特定課題制度(学内資金)
特定課題制度(学内資金)
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戦間期東京における新中間層への社会政策―同潤会の住宅建設事業を通じて―
2024年
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戦間期の新中間層の暮らしを知るために、新中間層と行政の関係性を明らかにするのが、本研究の大きな問題意識である。戦間期の日本社会は社会政策が始まった時代であり、本来の社会政策は貧困層を対象として始まった経緯があるが、新中間層も政策の一部に含まれる場合もあった。本研究では、住宅建設に関する取り組みに注目した。よく知られているのは、関東大震災後に設立されて住宅建設を請け負った同潤会である。同潤会は建築史での分野で研究が進められてきたが、本研究では、新中間層の暮らしから同潤会の住宅建設の意義を検討した。工業化と都市化に伴い、イギリスやドイツでも住宅難問題は発生し、行政による住宅建設事業は海外でも広く行われていた。日本では、第一次世界大戦期の好景気に伴う諸物価の上昇は、家計への影響が大きく、都市化の進行も伴って、住宅難問題が発生した。そうした状況の中で、関東大震災が起こり、住宅ストックが失われて絶対的な住宅不足に陥った。本研究では、住宅難を伝えるデータ、同潤会の住宅建設事業に関する史料を収集した。その後、ゼミで報告を重ねた。新中間層向け住宅建設は同潤会に予算の余裕が生まれたため始まったが、震災後は民間を含めた住宅建設が進み、住宅難は急速に解決するとともに、空家すら発生するようになった。戦時期に差し掛かると、成長著しい工場地帯での労働者向けの住宅不足問題が新たに発生し、同潤会はそちらの住宅建設に方向転換を図った。新中間層は一時期、行政から注目かつ気にかけられていた存在にはなったが、社会状況が変わると、行政からは社会政策を行う対象としては優先順位が低いとみなされ、新中間層向け住宅の建設は中断されることになった。今後は自治体による新中間層向け公営住宅建設事業にも調査範囲を広げて、行政という括りをもう少し大きくかつ広めに捉えて、行政による住宅建設事業を総合的に見てみたい。
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2022年
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まず、史料収集などを行った。図書館や関係文書館で、関係する史料の複写などを行った。また、先行研究や当該企業にかかわる関係書籍の購入も行い、研究の基礎固めをした。次に、研究指導者に史料収集状況を報告して、今後の研究の進め方について、指導や助言を受けた。研究対象の組織は、数十年にわたる活動実績があった。全体像を大きく把握することから調査を進めている。組織が誕生した背景や設立経緯などを分析している。さらには、活動実態を知るために、基礎資料となるデータベースを作成するなどしている。加えて、時代ごとに区切って、組織の活動の特徴などをつかむなどしている。