2024/12/08 更新

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アズマ カズシ
東 和志
所属
理工学術院 先進理工学部
職名
助手
 

特定課題制度(学内資金)

  • 浸潤性小葉がんにおけるin vivo評価系の確立および変異型CDH1の機能解析

    2023年   仙波憲太郎

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    浸潤性小葉がん(ILC)は、乳がん患者全体の約5%~10%を占める特殊型乳がんである。特徴として、約80-90%の症例で膜局在タンパク質であるEカドヘリン(CDH1)の喪失が見られ、びまん性の増殖・浸潤様式をとるという組織学的特徴を持つ。この増殖様式はCDH1の喪失による細胞間接着の減弱に起因すると考えられているが、その一方で、残りの症例ではCDH1陽性でありながら同様の増殖形態をとると知られる。また、CDH1の核局在を示すILC症例においては、CDH1を喪失するILC症例と比較して予後が悪いことも報告されており、核CDH1の機能解明は重要な課題である。しかしながら、実験モデルの乏しさからその機能解析はこれまで進んでいないのが現状である。申請者はこれまでの研究において、所属研究室にて保有する乳がん細胞株の中に新規のILCモデルとなりうる細胞株が存在することを発見した。この細胞株はCDH1の発現を喪失していないことから申請者の発見した細胞株はCDH1陽性ILCのモデルとなることが示唆された。本研究ではこの細胞株を用いることでILCにおけるCDH1の機能解析を行うこととした。先行研究において、当該細胞株はCDH1に機能未知の変異を有することが報告されていた。CDH1が正常な機能を有しているかを評価するために変異型CDH1の細胞内局在を調べた結果、膜局在タンパク質であるはずのCDH1が当該細胞株においては核に多く局在することが分かった。そこで、CDH1を発現喪失していないかつ変異を持つILC細胞株を他にも収集し、同様に細胞内局在を評価したところ、これらの細胞株においてもCDH1が核に多く局在することを見出した。以上より、変異型CDH1を有するILC細胞株においてはCDH1が機能喪失もしくは細胞間結合とは異なる機能を有している可能性が示唆された。今後は、CDH1が核局在することの意義について解析を進めていく予定である。

  • HER2陽性乳がん細胞株を用いた新規肺高転移株の樹立および肺転移遺伝子の解明

    2022年   仙波憲太郎

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    これまでのがん転移研究では、移植を繰り返すことで高転移性を獲得した細胞株が樹立され、研究されてきた。乳がんではトリプルネガティブタイプについての研究が進んでいるが、HER2陽性タイプを含む他サブタイプにおける知見は乏しい。申請者はこれまでに肺転移能力を持つHER2陽性乳がん細胞株を複数見出した。本研究ではそれら細胞株を用いた新規肺高転移株樹立を目的とし、尾静脈移植による肺転移細胞の回収を試みた。その結果、肺転移巣の形成は確認できず、尾静脈移植による肺転移細胞の回収は困難であることが示唆された。今後の展望として、代替手法によるHER2陽性乳がん肺高転移株の樹立および肺転移機構の解明につなげたい。