2024/03/28 更新

写真a

ナカノ タダシ
中野 忠
所属
社会科学総合学術院
職名
名誉教授
学位
博士(経済学) ( 慶應大学 )

経歴

  •  
     
     

    早稲田大学 社会科学総合学術院   教授

委員歴

  • 2000年
    -
     

    社会経済史学会  評議員

  • 2000年
    -
     

    Socio-Economic Society  Councilor

所属学協会

  •  
     
     

    比較都市史研究会

  •  
     
     

    西洋史学会

  •  
     
     

    社会経済史学会

  •  
     
     

    The Tokyo Study Group in Comparative Urban History

  •  
     
     

    European History Society

  •  
     
     

    Socio-Economic Society

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研究分野

  • 経済史 / ヨーロッパ史、アメリカ史 / アジア史、アフリカ史
 

書籍等出版物

  • 世界史のなかの産業革命 : 資源・人的資本・グローバル経済

    Allen Robert C, 眞嶋 史叙, 中野 忠, 安元 稔, 湯沢 威

    名古屋大学出版会  2017年 ISBN: 9784815808945

  • 概説世界経済史

    Cameron Rondo E, Neal Larry, 酒田 利夫, 玉置 紀夫, 中野 忠, 藤原 幹夫, 安元 稔, 速水 融

    東洋経済新報社  2013年

  • 旧石器時代から工業化の始動まで

    Cameron Rondo E, Neal Larry, 酒田 利夫, 玉置 紀夫, 中野 忠, 藤原 幹夫, 安元 稔, 速水 融

    東洋経済新報社  2013年 ISBN: 9784492371114

  • 工業化の展開から現代まで

    Cameron Rondo E, Neal Larry, 酒田 利夫, 玉置 紀夫, 中野 忠, 藤原 幹夫, 安元 稔, 速水 融

    東洋経済新報社  2013年 ISBN: 9784492371121

  • 一八世紀イギリスの都市空間を探る : 「都市ルネサンス」論再考

    中野 忠, 道重 一郎, 唐澤 達之

    刀水書房  2012年 ISBN: 9784887084032

  • 社会経済史学の課題と展望

    社会経済史学会, 岡崎 哲二, 菅山 真次, 鈴木 俊夫, 谷本 雅之, 中林 真幸, 勘坂 純市, 安元 稔, 山本 千映, 竹内 敬子, 友部 謙一, 脇村 孝平, 神門 善久, 田北 廣道, 水野 祥子, 小堀 聡, 阿部 武司, 中野 忠, 久保 亨, 神田 さやこ, 鴋澤 歩, 籠谷 直人, 城山 智子, 松沢 裕作

    有斐閣  2012年 ISBN: 9784641163881

  • 近世ロンドンにおける移動と貧困―ウエストミンスター貧民尋問書の分析―

    2006年

  • 慈善と実用―18世紀イギリスの庶民教育

    浅野啓子・佐久間弘展編著『教育の社会史』(知泉書館)  2006年

  • 交易・貨幣および市場の出現

    Polanyi Karl, 中野 忠, 玉野井 芳郎

    岩波書店  2005年 ISBN: 4000271377

  • イギリス都市史研究 : 都市と地域

    イギリス都市, 農村共同体研究会, 東北大学経済史, 経営史研究会, 坂巻 清, 菅原 秀二, 中野 忠, 伊藤 修一, 丸藤 准二, 鈴木 俊夫, 唐澤 達之, 川名 洋, 小西 恵美, 佐藤 清隆, 岩間 俊彦, 武長 玄次郎, 猿渡 啓子, 長谷部 弘, Corfield P. J, 三好 洋子

