2024/12/22 更新

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キタガワ マサヤス
北川 正恭
所属
政治経済学術院
職名
名誉教授
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学歴

  •  
    -
    1967年

    早稲田大学   商学部  

  •  
    -
    1967年

    早稲田大学  

所属学協会

  •  
     
     

    日本公共政策学会

  •  
     
     

    Public policy Studies Association

 

書籍等出版物

  • 生活者起点の「行政革命」

    ぎょうせい  2004年

共同研究・競争的資金等の研究課題

  • マニフェスト

  • Manifesto

Misc

 

特定課題制度(学内資金)

  • 被災地と支援団体を繋ぐマッチングシステムの構築-自治体統治の水平展開モデルの提案-

    2011年  

     概要を見る

     2011年3月11日に発災した東日本大震災では原発施設から漏れる放射能に苦しみながらではあるが、世界の人々が驚くほど被災地の人々の共助の姿勢や迅速な復旧・復興への取り組みがみられた。しかし、多くの課題にも課題に直面した。例えば、瓦礫処理のために必要な軽トラックや一輪車などの道具や人員が決定的に不足した。反面、世界中から支援が届き、食料や毛布などは充足しているにもかかわらず、その後も食料や毛布などの物資ばかりが届き保管場所などに苦慮した。また、県が管理する仮設住宅の建設も進まなかった。被災した自治体は、こうした現在必要とする支援をどこへ情報発信し支援を要請すればよいか困惑している。一方、NPOなど支援団体や民間企業も現地の状況把握ができないため、何を何処へどの程度支援してよいのか判らず動けないでいるのが現状であり、双方の情報共有ができていないが故に効率の良い復旧活動に支障をきたしている。被災地は今、スピード感、即効性のある政策の実行を求めている。 今回、発災時から連絡を取り合っている福島県相馬市と連絡を密に取り合い、そうした課題解決にむけた活動を行うとともに繰り返しこのような非効率な支援とならないシステムの構築にむけ相馬市ならびに被災した自治体へヒアリング調査を行い、相馬市を事例に自治体独自のネットワーク充実の研究を行った。 発災後、私は相馬市復興顧問会議の座長を拝命することとなった。その時期に大手住宅供給メーカーの社長と話をする機会を得た。それによると、政府より被災地内に1000戸の仮設住宅建設の通知が来たそうであるが、何処へ建築すればよいかについては指示がなく、情報入手、政策判断に迷いをきたしているという。一方、相馬市では一刻も早く仮設住宅の建設を望んでいるが、仮設住宅建設の権限は福島県に在るため県の決定が下りない事には仮設住宅が設置できずに時間だけが経過する状況が続いていた。そこで、住宅メーカーと相馬市長とを繋ぎ会談の場を設定したところ、相馬市が単独で仮設住宅ではなくパーマネント住宅を建設する計画が進行し始めた。その結果、被災したどの地域よりも相馬市は先んじてパーマネント住宅が建設され2012年4月27日に仮設住宅からの移住が開始される。それは、個別住宅や単なる集合型住宅ではなく福祉設備を兼ねた集合型長屋とした。阪神淡路大震災後に高齢者の孤独死が問題となったが、その事例から学び、孤独死を防ぐために長屋とし、食事は長屋居住者が集合して摂るよう食堂型とするなどした。 この一つの事例をきっかけに、相馬市が独自に復旧・復興へ向け必要とする物資や政策支援を民間企業やNPO等の団体、他の自治体へ情報発信するシステム構築をしようとする動きに変化してきた。相馬市の要望と支援者側の供給を的確に効率よく合致させていくためには、被災した自治体側・支援者側の双方が情報共有できる仕組みが必要となる。そこで、相馬市をモデルとしweb上でマッチングサイトを開設し円滑な支援体制を構築することとした。全国の首長や議会など自治体、NPOや市民団体、支援企業団体やメディアなどへサイトの告知を図り、相馬市でのモデル構築後、東北地方の被災した自治体へサイトへの参加を募集していく計画を立てた。 ところが、発災後、数回の会議を重ねていく中で立谷秀清市長から「緊急時に威力を発揮するのはデジタルではなくアナログの手法だった」と指摘を受けた。例えば、避難所での情報収集や連絡手段はホワイトボードを使用するのが最も効率よく効果的であったというのだ。同様に、相馬市と他団体との連携も「デジタルではなく直接の対談が最も真意を伝えやすく相互理解が早かった」と言われた。