特定課題制度(学内資金)
特定課題制度(学内資金)
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2025年
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細菌やミトコンドリア,葉緑体の細胞内膜に存在するFO回転分子モーターは,膜間のプロトンの電気化学ポテンシャル差を力学的な仕事(一方向回転のトルク)に変換する分子マシンである。申請者の先行研究では,脂質膜にFOのクライオ電子顕微鏡構造を埋め込んだ構造を起点とし,分子動力学(MD)シミュレーションとアンブレラサンプリング(US)法を組み合わせることで(以下US-MD),FOの回転角に沿った非対称な形状の自由エネルギー地形(FES)を得た(Kamiyama, Parkin, Takano, Biochem. Biophys. Res. Commun., 2023)。しかし,電気化学ポテンシャル差の無い場合でもFESに大域的な傾斜(正味での一方向トルクの発生を示唆)が生じており,本研究ではその原因究明を進めた。まず,FESの大域傾斜の要因がFOの非平衡緩和に起因する可能性を考え,MD計算によってFOを長時間緩和させてからUS-MDを行った。その結果,緩和させた時間に依存してFESの大域傾斜が軽減されることがわかった。次に,FOの回転ブラウン運動を単純化した(1次元粒子が非対称な形状のエネルギー地形上をブラウン運動する)モデルでUSシミュレーションを行い,FESを解析した。その結果,緩和後のサンプルから算出したFESでは大域的な傾斜(粒子にはたらく正味の駆動力)は見られなかった一方,非平衡緩和過程でのFESではFO系と同様に大域的な傾斜が生じることが確認された。これらの一連の結果は,フラッシングラチェットモデル(非対称なエネルギー地形上をブラウン運動する分子モーターが,非平衡状態から緩和する過程で一方向駆動力を受けるとするモデル)と矛盾しない。以上は,FOが電気化学ポテンシャル差以外の非平衡要因(サブユニット間の相互作用の組み替え等)からも一方向トルクを生成している可能性を示唆している。
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