2024/10/03 更新

写真a

ヒガシナカガワ トオル
東中川 徹
所属
教育・総合科学学術院
職名
名誉教授
学位
博士(理学) ( 東京大学 )

所属学協会

  •  
     
     

    日本原生動物学会

  •  
     
     

    日本動物学会

  •  
     
     

    日本分子生物学会

  •  
     
     

    日本発生生物学会

研究分野

  • 発生生物学 / 分子生物学

研究キーワード

  • 遺伝学

 

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 生物発生におよぼす遠赤外線の効果

  • ポリコーム相同遺伝子群の機能解析

Misc

  • ポリコーム遺伝子群の機能を求めて

    木原生物学研究所セミナー    2000年

  • ポリコーム相同遺伝子群の機能解析

    大阪大学蛋白質研究所セミナー    2000年

  • マウスポリコーム相同遺伝子群

       1999年

  • M33ターゲットマウスに見られた骨格異常と性転換

    遺伝子医学/メディカルドゥ   3 ; 1, PP160-162  1999年

  • そうだったのか!

    講談社    1999年

  • ポリコーム遺伝子群の機能解析

    平成11年度国立遺伝学研究所研究会    1999年

  • マウスポリコーム遺伝子群の機能解析

    転写調節機構平成11年度コンフェレンス    1999年

  • ゼブラフィッシュにおける発現時期の異なったポリコーム相同遺伝子

    日本動物学会第70回大会    1999年

  • Increased anxiety and impaired pain response in puromycin-sensitive aminopeptidase gene-deficient mice

    J. Neuroscience   Journal of Neuroscience, 19, 6068  1999年

  • Rae28, BMI1, and M33 are members of heterogeneous multimeric mammalian Polycomb group complexes

    Biochem. Biophys. Res. Commun.   245, 356-365  1998年

    DOI

  • ゼブラフィッシュポリコームcDNAの単離

    第69回日本動物学会大会要旨集    1998年

  • ポリコーム遺伝子群rae28による心臓形態形成の制御

    第31回日本発生生物学会大会要旨集    1998年

  • Pc-Gによる制御機構は発現パターンを固定化することである

    第31回日本発生生物学会大会要旨集    1998年

  • M33ターゲティングマウスにみられる生殖巣形成不全および性転換

    第31回日本発生生物学会大会要旨集    1998年

  • 遺伝子と染色体の構造、遺伝子の発現調節機構

    図説分子病態学/中外医学社    1998年

  • 雄から雌へ-性決定を左右するM33

    実験医学/羊土社   16 ; 19, PP2484-2486  1998年

  • 雄になれないM33ターゲティングマウス-新たなポリコーム遺伝子の役割-

    細胞工学/秀潤社   17 ; 11, PP1727-1729  1998年

  • Sequence-specific DNA binding activity in the RAE28 protein, a mouse homologue of the Drosophila polyhomeotic protein

    Biochemistry and Molecular Biology International   46 ; 5, PP905-912  1998年

  • Male-to-female sex reversal in M33 mutant mice

    Nature   393 ; 6686, PP688-692  1998年

    DOI

  • 分子細胞生物学辞典

    東京化学同人    1997年

  • 心臓の形態形成に対するマウスPolycomb group ( Pc-G) 遺伝子rae28の役割

    第20回日本分子生物学会大会要旨集    1997年

  • Targeted disruption of the mouse homologue of the Drosophila polyhomeotic gene leads to altered anteroposterior patterning and neural crest defects

    Gordon Research Conference on Developmental Biology    1997年

  • M33ノックアウトマウスにみられる雄性転換および雌不妊

    第20回日本分子生物学会大会要旨集    1997年

  • latexinノックアウトマウスにおける急性および慢性痛覚反応

    第20回日本分子生物学会大会要旨集    1997年

  • M33, Rae28 and Bmi-1 proteins, mouse homologs of Polycomb group proteins, are constituents of a large and heterogeneous multimeric nuclear complex

