2024/03/28 更新

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チノ タカヒロ
千野 貴裕
所属
教育・総合科学学術院 教育学部
職名
准教授
学位
PhD in Political Science ( University College London )
プロフィール

1982年生まれ。政治思想史・政治理論専攻。主たる研究テーマは、グラムシ、モスカ、ストゥルツォ、クローチェ、ゴベッティらを中心とする19-20世紀のイタリア政治思想史。

経歴

  • 2020年04月
    -
    継続中

    早稲田大学   教育・総合科学学術院   准教授

  • 2017年04月
    -
    2020年03月

    早稲田大学   教育・総合科学学術院   専任講師

  • 2016年04月
    -
    2017年03月

    日本学術振興会   特別研究員PD

  • 2014年04月
    -
    2016年03月

    早稲田大学   政治経済学術院   助教

  • 2015年03月
    -
    2015年08月

    Max Weber Fellow, European University Institute

  • 2013年08月
    -
    2014年01月

    Visiting Researcher, Department of Political Science, University College London

  • 2014年04月
    -
    継続中

    早稲田大学   イタリア研究所   研究員(2016年4月-2017年3月は招聘研究員)

  • 2013年11月
    -
    2017年03月

    国際基督教大学   社会科学研究所   研究員

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学歴

  • 2009年09月
    -
    2013年07月

    PhD Student, Department of Political Science, University College London  

  • 2008年04月
    -
    2009年07月

    早稲田大学   大学院政治学研究科   博士後期課程  

  • 2005年04月
    -
    2007年03月

    早稲田大学   大学院政治学研究科   修士課程  

  • 2001年04月
    -
    2005年03月

    国際基督教大学   教養学部   社会科学科  

所属学協会

  •  
     
     

    社会思想史学会

  •  
     
     

    政治思想学会

  •  
     
     

    日本政治学会

  •  
     
     

    日本哲学会

研究分野

  • 思想史 / 政治学

研究キーワード

  • 政治思想史

  • イタリア政治思想史

  • グローバル思想史

  • 比較思想史

  • 政治理論

  • ヘゲモニー

  • 市民社会論

  • 政治と宗教

  • リソルジメント

  • リベラル・カトリシズム

  • 社会的流動性

  • 南部問題

  • グラムシ

  • モスカ

  • ストゥルツォ

  • クローチェ

  • ゴベッティ

  • ボッビオ

  • 戸坂潤

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受賞

  • 政治思想学会 研究奨励賞

    2015年05月  

    受賞者: 千野 貴裕

 

論文

  • The Modern State and Future Society: Gramsci’s Two Conceptions of the “Ethical State”

    千野 貴裕

    The European Legacy   27 ( 2 ) 125 - 142  2022年  [査読有り]

    DOI

    Scopus

    4
    被引用数
    (Scopus)
  • グラムシアン・モーメント:グラムシにおけるヘゲモニーと市民社会を再考する

    千野 貴裕

    思想   1165(2021年5月号)   80 - 102  2021年

  • Gramsci’s Critique of Croce on the Catholic Church

    千野 貴裕

    History of European Ideas   46 ( 2 ) 175 - 189  2020年  [査読有り]

    DOI

    Scopus

  • On Guido Liguori's "Gramsci's Pathways"

    千野 貴裕

    International Gramsci Journal   3 ( 1 ) 104 - 116  2018年  [招待有り]

  • 哲学教育と大衆教育のあいだ:グラムシにおける教育改革案の再検討

    千野 貴裕

    社会科学ジャーナル   (83)   5 - 23  2017年

  • Is Western Marxism Western? The Cases of Gramsci and Tosaka

    千野 貴裕

    Journal of World Philosophies   (2)   28 - 41  2017年  [査読有り]

  • グラムシにおける二つの倫理国家概念——現代国家の分析と未来社会の予測

    千野 貴裕

    社会思想史研究   (40)   119 - 137  2016年  [査読有り]

  • Western Marxism or Marxism in the "Periphery"?: The Cases of Gramsci and Tosaka

    千野 貴裕

    Cadmus: EUI working papers   2015   1 - 29  2015年

  • アントニオ・グラムシのカトリック教会論 ――クローチェの教会批判の検討を中心に

    千野 貴裕

    政治思想研究   ( 15 ) 252 - 281  2015年  [査読有り]