    日本経済評論社  2004年 ISBN: 481881573X

  • 王政復古期ロンドンの都市財政に関する研究

    2002年

  • 前工業化ヨーロッパの都市と農村 : 社会史の領域

    中野 忠

    成文堂  2000年 ISBN: 4792370698

  • 交易・貨幣および市場の出現

    Polanyi Karl, 玉野井 芳郎, 中野 忠

    岩波書店  1998年 ISBN: 4000262548

  • イギリスのインフレーション : テュダー・初期ステュアート期

    Outhwaite R. B, 中野 忠

    早稲田大学出版部  1996年 ISBN: 4657969242

  • イギリス近世都市の展開 : 社会経済史的研究

    中野 忠

    創文社  1995年 ISBN: 4423460416

  • イギリス社会史1580-1680

    Wrightson Keith, 中野 忠

    リブロポート  1991年 ISBN: 4845706121

  • 転換期の東南アジア

    Pauker Guy J, 中野 忠

    日本ブリタニカ  1981年

  • 交易・貨幣および市場の出現

    Polanyi Karl, 玉野井 芳郎, 中野 忠

    岩波書店  1980年 ISBN: 4000047175

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共同研究・競争的資金等の研究課題

  • ロンドン史

  • イギリス社会史

  • -

Misc

  • ロンドンの水事情 : 中世から近世へ

    中野 忠

    ソシオサイエンス = Waseda review of sosio-science   24   49 - 75  2018年

    CiNii

  • 書評 岡部芳彦著『イギリス検認遺産目録研究』

    中野 忠

    経営史学   51 ( 1 ) 86 - 88  2016年06月

    CiNii

  • コメント:弱い紐帯と強い紐帯―M.ウェーバーをめぐって

    中野 忠

    比較都市史研究   35 ( 1 ) 28 - 30  2016年

    DOI CiNii

  • 書評 小西恵美著『長い18世紀イギリスの都市化 : 成熟する地方都市キングス・リン』

    中野 忠

    社会経済史学 = Socio-economic history   82 ( 2 ) 281 - 283  2016年

    CiNii

  • マルク・ボーネ『中世末期ネーデルランドの都市社会』合評会(第433回例会報告)

    平 伊佐雄, 早島 大祐, 山崎 覚士, 中野 忠

    比較都市史研究   34 ( 1 ) 2 - 9  2015年

    DOI CiNii

  • 近世ロンドンの転入住民名簿 : 役職と移動に関する一資料

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   13 ( 3 ) 63 - 78  2013年03月

    CiNii

  • 書評 石井健著『近世イングランドの年季奉公人 : 出自の社会経済史研究』

    中野 忠

    西洋史学   ( 252 ) 303 - 305  2013年

    CiNii

  • 近世ロンドンの地域社会と役職制度 : 聖ダンスタン教区の事例(下)

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   13 ( 1 ) 73 - 102  2012年07月

    CiNii

  • 近世ロンドンの地域社会と役職制度--聖ダンスタン教区の事例(上)

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   11 ( 3 ) 17 - 42  2011年03月

    CiNii

  • 商人の「共和国」 : 近世ロンドンの役職と役職忌避

    中野 忠

    比較都市史研究   30 ( 1 ) 45 - 61  2011年

    DOI CiNii

  • トルミン・スミスとロンドンの自由--イギリス地方自治の水脈

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   11 ( 1 ) 87 - 104  2010年07月

    CiNii

  • イギリス近世都市における移動、役職、地域社会--ロンドンの事例から

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   10 ( 3 ) 1 - 22  2010年03月

    CiNii

  • 近世イギリスにおける市民と都市社会 : ロンドンの事例を中心に(第400回例会報告)

    中野 忠

    比較都市史研究   29 ( 2 ) 4 - 5  2010年

    DOI CiNii

  • 寄留人、間借り人、下宿人--近世ロンドンの住宅事情の一斑

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   9 ( 3 ) 1 - 34  2009年03月

    CiNii

  • 米山秀著, 『近世イギリス家族史』, ミネルヴァ書房, 2008年2月, 362頁, 6,825円

    中野 忠

    社会経済史学   75 ( 3 ) 347 - 349  2009年

    DOI CiNii

  • 馬車と鹿肉--近世ロンドンにおける社交世界の展開

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   9 ( 2 ) 1 - 29  2008年12月

     概要を見る

    論文

    CiNii

  • 王と都市 : 交易、贈与と儀式(第378回例会報告(2008年4月19日))