    Gordon Research Conference on Epigenetics    1997年

  • マウスポリコーム蛋白質による核内複合体形成

    第30回日本発生生物学会大会要旨集    1997年

  • マウスHox遺伝子の発現に対する Polycomb group ( Pc-G )遺伝子rae28の制御様式

    第30回日本発生生物学会大会要旨集    1997年

  • マウスPolycomb group (Pc-G) 遺伝子 rae28 の発現と機能

    第30回日本発生生物学会大会要旨集    1997年

  • Male sex-reversal in M33 deficient mice

    Mouse Molecular Genetics    1997年

  • Targeted disruption of the mouse homologue of the Drosophila polyhomeotic gene leads to altered anteroposterior patterning and neural crest defects

    Development   124, 3673-3682  1997年

  • rae28遺伝子欠損マウスは複数の発生異常を示し、致死である

    第19回日本分子生物学会大会要旨集    1996年

  • マウスlatexin遺伝子のgene targeting及び染色体マッピング

    第19回日本分子生物学会大会要旨集    1996年

  • マウスポリコーム相同遺伝子M33欠損マウスにおける前後軸形成異常

    第19回日本分子生物学会大会要旨集    1996年

  • マウスポリコーム相同遺伝子M33欠損マウスにおける前後軸形成異常

    第29回日本発生生物学会大会要旨集    1996年

  • マウスポリホメオテイック遺伝子と推定されるrae28遺伝子のノックアウトマウスを用いた解析

    第29回日本発生生物学会大会要旨集    1996年

  • 遺伝子の働きをさぐる-発生工学による新しいアプローチ

    成城大学    1996年

  • ウニ胚骨片マトリックスタンパク質遺伝子

    海洋   28;654-658  1996年

  • A 34kDa Protein Strongly Bound to Actively Transcribing rDNA of Tetrahymena

    European Journal of Protistology   32,68-72  1996年

  • Structural Organization of the Gene,a Putative Murine Homologue of the Drosophila polyhomeotic Gene

    Journal of Biochemistry   120;797-802  1996年

  • Replication Patterns of Repetitive DNA Sequences on the W-chromosome are Altered During Development of the Chick Embryo

    Experimental Cell Research   223;233-241  1996年

    DOI

  • GeneTrap Capture of a Novel Gene,jumonji, Required for Neural Tube Formation

    Genes and Development   9;1211-1222  1995年

    DOI

  • Promoter Sequence for the Transcription of the extrachromosomal rRNA Genes of Tetrahymena Shares a Similar Sequence Element Important for Its Replication

    Gene   127;209-213  1993年

    DOI

  • A Novel Murine Zinc Finger Gene Mapped Within the tw18 Deletion Region Expresses in Germ Cells and Embryinic Nervous System

    Develpmental Biology   155;409-422  1993年

    DOI

  • Parental Methylation Patterns of a Transgenic Locus in Adult Somatic Tissues Are Imprinted During Gametogenesis

    Development   116,831-839  1992年

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特定課題制度(学内資金)

