メディア実践やジャーナリズム実践に関心があります。博士課程では記憶の社会学(集合的記憶論)を中心に、国民的記憶が再生産される過程や対抗的記憶が構築される過程をジャーナリズム実践に着目して論じてきました。最近は人々のメディアを通じた実践やデータを用いた実践の多層性も研究しています。インタビュー調査やフィールドワークも積極的に行っています。
① ジャーナリズム実践に着目したメディア記憶論の再検討
従来のメディア記憶論がテクストやテクノロジーの分析に傾倒してきたことを批判し、ニック・クドリーのメディア実践論に依拠した理論的な再検討を行っています。とりわけニュースを生産するジャーナリズム実践に着目し、社会的に表出している記憶の問題を、ニュースの生産過程にまで遡って検討する視座を提起してきました。またピエール・ブルデューに代表される社会学的な実践論を、現代のメディア環境と接続する研究にも取り組んでいます。
② アジア・太平洋戦争の国民的記憶が再生産される過程の研究
①の理論的な視座を踏まえて、日本社会においてアジア・太平洋戦争の記憶が再生産される過程を分析しています。具体的には日本のニュースメディアを規定する「八月ジャーナリズム」によって構築される特攻の記憶と、構築されないマニラ市街戦の記憶を扱っています。ニュース・テクストの分析だけでなく、知覧特攻平和会館やマニラ市街戦記念式典といったフィールドに赴いたり、ジャーナリストにライフストーリー・インタビューを実施したりしています。近年ではマニラ以外の東南アジア諸国や台湾にも関心を向けています。
③ アーカイブ実践論に依拠した記憶の痕跡の保存と結合の研究
NHK戦争証言アーカイブスなどのデジタル・アーカイブに着目し、アーカイブにまつわる人々の実践がいかなる記憶を構築するか検討しています。とりわけアーカイブをマネジメントする側の視点ではなく、アーカイブに保存された記憶の痕跡を繋ぎ合わせる実践という視点から、デジタル・アーカイブ論を再検討しています。またアーカイブ化された無数の痕跡の中から、特定のものが選び出される過程も考察しています。
④ プラットフォーム資本主義の実践論的な再検討
ソーシャルメディアを中心とするプラットフォームに表出するテクストが、どのような実践に依拠して成立しているかの研究にも取り組んでいます。とりわけコンテンツ・モデレーターといった不可視化された実践がソーシャルメディアの基盤にあることに着目し、メディア空間の外部に位置するがゆえに「収奪」される人々の視点から、ソーシャルメディア論を再構成する可能性を探究しています。
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