    ロラソン D, 中野 忠

    比較都市史研究   27 ( 1 ) 10 - 11  2008年

    DOI CiNii

  • シンポジュウム:中・近世ヨーロッパの都市の自由と平和(第379回例会報告(2008年5月24日))

    魚住 昌良, 斎藤 絅子, 中野 忠, 加藤 貴, 小倉 欣一, 唐澤 達之

    比較都市史研究   27 ( 2 ) 2 - 3  2008年

    DOI CiNii

  • 中世初期における王と都市 : 儀礼・交易・贈与

    ロラソン デイヴィッド, 安元 稔, 中野 忠

    比較都市史研究   27 ( 2 ) 35 - 54  2008年

    DOI CiNii

  • 王政復古期以後のロンドンにおける市民的社交圏―コーヒーハウスをめぐる最近の研究から―

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   7 ( 3 ) 39 - 61  2007年03月

    CiNii

  • 書評 加藤哲美「中世イングランド農村における慈善遺贈と臨終時土地売却」

    中野 忠

    法制史研究   56   349 - 350  2007年

  • 書評 藤井美男著『ブルゴーニュ国家とブリュッセル--財政をめぐる形成期近代国都市』

    中野 忠

    西洋史学論集   ( 45 ) 113 - 119  2007年

    CiNii

  • ECCOとイギリス史研究の新しい地平

    中野 忠

    ふみくら : 早稲田大学図書館報   74   14 - 15  2006年07月

    CiNii

  • 書評 デイヴィッド・キャナダイン編著『いま歴史とは何か』

    中野 忠

    社会経済史学   72 ( 4 ) 120 - 121  2006年

  • 18世紀中葉ウェストミンスター貧民の移動をめぐって―移送命令書と尋問書の予備的分析―

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   5 ( 3 ) 1 - 21  2005年

     概要を見る

    論文

    CiNii

  • 花田洋一郎『フランス中世都市制度と都市住民』

    中野 忠

    歴史学研究   ( 786 ) 54 - 57  2004年

    CiNii

  • イギリス都市史研究

    日本経済評論社    2004年

  • 定住法関連資料と18世紀イギリス農村社会

    中野 忠

    早稲田社会科学総合研究   5 ( 1 ) 143 - 160  2004年

  • 近世ロンドンの行政区をめぐる一資料

    中野 忠

    早稲田社会科学総合   5 ( 2 ) 53 - 63  2004年

     概要を見る

    研究ノート

    CiNii

  • 前工業化ヨーロッパの都市と農村:社会史の領域

    成文堂    2000年

  • 区審問記録―近世ロンドンの地域社会に関する一資料

    早稲田人文自然科学研究   57,pp.27-61  2000年

  • 近世ロンドンの市民と「自由」

    アジア太平洋研究センター研究シリーズ   42,pp.119-136  1999年

  • 巨大都市ロンドンの勃興

    刀水書房    1999年

  • ロンドンの徒弟暴動1668年―民衆文化の一齣

    歴史のなかの現代/ミネルヴァ書房    1999年

  • 17世紀ロンドンの財政史料―City's Cash Accounts 1661/2

    社会科学研究   58,pp.237-62  1999年

  • 浮浪者たちの世界(A.L.バイアー/佐藤清隆訳)

    社会経済史学   65:2,97-9  1999年

  • 17世紀ロンドン史財政をめぐる諸問題

    イギリス中世史研究会    1999年

  • 貧困と家族

    ソシオサイエンス/早稲田大学大学院   2  1996年

  • フォーラム

    比較都市史研究/   14;2  1996年

  • イギリス近世都市の寡婦たち

    早稲田社会科学研究   52  1996年

  • 近代化への道

    西洋経済史(岡田泰男編著)/八千代出版    1995年

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特別研究期間制度(学内資金)

  • 近世イギリスの都市化過程に関する研究

    2001年03月
    -
    2003年03月

    イギリス   ロンドン歴史研究所

特定課題制度(学内資金)

