Research Projects
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ノン・フィルム・マテリアルを活用した日活ロマンポルノ摘発事件に関する実証的研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
Project Year :
2020.09-2023.03鳩飼 未緒
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本研究は日活ロマンポルノの最初期に起きた摘発事件に着目し、公権力の介入という事態がこの成人映画路線の存続にもたらした影響を、ノン・フィルム・マテリアル(映画関連資料、以下、NFM)の精査を通じて実証的に解明するものである。これにより、成果が乏しい映画史的観点からのロマンポルノの体系的研究へとつなげるとともに、スポーツ新聞やプレスシート(映画作品のクレジット、解説やあらすじ、宣伝惹句等が記載された宣伝資料)といった、従来はあまり活用されてこなかった種類のNFMを用いた新たな映画学の研究モデルを提示することを目指している。
今年度は、検証予定のNFMのうち、スポーツ新聞の収集を終えることができた。プレスシートについても収集を進めているが、年度内に作業を終えることができなかったため、2022年度前半での完了を目指している。
一方で、当初の計画にはなかったロマンポルノについてのアンソロジーに共編著者として参加することが正式に決定し、2022年度初秋頃の刊行を目指して企画を進めている。今年度はこのアンソロジーに掲載予定の日活関係者計6名(現役社員3名、プロデューサー1名、俳優1名、監督1名)へのインタビューを実施し、新事実を含む貴重な証言得ることができた。
成果発表については、2021年8月、国際学会International Conference of the European Association for Japanese Studiesにおいて"Sexism/Feminism of Kumashiro Tatsumi: His Nikkatsu Roman Porno Years"のタイトルで口頭発表を実施した。 -
「性の芸術」の転換期としての1970年代日活ロマンポルノ研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
Project Year :
2017.04-2019.03鳩飼 未緒
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本研究は、1971年から1988年にかけて製作・公開された日活ロマンポルノ(以下、ロマンポルノと略記)の映画作品の中でも、1970年代に公開された作品を考察の対象としている。今年度は主に以下3点の考察をまとめた。
①「日活ニュー・アクション」とロマンポルノの関係性:日活ニュー・アクションからロマンポルノにかけて活躍した監督長谷部安春を取り上げ、日活がニュー・アクションというパッケージをロマンポルノにおいて再利用し、観客へのアピールを試みた戦略の変遷と、この戦略に伴ってロマンポルノに挑戦し、適応した長谷部の試行錯誤の過程とその限界について論じた。
②劇画とロマンポルノの関係性:『天使のはらわた 赤い教室』(1979年)を論じ、この作品が、原作者石井隆の劇画を物語だけでなく視覚的な面でも巧みに流用していることを明らかにした。さらに、その流用によってこそ、石井の劇画をロマンポルノ向けのパッケージとして改変することに成功し、本作がその後の「天使のはらわた」シリーズの方向性を決定づけたことも確認した。
③ロマンポルノにおけるスター女優:『花と蛇』(1974年)を論じ、日活が『花と蛇』というSM小説のテクストのアダプテーションを行うとともに、本作が初主演の谷ナオミに関して、ピンク映画やSMの愛好家の間で固まりつつあったスター・イメージも併せてパッケージの一部として引き受けることによって、谷を起用したSMものをロマンポルノの専売特許たるパッケージに作り変えた経緯を考察した。
なお、採用期間中の発表は叶わなかったものの、ロマンポルノが一から新しいアイデアを発明することによってではなく、むしろ、映画をはじめとする種々のメディアに日活が見出した「パッケージ」の「再利用」によって存続したという主張のもとにこれまでの研究成果をまとめた博士論文を執筆中であり、早急に完成させる所存である。
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