特定課題制度(学内資金)
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2024年
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元雑劇における歌唱は、基本的に北曲が用いられているが、現存する作品の中には南曲が挿入されている例も見られる。この現象については先行研究ですでに言及されているものの、現存する元雑劇作品において、南曲が挿入された事例がどれほどあるのかについては、まだ全面的な検証が行われていない。本研究では、先行研究を踏まえ、現存する162種の元雑劇作品をすべて調査した結果、『望江亭』『東坡夢』『蝴蝶夢』『降桑椹』『黄花峪』の5つの作品に、それぞれ【馬鞍児】【月児高】【柳搖金】【青哥児】【駐雲飛】という5種の南曲が挿入されていることを確認した。また、元雑劇に挿入された南曲について、「それは元代の作者によるものではなく、明代の人が後から挿入したものである」と主張する先行研究もある。しかし、本稿では、以下の3点に基づき、元代の舞台上演や作品流布の過程において、元代の人々によって挿入された可能性も十分あると主張する:①元代にはすでに「南北合套」という形式が存在していたこと、②現存する元代の散曲には南曲が含まれていること、③明初の朱有燉による『誠齋雑劇』にも南曲が挿入されていること。したがって、元雑劇における南曲の挿入がすべて明代の人によるものだとは断定できないと考える。この成果は、早稲田大学文学研究科博士学位論文(李家橋『元雑劇の研究』)の一章になっており、2025年9月に提出され、審査を受ける予定である。