加えて、震災直後には簡易防災無線以外のデジタルの通信手段はすべて使用できなくなったため、緊急時にはアナログ通信のほうが確実であると自らの経験から指摘があった。 このような意見を受け、相馬市以外の被災地の状況も調査したところ市役所機能が壊滅状態に陥った自治体、情報通信網が断たれ自治体外部との連絡が取れずに孤立した自治体などの事例が多数存在した。そして、そのすべての自治体からも相馬市長と同様の声を聴くこととなった。 こうした意見を集約し、問題の本質を追求していくと自治体がその機能を担保していくためには国内の他の自治体との日常の行政機能の連携が必要であることが明らかとなった。従来は、国→県→市町村の流れの中での支援体制、いわゆる縦構造の中央集権型の支援体制であった。しかし、今回の震災直後に出てきた取り組みは、自治体と自治体、自治体と企業など横のネットワークが機能していることが目立っている。この水平展開やネットワークの構築は、自治体がその機能を取り戻していくためにとどまらず、新しい自治の在り方、新しい公共の在り方を構築していく芽生えになる可能性を内包している。これまで、日本の統治システムは中央集権型、国・県・市町村の縦構造であった。また、広域連合などの取り組みや道州制なども近隣エリア内での取り組みや議論であった。今回、そうした近隣エリアの自治体が全て機能不全に陥ったことを鑑みると道州制枠をも超えた自治体間の横の連携が求められる。これまで、遠方の自治体との連携には姉妹都市協定、防災協定や教育・文化交流などがあったが、姉妹都市や防災協定を結んでいる自治体間には震災直後から強い支援連携が見られた。しかし、今回の震災被害の影響は、住民基本台帳の喪失やコンピューターによる個人情報管理システムの崩壊など単なる防災協定や姉妹都市協定にとどまらない、行政事務のバックアップをはじめとする支援体制が必要となることが明らかとなった。また、自治体間連携にとどまらず、自治体と民間団体との連携、民間団体が互いに連携することで自治体を支援する活動にも大きな成果が見られていることから、中央集権型の縦の統治システムではない横のネットワーク構築が今後の新しい自治の在り方への一つの提案となろう。 そこで、私が所長をつとめるプロジェクト研究機関であるマニフェスト研究所は、これまでに全国160余名の首長、600余名の地方議員と政策の情報交換、連携を図ってきたことから、こうしたネットワークを活かし、広範囲に支援を呼びかけた。これに呼応して多数の自治体や企業が支援に乗り出した。 避難所に避難している市民に対し国などから助成制度が設けられたが、まず最初に取り掛からなければンらなかったことは、本人確認ならびに罹災証明の発行であった。そこで、相馬市が導入していた統合型GISを活用することとした。GISに住民基本台帳と被災者情報を入力し、住民情報や被災者情報を一元管理することとした。これには膨大なデータ入力事務が発生するため、GISを先進的に活用している新潟市に支援を要請し、新潟大学の協力を得て約1か月で相馬市の全情報を入力することができた。この情報と避難所に居る避難民との情報を突合し罹災証明書の発行を行った。GISを使用したことで東北の被災地の中では最も早く罹災証明を発行できた。 つぎに、復旧に向け膨大な行政事務が発生したことから市役所職員の事務処理能力に限界が見え始めた。市役所職員も発災当日から昼夜を問わず自宅に帰らず泊まり込みで作業をしてきたが、精神的にも肉体的にも疲労困憊の色が強く見え始めた。そこで、全国の自治体へ呼びかけ、派遣期間を設定し職員派遣を実施していただいた。 また、大震災の体験をした相馬市の事例を被災していない他の自治体とも情報共有し災害に備えることが重要であることから、発災直後から相馬市の取り組みを記録することとし、2012年1月26日に早稲田大学にて全国の自治体へ呼びかけ震災シンポジウムを開催した。当日は立谷相馬市長にも出席いただき、相馬市の経験から日常の備えをどのようにしておくべきか講演いただいた。その後、相馬市と共同で冊子として取りまとめ、自治体へ配布した。 本研究では、相馬市の事例からマッチングシステムを構築する事例を通じ、東北あるいは日本全域の自治体運用における今後の展開を研究することを冒頭の目標としていたが、研究を進めていくにあたり、その前段階となる国、県、市町村の縦の連携ではなく、自治体間の横の連携を日常からどのように図り、強化していることこそ大震災時は効果を発揮することが明らかになった。 今後は、今回の経験をもとに日本を縦断するネットワークの構築ができるよう活動を継続していく。例えば、北海道から九州・沖縄まで協力関係を構築できる複数の自治体が同時に防災協定を締結し、平時から情報交換などを密にとりネットワークを強化しておく取り組みなどである。法律や諸制度等変更の要請も念頭に置きながら、新しい自治体間連携の水平展開モデルの構築へ取り組みたい。 