  • 18世紀イギリスにおける消費文化とアーバニズムの展開

    2010年  

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    本年度は研究課題に関する研究協力者との共同研究を進めるとともに、研究代表者は18世紀イギリスの消費と都市文化の中心となるロンドンについて、次のような研究を進め、成果をあげた。 ① 都市の市民権と自由。19世紀の地方自治の熱烈な擁護者だったトルミン・スミスのロンドンに関するパンフレットを中心に、都市と自由をめぐるイギリスの政治文化について考察した。中世以来、都市社会の中心的構成員は各種のギルド(カンパニー)に帰属するフリーメンだとされるが、スミスはそれが本来の「市民」とは別のものであることを強調する。本研究によって、イギリス、特にロンドンの「アーバニズム」を支えた独特な歴史的・文化的・政治的基盤の一端を解明することができた。 ② ロンドンの地域社会。ロンドンは実に多様な地域社会の組み合わせからなる。今年度は特に、17世紀後半のロンドンの西部(ウェストエンドの一部)の地域(聖ダンスタン教区)に焦点を絞り、課税台帳、教区簿冊、区集会議事録などの原史料を用いて、その社会的・経済的・人口学的特徴を明らかにした。この地域の特徴は、専門職の集中と住民の高い移動性にある。これを踏まえて、次にはこの地域社会がどのように統治され、それがどのような方向に変化していくかを、役職制度とそれへの住民の関わり方を通じて検討する。17世紀から18世紀にかけてのロンドンの役職制度と役職忌避の問題は、2010年7月の「比較都市史研究会」400回記念シンポジウムで報告し、その詳細は2011年9月の会誌に掲載される。 本研究課題に関する研究協力者との研究成果は、2010年度に行なった社会経済史学会全国大会でのパネルディスカッションをもとに、現在『18世紀イギリスの「都市ルネサンス」―都市空間の再構築―』というタイトル(仮題)の著書(執筆者9名)を刀水書房より2011年度中に刊行すべく準備を進めており、研究代表者も18世紀の都市化と消費文化についての展望を書くことになっている。

  • 18世紀イギリス都市における市民的社交圏の形成-地域社会、消費文化、貧困-

    2005年  

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    本研究は18世紀イギリスの都市史、社会経済史にかんするより広範な共同研究の準備を整えるためのものである。この共同研究の出発点となったのは、早稲田大学を拠点に全国7大学の若手研究者を中心に行っている「長期18世紀社会経済史研究会」である。「市民社会」の形成期でもあるイギリスの18世紀は、わが国の社会経済史では、産業革命とその準備段階の時代として研究されてきた。しかし近年、産業革命そのものの見方に大きな修正が加えられてきたことに加えて、18世紀の社会と経済を、より長期的で多面的な角度から見直す動きが盛んになっている。研究テーマは、貧困と慈善、移動とアイデンティティ、消費文化と都市エリート、地域社会のガヴァナンスと国家形成、帝国とエスニシティ、公共性と市場、ジェンダー、家族と子どもなど、一人の研究者では捉えきれないほどの広がりを見せている。共同研究では参加者それぞれの専門的な立場から新しい研究成果を吸収しつつ、市民的社交圏という概念を手がかりに、18世紀のイギリス社会像を再構築する試みを続けている。本年度は次のような活動を進めた。(1)研究会: 2005年度は、7月、12月、3月の3回、早稲田大学で開催し、研究報告とディスカッションを行った。報告テーマには次のようなものがある。「近世イングラント地域社会のガヴァナンス」「18世紀イギリス地方都市のフリーメン」「イギリスの実業教育振興活動に関する史的考察」「18世紀における北太平洋毛皮事業と英露貿易」「近代イギリスにおける都市市場の展開と変質」など。これらの報告は専門誌、各大学の紀要などに発表された(もしくは刊行予定)。(2)合宿: 9月下旬、箱根にて1泊2日の研究合宿を行い、参加者の報告をもとに科研費へ共同研究の申請を行うための全体プランの準備と調整を行った。また共同研究の作業の一貫として、18世紀に関するデータベースを構築することが合意された。(3)データベース:その最初の試みとして、ロンドンとキングス・リンのフリーメン登録簿の入力をほぼ完了した。また1793-1798年の商工人人名録(全9巻)を本研究費で購入し、その入力の準備も開始した。

