田文庫所蔵) 3 劇壇内部にあって奈川七五三助に関わることが明らかである台帳(早稲田大学演劇博物館所蔵) の三系統の台帳に共通する筆跡を、写真版として掲載し、1・2が、劇壇内部の人間の筆になる可能性を示した。また、日本近世文学会春季大会での口頭発表「義太夫狂言演出の変遷」では、上記と同じ「七五三」署名を持つ皇學館大学神道博物館所蔵の台帳に言及、同台帳の紙背の反古資料(「〆助様」宛書簡など)を紹介した。これについては、台帳の綴糸を切って貰って紙背を撮影し、写真版としていずれかに掲載の予定であるが、目下交渉中である。 一方で引き続き東京大学文学部国語研究室、京都大学付属図書館の台帳の調査を進め、「七五三」署名を奈川七五三助のものと見てよいか否かの、例証を蒐めており、調査が完了次第、ひとくぎりとして纏めて発表する予定である。

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