Internal Special Research Projects
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2024
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環境負荷低減と持続可能な生産体制の実現を目指し、土を用いた建築(以下、土建築)の現状と将来展望を明らかにすることを目的としている。地球規模で温室効果ガス削減が求められる中、建築分野においては資源・エネルギー消費や廃棄物発生量の大きさが問題視される。土は採取・製造段階におけるエネルギー消費が少なく、再利用や廃棄物抑制、さらには蓄熱性や調湿性といった特性から、環境優位性が期待される材料である。しかし、近年提案される土建築の中には、固化材や他の建材との複合利用によって土本来の循環性を損ない、結果として環境負荷の高いものも存在する。本研究では、まず国内外の土建築事例を広く収集し、利用状況、使用材料、生産方法、構成要素などの動向を包括的に整理した。その上で、ライフサイクルアセスメント(LCA)を活用し、土建築の環境負荷を定量的に評価するため、各プロセス(採取、製造、施工、使用、廃棄)のエネルギー消費量や二酸化炭素排出量、資源利用量などのデータを整備を行い、環境負荷要因の整理を行った。特に、土自体の採取や製造段階におけるエネルギー効率の良さ、再利用性、廃棄物削減効果に注目し、固化材や他の建材との複合利用が全体の環境負荷に与える影響を詳細に分析した。また、長年にわたり土建築に携わってきた採取、製造、施工などの事業者が労働人口減少や高齢化の影響を受け、生産体制の維持が危ぶまれる現状を踏まえ、事業者間の連携や技術継承の実態についても分析を実施した。これらの取り組みと課題を整理することにより、今後、現代的な要求を満たしながら環境負荷の低減と循環性を維持する土建築のあり方、ひいては持続可能な生産体制の構築に向けた具体的な指針が得られると考えられる。
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2023
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世界的に見て、土は今日でも主要な建材である。近年では、土の弱点を補いつつ現代の要求も満たす様々な構法が各地で展開されている。そうした土の利点の1つに建材としての再使用や大地への埋戻しが可能な資源循環性がある。しかしながら、近年の土建築の中には土の循環を妨げるものも存在する。そこで本研究は、循環型社会において土を建築にどのように用いるべきかという今後のあり方について明らかにすることを目的とする。 近年の国内外における土建築構法の実態調査を行った。構法を使用部位、施工方法、ユニットの成形方法からなる「形態」で分類し、4つのクラスターに大別した。その上で、厚みや層構成の特徴、地域性や年代変遷に関する動向について分析を行った。その後、対象事例で見られた構法の具体的な利用方法と要求項目の関係について分析した。その結果、近年の土建築構法の傾向として、土の弱点を補うため、下地材や仕上材を用いる「部材の複合化」と固化材などを追加する「材料の複合化」が行われていた。本成果を日本建築学会に投稿した。 近年の土建築の傾向として見られた土と他の建材の複合化は、部位の性能を向上させる一方で、土の使用による環境負荷の増大、土と他の建材が廃棄物として大地に残る可能性がある。そこで、LCA(Life Cycle Assessment)による構法評価、廃棄物を生み出さない循環型構法の検討を目的とする。生産-施工-使用-解体廃棄の各段階における環境負荷を定量的に評価行うために、国内の生産、解体、産業廃棄物処理業者の現状についてヒアリング・アンケート、原単位データの収集、算出方法の検討、評価を行った。また、廃棄物の発生抑制について解体段階における分別解体の容易性、および処理段階における再資源化可能性に関する評価指標の提案を行った。LCAに関する研究成果を国際学会 Earth USA 2024に投稿した。