  • 近世ロンドンにおける人の移動と社会関係

    2002年  

     概要を見る

    16世紀から19世紀にかけ、ロンドンは5万程度の中世都市から100万人の大都市へと急成長を遂げ、ヨーロッパ史上例のない急激な都市化を経験した。少なくともこの都市化の初期の局面では、前工業化都市特有の高い死亡率のため、ロンドンは大量の移民を必要とした。その構成員がたえず交替するという意味で、この時期のロンドンはイギリスのどこよりも高い回転率turn-over rate、移動性をもった流動的社会だった。だがその一方で、この間のロンドンの地域社会は相対的に安定した機能を果たし続けていたといわれている。本研究の目的は、この一見、両立しがたいように見える高い移動性と地域社会の安定を整合的に説明する諸要因を明らかにすることである。今年度の研究では、課税の記録を用いて、この問題に接近した。 17世紀末には多数の直接税が課され、ロンドンに関してもそのために作成された大量の記録が残っている。本年度の研究では、これら課税にあたって誰が徴収役を勤めたか、という事実に焦点を当て、シティの中心部の一地域(Cornhill Ward)と郊外の代表的地域(St Dunstans in the West)を事例にとりあげながら、移動と地域社会の問題を具体的、実証的に分析した。 暫定的な結論の主なものは次の通りである。1)直接税を徴収するための専門的な徴税役は存在せず、当該地域の住人が原則として交替でこれを勤めた。2)徴税役を勤めたのは、経済的地位も社会的地位も特別に高くも低くもない、平均的な住人だった。3)徴税役は比較的若い、ないしは比較的最近の移住者が勤める傾向があった。4)彼らの多くはその後もそれぞれの区に残って、地域の役職を経験した。5)1666年の大火は地域社会の住民構成に大きな変化をもたらしたが、その影響は一時的で、70年代後半以後は、徴税役を経験するような住人は比較的長く同一地域に住みつづける傾向があった。6)高い移動性をもったのは、この住人グループの上(例えばジェントリや最富裕商人)または下の層(貧民)に属していたと推定される。7)地域社会の安定性を支える力となったのは、徴税役を勤めるような定着性をもった住人グループの存在であった。

  • 近世ロンドンの地域社会に関する基礎的研究

    2000年  

     概要を見る

     急速な都市化を経験した近世ロンドンに関する最近の研究は、ロンドンという巨大都市が、区、教区、あるいは近隣社会といった地縁的組織、およびギルドのような職能団体など、さまざまな「下位構造」もしくは部分共同体の編み合わせからなる多元的社会であったことを強調する。本研究はこうした動向を踏まえて、近代社会の誕生にあたって極めて大きな歴史的役割を果たしたロンドンを、それを構成する地域社会の視点から捉えなおそうとする試みである。ロンドンには100を超える数の教区があり、それぞれが独自の特徴をもっている。しかも区や教区に関してはGuildhall Library(ロンドン)を中心に膨大な史料が残されており、特定の地域社会に研究の焦点を絞るためには、史料の残存状況、および史料の性格・内容に関する綿密な調査が必要である。本年は、シティ内の富裕な教区と貧しい教区、市壁外の教区というタイプの異なる地域を比較するのに適切な教区はどれかという観点にたって、この基礎的な作業を中心に研究を進めた。マイクロフィルム、および現地での調査の結果、St Dunstan in the Westをはじめとする三つの教区が史料の面で有望であることが判明し、現在、それぞれの教区の教区会記録、会計簿、貧民調査、住民リストなどの史料の転写・分析を進めている。現段階の分析結果をみても、これら教区のあいだでは、人の移動(turn-over)にはかなりの違いがあったことがわかる。この違いが、それぞれの地域社会におけるアイデンティティのあり方とどう関係していたかという問題を明らかにすることが、当面の課題である。その成果は近日中に口頭発表のかたちで明らかにする予定である。本年はまた、都市財政のあり方の分析を通じて、ロンドン自治体政府が地域社会とどういう関係にあったかという問題を解明することも平行して行った。その成果の一部は『紀要』に報告しておいた。