  • Antonio Gramsci as an Italian Revolutionary: Gramsci's Marxism and the Crisis of Italian Democracy

    千野 貴裕

    PhD thesis submitted to University College London     1 - 270  2013年  [査読有り]

  • クローチェの『戦争論』における「政治的仕事」について:実践的歴史叙述の観点から

    千野 貴裕

    早稲田政治公法研究   ( 90 ) 17 - 30  2009年  [査読有り]

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書籍等出版物

  • シティズンシップ

    千野貴裕, 大庭大( 担当: 共訳)

    岩波書店  2023年06月 ISBN: 9784000615952

  • Gramsci on Religion: Text and Context (ed. C. Zene)

    千野 貴裕( 担当: 共著,  担当範囲: Gramsci and Religion: An Overview)

    Mimesis (forthcoming)  2020年

  • Revisiting Gramsci's Prison Notebooks (eds. F. Antonini et al)

    千野 貴裕( 担当: 共著,  担当範囲: Religion, Common Sense, and Good Sense)

    pp. 285-296, Brill  2020年

  • 社会思想史事典

    千野 貴裕( 担当: 分担執筆,  担当範囲: ヘゲモニー論, 20世紀のマルクス主義)

    pp. 622-623; pp. 640-641, 丸善出版  2019年

  • 教養のイタリア近現代史(土肥秀行・山手昌樹編)

    千野 貴裕( 担当: 共著,  担当範囲: グラムシの思想と行動)

    pp. 191-204, ミネルヴァ書房  2017年

  • 逆光の政治哲学(姜尚中・齋藤純一編)

    千野 貴裕( 担当: 共著,  担当範囲: 「自然」であるという表象 グラムシ:自然的劣等の問題化)

    pp. 97-113, 法律文化社  2016年04月

  • イタリア版「マルクス主義の危機」論争(上村忠男編訳)

    千野 貴裕( 担当: 共訳,  担当範囲: イタリアにおける理論的マルクス主義はどのようにして生まれどのようにして死んだか(B・クローチェ))

    pp. 183-250, 未來社  2013年

  • イタリア版「マルクス主義の危機」論争

    千野 貴裕( 担当: 共訳,  担当範囲: 唯物論的歴史観について(B・クローチェ))

    pp. 20-45, 未來社  2013年

  • 公共性をめぐる政治思想(齋藤純一編)

    千野 貴裕( 担当: 共著,  担当範囲: 同意と公共性:A・グラムシの市民社会論における同意の形成と解体)

    pp. 114-140, おうふう  2010年

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講演・口頭発表等

  • グラムシ研究の現在と未来

    千野 貴裕  [招待有り]

    イタリア言語・文化研究会150回記念大会  

    発表年月: 2017年10月

  • グラムシアン・モーメント:グラムシにおけるヘゲモニーと市民社会を再考する

    千野 貴裕  [招待有り]

    「来るべきグラムシ」シンポジウム(於立命館大学衣笠キャンパス)  

    発表年月: 2017年09月

  • How to Begin the Study of Global Intellectual History?

    千野 貴裕  [招待有り]

    Global Asia Workshop  

    発表年月: 2017年07月

  • 何のための平等か? 複合的平等論の擁護とその方法をめぐって

    千野 貴裕  [招待有り]

    第7回ICU政治思想研究会  

    発表年月: 2016年07月

  • Religion and Common Sense: Gramsci's Critique of the Catholic Church

    千野 貴裕

    Past & Present: Philosophy, Politics and History in the Thought of Gramsci Conference  

    発表年月: 2015年06月

  • Marxism in the "Periphery": the Cases of Gramsci and Tosaka

    千野 貴裕

    9th Social Issues for Social Sciences Conference  

    発表年月: 2015年06月

  • Gramsci and Tosaka: Marxism in the Periphery?