  • メダカポリコーム遺伝子群による左右軸決定のエピジェネティック制御

    2009年  

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    我々は、「エピジェネティック・メモリー」の機構に関与すると考えられているPolycomb遺伝子群(PcG)の作用機序を明らかにすることを研究目的として来た。昨年度、メダカのPcG遺伝子oleed が左右軸の決定に関与することを見出し論文発表した。引き続き、本年度は別のPcG遺伝子olezh1の機能減少胚が同様の臓器逆位を示すことを見出した。しかし、Kupffer胞の繊毛の存在状態に異常は見られず、oleedとは異なる機構が働いていることが示唆された。外科的手法によりクッパー胞を物理的に破壊することと、olezh1のノックダウンを組み合わせることで、OLEZH1がSpawの転写を直接抑制するという仮説を立て、これをin vitroの実験系で検証した。NIH3T3細胞において、Nodalのエンハンサーに直接結合してその発現を左右非対称に制御する転写因子FoxH1を、Ezh1と共に過剰発現させて免疫共沈法を行ったところEzh1とFoxH1が結合することが示された。NodalがEzh1の直接の標的遺伝子であることを示唆する。またこれにより、Ezh1によるNodalの制御が哺乳類においても保存されている可能性が示唆された。Ezh1は哺乳類で同定されたが、それ以外の種においては存在の有無も定かではなかった。cDNAスクリーニング及びゲノム、ESTの情報を用いたin silicoの調査により、魚類、両生類、爬虫類においてEzh1相同遺伝子の候補が同定された。アミノ酸配列ならびにシンテニーの比較より、それらが哺乳類Ezh1のオルソログであることが確かめられた。つまり、Ezh1は脊椎動物を通して保存されていた。またナメクジウオのゲノム情報の探索から、脊索動物から脊椎動物への進化の過程でE(z)が重複してEzh1とEzh2が生じたことが推察された。Ezh1の高度な保存性は、この遺伝子がEzh2にはない独自の重要な役割を持つことを示唆する。これらの知見と呼応して、SETドメイン領域の一次構造の詳細な比較から、Ezh1とEzh2それぞれに異なった特徴的構造が保存されていることが見出された。以上の知見は、脊椎動物におけるEzh1の機能的重要性を理論的に主張するものである。正しい左右軸の決定は、脊椎動物における臓器の正常な機能にとり必須であり、たとえば、ヒトにおける左右軸の異常はKartagener症候群に見られるような病変へと至る。本研究は、これらの疾病の病因解析の端緒を開くとともに、学術的には遺伝的に決定されていると考えられていた左右軸の決定にエピジェネティックな制御が加わることを明らかにするものである。

  • メダカポリコーム遺伝子群による左右軸決定のエピジェネティック制御

    2008年  

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    発生とは、細胞がゲノムの塩基配列を変えずに種々の細胞系譜に分化していくエピジェネティックなプロセスであり、細胞分裂を超えてのエピジェネティック・マークの維持は「細胞メモリー」あるいは「エピジェネティック・メモリー」と呼ばれている。我々は、このプロセスに機能すると考えられているPolycomb遺伝子群(PcG)の作用機序を明らかにすることを目的として来た。本年度の成果として、メダカのPcG遺伝子のひとつoleedが左右軸の決定に関与することを見出した。モルフォリノ・アンチセンス・オリゴによるoleedの機能減少型の阻害胚を作出し観察すると、以前認められた単眼奇形に加えて心臓の回転方向や肝臓、胆のうの位置の逆転を見いだした。観察された臓器についてこれらの逆転が同時に起こることが認められることから「全逆位」(situs inversus)と判断される。左右特異的遺伝子の発現パターンの乱れに加えて、Kupffer胞の繊毛の存在状態に以上を認めた。Kupffer胞の繊毛は、発生初期の回転運動により左方向の水流を生み出し、これが二次的に左特異的遺伝子の発現を誘導することが、マウスやゼブラフィッシュにおいて明らかにされている。本実験における阻害胚の繊毛は、存在するもののKupffer胞の上皮内に埋め込まれていたり、十分に体腔内に突出することなく水流形成に十分機能しないことが窺われた。 このことから、メダカにおいて、oleedはKupffer胞における繊毛形成の異常を介して左右軸の決定を支配していることが推察された。正しい左右軸の決定は、脊椎動物における臓器の正常な機能にとり必須であり、たとえば、ヒトにおける左右軸の異常はKartagener症候群に見られるような病変へと至る。本研究は、これらの疾病の病因解析の端緒を開くとともに、学術的には遺伝的に決定されていると考えられていた左右軸の決定にエピジェネティックな制御が加わることを明らかにするものである。

