(1)東京近郊の文学・文学史研究
都市論や郊外論、江戸東京研究を基盤として、近代の東京近郊における文学・文化史を研究しています。作家たちが〈武蔵野〉〈田園〉〈郷土〉〈水都〉〈東京湾〉といった空間をどのように表象し、想像/創造していったのかを、作品と場所から読み解くことが研究の中心です。具体的には、東京府九段に武蔵野を見いだした山田美妙「武蔵野」、渋谷を起点とした国木田独歩「武蔵野」、神奈川県都筑郡中里村を舞台とした佐藤春夫『田園の憂鬱』と廣田花崖『田園』、向島生活を背景とする幸田露伴「一国の首都」「水の東京」、本所の牧場を襲った水害を描く伊藤左千夫「水害雑録」「水害の疲れ」、月島の海水館を舞台とした小山内薫「大川端」と島崎藤村「苦しき人々」、東京の郷土研究会である武蔵野会の機関誌『武蔵野』などを扱っています。今後は、病院や墓地、工場、ダム、ごみ処理場(埋立地)など、都市機能に必要不可欠でありながら市街地では忌避されてきた施設にも着目し、それらを引き受ける近郊と都市との関係を、文学表象と地域の歴史から考えていきたいと思っています。
※また、武蔵野文化研究にも取り組んでいます。雑誌『武蔵野樹林』への寄稿や、角川武蔵野ミュージアムの「武蔵野回廊」における選書などもその成果でした。
(2)地域雑誌の編集と実践
地元である東京都江戸川区の小松川・平井地区を舞台として、地域雑誌『ブリコルひらい』を共同で編集・刊行しています。2022年に平井駅前の再開発を契機に、古書店「平井の本棚」に集まった地元の有志たちで作り始め、4号まで重ねてきました。変わってゆくまちの風景や風景を記録し、まちのアイデンティティを探るような試みです。また、地域イベントへの参加などを通じて、地域交流の〈場〉を雑誌の内外につくっています。自身にとっては、広い意味での作品が地域を表象して何かを想像/創造してゆくという研究の実践編でもあります。