    千野 貴裕

    MWP Legal, Social and Political Theory and the History of Thought Thematic Group Workshop  

    発表年月: 2015年05月

  • Gramsci and Tosaka: Common Sense, Religion and Politics

    千野 貴裕  [招待有り]

    Religion, Nationalism, and Secularism in Political Modernities  

    発表年月: 2014年12月

  • グラムシにおける二つの「倫理国家」概念:「完全な国家」と「規制された社会」

    千野 貴裕

    第39回社会思想史学会  

    発表年月: 2014年10月

  • 近代国家と未来社会:グラムシにおける「倫理国家」概念を再考する

    千野 貴裕

    第134回イタリア言語・文化研究会  

    発表年月: 2014年07月

  • グラムシの宗教論:クローチェの宗教批判への応答とカトリック教会の分析を中心に

    千野 貴裕

    第21回政治思想学会研究大会  

    発表年月: 2014年05月

  • Gramsci’s Critique of the Catholic Church

    千野 貴裕

    25th Conference on Political Philosophy  

    発表年月: 2014年03月

  • How Ought We to Read Gramsci? A Defense of the Skinnerian Approach

    千野 貴裕

    SPP Political Theory Workshop  

    発表年月: 2013年05月

  • Gramsci and the Southern Question

    千野 貴裕

    SPP Political Theory Workshop  

    発表年月: 2011年11月

  • Gramsci as an Italian Revolutionary

    千野 貴裕

    SPP Political Theory Workshop  

    発表年月: 2011年03月

  • グラムシにおける政治と情念:クローチェ「政治=情念」論に対するグラムシの批判を通じて

    千野 貴裕

    早稲田大学現代政治研究所  

    発表年月: 2009年05月

  • Rethinking Gramsci’s Idea of Civil Society

    千野 貴裕

    The Waseda Society of Political Science  

    発表年月: 2009年03月

  • ベネデット・クローチェの政治思想:実践的歴史叙述の観点から

    千野 貴裕

    政治学先端研究セミナー(早稲田大学)  

    発表年月: 2008年12月

  • クローチェの『戦争論』における歴史叙述の政治思想:『歴史叙述の理論と歴史』を手がかりに

    千野 貴裕

    イタリア近現代史研究会  

    発表年月: 2008年05月

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共同研究・競争的資金等の研究課題

  • 1920-40年代日本の技術論:グローバルな知性史の観点から

    科学研究費(基盤C)分担

    研究期間:

    2021年04月
    -
    2024年03月
     

    乙部 延剛

  • 議会制の批判から擁護へ:モスカの現代的混合政体論の再検討

    科学研究費(若手研究)代表

    研究期間:

    2020年04月
    -
    2023年03月
     

    千野 貴裕

  • 宗教をめぐる政治理論の新たな課題と構想:リベラリズムとデモクラシーの再検討

    科学研究費(基盤C)分担

    研究期間:

    2019年04月
    -
    2023年03月
     

    木部 尚志

  • 自由なき状況下の自由主義:非英米圏における自由主義の展開

    科学研究費(若手B)代表

    研究期間:

    2017年04月
    -
    2020年03月
     

    千野 貴裕

  • グローバル政治思想史の構築に向けて: 20 世紀前半のイタリアと日本の比較から

    科学研究費(特別研究員奨励費)代表

    研究期間:

    2016年04月
    -
    2017年03月
     

    千野 貴裕

  • 多様な近代観による新たな社会構想の基礎付け:20世紀前半のイタリア思想の事例から

    科学研究費(研究活動スタート支援)代表

    研究期間:

    2014年08月
    -
    2016年03月
     

    千野 貴裕

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Misc

  • Book Review: Antonio Gramsci: an intellectual biography, by Gianni Fresu, London, Palgrave Macmillan, 2022

    千野 貴裕

    History of European Ideas   50 ( 1 ) 191 - 192  2024年  [査読有り]  [招待有り]

    書評論文,書評,文献紹介等  

  • グラムシは二度死ぬか:Mark McNally ed., Antonio Gramsciを読む

    千野 貴裕

    政治思想学会会報   48   3 - 5  2019年07月  [招待有り]

  • インタビュー 安保法その後 若手政治研究者の視点

    千野 貴裕

    信濃毎日新聞(2016年1月14日朝刊)  

その他

  • 市民講座分担講義

    2022年11月
    -
    2022年12月

     概要を見る

    かわさき市民アカデミー(2022年度秋期)「デモクラシーと宗教」の講義を2回担当(科研費基盤C「宗教をめぐる政治理論の新たな課題と構想」(分担)の成果公開の一端)11/30(水)「カトリック教会と近代化」12/7(水)「信仰、常識、デモクラシー」

