Updated on 2024/04/13

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MATSUI, Leo
 
Affiliation
Faculty of Letters, Arts and Sciences, School of Culture, Media and Society
Job title
Research Associate
 

Internal Special Research Projects

  • 過労死・過労自殺における「苦しみ」の状況からの逃走困難性に関する社会学的研究

    2023  

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    過労死・過労自殺の両概念は、裁判をはじめ、メディアや遺族の働きかけといった係争の場を通じて社会的に構築されてきた。その結果、現在までに両概念は現代社会に定着を見せている。そして、過労死・過労自殺の撲滅策としては、長時間労働の法的規制や各種ハラスメントの改善といった手段が主には採用されている。 しかし、こうした改善策が進む一方で課題も浮上する。とりわけ長時間労働の法的規制は、働く者の心身を法的に保障する一方で、労働時間さえ規制すれば過労死・過労自殺は生じえないのか、という疑問を生じさせる。 そこで本研究では、労働時間という観点からは一度離れ、死ぬほどまでの極限状態で働く人の主観的世界にアプローチすることとした。より具体的には、現象学的社会学の視座に立ち、極限状態で働く者/働いていた者の諸経験を問う、半構造化インタビューを実施した。 調査および考察の結果、極限状態で働く者/働いていた者にとっては、労働時間の長さ自体が問題ではないことが明らかとなった。問題視されていることの一つには、「何のために生きているんだろう」という言葉に象徴される、生の根拠の不在ともいえる状態であった。すなわち、長時間労働の最中、あるいは各種のハラスメントを受ける中で、生の根拠の不在を孤独の内に抱えながらも働かざるをえないという事態が問題視されていた。そうした事態に追い込まれてしまうことが、過労死・過労自殺に至りうる一つの要因である可能性がある。生の根拠の不在においては、その根拠を見出すこと自体容易でない営みであるが、長時間労働や各種のハラスメントの積み重なりがその営みの必要を一層迫る。こうした負のスパイラルに囚われ、逃げられないことが極限状態にある者の一つの「苦しみ」である可能性がある。