特定課題制度(学内資金)
特定課題制度(学内資金)
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糸状性微細藻類の運動性変異株を用いた遺伝学および生化学的解析
2025年 下川卓志
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本年度は残念ながら科学研究費補助金が得られなかったが、特定課題研究助成金によって日常的な実験試薬や実験装置の購入に加えて、大規模な遺伝子解析の外部委託を実施できた。以下に本年度の成果を示す。Leptolyngbya boryanaは形質転換手法が確立された数少ない糸状性シアノバクテリアであり、特定の遺伝子変異により運動性を獲得することが知られている。特定のアミノ酸変異によってLeptolyngbyaが運動性を獲得する遺伝子の1つは、その特異な性質により古典的な遺伝学的解析の試みが困難であり時間を要してきた。本年度はそのタンパク質精製を試みたものの、その一部さえも精製には至らなかった。無細胞翻訳系によるタンパク質合成も試みたが、成果を得られなかった。Leptolyngbyaの運動性を司る遺伝子を同定するため、一昨年度Leptolyngbyaの運動性を獲得した遺伝子変異株に重粒子線を照射し、運動性を喪失した株を12株作出した。昨年度、その内の3株の全ゲノムリシーケンスを実施し、遺伝子変異箇所を特定して運動性に関係する可能性のある遺伝子を選定した。本年度末、新たに6株の全ゲノムリシーケンスを実施し、来年度の解析に向けて準備を進めている。また昨年度末、運動性を獲得した変異株の遺伝子発現解析を実施し、運動性に重要な役割を持つ可能性のある遺伝子を数多く選定した。本年度、それらの遺伝子の内1つの遺伝子が運動性に大きく関わっていることをつきとめた。その遺伝子はバイオフィルム形成にも関与しており、細菌の運動とバイオフィルム形成という、古くから盛んに研究されてきた分野に未知の遺伝子の関与を新たに示唆するものであり非常に重要な発見であると考える。この成果は本年度の植物生理学会にて報告した。追加の実験を実施し、近いうちに論文発表することを計画している。