  • メダカ・ポリコーム相同遺伝子群のエピジェネティックスにおける機能解析

    2006年  

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     1個の受精卵を出発点として展開する発生過程は、胚細胞からなる集団がゲノムの塩基配列を変えることなく、種々の細胞系譜に分化していくエピジェネティックなプロセスである。この現象は、20世紀初頭から生物学、とりわけ発生生物学の中心問題のひとつであった。我々は,このエピジェネティクスの分子機構を明らかにするための一環として、マウス、ゼブラフィッシュ、メダカを用いてPolycomb遺伝子群 ( PcG ) に着目して研究を進めてきた。 本年度は、メダカのES(胚性幹)細胞の系を導入し, その分化誘導の過程におけるPcGの動態を解析した。メダカES細胞MES1はYunhan Hong教授(国立シンガポール大学)により樹立されたものを同教授より供与を受けた。本細胞は、哺乳動物培養細胞とは異なり、魚血清、メダカ胚抽出物を用いるため培養系の樹立には時間を要した。本計画は、長期的にはメダカにおける遺伝子ターゲティングの系の確立を通じてPcGの機能をより直接的に解明することを視野におく。本年度は、種々の予備的実験を試みた。 一般にES細胞やEC細胞などの幹細胞をレチノイン酸で処理すると未分化能を失い、種々の細胞に分化することが知られている。MES1細胞をレチノイン酸で処理すると、未分化細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性やOct4遺伝子の発現が経時的に低下した。また、形態的に神経細胞あるいは筋肉細胞様の細胞の出現も認められた。この分化誘導系において、メダカPcGの発現動態をRT-PCRによりモニターしたところ、olring1b, oleed, olezh2遺伝子の発現の減少が認められた。遺伝子発現を抑制的に維持すると考えられているPcGの発現減少は、MES1細胞が幹細胞としての特性を失い、分化の経路を進行し始めたことを示す。

  • メダカを用いたポリコーム遺伝子群の機能解析

    2005年  

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    生物種間の比較による相補的理解を目指して、メダカのポリコーム遺伝子群の研究と併行してマウスポリコームタンパク質M33の研究を進めて来た。本年度は、この研究において進展が見られたのでそれについて報告する。ポリコームタンパク質は核内に局在しタンパク質複合体を形成して機能するという多くの報告に対して、我々はマウスポリコームタンパク質M33は成体マウス肝臓において核-細胞質間で細胞増殖とリン酸化を伴ったダイナミックシャトリングすることを見出した(Noguchi et al., 2002)。この現象の詳細を明らかにする一環として、M33の核移行シグナル(NLS)の同定を行った。先行的研究における構造的特性の解析からNLS1, NLS2, NLS3の3つが核移行シグナルの候補とされていた。これらを単独に、ペアワイズに、あるいは全部を欠失したクローンを緑色蛍光タンパク質遺伝子につなぎ培養細胞に導入し、緑色蛍光を顕微鏡下で追跡した。その結果、NLS2の欠失が核移行を阻害した。副次的知見として、NLS1はM33タンパク質の核における正常な分布の関与することが示唆された。NLS2を緑色蛍光タンパク質遺伝子につなぐと蛍光は核に局在した。NLS1, NLS3はこの核移行効果を持たなかった。このことから、候補のうちNLS2が機能的核移行シグナルであると結論された。一方、本研究の進行中に報告された新しい核移行検索ソフトによると、M33にはNLS2と一部オーバーラップする配列(NLS2’)が一個のみ検出された。NLS2’も緑色蛍光タンパク質を核に移行する能力を有することが示された。しかし、NLS2とNLS2’が共有する配列KRPRのみではタンパク質を核に移行する機能は認められず、他のいくつかのアミノ酸の共存が必要であることが明らかとなった。