  • 王政復古期ロンドンの都市財政に関する研究

    1998年  

     概要を見る

     本研究は、17世紀ロンドン市の財政に関するより包括的な研究の一環として、王政復古期に前後する時期の現金勘定報告書(Cash Account)と呼ばれる未刊行一次資料の解読と分析を中心に進めてきた。成果は以下の通りである。(1) Cash Accountは膨大な量の記録であり、わが国ではほとんど知られていない。きわめて貴重な情報を含むこの資料をわが国に紹介することは大きな意義があると考え、一部を転写し、その要点を整理して、『紀要』に紹介した。(2) Cash Accountは、当時の会計簿でも一般的であった「責任賦課・責任解除」の方式で書かれており、収入役にとっても年々の責任額を明らかにするためのものであって、都市の財政状態そのものを記録することを目的とするものではなかった。しかし補足的資料を用いれば、財政の概要を知ることができる。(3) 1653年の責任賦課額はおよそ4.8万ポンド、責任解除額は5.4万ポンドであったが、1670年にはそれぞれ10.6万ポンド、10.3万ポンドとほぼ倍増し、ロンドン市の財政の規模が大幅な拡大傾向にあったことがわかる。しかし賦課額の増加はもっぱら、市の管理する孤児財産や借入金の増額によるものだった。解除額の増加も借入元本や利子の返済額の増加によるところが大きい。(4) 1660年代前半には改良の兆しの見えた財政が急速に悪化していく直接のきっかけとなったのは、1666年の大火である。それ以前にはせいぜい3000ポンドであった臨時事業支出が1.5万ポンドにも達するようになったことが、それを端的に物語っている。(5) Cash Accounts以外の史料の分析、史料のデータ・ベース化等の作業も引き続き行っているが、その成果は順次公表していく予定である。(6) なお、財政状況は当時のロンドン市が直面していた社会・経済状況のなかで評価されねばならない。そのために王政復古期のロンドンに関する研究サーヴェイし、論文として刊行した。

  • 王政復古期ロンドンの政治文化

    1997年  

     概要を見る

    王政復古後のロンドンの市政は、ホイッグとトーリの二つの党派抗争により特徴づけられるようになる。この抗争のなかで、教皇焼きや市長就任行列、反カトリック・半外国人抗議などの政治的デモンストレーション、コーヒーハウスでの論議、あるいは徒弟暴動や織布工暴動などの、さまざまなタイプの政治文化が展開された。本研究では、これら政治文化そのものの内容を詳細に記述するよりも、それに対しロンドンの民衆がどのように関わったかに焦点をしぼって分析した。その際、エリザベス長期ロンドンの「安定性」を巡る最近の論争が提起した問題を踏まえて、議論が進められる。 同時代に発刊された様々な印刷物の分析を中心に、人工、経済、賃金、ギルド、犯罪、貧困と救貧制度、いわゆる「中間階層」の問題などに関する最近の研究を援用しながら、さしあたり次のような結論に達することができた。① 人口増加の持続にも関わらず、王政復古後の一世紀足らずの間、ロンドンにおける実質賃金の水準は1世紀以前よりかなり高く、下層の市民も総体的に高い生活水準を享受することができた。② この時代にはまた、賃金生活者の上に、「中間層middling sort」と呼ばれる独立の営業者の厚い層(全世帯の四分の一から五分の一)が形成された。つまり、ロンドンは富裕なエリートと貧しい民衆に二極分解したわけではなかった。③ エリザベス朝期と比べて、ギルド制度は17世紀後半には後退の様相を見せながらも、なお郊外を含めたロンドンで強い影響力を保っていた。またピューリタニズムにより弾圧された民衆文化も、王政復古期以後に復活した。④ 政治文化の面でもロンドンの住人はエリートと民衆の二つに両極分解したのではなかった。この時代に登場する「モッブ」も、エリートに対立する無秩序な大衆の集団ではなく、しばしば党派抗争への民衆の参加を求める政治エリート自身により組織されたものだった。⑤ 民衆の政治文化への参加や正当化の背景には、16世紀以来のロンドンにおけるギルド民主主義、民衆文化、治安維持機能の分担などの伝統があった。研究成果の発表1997年5月(口頭発表)「王政復古期のロンドン―一つの問題提起」(社会経済史学会全国大会(於け東北大学))1998年9月「王政復古期ロンドンの危機と安定」(三好洋子・坂巻清編『巨大都市ロンドンの成長(仮題)』)(刀水書房)