  • ローカル・マニフェストの評価手法

    2007年  

     概要を見る

     昨年2月に公職選挙法が一部改正され、部分的ではあるが、首長選挙において、マニフェストの配布が解禁となった。そのため、昨年4月に行われた統一地方選挙の首長選挙では、多数のローカル・マニフェストが作成された。また、いまだ公職選挙法では認められていないものの、首長のローカル・マニフェストに触発される形で、地方議員のローカル・マニフェストも多数作成された。こうしたローカル・マニフェストの新たな展開については、マニフェスト・データを収集し、日本インターネット新聞社のHP上で成果を公表している。  本研究では、こうした制度変更を念頭に置き、統一地方選挙における知事選挙のマニフェストの評価を行った(選挙前における事前評価)。その結果、当選した13人の知事の内、大分県を除くすべての知事がマニフェストを作成したことが明らかになった。ただし、その内容を具体性、時間軸、コスト、わかりやすさ、妥当性の基準で分析してみると、松沢成文神奈川県知事のようにかなりレベルの高いマニフェストから、マニフェストという名前は付いているものの、実際にはほど遠いものまで多種多様であった。この分析は、一つの選挙を対象としたのではなく、複数の選挙を対象に当選した候補者のマニフェストからマニフェスト型政治のモデルを検討するという点で意義があった。 また、昨年4月10日をもって2年が経過した小林正則小平市長のマニフェスト評価も行った。本評価は、小林市長のマニフェストに掲げられた個別の項目を時間軸の基準で分析し、A達成できたもの、順調に進んでいるもの(58%)、Bやや遅れて達成したもの、やや遅れて進んでいるもの(30%)、Cかなり遅れて進んでいるもの、方針を転換したもの(12%)という結果になった。本評価は、早稲田大学マニフェスト研究所が第1回ローカル・マニフェスト推進大会で行ったものを除けば、東京都下で行われたはじめてのマニフェストの中間評価であること、マニフェストが行政の政策の一部として着実に定着していることなどが意義となった。(評価結果については、以下参照。http://www.city.kodaira.tokyo.jp/kurashi/004/004544.html) 最後に、九州地域で進められているローカル・マニフェストの評価活動のヒアリングを行うために、神吉信之ローカル・マニフェスト推進ネットワーク九州代表、古川康佐賀県知事、日本青年会議所九州地域佐賀ブロックの担当者へのヒアリング、熊本県知事選挙の公開討論会の調査を行った。ヒアリングからは、これまでの一般的な評価手法からさらに一歩先の住民と行政を結ぶマニフェストの評価を検討していること、公開討論会の調査からは、公開討論会の設問に新しい評価項目が必要なことなどが明らかとなった。こうした課題については、2008年度以降に行う研究で引き続き検討していきたい。

  • ローカル・マニフェスト評価モデルの確立

    2005年   石田光義, 江上能義, 岡沢憲芙, 片木淳, 小林麻理, 筑紫哲也, 塚本壽雄, 藤井浩司, 棟近雅彦, 山田治徳, 寄本勝美

     概要を見る

     2003年統一地方選挙から2年が経過した2005年は、4年間のマニフェスト・サイクルの折り返し地点にあたる。そこで、本研究は、ローカル・マニフェストの中間評価モデルの確立を目的とした。 わが国におけるマニフェストの歴史はまだ始まったばかりであり、全国各地で様々な試みがなされている。しかし、こうした流れをふまえた上での、マニフェストを対象とした研究成果はほとんどみられず、理論が現実から大きく離されている。そこで、本研究では、これまでの全国各地の最新動向についての資料を収集しながら、マニフェスト先進自治体といわれる岩手県、埼玉県、神奈川県、福井県、佐賀県知事のマニフェストを対象とし、ローカル・マニフェストの評価手法の確立を検討した。 評価手法としては、これまでの行政評価の手法などを参考に、いくつかのものが考えられるが、中間評価モデルである以上、マニフェストがもたらした成果にまで踏み込んで検討することは困難である。したがって、本評価モデルでは、「外部からの検証可能性」に焦点を当てた。これは、マニフェストは、住民との契約である以上、適切な情報提供が必用不可欠であり、そのことによってマニフェストサイクルがを動いていくからである。また、その際には、全国の様々な評価事例と比較しながら、個別評価ではなく、共通の評価手法となるよう心がけた。 本研究で確立した評価手法では、①情報の適切性、②情報内容の適切性を重視し、5県知事のマニフェストを評価を行った。その結果、マニフェスト先進自治体といわれるだけあり、マニフェストを県行政へ落とし込み、それを実行しようと得る取り組みには、遜色がなく、高い評価結果となった。その結果、マニフェストは、従来型の「選挙までの公約」とは明らかに異なり、次の選挙までに、マニフェストサイクルを回すことによって、選挙で掲げた政策を継続して実行すること、それによってこれまでの縦割りの行政構造からマネジメント型の行政構造へと大きく変化していることもあわせて明らかになった。ただし、②の情報内容については、不十分な点が多く、今後の要検討課題であることが明らかになった。 次年度以降の課題としては、本研究で確立した評価モデルを他方自治体にもあてはめるとどういった評価結果が出るのか、マニフェストサイクルの完結に向けた評価手法はどういったものになるのか、という点があげられる。マニフェストサイクルの完結となる2007年4月までの継続的研究が必要である。