（概要）水力機械は気液の二相流や，液が飽和蒸気圧を下回って生じた気泡（キャビテーション）を含む流れ中でも運転される．そのため，流体力で構造が励振される流体関連振動の予測と抑制にあたっては，キャビテーションとの相互影響を理解し，適切な予測を立てる必要がある．本年度は，種々のキャビテーションがフラッタなどの翼振動特性に与える影響，またその相互干渉を解明することを目標に研究に取り組んだ．（実験方法）回流水槽内に設置した翼１枚（水中単独翼）の振動とキャビテーション，翼性能を計測した．（数値計算方法）商用コードSTAR-CCM+を使用して，流体と構造をカップリングして計算する３次元流体構造連成解析（3D-FSI）を行った．（成果）予測手法の構築計測データを基に3D-FSIモデルの精度検証を行い，高精度な数値計算予測手法を構築した．具体的にはRANS/LESハイブリッド乱流モデル（SRH），γ-Reθ遷移モデル， SSキャビテーションモデルを選定し，弱連成の流体構造連成解析を解くことで実験を良好に再現した．（発表①）計測データの蓄積8通りの迎角，4種の翼，５パターンのキャビテーション，幅広い流速において翼のフラッタ計測を実施した．この一部を(一社)ターボ機械協会「流体性能の高精度予測と革新的流体設計分科会」の１課題「キャビテーションと流体構造連成手法の構築（WG5-SWG4）」にベンチマークデータとして提供し，複数の機関と共に計算に取り組んだ．（発表②）現象の分析実験と数値計算より，キャビテーション流下における水中翼の振動特性メカニズムを考察し，発生しているキャビテーションと水中翼の振動が相互に影響していることを確認した．特に発生初期のキャビテーション状態では，振動とキャビテーションの放出，遷移がロックインを起こし，振動の増大を招いていることが明らかになった．一方でキャビテーションが増加すると系が次第に安定化することも確認された（6月発表予定）．