  • メダカの発生におけるポリコーム相同遺伝子oleedの機能解析

    2004年  

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    細胞メモリーに関わるポリコーム遺伝子群ESC-E(Z) 複合体について、メダカをモデルとして機能解析を行いhedgehogシグナリングへの関与を明らかにした。機能欠損が致死になるため、他のシステムでは困難であったESC-E(Z)複合体の機能解析を、morpholino antisense oligo (MO)を用いたノックダウンの手法により可能にした。oleed(esc相同遺伝子)およびolezh2 (E(z)相同遺伝子)のノックダウン実験において単眼奇形cyclopiaを見いだした。さらに、cyclopiaがESC-E(Z)複合体全体の機能欠損により生じることを示した。ESC-E(Z)複合体機能欠損胚においてhedgehogシグナリングの標的遺伝子であるspaltの腹側中枢神経系における減少と、Pax2の眼茎における消失を認めた。通常shh過剰発現胚においてはspaltなどのhedgehog標的遺伝子は発現領域の拡張を示すが、shh過剰発現とESC-E(Z)複合体の機能欠損を同時に起こした胚においては発現領域の拡張は見られなかった。この結果は、ESC-E(Z)複合体がhedgehogシグナリングの受け手の細胞内において重要な役割を果たしているという仮説を支持する。この仮説をさらに検証するため、in vitro実験として、マウス培養細胞NIH-3T3をShhペプチド添加条件で培養しヒストンH3のメチル化の上昇を確認した。この結果は、ESC-E(Z) 複合体のhedgehogシグナリングへの関与はメダカのみならず、広く生物界において見られることを示唆する。さらに、in vivo実験として、メダカ胚を用いてhedgehogシグナリングの阻害によりヒストンH3のメチル化の減少を確認した(Shindo et al., 2004; Shindo et al., 2005)。

  • ポリコームタンパク質M33の核-細胞質シャトリングとエピジェネティック制御

    2004年  

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    すでに我々は、ポリコーム遺伝子群の機能研究の第一歩として、マウスポリコーム遺伝子M33のコードするタンパク質M33が細胞核内でタンパク質複合体を形成していることを明らかにした。しかし、マウス肝臓においてはM33タンパク質は他のポリコームタンパク質と異なり核局在ではなく細胞質に局在していた。さらに詳細に検討した結果、肝臓細胞の細胞質に局在するM33は核のM33が脱リン酸化を受けたものであること、肝再生状態を誘導すると、DNA複製と細胞分裂時に呼応してM33タンパク質のリン酸化と核への移行が見られた。DNA複製の停止とともにふたたびM33は細胞質に現れた。つまり、マウス肝臓においては、M33タンパク質はリン酸化を伴った核―細胞質間ダイナミックシャトリングを行っていることが示された。このような知見は他のポリコームタンパク質では全く知られていない(BBRC, 2002)。この核―細胞質間ダイナミックシャトリングの機構を明らかにすることを目的として、M33タンパク質に存在する3つの仮想的核移行シグナル(NLS1,2,3)を、単独、またはコンビンエーションにより欠失したクローンを作製し、レポーターとしてGFPに結合させマウス培養細胞に導入しGFPシグナルの核-細胞質における分布を調べた。その結果、現在までのところNLS2がM33の核移行にかかわることが示された。一方、細胞質のM33タンパク質の存在状態を知るため免疫電子顕微鏡法による観察を開始した。M33タンパク質のマウス肝臓におけるダイナミック・シャトリングの発見は、M33タンパク質さらにはポリコームタンパク質の作用機構に新たな側面をもたらすものとして評価できる。他の研究グループからの関心も高い。

