Internal Special Research Projects
Internal Special Research Projects
-
近現代の建築家の作品における建築表面の経年変化の美に関する研究
2024
View Summary
本研究では、建築の表面に時間の経過とともに現れる汚れや風化の痕跡といったものを、自然の作用によって発生した装飾の一種として捉え、建築表面の経年変化の美を主題としている。一般に建築の表面に現れる汚れや劣化は、維持管理や保存の観点から否定的に捉えられ、除去・修復の対象とされることも多い。本研究では、それらを単なる劣化としてではなく、時間の経過と自然環境との相互作用によって生まれる視覚的現象として捉え直し、自然の作用の結果として生じる経年変化の痕跡を一種の装飾として分析することで、建築美の枠組みの一端を明らかにすることを目的とする。今年度は延べ14都道府県において近現代建築の調査を行い、建築の形態、使用されている素材、周辺環境の違いによって、それぞれ異なる風化の痕跡が建築表面に残されることが確認された。とりわけ、雨水に対する設計上のアプローチの違いによって、外壁や開口部周辺に現れる経年変化の文様が大きく異なる事例が多く見られた。それらの文様は必ずしも設計者が意図したものではない場合も多いが、結果として建築の表情や印象に影響を与える要素として現れている。これまで建築における装飾に関する議論はたびたび行われてきたが、その範囲や定義は時代や思想によって変化し、必ずしも明確に定義されてきたとは言い難い。一方で、建築をつくる以上、外装の仕上げや素材の選択は常に設計上の問題として存在しており、そこには美に対する建築家の思想や自然観が反映されると考えられる。今後も継続的に調査を行い、近現代建築に見られる汚れや風化の痕跡を手がかりとして、経年変化によって生まれる建築の美のあり方を明らかにすることを試みる。さらに、事例を網羅的に収集・整理し、比較分析を行うことで、本研究を基礎とした発展的な研究へとつなげていくことを目指す。