2024/04/25 更新

写真a

ムラヤマ ユウキ
村山 雄紀
所属
文学学術院 総合人文科学研究センター
職名
助手
 

特定課題制度(学内資金)

  • ロジェ・ド・ピールからドニ・ディドロへ ── 17世紀後半から18世紀フランスにおける絵画論の変遷

    2023年  

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     ロジェ・ド・ピールとドニ・ディドロという、画家の論理だけではなく、観者の受容を重視した2人の美術理論家・批評家を中心として、当該時代における絵画論ジャンルの変容を追跡するのが本研究課題の目標である。本年度は研究課題に則して、査読論文1本、学会発表3回、シンポジウム1回、講演1回、その他2件の発表・公開を行なった。ド・ピールからディドロまでの時代を通史的にたどり、当該時代の絵画言説を、シャルル・ル・ブラン、クロード・ロラン、ジャン・シメオン・シャルダン、ジャン・オノレ・フラゴナールらの諸作品を通じて分析した。当初の研究目標をおおむね完了することができ、次年度からの研究にもつながる論点を抽出することができた。 具体的には、当該時代においては王の偉大さを顕揚するための物語画が崇拝されていたが、ド・ピールの絵画論を契機として、物語画から風俗画/風景画へと移行する切断線が剔抉されることが確認された。物語画から風俗画/風景画への移り変わりを「瞬間」の時間性と「優美さ」(grâce)概念の観点から捉え直すことができたことは大きな収穫だった。「瞬間」と「優美さ」は19世紀前半のバルビゾン派や印象派、そして写真(術)の発明にまで通底する問題だが、17世紀後半から18世紀フランスの展開にその萌芽を見出すことが今後の課題である。