2024/05/26 更新

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アライ アキヒロ
新井 陽大
所属
教育・総合科学学術院 教育学部
職名
助手
 

特定課題制度(学内資金)

  • 「同化」の歴史学的再検討ー19世紀末東ガリツィアのポーランド同化ユダヤ人を事例にー

    2023年  

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     本研究では、19世紀末東ガリツィアにおいて発行された新聞『祖国』を主たる史料として、帝国から国民国家へ国家形態が跛行的に変遷しつつあった19世紀という時代の重層的かつ状況相関的なアイデンティティの実態、および「同化」理解の諸相に歴史学的な再検討を加えることを試みた。『祖国』の中でも、とりわけポーランド人とユダヤ人のあいだで展開された公開書簡「同化とは何か?」に着目することで、ユダヤ人・ポーランド人双方による「国民性」理解の一端も明らかにした。 そこから得られた知見として、以下の三点をあげることができる。すなわち、①ポーランド人社会への同化を推進したユダヤ人知識人が、ドイツ文化に由来するユダヤ啓蒙思想の知的影響下にあったことが、同化ユダヤ人に対するポーランド人の疑念を増幅させていたこと、②同化の条件として言語の重要性を強調する際、ポーランド人著述家が用いた「心臓」や「血液」といった身体的寓喩のうちに、20世紀初頭以降、人種的発想に基づいて展開した「社会有機体」との親和性が見られたこと、③『祖国』の同化ユダヤ人が、中世以降のポーランド史を参照することで、ポーランド人と言語や習慣を共有していないにもかかわらず「ポーランド国民」として認められてきたリトアニア人やルテニア人の存在を根拠に、ユダヤ人もまた無条件に「ポーランド国民」として包摂されるべきであるという「シヴィック・ナショナル」な同化観を提起していたこと、である。 これらの研究成果については、2023年11月5日に実施されたロシア・東欧学会 自由論題分科会3の場で報告を行った。また、同年度末刊行予定の『早稲田大学大学院教育学研究科紀要』(別冊31号-2)に投稿し、査読付き論文として発表した(論文標題「19世紀末東ガリツィアにおけるポーランド同化ユダヤ人の自己認識と他者理解 ー新聞『祖国』における公開書簡を手掛かりにー」)。