Updated on 2025/05/09

Affiliation
Faculty of Letters, Arts and Sciences, School of Humanities and Social Sciences
Job title
Research Associate
 

Internal Special Research Projects

  • 刑務所出所者の受け入れに関わる市民の認知の検討

    2024  

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     罪を犯し刑務所に入った人の多くがいずれ社会に戻る。元受刑者が円滑な社会復帰をはたし,再犯をしないためには,本人の努力だけでなく,社会の支援が重要である。そのような問題意識の下,どのような場合に,刑務所出所者の受け入れに対して市民が肯定的な態度を示すかを明らかにすることを目的とし,調査を行なった。 調査には,映画「lifersライファ―ズー終身刑を超えて」を資料として用いた。この映画は,終身刑を科された受刑者たちが,仮釈放に向けて励む姿を描いたドキュメンタリーであり,刑務所内で受刑者が何を思い,更生に向けてどのような日々を送っているかが分かるものである。本調査では,視聴の前と後の両方のアンケートに回答した40名の大学生(女性26名,男性14名,平均年齢20.9歳,標準偏差0.72歳)において,視聴前後で受刑者に対する態度に違いがあるかを検討した。 得らえたデータを分析した結果,以下が示された。映画視聴後に,罪を犯した人への許しの重視が高まった。また,受刑者は変われるという信念が強まった。さらに,受刑者を自分たちと同じ人間として見る見方が強まり,受刑者に対する不信感が低下した。一方で,犯罪の原因を受刑者自身のせいだと見なすことに変化はなかった。映画の視聴前後で受刑者を個人的に受容しても良いという態度に変化はなかったが,映画の視聴後に,受刑者を社会的に支援することへの支持が強まった。 以上の結果から,受刑者が犯罪に至るには本人に原因があるとは思いつつ,受刑者が更生に励む姿を目の当たりにすることで,受刑者も自分たちと変わらない人間らしさがあり,受刑者が変われることを信じ,許すことの重要性への意識が強まることが示唆された。受刑者について知ることにより,受刑者に対する好意的な見方が強まる一方で,短時間の映像視聴のみによっては個人的に受刑者を身近で受け入れても良いと思えるようにまでは至らないことがうかがえた。受刑者が何を考え,どのように生きているかについて知る機会を多く提供し,また,実際に受刑者と触れ合うことが出来るようにすることで,より好意的な態度を抱くようになるかもしれない。