Updated on 2025/03/12

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KANEKO, Tomoyoshi
 
Affiliation
Faculty of Science and Engineering, School of Advanced Science and Engineering
Job title
Research Associate
 

Internal Special Research Projects

  • 進化工学に基づくファージセラピーの最適化:多様な細菌と耐性菌に対する新しい戦略

    2024   常田聡

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    LPSを感染の足がかりとするファージとそのファージが感染する大腸菌株S、そしてそのファージが本来感染することができない大腸菌株Rの3者が共存する環境で大腸菌株Rに感染できるようファージを進化させた。この進化ファージの全ゲノムを調査したところ、宿主の認識部位としてよく知られる尾部繊維に変異が入っていた。そこで、この尾部繊維はLPSを認識するものとして著名であるため、大腸菌株RのLPSの構造を調査した。その結果、大腸菌株SのLPSのR core構造がK-12型なのに対して株RはR1であることがわかった。このことは本課題とは別の課題の内容とともに現在プレプリントサーバーbioRxivに公開されており、またJournal of Virologyへの投稿準備を進めている。株RのR coreを部分的に欠損させた株のミニライブラリーを構築し、これらに野生型および進化ファージを感染させたところ、進化ファージは化学修飾された糖を認識できるようになっていることがわかった。さらにこの進化実験を技術的および生物学的に複数の複製をとったが、進化の仕方は一様であり、少なくとも特定の条件では進化の軌跡はトレース可能(進化は再現可能)であることが示唆された。また、進化ファージでは尾部繊維の変異が共通しているものの、他の核酸部位にも変異が認められた。そこで、尾部繊維の変異が真に宿主域変化に重要な役割を果たしたかを調べるために、野生型のファージに進化ファージの尾部繊維の変異を導入し人工進化ファージを合成した。その結果、通常の進化ファージと同様に宿主認識範囲が広がっていることを確認できた。現在、進化によって得られた変異がLPSのどの糖を標的として利用できるようになったかを調査中であり、この調査の終了後に本研究の内容を論文としてまとめる予定である。

  • 広域溶菌ファージの広域溶菌メカニズムの解明

    2023   常田聡

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    これまで抗菌薬を乱用してきたことにより、様々な薬剤に耐性を持つ薬剤耐性菌が猛威をふるっている。その一方で新規抗菌薬の開発はその開発コスト・時間と見込まれる利益の不釣り合いから停滞している。そこで、抗菌薬とは全く異なるメカニズムで細菌の増殖を抑制するものとしてファージの研究が盛んになりつつある。ファージは細菌にのみ感染するウイルスの総称で、人体に対する害がないとされ、環境中の至る所に存在する。ファージの感染は、宿主細菌の表面に存在する標的レセプターとファージに存在するレセプター結合タンパク質の相互作用によって決まり、この相互作用は極めて厳密に制御されている。そのため、ファージの感染域は種、株レベルで限定されており、これは抗菌薬の作用域が門レベルで、狭くとも基本的に科レベルであることを考えると極めて狭いと言え、ファージを扱う上で考慮すべき点である。本研究では、Escherichia coli (E. coli, 大腸菌)を宿主として様々なスクリーニングソースから複数の大腸菌ファージをコレクションした。これらのファージについて、様々な細菌株に対して供試することで作用域(感染スペクトラム)を、濁度カーブによる宿主に対する溶菌作用の経時的な効能、宿主に対する吸着能力の強さ、一度の複製で作成できる子ファージの数、長期培養による増殖能の限界など複数の生理学的な特徴を評価した。さらに、それぞれのファージの全ゲノムを解析し、完全ゲノムを構築した。これらのファージの調査の過程で、通常の大腸菌ファージに比べて高い溶菌活性を持つファージを発見した。このファージの広域性の謎に迫るべく、構築したファージゲノムからレセプター結合タンパク質の推定やファージが持つ宿主細菌の異物排除機構を潜り抜けるシステムのスクリーニングを行なった。