  • 近代イギリスにおける消費生活と文化

    1996年   安吉 逸季, 曽我 昌隆, 木名瀬 亘

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     本研究は、16世紀から19世紀のイギリス社会における消費生活と文化の関係を実証的に解明することを目的とする。財貨(モノ)だけではなく各種のサーヴィスや情報をも含め消費の歴史を考えること、消費を「文化」の一様式としても捉えること、新しい消費文化の展開を都市化の過程と関連ずけて論じてみること、これがこの共同研究の出発点であった。 まずこのテーマに関連したこれまでの研究成果をそれぞれが分担してサーヴェイするとともに、ロンドンを中心とする17、18世紀の新聞広告に見られる商品の種類、商工人名録・住人表・投票人リスト・死亡率表・遺産目録等から窺われる人口・社会構成・職業分布、動産所有状況、Early English Books の総カタログから推定される印刷物の時代別の傾向等を分担して分析・解明した。その結果、とりあえず次のような結論に達した。 (1)イギリスにおける消費文化の歴史における最初の大きな転換点は、17世紀後半から18世紀20年代にかけてのロンドンに求められる。重要な契機のひとつは、ジェントリ階層の居住地区であるウェストエンドの成長である。これに伴い、法律、医療、娯楽、家事奉公などのサーヴィスに対する「市場」が形成されるとともに、郊外における絹織物等の新しい手工業製品の市場が生まれた。 (2)16世紀には男性が多かった都市人口の性比は、17世紀後半に逆転した。そのため「家庭」「家事」あるいはとくに女性をターゲットとした財やサーヴィスの市場がしだいに形成され、マーケットの feminization とでも呼べる現象が出現しはじめた。 (3)ロンドンに形成されはじめた新しい消費文化は、17世紀後半以降、拡大に向かう地方の中心都市へ伝播していく。それを受け入れる共鳴盤となったのは、ヴィクトリア朝期の「中間階級」に先立って、地方都市で成長してきた「中位階層 middling sort of people」と呼ばれる人々である。 以上を踏まえて、次の二つを中心に共同研究作業を行った。 (1)地方都市における消費文化の具体的展開を解明する。事例として北部の都市ニューカスル・アポン・タインを取り上げ、市民が所有する動産の種類、額、部屋数、用途等を明らかにできる遺産目録と遺言書の分析を進めた。Durham University には数万通を超えるこれらの史料が未整理のまま保管されており、その中から関連するものをピックアップし、1620年代までのものについてはデータベース化と分析をほぼ完了できた。だがそれ以後のものについては、現在もマイクロフィルムにより解読・分析を継続している。 (2)18世紀末から19世紀にかけて商業的成功を収めた文学を中心に約5000のテキストについてデータベースを作成し、消費、市場、文化、余暇といったキーワードと、それに関連する二次水準の語・語句のリストを作った。また全作品の語・語句の標準頻度表も作成し、それらを相互に比較対照することによって、印刷物のレベルにおける新しい消費生活や物質文化の浸透を、数値的に表わすことができた。本研究課題について収集したデータの量は当初予測したよりも大幅に多くなったため処理の作業に時間がかかっているが、これらのデータ分析が終了しだい、最終的な結論を出す予定である。

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