特定課題制度(学内資金)
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現代朝鮮語における与格助詞-hantheyの示す場所性について―移動動詞結合と存在詞結合を中心に―
2025年
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現代朝鮮語の与格形式である-eykey及び-hantheyは,概ね日本語の「に」格に相当する。この両形式には,移動動詞や存在詞と結びつき「(誰々)のところに」という場所性を表す場合がある。-hantheyについては語源自体が知られておらず,現代朝鮮語において2つの与格形式が共存するに到った過程等も明らかではない。本研究ではこの両形式のうち-hantheyの場所性という意味機能に注目し,近代までの歴史資料を用いてその語源や意味用法の変化等という歴史的変遷を中心として分析を行った。 収集した用例から年代が不確定なものを除外すると,-h@nteyは1887年,-anteyは1880年,-hantheyは1901年に初めて文献でその形式を確認することができた。そして先行研究では語源や由来の明確な根拠は不十分だった点に対し,-hantheyという形態が「hata(相当する,値する)」の連体形に「ところ」を意味する語が付加することで成立した可能性を示した。すなわち-hantheyの要素である-theyは本来「tey(ところ)」に由来し,遠隔順行同化を経て現在の形態に至ったと考えることができる。 さらに与格の意味を持つ方言形の- issnunteyおよび- inteyが「issnun te」に起源すると考えられる点は,「hata(相当する,値する)」の連体形に「ところ」が付属した形に由来するという見方と一致し,提示した仮説を補強する傍証となる可能性を示している。 以上を踏まえ,-hantheyの成立を「-hanthey」に求める説明は,音韻変化と意味発展の両側面から見ても無理のない解釈であり,その形成過程を捉える一つの可能性として提示し得るだろう。また本稿で示した分析は-hantheyの語源という観点における考察の一助となり,今後通時的資料や地域変異の検討を進めるための基礎的視点を提供するものと考えられる。
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現代朝鮮語における与格助詞-eykeyの示す場所性について―移動動詞結合と存在詞結合を中心に―
2024年
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現代朝鮮語の与格形式である-eykey及び-hantheyは有情名詞とのみ結びつくもので日本語に訳す際には「に」格を用いて訳すことが多い。その一方で-eykey及び-hantheyは移動動詞及び存在詞と結びつく際には「~のところに」を補う必要のある「場所性」を示す場合が存在する。本稿ではこのような-eykey及び-hantheyが「場所性」を示す場合と示さない場合の条件がいかなるものであるのかを,移動動詞結合と存在詞結合という場合を中心として明らかにすることを試みた。 その結果,第一に,【eykey/hanthey名詞句+移動動詞】という結合では,移動する主体が具体名詞で人間などの有情物であり,結びつく移動動詞がkata(行く)やota(来る)といった典型的な移動動詞の場合は「場所性」を明確に示した。その一方で移動する主体が抽象名詞である場合や移動動詞がtakakata(近づいていく)のように複合的な要素を持つ非典型的な移動動詞である場合には「場所性」を示す意味合いが弱まり「対象」を表す用法により近づくことが明らかになった。 第二に,【eykey/hanthey名詞句+名詞+存在詞】という結合では,存在する主体が抽象名詞である場合には「場所性」を示さない。その一方で存在する主体が具体名詞である場合には「場所性」を示しうるが,その名詞句が「場所性」を示し「所在」を表すのは具体名詞がその名詞句と同等程度の大きさで且つ可動性を持つ時のみである。名詞句を包摂する大きさであり可動性を持たない場合には「所有」を表し「場所性」を示さない。このことから,【eykey/hanthey名詞句+名詞+存在詞】という結合においてその名詞句が「場所性」を示すには,存在する主体となる名詞が具体名詞であり且つその名詞句と同程度の大きさで,可動性を持つ物に限られるという制約を持つことが明らかになった。