  • 信濃毎日新聞 書評委員

    2020年04月
    -
    2022年03月
  • Coordinator and Chair

    2019年05月
     
     

     概要を見る

    Intellectual History and International Relations: Japan and Anglo-America in the Early Twentieth Century
    27/05/2019 (Mon.) University of Tokyo, Komaba Campus
    Chair: Takahiro Chino (Waseda)
    Speakers: Or Rosenboim (City, Univ of London), Atsuko Watanabe (UTokyo), Nobuo Haruna (Tokyo Univ of Foreign Studies)
    Discussants: Nobutaka Otobe (Ibaraki Univ), Satofumi Kawamura (Kanto Gakuin Univ)

  • Coordinator and Chair

    2019年02月
     
     

     概要を見る

    Waseda Political Thought Seminar
    01/02/2019 (Fri.)
    Speaker: Professor Sungwoo Park (Seoul National University)
    "Is there a concept of international justice for Plato?: Reading Plato's Republic from an International Perspective"
    Discussant: Dr Kazutaka Kondo (Takushoku University)
    Chair: Dr Takahiro Chino (Waseda University)

  • Coordinator and Chair

    2017年04月
     
     

     概要を見る

    Waseda Political Thought Seminar
    15/04/2017 (Sat.)
    Speakers: Dr Shin'ichi Tabata, Dr Masato Tanaka, Dr Kenji Uehara
    Commentators: Takuto Kobayashi, Dai Oba, Taichi Kishimi
    Chair: Dr Takahiro Chino

  • 研究会コメンテーター

    2017年02月
     
     

     概要を見る

    政治思想研究会(於:早稲田大学)
    日時:2017年2月3日(金)
    報告者:宇野重規(東京大学)
    討論者:千野貴裕(日本学術振興会)
    司会:齋藤純一(早稲田大学)

  • 国際ワークショップコメンテーター

    2014年11月
     
     

     概要を見る

    国際ワークショップ(於:早稲田大学)
    日時:2014年11月10日(月)
    Marx, History, and Time: Some Reflections
    報告者:Harry D HAROOTUNIAN(コロンビア大学)
    討論者:千野貴裕(早稲田大学/欧州大学院)
    司会:梅森直之(早稲田大学)

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現在担当している科目

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担当経験のある科目(授業)

  • Introduction to Normative Studies

    早稲田大学 大学院政治学研究科  

  • 政治学研究

    早稲田大学 政治経済学部  

  • Italian Society: Past and Present (Guest lecturer)

    早稲田大学 国際教養学部  

  • アカデミックリテラシー演習

    早稲田大学 政治経済学部  

  • Political Theory

    早稲田大学 大学院政治学研究科  

  • 政治学英語文献研究

    早稲田大学 政治経済学部  

  • 基礎演習

    早稲田大学 政治経済学部  

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特定課題制度(学内資金)

  • グラムシを政治思想史に読解するための方法論の研究

    2023年  

     概要を見る

    アントニオ・グラムシは20世紀前半のイタリアを代表する思想家であり、ヘゲモニーや市民社会などの概念によって知られ、思想史や政治学のみならず、戦後の人文・社会科学分野に広く影響を与えてきた。しかし、その思想の体系的研究は国際的にもまれであった。グラムシ思想の体系的研究には固有の難しさがある。彼の主著とされるものは、彼が獄中で執筆した約30冊の『獄中ノート』(1929-35)であり、短いメモ書きから長い論文に至る多様な原稿を集めたものである。著者自身がそれらを編集し出版する前に死去したため、その解釈は後世の研究者の裁量に大きく委ねられた。このため、意識的・無意識的に、研究者自身の解釈の方向性に沿ったノートに注目することで、グラムシのものとされる概念が精確な分析を受けないままに「独り歩き」する状況が発生しがちであった。このような事情により、グラムシ由来の概念の多くは、本来の緻密な分析を取りこぼしたまま、過度な単純化をともなって人口に膾炙している。そのため、こうした欠点を補うグラムシ思想を体系的に研究する方法の探究が求められている。それによって、グラムシ由来の概念の単純化を修正し、その思想の意義を明らかにすることが可能となるだろう。したがって、本研究は、文脈的読解に基づくグラムシ読解の方法論を提起することで、こうした問題状況を解決する糸口を提供することが目的とした。本研究では、とりわけ、グラムシの「南部問題」とリソルジメント論を取り上げ、グラムシの議論が同時代・先行世代の議論とどのように関係し、また独自性があるかを検討した。その結果、いくつかの新しい理解を導出することができ、文脈主義的な方法論をグラムシ理解に適用することの妥当性が確かめられた。この結果は、現在まとめている英語での単著の一部として出版予定である。

