2024/03/29 更新

写真a

オオクラ ヨシフミ
大倉 慶文
所属
理工学術院 先進理工学部
職名
助手
 

特定課題制度(学内資金)

  • マンザミンアルカロイド類の不斉全合成研究

    2023年  

     概要を見る

    イルシナール類、マンザミン類、ケラマフィジンBは、沖縄県海域に生息する海綿から単離されたマンザミンアルカロイド類に属する化合物である。これらは、抗菌活性、抗リーシュマニア原虫活性、抗マラリア原虫活性、抗HIV活性など幅広い生物活性を有することが知られている。ケラマフィジンBは、KBヒト表皮がん細胞およびP388マウス白血病細胞に対して増殖阻害活性を示すことが報告されている。ケラマフィジンB、マンザミン類、イルシナール類、イルシノール類などのマンザミンアルカロイド類は二つの大員環を含む、特異的な多環式骨格を有している。現在提唱されている、これらのマンザミンアルカロイド類の生合成仮説では、ケラマフィジンBが共通中間体であると考えられている。しかし、マンザミンアルカロイド類の天然からの供給量が少ないことは、これらの類縁体に関する生物科学研究の発展や生合成経路解明の障害となっている。よって、これらの研究を進展させるため、ケラマフィジンBを経由したマンザミンアルカロイド類の効率的な合成手法の開発に着手した。 大員環形成を伴う分子内ディールス-アルダー(IMDA) 反応を鍵反応とする合成を検討したが、所望のIMDA 反応は進行しなかった。その原因として立体障害が考えられたので、渡環型ディールス-アルダー(TADA) 反応を鍵反応とする新たな合成手法開発に着手した。この合成計画においてはカルボニル基の結合したジヒドロピリドン上の二重結合が高い反応性を示すために基質合成が困難であることが示唆された。そこで、この二重結合をシクロペンタジエンまたはその誘導体とのディールス-アルダー反応により保護して合成中間体を合成後、その逆ディールス-アルダー反応とTADA 反応を系中で連続させて行うことを計画した。カルボニル基の結合したジヒドロピリドンのディールス-アルダー反応とその逆反応が進行することを見出し、新たな合成手法が遂行可能であることを確認した。