2024/05/26 更新

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キクチ ユウキ
菊池 有希
所属
文学学術院 文化構想学部
職名
教授
 

現在担当している科目

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特定課題制度(学内資金)

  • 近現代日本の詩歌における自然の超自然性の詩的表現に関する基盤的研究

    2023年  

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     自我の無化により超自然性(神秘)が自然を通じて顕現するというトマス・カーライルの「自然的超自然主義」の思想が近代日本の詩的表現にいかなる影響を与えたかという問題について、宮沢賢治、國木田独歩、若山牧水を主に取り上げ、検討をおこなった。 賢治については、『春と修羅』所収の「無声慟哭」「オホーツク挽歌」の詩群に特に注目し、妹トシの死をめぐり現実界(自然の世界)と他界(超自然の世界)とのあいだで揺曳する詩人の自我がどのように緊張し、また弛緩しているかの分析をおこなった。その際、見田宗介『宮沢賢治-存在の祭りの中へ』における議論を参照枠として援用し、賢治における自我の無化(見田の所謂「焼身幻想」)の詩的表現のありようについて一定の理解を得た。 独歩については、超自然性に対する自身の態度を開陳した「岡本の手帳」を中心に、独歩のカーライル受容について検証した。その結果、超自然(独歩の所謂「宇宙の不思議」「人生の秘密」)に対する自我の無力を強調する独歩の姿勢に、カーライルの「自然的超自然主義」の思想からの影響を確認することができ、その意味についても定見が得られた。 牧水については、牧水が文学上の先達として仰いでいる独歩を媒介としてカーライル流の「自然的超自然主義」を受容している可能性も視野に入れつつ、歌作品の読み込みをおこなった。その際、悲恋に拘泥する過去の自己との訣別を企図した第三歌集『別離』に特に取り上げ、収録された歌群における自我の無化及び自然の超自然性の表現のありようの分析をおこなった。牧水についてはまだ十分な考究ができていないが、短歌における〈自我-自然-超自然〉の詩的表現の問題という新たなテーマの研究に着手できたことは大きな収穫であった。 以上の研究成果については、2024年度から着手する科研費研究課題(基盤研究C)の研究に還元し、かたちにしてゆく予定である。