  • 議会制の批判から擁護へ:モスカの現代的混合政体論の再検討

    2023年  

     概要を見る

    議会制民主主義の機能不全は今日喫緊の世界的問題である。しかし、議会制に対する批判は今に始まったことではなく、20世紀前半にも盛んであった。本研究は、20世紀前半のイタリアの思想家ガエターノ・モスカが、一時は同時代の議会批判と歩調を合わせつつも、ファシズム台頭の時代に議会制の擁護へと転換した理由を検討する。文脈的読解の方法論に基づいた体系的なモスカ研究を提起することで、こうした問題状況を解決する糸口を提供することを企図している。私のモスカ研究はおおむねこのような位置付けをもっている。本特定課題研究は、このモスカ研究の一部をなすものである。研究期間が一年に満たないものであるため、研究内容を絞り込み、モスカを研究するための方法の確立を目的とした。というのも、上記のような特徴をもつモスカを研究していくためには、少なくとも政治思想史と比較政治の両方の知見を必要とするからである。本研究によって、イタリア語を中心とした必要文献を入手し、読解することができた。現在、この研究を英語論文にまとめ、政治思想関連の主要ジャーナルに投稿する準備を進めている。なお、以上の研究課題設定には、イタリア政治・イタリア政治思想の専門文献が日本の図書館にはほとんど所蔵されていないという事情があることを付記したい。

  • 混合政体論の思想史的研究

    2022年  

     概要を見る

    アリストテレスにはじまる混合政体論は、少なくとも17世紀に主権論が旺盛になるまでは、統治形態を考えるうえでの主要なパラダイムであった、というのが通説的な理解である。しかし本研究は、20世紀にはいってもなお、民主主義における二院制との関係において、混合政体論的な説明がなされていることに注目した。混合政体論は、通説的な理解とは異なり、現在の代議制民主主義においても命脈を保っている可能性がある。このことを、20世紀前半のイタリア思想史におけるいくつかの事例を取り上げて検討することができた。

  • 1930年代のイタリアにおける技術と政治

    2021年  

     概要を見る

    本特定課題研究の目的は、1930年代のイタリアにおける技術と政治の関係を検討することである。すでに1920年代より、未来派により技術とそれがもたらすもの(飛行機、速度など)は高く称揚されており、それが20世紀前半のイタリアの知的議論の一端を形成したことはよく知られている。これと対比するならば、本研究が想定する「技術」はより広範である。つまり、科学と結びつき、人間が操作可能なものとして技術を捉えるのみならず、翻って人間自身のあり方(労働や生活習慣、広く人生観など)を規定するような技術である。本研究を通じて、通常は相反するかのように考えられる、イタリアのマルクス主義の文脈においても、またファシズムの文脈においても、こうした広い技術のあり方が見られたことがわかった。

  • 能力主義の政治理論:議会と学校における能力主義的選抜の政治理論的考察

    2020年  

     概要を見る

    本特定課題研究の目的は、現代の社会において主要な選抜原理となっている能力主義の政治理論的研究を行うことである。その際、この原理に基づく選抜が顕著に見られる事例として、学校と議会を取り上げた。近代教育制度が確立する過程で、初等・中等教育と高等教育を接続する論理として試験による選抜が行われた。また、選挙によって議員を選ぶことの含意は、能力ある人物を選抜することであり、選挙民がこれを行うことができるという想定がある。以上の研究を踏まえつつも、能力主義は十全に選抜原理として機能していないことが確認できた(例えば教育における文化資本の働きによって能力主義原理の貫徹は妨げられる)。

