2024/05/20 更新

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ナガイ ケイタロウ
長井 景太郎
所属
政治経済学術院 政治経済学部
職名
助教
 

特定課題制度(学内資金)

  • 高度成長期日本における大衆消費社会と石油化学産業—五大汎用樹脂の利用に着目して—

    2023年  

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     本研究は、高度成長期に誕生した石油由来の合成樹脂が、どのような製品に使用され、それらの製品が消費者の生活をどのように変化させたのかを明らかにする。 高度成長期に「大衆消費社会」が到来したことや、「消費革命」が発生したことは周知の事実であるが、この時期を対象とする研究は意外と少ない。高度成長期の消費の実態を対象にすることで、日本の消費の歴史を深化することができるのではないかと考えられる。 本報告の分析の枠組みとして、消費者を第一義的に意識する消費史研究の視点に、企業を第一義的に意識する産業史研究の視点を組み合わせる。 本報告で分析する製品は、石油由来の合成樹脂である。1950年代から1960年代の間に、日本の主要な燃料は石炭から石油に変化した。その結果、化学産業の主軸も石炭化学から石油化学へとシフトし、石油化学製品の需要が中心となった。しかしながら、これまでの石油化学産業史の主眼は、通商産業省が実施していた産業政策にあり、最終製品そのものには関心が薄いため、どのように最終製品が普及したのかは不明である。本研究では、五大汎用樹脂のなかでも高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、ポリスチレンの使用実態を検討する。 分析の結果、石油由来の合成樹脂は高度成長期に発生した生活に関する様々な革命に結びついていたことが示された。高圧法ポリエチレンの需要は食品包装が中心であり、当時発生していた「包装革命」の一端となっていた。中低圧法ポリエチレンは、高度成長期前半は日用品であるゴミ容器、後半はコンテナーとしての需要が中心であり、ゴミ容器は「清掃革命」、コンテナーは「流通革命」に結びついていた。ポリスチレンは、家電製品としての需要が多く、「消費革命」を下支えしていた。石油由来の合成樹脂は、様々な属性の消費者から需要されたが、特に主婦の存在は大きかったことが推察される。