2024/12/21 更新

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イトウ ヒロシ
伊藤 洋
所属
教育・総合科学学術院
職名
名誉教授
 

特定課題制度(学内資金)

  • 旧帝国劇場復元研究―復元考察と復元図面の作成を中心に―

    1999年   中川 武, 西本 真一, 入江 正之, 古谷 誠章, 岡室 美奈子, 西川 良和

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     明治44年に開場した帝国劇場は、日本で初めての本格的な西洋劇場として、その後の演劇界、特に劇場建築において大きな影響を及ぼしたにも関わらず、関東大震災において崩壊し、建築の詳細はあまり知られていない。 本研究では、この旧帝国劇場をめぐって、建築史と演劇史の双方の視点から考察し、月例の共同研究会のほか、それぞれ分科会を行った。建築史の研究会では図面や写真等の建築資料を可能な限り収集し、詳細に比較検討を行った上で、新たな復元図面を作成した。天井壁画の下絵のコロタイプ写真を調査することが出来、それらによって天井壁画の構成を復元することができた。また、鉄骨構造も近代建築史の事例から明らかにすることができた。演劇史の研究会では、まず、帝国劇場開場前後の記事を収集し、劇評家や役者の帝劇評から、帝国劇場の評価を考察した。さらに、劇評を用い、帝劇の大きな舞台機構や照明設備による新しい演出の演劇史的意義について調査を行った。電気の照明を大量に用いた明るい舞台の完成は、特に舞踊において、以後の舞台演出に、大きな影響を与えている。月例の共同研究会では、これらの成果を互いに報告し、一定の成果をあげることができた。また、演劇博物館で購入した個人コレクター旧蔵の図面をはじめ、雑誌記事、帝国劇場のプログラム、写真帳等、帝国劇場に関する種々の資料を収集し、双方で活用することができた。 当初は、期間内に演劇博物館の別予算で模型を制作し、研究成果として、収集した資料を掲載した『旧帝国劇場資料集』という報告書を発行する予定であったが、想像以上に詳細な図面を作成できたことに伴い、図面完成が1999年度末に遅延し、図面作成のための人件費が多く必要であったこと、さらに当初の予算では詳細な部分の復元が不可能であったため、模型制作は開始すらできなかった。しかし、現在では、2000年度建築史研究室の卒業論文ゼミで旧帝国劇場をテーマとして継承し、模型制作を行える見通しとなっている。今後、本研究組織で模型制作の監修をつとめ、演劇博物館の学術フロンティア一般研究費の助成を受けて、研究会を継続し、模型と報告書をまとめる方針である。