  • クロマチンを介した細胞メモリーの分子機構

    2003年  

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    ゲノムプロジェクトの大要が終焉を迎え、遺伝子研究の主流は、エピジェネティックな遺伝子発現機構の研究へとシフトした。エピジェネティクスの諸相において、遺伝子がネットワークを形成して作用していることを反映して、タンパク質複合体の分離と同定が刻々と報告されている。我々は、このような観点からこの10年来ポリコーム遺伝子群( PcG と略す)に着目し、in vivo機能解析を進めてきた。 近年の盛んな研究にも拘わらず不明な点が多い。以下に我々の研究の成果を3つに分けて記述する。(1) 我々はマウスPcGタンパク質M33の細胞内動態について新しい知見を得た。マウス肝臓では、M33は定常状態では細胞質に局在しており 、肝 再生によりリン酸化を受け、かつ核に移行する。肝再生が終了するとふたたび細胞質へ移行するというダイナミック・シャトリングを示す ことが判明した。(2) ゼブラフィッシュよりPcGホモログを7種クローン化し構造を決定した。このうち3種について実験を進めた。pc1とpsc1の産物は試験管内 において他種の相互作用のパターンと同様の挙動を示した。ph2については、発現解析に続きMorpholinoアンチセンスオリゴ(MO) による 遺伝子ノックダウンにより、体節形成に重要な役割を果たしていることを示した。(3) メダカにおいて5種のPcGホモログを分離した。そのひとつ oleedについて、ノックダウン実験により単眼奇形(cyclopia)の誘発を認め た。また、oleedとPcG複合体を形成していると考えられるolezのMOによっても、その複合体が持つと考えられる脱アセチル化酵素の Trichostatin Aによる阻害実験においても同様の奇形が生じた。 OleedがPcG複合体を介して作用していることを強く示唆する。PcG複合 体がHedgehog シグナリングに関与しているという知見も得た。

  • 発生におけるポリコーム相同遺伝子群の機能解析

    2001年  

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    発生過程における「細胞メモリー」の分子機構を明らかにすることを目的として、マウスおよびゼブラフィッシュのポリコーム相同遺伝子群について研究を行った。① マウスポリコーム相同タンパク質M33について新しい知見を得た。成体マウス肝臓のM33タンパク質の大部分は細胞質に局在し、細胞核にもわずかに認められた。核M33は細胞質M33がリン酸化されたものであった。核M33の電気泳動上の移動度が増殖活性の高いF9細胞のそれと一致することから、細胞増殖、リン酸化、核移行の関連を再生肝を用いて調べた。M33は肝再生において細胞分裂に同調してリン酸化され、かつ核に移行し、再生が終了すると再び細胞質に戻るというダイナミックなシャトリングを示すことが明らかになった。M33タンパク質、さらにはポリコームタンパク質の機能解析に新たな視点を開いた。② ゼブラフィッシュのポリコーム相同遺伝子 pc1, psc1 およびph2 遺伝子について研究を進めた。特に ph2 遺伝子において興味ある知見を得た。この遺伝子はひとつの遺伝子座から ph2αと ph2βの2つのmRNAを転写する。両mRNAは胚発生において体節に特徴的な発現を示した。すなわちβがまず発現し、次いでαがそれに続いた。1個の体節レベルで見るとαは後方から前方にかけて発現の強度勾配を、βは逆の勾配を示した。モルフォリーノ・アンチセンス・オリゴを胚に顕微注入してβの発現を阻害すると、予期したとおり遅筋の形成障害とそれを反映する尾部の彎曲が認められた。pc1, psc1 は、特徴ある発現パターンを示さないが、それぞれのタンパク質は核に局在し、タンパク質レベルで相互に、またそれ自身と結合することが明かとなった。これらの知見は、ゼブラフィッシュにおいてもポリコーム遺伝子群が存在し、「細胞メモリー」機構においてその機能を発揮していることを示している。