  • 19-20世紀イタリアにおける能力主義的代表観の研究

    2019年  

     概要を見る

    本研究の目的は、19-20世紀のイタリアを事例に、能力主義(meritocracy)を前提とした代表制観がどのようなものであったかを明らかにすることであった。イタリアでは第一次世界大戦後の混乱を収められなかった議会が機能不全に陥り、政治システムとしての信頼を失った結果、非常事態としてのファシズムが広い層に受容されることとなった。本計画は、このことを念頭に、イタリアにおける代表制がどのような政治的「能力」をもつ代表を求めようとしていたのか、またそれがなぜ破綻したのかを研究することを目的とした。研究を進めるうち、「能力」なるものを同定するに際しての様々な問題がさらに明らかになった。1)計測不可能性、2)事後的計測の問題、3)測定基準の恣意性、4)環境的影響等々がそれにあたる。今後は、こうした問題をさらに検討していくことが必要である。

  • 権力分立における議会の意義の再検討:イタリア政治思想史の視角から

    2018年  

     概要を見る

    今まで政治思想研究に取り組むなかで、私は、現代政治の主要概念のひとつである「主権論」が、どこまで適切にわれわれの政治生活を説明しているのか、疑問に思うようになった。主権は立法権を意味する。だが、近代国家における主権者(国民)は、立法府の議員を選ぶという間接的で限定的な行為を通じてのみ、主権を行使している。この反面、行政権は、道路工事から極端な場合には私有財産の接収まで、立法府のように主権の定期的チェックを受けないまま、われわれの生活に干渉する幅広い権限を有している。この現代的かつ根本的な問題を前にして、私の専門であるイタリア政治思想研究、とくに、政治学の教科書において、「エリート主義」の先駆けとしてのみ一般に知られるガエターノ・モスカの研究が有益であると考えた。モスカは、もともと議会主義を批判していたものの、ファシズムの独裁が確立すると、それに抗して議会主義を擁護した(「腐敗した議会」を批判するということは、ファシスト、社会主義・共産主義者、民主主義者から自由主義者に至るまで、20世紀前半に幅広く見られた現象であった)。以上を踏まえて、本研究は、モスカの議会論の特質を、権力分立論の系譜に位置付けた。

  • ヘゲモニー概念の政治思想史的研究

    2017年  

     概要を見る

    本研究は、社会科学で広く用いられるもののかなりの程度曖昧に用いられてしまっているヘゲモニー概念を再検討した。研究の手法は、この概念を形成したグラムシの議論に立ち戻り、そのテクストに即してヘゲモニー概念の意味内容を精緻に検討することであった。本研究を通じて、グラムシ以前のヘゲモニー概念の展開と、グラムシにおけるヘゲモニー概念がかなりの程度区別された。これらは現在でもしばしば混同され、「グラムシによる成果」と一括りにされる傾向があるものの、グラムシにおけるヘゲモニー概念を明確化するためには、彼以前の思想史的文脈のなかで、どのように使われてきたかを把握することが肝要であることがあらためて認識された。

  • 「比較思想史」の方法論確立に向けた基礎研究:政治思想史の地域性超克のために

    2015年  

     概要を見る

    政治思想史の方法は、時間的に離れた著者を理解する方法ついては論じてきたものの、地理的に差異のある思想家をどのように理解するかという問いについてはほとんど論じていない。既存の方法論は、現在におけるわれわれが過去の思想家をどのように理解するか、という時間軸の問題に対しての大きな貢献を行ったものの、例えば、われわれ日本の研究者が地理的に離れたイタリアの思想家をどのように理解するか、という問題に関しては問うてこなかった。私が構築を試みている「グローバルな政治思想史」研究の一環として行われたこの研究を通じて、地理的に遠く離れている思想家であっても、同時期に同様の問いに取り組む事例がいくつか発見された。

  • 20世紀前半のイタリア思想史における多様な「近代」観の研究

    2014年  

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    本研究は、20世紀前半のイタリアを代表する思想家、B・クローチェ、A・グラムシ、P・ゴベッティの「近代」概念を比較検討するものであった。申請者は、彼らが、それぞれの近代理解をファシズムに対置することで、可能だが実現していない様々な近代イタリア国家の可能性を探ったことを明らかにすることを目的にした。グラムシの近代観については、近刊の共著書のなかで一部明らかにできた。また今後出版される予定の論文においても成果を発表する予定である。クローチェとゴベッティの近代観については、時間と史料の制約から十分に研究が進まなかったものの、今後引き続いての課題としたい。

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