2024/05/26 更新

写真a

オオツカ ヒロアキ
大塚 浩晨
所属
理工学術院 先進理工学部
職名
助教
 

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 光依存的磁気受容体候補分子の反応機構の解明

    日本学術振興会  科学研究費助成事業

    研究期間:

    2021年08月
    -
    2023年03月
     

    大塚 浩晨

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    未だ詳細な機構が解明されていない鳥類の磁気受容機構解明に向け、磁気受容候補分子クリプトクロム (CRY) の解析に取り組んできた。鳥類の磁気受容は、光励起によってCRY内部に形成された2つの不対電子の磁気感受性を利用して達成されると目されている。申請者らのグループの先行研究によって、ニワトリが持つCRY4 (cCRY4) におけるフラビン発色団 (FAD) の青色光依存的なラジカル形成能が示され、cCRY4分子内のチロシンのラジカルがFADラジカルと不対電子の対をなしている可能性が推定された。しかしながら、チロシンラジカルの形成位置や磁気受容における役割は不明であった。また、FADラジカルの形成とcCRY4の立体構造変化の関係を解明するためのツールとして、形成されるラジカル種を特定の状態で留める変異体が複数作製されたが、いずれも野生型に比べて収量が数十倍から数百倍に低下しており、解析に必要なサンプルを得ることが困難であった。
    今年度は、研究活動スタートアップとして、チロシンラジカル形成部位の同定とチロシンラジカルの役割の解明、およびラジカル種と構造変化の関連性の解明を目指し、その準備段階としてチロシンラジカル形成の候補位置であるチロシンの変異体の作製と、獲得の困難な変異体サンプルの収量改善を試みた。作製したチロシン変異体の解析から、磁気受容機構の解明の一助となり得る興味深い結果が得られたため、詳細な解析に向けてさらに複数の変異体を作製して解析した。また、変異体の発現・精製系を改良した結果、従来に比べて最大約30倍程度の収量増加に成功した。これによって構造解析や磁気効果測定に必要な高濃度のサンプルを得ることができ、従来は高速分光解析が不可能だった一部のサンプルの解析に成功している。

 

特定課題制度(学内資金)

  • 鳥類における光依存的な磁気受容分子候補クリプトクロム4における光誘起ラジカル形成反応の解析

    2023年  

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    多くの生物には地磁気を認識する能力が備わっており、中でも鳥類をはじめとするいくつかの生物種では光依存的な磁気受容が報告されている。鳥類における光駆動型の磁気受容は、クリプトクロム (CRY) と呼ばれる光受容タンパク質によって仲介されると考えられている。CRYの光受容によって量子もつれの関係にある2つの不対電子が生じ、それらの量子化学反応における磁気依存性を介して磁気情報が伝達されると推定されている。申請者らのグループは以前に、ニワトリが持つCRY4 (cCRY4) のフラビン発色団 (フラビンアデニンジヌクレオチド;FAD)の陰性ラジカル (FAD●‒) と、cCRY4を構成するチロシン残基の中性ラジカル (Tyr-O●) の反応分岐が磁気情報を有するのではないかと類推された。 cCRY4における電子の振る舞いに地磁気が影響を及ぼしたとき、どのような反応実体として検出されるのかを推定するためには、光反応による反応産物の形成とその磁気依存性の理論予測が有効であると考えた。そのために、cCRY4の光受容による反応実体の変遷を再現できるシミュレーターを作製した。cCRY4に結合するFADは、基底状態である酸化型 (FADOX)から光受容によってFAD●‒を介して中性ラジカル型FADH●へ還元・プロトン化される。さらにFADH●は光を受容し、完全還元型 (FADH‒) へと還元される。これらの反応の量子収率や反応時定数をもとに理論データを推定し、実測データと比較した。その結果興味深いことに、FADOX→ FAD●‒やFADH● → FADH‒の量子収率は一定ではなく,反応によって変化すると類推された。これらの量子収率変化はcCRY4全体の構造や状態の変化を表している可能性があり、理論シミュレーターによって磁気情報取得を担う分子実体が推定できると期待される。

  • 脊椎動物の光依存的な磁気受容を担う磁気受容候補分子の光反応機構の解明

    2022年  

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    今年度では、鳥類における磁気受容体の候補タンパク質であるcCRY4におけるチロシンラジカル形成の意義および形成位置の同定のため、ラジカル形成部位と目されるチロシン残基をいくつかのアミノ酸に変異させた組換え体を作製し、それら複数の変異体と野生型のcCRY4との光反応を比較解析した。その結果、変異体ではチロシンラジカルのシグナルが見られなくなり、野生型cCRY4において磁気受容に重要と期待される反応も消失している可能性が示唆された。これらのことから、cCRY4においてチロシンラジカルを形成しているチロシン残基が同定され、cCRY4の光反応におけるチロシンラジカルの役割も類推できると期待される。

  • 点変異体を用いたニワトリクリプトクロム4の光反応機構の解明

    2021年  

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    今年度では、鳥類における磁気受容分子候補cCRY4におけるチロシンラジカル形成部位の同定を目指し、その候補と目される位置のチロシンを変異させた変異体を作製した。この変異体の解析により興味深い結果が得られたため、詳細な解析のためにさらに複数の変異体を新たに作製中である。cCRY4の発現・精製系を改良して収量の増加を目指した。その結果、野生型を含むほとんどのサンプルの収量増加に成功し、サンプルの収量は従来に比べて最大約30倍程度まで上昇した。これによって高濃度のサンプルを必要とする種々の解析が可能となり、すでに高速の時間分解能を持つ分光解析に成功している。