  • 発生におけるポリコーム相同遺伝子群の機能解析

    1999年   安増 郁夫, 山崎 剣

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    (1)マウスPcG相同遺伝子のひとつM33遺伝子の下流遺伝子群を探索し、候補遺伝子を数個見い出した。M33ノックアウトマウスと野生型マウスについてDifferential Display 法により発現パターンの異なる遺伝子を探索した。13.5日胚、生体組織、樹立した培養細胞より抽出したRNAについて蛍光検出による Differential Display 法を約300対のプライマーセットについて行った。見い出された遺伝子について現在性状決定を進めている。(2)PcG遺伝子 の機能解明を多角的かつ相補的に進めるため、ゼブラフィッシュのPcG相同遺伝子の単離を試み、ショウジョウバエのPc, ph, Pscに対応する3種の構造的相同遺伝子をクローン化した。これらの遺伝子よりコードされるタンパク質間の相互作用を試験管内で調べたところ、ショウジョウバエ、マウス、カエルにおいて見られたのと同様の挙動を示し、機能的にも相同である可能性を強く示唆した。このことは魚類においてもPcG遺伝子群が遺伝子発現パターンの維持、さらには発生における「決定」機構に関与していることを示す。(3)核タンパク質と考えられていたM33タンパク質が肝臓においては細胞質に局在しており、肝臓細胞が増殖期に入るとリン酸化を受け、かつ核に移行することを見い出した。M33タンパク質はその大部分が静止期の肝臓では細胞質に局在している。核にはごく微量存在し、かつ電気泳動的に移動度が遅い。核に存在する分子種をアルカリフォスファターゼ処理すると細胞質に局在するM33分子と同じ移動度を持つ分子に変化した。肝部分切除を行ったマウスについて調べたところ、細胞の増殖に対応して移動度の変化が認められた。肝切除72時間後、細胞の増殖が低下すると移動度の早い分子種が再び現われた。M33タンパク質は機能時にリン酸化を受け核へ移行し他のPcGタンパク質と複合体を形成すると考えられる。

  • マウスポリコーム相同遺伝子群の機能に関する研究

    1997年  

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    発生過程で各細胞系譜に分岐した細胞においては通常分裂後においても分裂前の遺伝子発現状態を安定に維持している。この現象は「セル・メモリー」とも呼ばれ「発生における決定」の基本相をなすと考えられてきたがその分子機構は全くわかっていない。最近、ショウジョウバエのPolycomb遺伝子群(Pc-G)およびtrithorax遺伝子群(trx-G)がこの維持機構に関与していることが示唆され、かつ、この遺伝機構の普遍性を反映して、ヒト、マウス、カエルなど他の生物種からも相同遺伝子が分離されている。われわれはPc-Gのマウス相同遺伝子についてその機能解明を多角的に進めてきた。1997年度においては次の成果を得た。(1)マウスPc-G相同遺伝子によってコードされるタンパク質M33,RAE28,BMI1が細胞核内において複合体を形成していることを免疫沈降法およびゲルろ過法により示した。各タンパク質の相互作用に与る領域を欠失体を用いた酵母Two-Hybrid法により同定した。各タンパク質の胚発生における消長および成体組織における分布パターンより複合体は不均一な組成を持つことを示唆した。(2)M33遺伝子の機能を明らかにするためES細胞を介した相同組み換えによりM33のC末を欠失した突然変異体マウスを作製し表現型を解析した。他のマウスPc-G突然変異体で認められた前後軸異常に加えて遺伝子型XYのホモマウスにおける卵巣形成あるいは雌雄同体を認めた。このM33欠失マウスは哺乳動物の性決定機構の解析に好適のモデルを提供すると考えられる。(3)M33の下流遺伝子群を同定するためM33変異体と野生型マウスのRNAについてmRNA Differential Display法による解析を開始した。本実験は昨年度においては方法の確立にその主力を注いだ。今年度において本格的解析段階を迎える。研究成果の発表(予定も含む)Y.Takihara, D.Tomotsune, M.Shirai, Y.Katoh-Fukui, K.Nishii, Md.A.Motaleb, M.Nomura, R.Tsuchiya, Y.Fujita, Y.Shibata, T.HIgashinakagawa and K.Shimada, Targeted disruption of the mouse homologue of the Drosophila polyhomeotic gene leads to altered anteroposterior patterning and neural crest defects, Development, 124, 3673-3682 (1997).N.Hashimoto, H.W.Brock, M.Nomura, M.Kyba, J.Hodgson, Y.Fujita, Y.Takihara, K.Shimada and T.Higashinakagawa, RAE28, BMI1 and M33 are members of heterogeneous multimeric mammalian Polycomb group complexes, Biochem. Biophys. Res. Commun. 245, 356-365(1998)Y.Katoh-Fukui, R.Tsuchiya, T.Shiroishi, Y.Nakahara, N.Hashimoto, K.Noguchi and T.Higashinakagawa, Male to female sex-reversal in M33 mutant mice, Nature,393, 688-692(1998).

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