Internal Special Research Projects
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2023 常田聡
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これまで抗菌薬を乱用してきたことにより、様々な薬剤に耐性を持つ薬剤耐性菌が猛威をふるっている。その一方で新規抗菌薬の開発はその開発コスト・時間と見込まれる利益の不釣り合いから停滞している。そこで、抗菌薬とは全く異なるメカニズムで細菌の増殖を抑制するものとしてファージの研究が盛んになりつつある。ファージは細菌にのみ感染するウイルスの総称で、人体に対する害がないとされ、環境中の至る所に存在する。ファージの感染は、宿主細菌の表面に存在する標的レセプターとファージに存在するレセプター結合タンパク質の相互作用によって決まり、この相互作用は極めて厳密に制御されている。そのため、ファージの感染域は種、株レベルで限定されており、これは抗菌薬の作用域が門レベルで、狭くとも基本的に科レベルであることを考えると極めて狭いと言え、ファージを扱う上で考慮すべき点である。本研究では、Escherichia coli (E. coli, 大腸菌)を宿主として様々なスクリーニングソースから複数の大腸菌ファージをコレクションした。これらのファージについて、様々な細菌株に対して供試することで作用域(感染スペクトラム)を、濁度カーブによる宿主に対する溶菌作用の経時的な効能、宿主に対する吸着能力の強さ、一度の複製で作成できる子ファージの数、長期培養による増殖能の限界など複数の生理学的な特徴を評価した。さらに、それぞれのファージの全ゲノムを解析し、完全ゲノムを構築した。これらのファージの調査の過程で、通常の大腸菌ファージに比べて高い溶菌活性を持つファージを発見した。このファージの広域性の謎に迫るべく、構築したファージゲノムからレセプター結合タンパク質の推定やファージが持つ宿主細菌の異物排除機構を潜り抜けるシステムのスクリーニングを行なった。